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「地球最後の日」 フィリップ・ワイリー&エドウィン・バーマー [本:SF]

 

地球最後の日

  • 作者: フィリップ ワイリー, エドウィン バーマー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 1998/03 メディア: 文庫 7.5点

子供の頃にジュブナイルで読んだ「地球最後の日」の完訳版が出ていると知って、読んで見ました。

元々1951年に映画化されたこの作品、最近では映画「ディープ・インパクト」の原作(原作にはクラークの「神の鉄槌」もあげられているので、厳密には原作とは言えないかもしれないが)としても話題になり、それがきっかけで1998年に創元から出されたらしい。映画化されるというのはそういう意味ではいい事だ。ちゃんと確認していないけど、これからまた映画化の予定があるという噂もある。この本、品切れで探しても見つからず、諦めて図書館で借りたのだが、映画化されるのならまた再販されるかも。

この作品が書かれたのは1933年。第二次世界大戦前である。という事で、科学考証などの部分ではかなり辛い部分があるのは確か。作品中では、原子力を利用したロケットエンジンの高熱に耐える金属が見つからず、宇宙に旅立てるかはっきりしない状況が続くなど、まだ宇宙に飛び立ったものがいないという設定である。書かれた時代が70年前、初めての有人宇宙飛行の30年近く前という事なので、それもしかたが無いと思う。

しかし、太陽系外から来た2つの惑星、地球の6倍もあるブロンソンアルファと、地球とほぼ同じ大きさのブロンソンベータ、この内巨大なブロンソンアルファが地球に衝突する事が判明、そのパニックの中、アメリカの科学者達は秘密裏に宇宙に脱出する為の宇宙船を作る事にするという、地球の消滅と人類滅亡の危機という壮大なテーマは、今も魅力あるものとして、いろいろな作品に取り上げられている。

作中で興味を引いたのが、他の国の扱いで、宇宙脱出はアメリカ以外の国でも計画しており、最も成功しそうなのはイギリス、他にドイツ、フランス、イタリア、日本がもしかしたら出来るかもしれない、その他にかろうじて出来そうなのがソ連、中国、南アとなっていて(微妙に違うかも(^^;))、第二次世界大戦前の国の力関係が微妙にうかがわれる。
後書きを読むとこの作品には続編があるらしく、それは脱出後、他に脱出に成功したドイツ、日本、ソ連と戦闘に突入するという話らしい。これは第二次世界大戦の影響を受けているのかもしれない。が、本作では、主人公の召使が日本人であり、かなり好意的に描かれていた。
子供の頃読んだ「地球最後の日」は、思ったより私に影響を与えたのではないかと、最近思う。自分の住む地球が柔らかい土の玉のように砕ける描写は、自分の住んでいる世界が不変のものでは無いのだという事を、そして地球に住んでいる私達は、もし地球が宇宙的な異変に晒された時、逃れる場所は無いのだ(小説のように脱出できるとは子供心にも思えなかった)という強烈な負のイメージを植え付けてくれた気がする。
この本を読んでしばらくして、宇宙船地球号という言葉が流行ったが、私にはそれが宇宙の中ではケシ粒ほどの大きさもないとてももろい地球をイメージとダブって、不安を掻き立てるイメージの方が強かった記憶がある。
今回完全版を読んで見て、惑星の地球衝突より怖いと思ったのはパニックに陥った人々が暴徒と化す部分である。惑星や隕石が衝突するより、何らかの理由で国家が機能しなくなる確立の方が大きい気がしてならない。
科学考証をあまり気にしないで読める人は昔のSFの一つとして読んでみるのもいいかもしれない。
 

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