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「日本沈没」小松左京 [本:SF]

日本沈没 上    小学館文庫 こ 11-1

日本沈没 上 小学館文庫 こ 11-1

  • 作者: 小松 左京
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/12/06
  • メディア: 文庫
  • 8点
 
私が子どもの頃、物凄く話題となったこの作品。当時もドラマや映画が作られたりしていたけど、何故かまた話題に。
 
スピリッツではマンガの連載が始まり(現代風にアレンジしてあるが)、映画も公開される。
 
子どもの頃は、そういう事があったら「ちょっと怖いなぁ」とは思っていたけど、そこは子ども。
「別の国に引っ越せばいい」という考えもどこかにあり、どこにも逃げ場が無い「地球最後の日 」を読んだ時ほどの恐怖は感じなかった。
 
しかし、今読むと怖い。
祖国が無くなるというのは、その民族全員が居場所が無い流浪の民になるという事だからだ。
 
国を持たなかったユダヤ人迫害の歴史は有名だが、イラクなどで迫害されているクルド人も3000万人の人口を持つ世界最大の国を持たない民族だ。
クルド人は、トルコ、イラン、イラクにまたがって住んでいるが、その歴史には、弾圧と迫害がいつもつきまとう。
国を持たないというのは、それだけでも悲劇なのだ。
そして、国を持たない民族が建国しようとした場合、信じられないほどの困難と流血が待っている。それは、イスラエルの例を見てもわかるだろう。
日本人が数多く移住し、日系人の大統領まで出たペルーでも、日系人の大統領が出た事を現地の日系人たちは手放しでは喜ばなかったらしい。下手に日系人が目立つというのは、一歩間違えればイメージダウンにもつながり(現にフジモリ大統領は犯罪者として追われている)怖いという意見も多かったという。
2世、3世になり、長くその国に住んでいたとしても、その国に完全に溶け込むのは難しいのである。
 
この本では、沈没していく日本とそこに住む人々の悲劇だけではなく、日本人を海外に移住させようと苦心する総理大臣の姿が鮮明に描かれている。
そして、総理大臣は、無事移民出来たとしても、国がなくなった後日本民族が遭遇するであろう、数々の困難にまで思いをはせている。
 
国を失う事の怖さは、大学生ぐらいの時に読んでも、ピンと来なかったんじゃないかなと思う。
 
迫り来るXデーの恐怖、緊迫感を味わいつつ、沈没後の日本人の有り方、立場に関しても考えながら読むとより面白いのではないかと思った。
 
ちなみに、この本を読んだら久々に筒井康隆の「日本以外全部沈没―自選短篇集〈3〉パロディ篇 」を読みたくなってしまった(^^;)。
 
 

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コメント 2

ちょび

本も読んだし、映画もみたし、TVシリーズもみた世代ですよねー。当時買っていた「小学4年生」(・・・4年じゃないかも)に特集やっていて、本当に日本は沈むのですか?って質問があったっけ。
日本沈没だのノストラダムスだの、子どもにはインパクトの強いもの多かったですね。
by ちょび (2006-06-09 11:49) 

choko

そういえば、ノストラダムスもその頃でしたっけ?
世紀末感が強かったのでしょうか?
私はドラマしか見てなくて、波が主人公の足元にドドーンって来たシーンだけ覚えています。
今度公開される映画、ちょっと興味あるんですが、劇場まで足を運ぶかどうかは怪しいです。ビデオ化待つかな?
by choko (2006-06-09 15:43) 

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