SSブログ

「住まなきゃわからないドイツ」 熊谷 徹 [本ノンフィクションいろいろ]

住まなきゃわからないドイツ

住まなきゃわからないドイツ

  • 作者: 熊谷 徹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.5点
 
本棚を整理していて発見した本(^^;)。本棚で眠って8年ぐらい経っているっぽい。こんな本を買っていたなんて全く記憶にありませんでした。自分の本棚なのに本屋さんの棚を見ている気分(自爆)。
 
ドイツに住む著者のドイツの生活に関するエッセイなのだが、8年近く前となると、今とは状況もかなり違っているだろうし、読む意味はあるのだろうか??とか思いつつ読んでみた。
すると、少し前に読んだ、福祉制度などが破綻しつつある最近のドイツの状況を描いた「ドイツは苦悩する」との違いがよくわかり、面白く読めた。
10年とは言わないが、数年でここまでいろいろ変わるものなのか・・という感じである。
確かに10年前の日本と今の日本も違うが、流れる変化の中で生きてしまっているので変化しているのはわかっても「大きな変化」として実感するのは難しい。
こうやって、他の国の状況を見てみると、世の中の移り変わりの凄さや、過去にもてはやされていたものが遺物化してしまうのがよくわかる。
 
著者はミュンヘンに住んでいるらしく、最初の方でミュンヘンの街並みに触れられている。
「自分が住んでいる街として誇りたい」と書かれていたが、何となく納得。
すっごく昔の事だがドイツを旅行した時、ミュンヘンの街並みには感動した記憶があるのだ。
もちろん、中世都市がそのまま残っているようなローテンブルグなども印象深かったが、ミュンヘンで見た近代化された商店街の中にタイムスリップしたように残されている教会などには驚かされた。
 
ドイツ人は日本人と似て勤勉で真面目だという印象があったが、この本では、日本人とは対極にあると書かれていてそれもまた面白かった。
周囲に気を配るのが美徳とされている日本と違い、法律と契約が社会の隅々まで影響を与えるドイツではまず「理屈ありき」なのだそうだ。
ドアを開けた所に人がいてぶつかってしまった場合、日本人の場合、どちらが悪いか考えるより、まず謝るだろう。ぶつけられた方も謝る気がする。謝罪もなく「あなたがそこにいるのを知らなかったのよ」と開口一番言われたらムッとする人が多い気がするのだが、ドイツではそれが当たり前なのだとか。まずは「自分の立場の主張」それがドイツ人なのだそうだ。
その分、納得が行かない事はその場で話合うので、後になって根に持つ事は少ないという。
長所と短所は表裏一体だという話があるが、本当にそうなのかもしれない。
 
他に、ドイツでの家探しの苦労や(想像以上に大変そうだ)、仕事探しの方法、食べ物(ドイツのパンやソーセージはうまい!!)に関する話など、ドイツの日常生活に関するいろいろなエピソードが載っている。
 
一番印象に残ったのは教育問題で、「ドイツは苦悩する」で語られていた「ゆとり教育の弊害」はまだこの時点では騒がれておらず、日本人の子供が塾へ行くという話を聞くと、「想像できない」「日本人の子どもは可哀相だ」という反応が帰って来たそうだ。
今では、ドイツでも学業の遅れを心配して、小学生から塾に通う子が増えていると考えると、人の価値観(というより、社会の価値観かな?)というものは、あっという間に覆されてしまう部分があるのだなぁと改めて思った。
 
また東ドイツとの統一についても、旧東ドイツに対し旧西ドイツからの援助資金が膨大に流れ込み、現在そのせいでドイツの財政は苦しみ、またその状態を不満に思う人が増えている状況らしいが、当時は「統一の歴史的な意義を考えれば、その再建にかかる費用など何でもない」というのが主流だったようだ。
 
 書かれたのが8年前だとしても文庫化もされているし、ワールドカップ開催国として注目を集めているドイツの社会やドイツ人の事を知るのには、なかなか面白く読める一冊。
ただ、読むなら最近書かれたドイツに関しての本も読んだ方がもっと面白く読めし、参考にもなるとも思った。

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。