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「渚にて」理想の破滅未来?名作です [本:SF]

渚にて―人類最後の日

渚にて―人類最後の日

  • 作者: ネビル・シュート, 井上 勇
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1965/09
  • メディア: 文庫
  • 9点
読んだんだか、読んでないんだかわからなくなってしまって、かなり前から手を出そうか悩んでいた本。
黒猫さんの「本を読みながら日記をつけるBlog」のレビューを読んで、未読な事が判明。読んで見た。
 
核戦争で、死滅していく世界を描いた作品。
舞台はオーストラリア。
北半球で起きた核戦争で北半球は壊滅。南半球にあるオーストラリアにも徐々に放射能が迫ってくる。
 
古い作品なので、設定などに突っ込むのはヤボ。
 
静かに静かに破滅に向かっていく世界は、バラードの「結晶世界」(これも好きな作品)を思い出すが、人が気付かない中、破滅に向かっていく「結晶世界」と違い、この世界の人々は、来年の夏を迎えられない事を知っている。
 
それなのに、尚、人間としての秩序やモラルを重んじ、生きていく人々の姿は、切なくもあり、美しくもある。
破滅の影が徐々に濃くなる中、自分の義務を果たそうとできる限り仕事の従事する人、来年の事を話し来年のために庭を手入れする人、終わりを覚悟し人生を精一杯生きようとする人、そんな人々の織成すドラマは、あまりにも悲しい。
 
破滅未来物で人々がパニックに陥り、暴徒と化す設定の方が、リアリティがある気がするし(そういうSFも多い)、もし本当に世界の破滅が迫ったとしたら、そうなってしまう気がする。政情が安定していない国での、秩序の崩壊振りを知るにつけ、よりそう思う。
 
この作品は、地球が破滅を迎えた時、人類が取るべき理想の姿を描いているのかもしれない。
古いけど、多くの人に読んで貰いたい作品。名作です。 
 

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コメント 2

黒猫

読まれましたかー。

仰るとおりで、現実にはこういう事態になると自暴自棄になる人のほうが多いと思います。
この作品の中の人達の、覚悟を決めて最期まで取り乱すことなく、穏やかに・・・という姿を見たとき、何となく日本的な美学を感じたのですが、意外とこういう美学は万国共通なのかも知れないなあとも思います。

先日の原発事故と言い、最近の核拡散と言い、この本が書かれた当時よりもきな臭い雰囲気の昨今ですから、是非再販して欲しいものです。
by 黒猫 (2007-07-19 21:18) 

choko

こんにちは、黒猫さん。
「渚にて」面白かったです(^^)。黒猫さんのブログで、読んでない事に気が付いてほんとよかった。

最後まで覚悟を決めて取り乱さず穏かに・・・言われてみれば、日本的ですね(切腹の時とかも)。

確かに、最近は、きな臭い雰囲気が漂ってますよね。環境問題とかも、このまま先延ばしにしてたら取り返しがつかないことになっちゃうんじゃないか??とか心配してしまいます。

同じく、再販を望んでしまいます。こういう話って、今の時代だからこそ、大切だと思います。
by choko (2007-07-20 13:46) 

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