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「アフリカで寝る」松本仁一著:国際援助が人々の生活を壊すことも・・ [本ノンフィクションいろいろ]

アフリカで寝る

アフリカで寝る

  • 作者: 松本 仁一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1996/09
  • メディア: 単行本

7.5点

この著者の「アフリカを食べる」と、この本「アフリカで寝る」が文庫一冊にまとまり
アフリカを食べる/アフリカで寝る」 というタイトルで出ている。

一方が「アフリカの食」、こちらはアフリカのいろいろな所で寝る・泊まることによって見えてきた
「人々の生活」を書いている。

「アフリカを食べる」より、重い話が多い。

以前より悪くなっているとしか思えない人々の生活や治安、貧困に喘ぐ人々、
自分の利益のみを追求する国の指導者達、・・・ただ、全部が重い話ではなく、
現地の習慣に戸惑う著者のちょっと笑える姿なども書かれている。

この本で一番印象に残ったのは、国際援助の難しさだ。
日本の青年団がケニアで、米作りの指導をした。
8年かけて、苗の育て方や田植えの方法を教え、村での米の収穫もあがった。
しかし、隣国タンザニアの飢饉に、大量の無料の米の援助が届いた。
タンザニアの人は、米をあまり食べないので、無料で貰った米をトウモロコシと交換した。
米の価格は暴落。せっかくやる気になっていた村人は、また昔の直播のの米作りに戻ってしまい、
若い人々は職を求め村を離れてしまったという。

マリでも、飢餓に陥った人々が大量に届いた援助物資を市場で投売りしたため、市場価格が暴落。
頑張って農業を続けていた人々まで食べられなくしてしまったという。

安易な援助は、その土地の生活を壊す。

最近は審査が厳しくなっているようだが、独裁政権を維持させるのにも先進国からの援助は役立っている。

民族虐殺があったルワンダでは、虐殺された側のツチ族が政権を取り戻し、
虐殺する側だったフツ族が難民となった。 そして、難民のための援助が、難民キャンプで武器を調達する資金となり、
また新たなる紛争の火種となったりもしていたという。

自分が善意で出したお金が、虐殺のために使われる・・・、人々の生活を壊してしまう・・・、
浅はかな援助は逆に人を苦しめるのだ。

かつて、日本とイタリアが耕運機を援助した。
その結果は、日本から援助された耕運機の大半は一年後には錆だらけで放置され、
逆にイタリアから援助された耕運機の多くは、10年経ってもピカピカの現役だったらしい。
その詳細がこの本には詳しく書いてある。
ただ、援助するだけではダメなのが、よくわかる話だった。

アフリカの混乱した現状の原因は、その国の指導者や役人にあるが、
それらの国を混乱に導いたり、アフリカ全土に武器を氾濫させたのは、
別の国の対立(冷戦時の代理戦争)や介入(現状を無視した民主主義の押し付けなども入る)
だったりもする。

それらの国がなく、アフリカ大陸だけの話であれば、アフリカの国々の状況が
ここまで悪くならなかったのではないか?と思うと、複雑である。

「アフリカを食べる」「アフリカで寝る」両方ともお勧めなので、ぜひ文庫でまとめて読んで欲しいです(^^)。
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