「ユナイテッド93」 [映画:ホラー・サスペンス]
どうしても見たくて(もうすぐ上映期間が終わってしまう)、突発的に映画館に行き、「ユナイテッド93」を見て来た。
この映画は、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロでハイジャックされた4機の飛行機の内、唯一目的地にたどり着かず墜落した飛行機を舞台にしたもので、9月11日、ハイジャックされたユナイテッド93の機内と、アメリカ国内の管制室、そして軍の司令室で起きた事を限りなくドキュメンタリータッチで描いた作品である。
話の顛末がわかっている為、飛行場を離陸した時から、絶望へのカウントダウンが始まり、奇跡も期待出来ない。まるで、9月11日の数時間を切り取って映像化したように、最初から最後まで映画は緊迫感に包まれている。
映画館で見る事によって、その緊迫感はより高められたような気もする。頑張って映画館まで行ったかいがあった。
この映画に主人公はいない。
登場人物の名前すらほとんどわからない。
事件の背景を説明する事もない。
同時多発テロを知っているのが前提で見る映画でもある。
カメラは起きている出来事を淡々と追うだけ。
主役が不在であるだけでなく、勧善懲悪にはならず、加害者であるハイジャック犯も被害者である乗客も同じ視点で描いている。
最後まで諦めない人々、信じる宗教の為に多くの犠牲者を出す事も自分の命を捧げる事も厭わない人々、職務を必死に遂行しようとする人々、いろいろな人の生き様がこの映画では描かれているが、この映画が自主的に発している強いメッセージは無い。
この映画を見て、何を感じるのか、考えるのかは、観客に委ねられているのだ。
それは実際のアメリカ同時多発テロの事件を知って、何を感じるかが一人一人違うのに似ている。
アメリカ同時多発テロが起きて5年目、この映画を見て、もう一度この事件自体を考え直して見るきっかけになればいいと思う。
私自身、同時多発テロが起きた当時は、テロの残酷な行為だけに目を奪われていたが、今現在、アメリカが世界で行っている独善的な行為にも問題があると思っている。
もちろんテロは許されるべきものでは無いが、イラクへの攻撃を見れば、イスラム世界で、アメリカが国家規模でテロを行っていると受取られても、不思議では無いと思える状況である。
ユナイテッド93の乗客について一人一人詳しく知りたいのなら、「墜落まで34分-ハイジャックされた乗客達の記録」(最近「ユナイテッド93」と改題して文庫で出た)を読むといいと思う。
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