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「絶対貧困」石井光太著;貧困の実態とは [本ノンフィクションいろいろ]


絶対貧困

絶対貧困

  • 作者: 石井光太
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/03/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


7.5点

スラムの成り立ち。
そしてスラムで暮らす人々はどんな場所・家に住み、どのような仕事をし、
どのような生活をしているのか。
路上生活者達。物乞いで生活する人々の収入は。物乞いにもヒエラルヒーがある。
売春をする人々。売春婦、売春宿にもいろいろな種類がある。

私達が漠然としか知らない世界の貧困の実態を、現地でそこに住み込み、
体を張って取材したものをまとめた貴重な一冊。
文体が丁寧な口語体で読みやすく、シビアな現実描写の合間には、
コミカルなエピソードも挟まれ、著者の温かさを感じる本でもある。
貧困解決の難しさ、物事は一面だけでは捉えられないということも教えてくれる。

なんとなく単一のイメージを持っていたスラム。
でも、国によってかなり違うらしい。
東南アジアは風通しの良い竹や木、中東は砂塵などを防ぐため泥や糞、
アフリカは暑さ寒さを避けるだけでなく治安がとても悪いのでコンクリートで、
それぞれ建物が作られているという。

また、スラムの構成も同じ身分・職業で集まる場合と、
宗教・民族・出身地別に集まるスラムがあるという。

スラムの食生活もまた驚きだった。
フィリピンでは、スラムでチキンを食べている人が多いという。
「安価で一番カロリーの高いものを」ということらしい。
で、ビタミンなどは錠剤で補充。
アメリカでは、貧しい人ほど太っているというが、他の国のスラムでも
栄養の偏りから太った人が多いという。

また路上生活者というと、どうしても日本の路上生活者を思い浮かべてしまう。
が、これもまた国によって様々。

アジアでは、家族でまとまって暮らしていることが多く、地域とのつながりもあり、
一般の人々に助けられたりすることもあるという。

アフリカは、男だけのグループ、女と子どもだけのグループに分かれているという。
アフリカでは路上生活者は、一般の人から恐れられており、飢えても助けてはもらえない。
すると犯罪に走るものが多く、ギャング化する。
女性達はそんな男性グループから身を守るために、お互いに集まるというのだ。

地域とつながりがあるか、無いかだけで、これだけグループの性質が変わってしまうのは驚きだった。
社会の影響というのは、何に対しても大きいらしい。

路上生活者達の多くは、物乞いをして生活費を得ている。
宗教的に、貧しい人々に施しをするのは当たり前という風潮のある国では、
寺院の周りには、多くの物乞いが集まっている。

健常な人より、障害があるほうが、施しが多いのは世の常で、
障害が大きいほど、物乞いとしてのヒエラルヒーは上位だ。
子供にやけどを負わせたり、体を傷つけたりして物乞いをさせる大人もいるという。
本書には「四肢切断」という姿の物乞いの写真が載っていた。

路上生活者の中で、一番悲惨だと思ったのは、ストリートチルドレンだ。
両親が亡くなった、親の暴力から逃げてきた・・いろいろな事情でストリートチルドレンになった子供達。
その多くは薬物中毒になり、社会復帰も難しいという。
虐待や、路上生活中に遭遇した惨い出来事のトラウマから、精神を病む子も多いらしい。
アフリカなどでは、ゲリラなどの兵士に自ら志願する子供も多いという。
やはり、一番悲惨な目にあうのは、子供達だという現実がここにはある。

本書では、上記のような貧困生活の辛さ、大変さが綴られているが、
それと共に、そこに生きる人たちのたくましさ、大らかさ、そして希望も描き出している。
売春宿に暮らす売春婦の子供達。
親の商売を見て暮らすその子達は、不幸なのか?
そうではないことも、この本では語られている。

貧困対策には、全体的なデータを分析するマクロな視点と、
著者のように内部事情まで詳しく踏み込んだミクロな視点が必要だ。
しかし、内部にまで踏み込んで取材するというのは、なかなかできるものではない
(売春宿に住まわせて貰いながらの取材の話などは、よく女性不振にならなかったものだと思った(^^;))。
そういった意味で、とても貴重な一冊。

お勧めです!
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