SSブログ

「神は沈黙せず」「まだ見ぬ冬の悲しみも」「審判の日」山本弘 [本:SF]

神は沈黙せず

神は沈黙せず

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 単行本
  • 7点
 
 
まだ見ぬ冬の悲しみも

まだ見ぬ冬の悲しみも

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 単行本

8.5点

 
審判の日

審判の日

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/08/31
  • メディア: 単行本
  • 8.5点
 
 「うつうつひでお日記」の中で、褒めてあった「審判の日」を読んだのがきっかけで、その後他の本も読んでみた。
 

 
「審判の日」は、この作者の他の本も読んでみようと思うぐらい面白かった。
SF仕立てが3篇、ホラー仕立てが2編入っている短編集である。短編の詳細は「山本弘のSF秘密基地」で。
個人的には、ホラーよりSFの方が面白かった。
 
表題作である審判の日は、一部の人間を除いてほとんどの人や生き物が突然消えうせてしまう世界を描いている。
人が消えてしまう様子や、人が消えた後の荒涼とした世界の描写が面白く、何故人は消えたのか?などの謎も短編ながらよくまとまっていると思う。
 

「神は沈黙せず」は、「神」は本当にいるのか?という壮大なテーマを持った長編である。
 
力作だと思うし、テーマ自体も物語も面白いのだが、この小説の持つ独自のスタイル(?)が苦手で、個人的にはイマイチ。
 
まず、登場人物が語り過ぎる。
 
テーマである「神は本当にいるのか?」に関してだけの語りならそれほど気にならないのだろうけど、ネットマナー、ネットでの議論のセオリー、宇宙人とコンタクトしたなどの怪しい主張がいかにご都合主義一辺倒で胡散臭いものなのか(著者は「トンデモ本」でも有名)、大衆と政治の関係、マスコミとインターネットのこれから・・・etcととにかくいろいろな事で登場人物は、持論を延々と語る。
 
それも、いろいろな登場人物が、作中のそこかしこで披露する長い持論は、作者が言いたい事を代弁させているようにしか思えず、あまりにもそれが多いので、面白さより押し付けがましさの方を強く感じてしまった。
 
またあまりにも多すぎる事例の羅列も辟易してしまった。
UFO目撃情報、空からいろいろな物が降ってくるという怪事件、メンインブラックとの遭遇事例など、まるでそれ関連の本を読んでいると錯覚してしまうほど、事例が延々と綴られている。
 
そういう本は嫌いじゃないけど、フィクションの中に、多くの実際にあったという事例を並べられても、「現実にあった」という重さは無くなってしまう。
 
丁度、前後して読んだ牧野修の「アロマパラノイド―偏執の芳香 」にも、同じくUFOとコンタクトできるという人々が出てくるのだが、その物語には邪魔にならない程度のサラリとした事例紹介と比べると対極にあるなぁと思ってしまった。
 
ただ、そつがない「アロマパラノイド」に比べ、強いアクがある「神は沈黙せず」は、こういう部分が強く印象に残るのは確か。
 
全体的な印象は、「まるでインターネットを見てるみたい」だ。
いろいろな事柄が詰め込まれ、参考になる所もあれば、辿り付いた所によっては管理人の独善的主張が幅を効かしている場合もある・・という感じ。
 
私自身は、この話がもっと短くすっきりとまとまっていればもっと面白かったのにと残念に思うが、この私が苦手と思った部分に惹かれる人、面白いと思う人もいると思う。
そういう人にとっては、ずっと心に残る本になったりもするだろう。
 
とにかく、好き嫌いがはっきり出そうな本だと思う。
 

 
 「まだ見ぬ冬の悲しみも」、こちらは短編集。SFが4本、ホラーが1本。
 
サイボーグ009などでおなじみの加速装置を使う側の視点で描いた「奥歯のスイッチを入れろ」や、科学ではなく言葉を進化させた異性人とのコンタクトの話である「メデューサの呪文」、生きている宇宙船の話「バイオシップハンター」など、バラエティに飛んだ内容で、どれも面白く読めた。
 
「審判の日」「まだ見ぬ冬の悲しみも」は、良作揃いなのでお勧め。
  
 

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。