「ブラッド」「鳩が来る家」「屍船」倉阪鬼一郎 [本:ホラー&ミステリー]
「文字禍の館 」を読んで以来気になっていた作家、倉阪鬼一郎の本をいくつか読んでみた。
「文字禍の館」は、画数の多い名前を持つ人しか入れない文字禍の館に招かれた3人の運命を描いた物で、かなり異色で陰惨な雰囲気に満ちた作品だった。
この作品はかなり好みだったのだが、実験小説っぽい雰囲気もあり(とにかく漢字漢字漢字漢字、蠢く漢字の世界なのであった)、他の作品も好みに合うのかちょっと不安だったのだ。
でも読んでみたら、上記3作品ともかなり好みで、もう少し他の作品も読んでみようと思っているところ。
「鳩が来る家」と「屍船」は短編集で、陰惨な閉塞感溢れる中に血みどろのおぞましさが同居してるような作品が多かった。
「屍船」の方は軽いのりの作品がいくつか入っている。SFショートショートのような作品があったり、作中でホラー映画の歴史を垣間見せてくれる作品があったり(ハーシル・G・ルイスなどの名前が出ていて懐かしいと思ってしまった)、ホラー中心ながらもバラエティに飛んでいるとも言える。
「鳩が来る家」の方は、表題作「鳩が来る」は鳩が集まる家の呪われた主の話なのだが、そういう暗い傾向の話が多い。
結末がはっきりせず読者の想像に任せるという展開も多いので(特に「鳩が来る家」の作品)、はっきりとした結末を望む人には向かないかもしれない。
逆にそういう余韻を楽しんだり、作品の持つ雰囲気を楽しめる人にはいいと思う。
好き嫌いがはっきり分かれる作者かも。
「鳩が来る家」の中の「布」は、文字禍の館に共通する部分があるので、この話が気に入ったなら「文字禍の館」もお勧め。
「ブラッド」の方は長編小説。
あるアミューズメントパークを中心に悲惨な事件が相次ぐ。
ファミレスでウェイトレスが、突如客の子供をフォークで滅多刺しにしたり、客が別の客に襲い掛かったり。次々に起きる猟奇的な事件と事件を起こした犯罪者達が歌う童謡。
猟奇的な事件が立て続けに起こり、徐々に明らかになっていく謎を挟みつつも、ラストまで一気に突き進んでいく。童謡の不気味さと、作品全体を覆う血なまぐささが、うまく絡み合い、最後まで面白く読めた。
でもこの作品も、好き嫌い分かれそうではある(^^;)。
かなり多作な作家なようなので(実は最初寡作なのかと思ってら違った)次にどれを読もうか悩む。
コメント 0