「デブの帝国-いかにしてアメリカは肥満大国になったのか」グレッグ・クライツァー著:肥満対策はころころ変わる [本ノンフィクションいろいろ]
7.5点
サブタイトルにあるように、アメリカが肥満大国になった原因を、
企業マーケティング、教育現場、輸出入などの社会的変化の視点で捉えている本。
また、次々に新しい説がでる「肥満やダイエットに関する情報」に、人々がいかに振り回され、
またその情報が後で間違いだとわかっても、大きな影響を残すことや、
高果糖コーンシロップやパーム油など新しい食品の開発の影響なども述べられていて、
読み応えのある一冊になっている。
現在、みなが当たり前に受け入れている、「ビッグサイズ」や「バリューセット」。
しかし、これを導入する時は、企業上層部がかなり難色を示したと知ってびっくり。
ビッグサイズの場合、「安く多く売る」のは「商品の信頼を損ねる」という理由から、
バリューセットの場合は、「プライスダウン」だからだ。
しかし、それらを取り入れたことにより、飲食産業は、人々に「よりたくさん食べてもらう」ことに成功した。
人は、目の前に出された食べ物の量が増えれば増えるほど、食べる量も増える傾向があるという。
肥満への第一歩だ。
また砂糖より安価で6倍も甘い「高果糖コーンシロップ」の開発は、食品メーカーを狂喜させた。
「高果糖コーンシロップ」のように「ぶどう糖」と「果糖」で構成されるものを「異性化糖」と呼ぶ。
今では炭酸飲料など、異性化糖は、多くの甘いものに添加されている。
しかし、「果糖」が、複雑な消化過程を辿る砂糖などとは違い、直接肝臓で処理されることに
関しては、一部の専門化が心配したものの、問題にはされなかった。
「高果糖コーンシロップ」が、果物などに比べ、より多く果糖を摂取しやすいとしてもだ。
現在、果糖のとり過ぎ、特に果物などに比べ、糖尿病や肥満の原因になるといわれている。
パーム油でもいえるが、「長期的にある食べ物を大量に摂取し続けたことによる健康などへの影響」は
企業の利益の前に無視されがちであり、それはコーンシロップやパーム油が開発された昔も、
そして、現在も変わらないのだ。
もう一つの問題が、この手の健康被害や肥満に関する情報がころころ変わるということだ。
「強度な運動でなければ肥満を解決できない」
「軽度な運動でも肥満は解消される」
「30分ほどのウォーキングなどちょっと体を動かせば肥満は解消される」
「軽度な運動をしたほうが、強度な運動をするより効果がある」
「同じ運動を10分×3回したのと、30分×1回では効果は変わらない」
「太っているのは、痩せている状態より健康に悪い」
「多少、太っていた方が健康である」
「炭水化物を摂らなければ痩せる」
「低脂肪な食事を摂れば痩せる」
・・・運動強度がどんどん引き下げられ、様々な矛盾する研究結果が発表され、
その度にマスコミが騒ぎ、人々が踊らされる・・
日本でも見られることが、アメリカでも何度もおきている。
どれが正しいか、絶対なものは今だってわからない。
また新たなる研究結果が発表されれば、今まで信じられていた説は覆されるのだ。
ただ、「ちょっと運動すれば大丈夫」や「多少太っていた方が健康である」と
いう研究結果は、元々肥満気味な人に安心感を与え、より太る結果へと導いた。
最近、日本でも「多少太っていた方が健康」って説が言われてたと思うんだけど。
標準と言われるBMI22。しかし、中年以降はもう少し上の方が病気にかかりにくいって。
でも、アメリカではこの説を否定する説もでているらしい。
それとも別の説に対しての否定なのかな?
この本は2003年の発行なので。
「同じ運動を10分×3回したのと、30分×1回では効果は変わらない」
に関しては聞いたことがあり、「そうなのかー!」と思っていたんだけど、
これまた「30×1回」の方が、実は結果がよかったという研究結果が出ているらしい(^_^;)。
自分も振り回されてるなーと実感。
企業努力やダイエット情報、その他もろもろの要因からアメリカでは
肥満人口がどんどん増えているという。
でも、一番悲惨なのは、子供たちだ。
アメリカの公立学校の給食は、ビュッフェ形式で、並ぶものはジャンクフードばかり、
お菓子もその中に入っている。
学校の中には炭酸飲料の自動販売機、学校の近くにはピザなどの移動販売所があり、
そこでお昼を買う子もいる。
日本の給食事情とはあまりに違うその状況にびっくりしたことがあるけど、
アメリカも昔は日本と同じように食事のバランスに気を配った給食が出されていたらしい。
しかし、予算削減で給食費をまかなえなくなった多くの学校が、
企業を招きいれ、今のような状況になったという。
教科書ですら、メーカー提供のもので「マクドナルドは健康に良い食品を提供しています」
(これはあるかわからないけど、こんな感じで
提供しているメーカーに都合の良いことばかりが書いてある)
なんて事が書いてあるものを使ってるんだから、不思議じゃないんだけど。
そして、現在、子供の肥満人口の増大が問題になっている。
子供の内に糖尿病を発症してしまう子も多いらしい。
他にも、肥満と貧困の関係、洋服のサイズの変化などにも触れている。
アメリカの洋服のサイズやデザインが肥満人口の増大と共に大きく変わった事は、
日本の婦人服と共通するものがあって面白い。
アメリカでは昔「レギュラー」と呼ばれたサイズが「スリム」になったし、
ダボダボなファッションも受け入れられた。
日本の婦人服のサイズは「9号」となっていても、若い人の「11号」ぐらいの
サイズのことが多い。
ウェストも、同じサイズでも若い人向けより5cmくらい大きめにしてあるという。
また、ジャージのような楽な服を着ていると、
どんどん太っていきやすいという研究結果も載っていた。
中年になると太りやすいのは、この辺もあるのかもね(^_^;)。
という私も、ヨーカドーなどで買っちゃうなー。
若い人の服はきつくて辛いし。
ちょっと固めの内容の本だけど、肥満の原因を
社会システムの変化という視点からみた、面白い本。
お勧めです!
おもしろそうですねえ。
私自身の戒めにも良い本だわ。f(^ー^;
by rudies (2009-10-26 18:26)
rudiesさん
この手の本の方が、ダイエット情報のデータがしっかり載ってて
参考になったりします(^_^)。
読んでて、「うわうわ、自分もまずいぞー」とか思ったり
しちゃうのですが。
お勧めは、「食べるな危険!ファストフードがあなたをスーパーサイズ化する」です。
マクドナルドを30日間食べるとどうなるかの映画を撮った監督による本で、この本より固くなくて読みやすいです(^_^)。
http://takuteku.blog.so-net.ne.jp/2007-11-24
by choko (2009-10-26 18:53)