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「K2 非情の頂-5人の女性サミッターの生と死」5人の生き方は凄いと思ったけど [本ノンフィクション:冒険・登山、遭難]

K2 非情の頂―5人の女性サミッターの生と死

K2 非情の頂―5人の女性サミッターの生と死

  • 作者: ジェニファー ジョーダン
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本
  • 6.5点

 

 

世界で2番目に高い山K2。

元々、遭難率が高い山ではあるのだけど、登頂に成功した女性5人の内、数人は下山途中に亡くなり、生還した女性達も全員山で亡くなっている(現在は、他にも女性登頂成功者がいるらしいが)。

K2登頂に成功した女性5人にスポットをあて、その生き様と登山界における女性の扱いに対しての疑問を描いた本。

K2での遭難事故と言えば、「K2嵐の夏」で描かれている1986年の大量遭難が有名で、この年、女性が始めてK2登頂に成功したが、女性登頂成功者3人の内2人が下山途中で亡くなっている。「非情の頂」でもこの時の登頂成功者3人を取り上げている。 

遭難事故から生還した人物による手記「K2嵐の夏」と、この本でかなり大量にページを割かれて描かれている1986年の遭難事故を読み比べて見るのも別の面が見えて来て、興味深い。

特に山頂付近で遭難した時、献身的にみんなの世話をし、結果的に力尽き見捨てられたイギリスの有名クライマー、アラン・ラウスに関しては、当事者が書いている「K2嵐の夏」より、この本の視点の方が納得できる。

この本で描かれている5人の女性登山家の生き様は面白かった。

山に生きた5人の女性の、情熱、夢、野心、嫉妬、家庭、そして登山界における女性差別による壁・・・等が様々に入り乱れた波乱万丈な人生が描かれている。「家庭」と「差別」の部分を除くと、男性登山家の生涯と被る部分も多いなぁと思った。

登山というのはとにかくお金がかかる。世間に注目される事をしないとスポンサーがつかない。そのためどんどん無謀な事に挑戦していく・・という流れは、植村直己氏の話でも読んだが、ここでもそういう事から、無理をしてしまうという話がいくつかあった。

山が好き、登りたい、情熱だけは誰にも負けない、しかしそれだけではどうにもならない登山家達の辛さが見え隠れする。

そして女性の場合、そこに「家庭と子供」という存在も大きく圧し掛かってくる。男性が家庭を顧みず登山に打ち込んでも世間の批判は集まらないが、女性がそれをすると、あっという間に非難の嵐。そんな中でも、夢を追いかけた女性を凄いと思う半面、やはり子供がいるのに・・・と思ってしまう自分がいるのも確か。

著者もそんな感じだったのだろうか?

この本で扱った5人の女性に関してのエピソードの中には、傍目から見ても非難されるべき事がいくつか取り上げられている。そういう事例を取り上げている部分で、著者自身の言葉による彼女達への批判がほとんど無い。逆に男性からの女性登山家差別に関しては、これでもかっ!と思うぐらい攻撃しているので、余計に気になる。

5人の女性登山家達に対する尊敬と羨望、そして嫉妬と批判、それらが混ぜこぜになって著者の中に存在したのだろうか。

このどっちつかずの態度と、かなり攻撃的とも思える男性登山家批判のバランスが悪いのが点数が低い理由。

男性社会に女性が入っていく事の難しさ、大変さはわかるが、一方(女性)の訴えだけを中心に話を勧めても、あまり説得力が無いと思うのだが・・・。

また、客観と主観、、引用、想像の区別が曖昧で、「こんなやり取りが最後の時あったのか」と思った部分が作者による創作らしかったり、登山家の自伝などから引用したと思われる登山家の主観的な思いが、客観的事実のように語られていたりというのが気になった。

気になった点はいろいろあったが、それでも、この本で取り上げられている5人の生きた軌跡は面白い。特に、山に命をかけ、壮絶な人生を送ったと思えるワンダ・ルトキェヴィッチの生き様は一読の価値あり。

K2登山がエベレストに比べ、困難な理由なども取り上げてあり、ヒマラヤ登山に興味があるなら読んで損は無いと思う。

そういえば、エベレストに最初に登頂した女性は日本人だったのをこの本ではじめて知った。

以前「ヒマラヤへの挑戦―8000m峰登頂記録〈1〉 」を読んだ時、この登頂の話は読んでいたのだが、「記録」という事もあり、「女性世界初の登頂」という事にはほとんど触れられていなかったので、わからなかったよ。

 

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