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「死霊列車」「吸血蟲」北上秋彦:ゾンビ物2作。語り口のまずさが痛い(-_-;) [本:ホラー&ミステリー]


吸血蟲 (角川ホラー文庫)

吸血蟲 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 北上 秋彦
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/01/06
  • メディア: 文庫
4点
死霊列車 (角川ホラー文庫)

死霊列車 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 北上 秋彦
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/12/25
  • メディア: 文庫

5点

北上秋彦の、ゾンビ物2作。

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「吸血蟲」は、嵐により外界と遮断されてしまった寒村を襲う恐怖を描いた作品。

人々が次々に理性を失い、普通の人々を襲いだす。
家族を嫌い、村を離れていた主人公亜希子は、弟からの不気味な連絡と、
その後連絡が取れなくなった家族を心配し村に戻る。
しかし、50年前にも起きた悲劇が、また村を覆い尽くそうとしていた。
それも、以前より大規模に。
人々に何が起こったのか。

ゾンビ物で、ストーリー的には王道。
でも、ゾンビ物とかは好きなので、定番物でも好んで読むのだけど、これはダメだった。

何がダメかというと、とにかく言葉やエピソードの選び方が雑で、緊迫感を壊してしまう事がしばしば。
語り口も下手で、独白もくどくどと説明的で嫌になるし、登場人物に感情移入もしずらい。
いくら、おどろおどろしい描写で雰囲気を盛りあげようとしても、スプラッタシーンを書いても、
上記のような理由で大なし。

吸血鬼と化した村人達からどうにか逃れ辿りついた家。
緊迫感あふれる中、食事を取るのだが、そこで描かれる料理のシーンは長く、
主人公の女性がいかに家庭的か・・・なんてのがほのぼのと語られてしまう。

ストーリーを楽しむ前に、とにかく部分部分で気に障るところが多すぎて、
ダメダメだーという感想。

ラストもあまり盛り上がらず。

後書きで、同じゾンビモノの「屍鬼」(小野 不由美)の話が出ていて、構想は先だったのに、
書きあがるまで時間がかかってしまって、「屍鬼」に先を越されたと作者ががっかりしていた・・という
話が載ってた。

「屍鬼」は、世界観、複雑な人間関係や人物描写、ドラマチックな展開・・・とどれをとっても一流。
日本ゾンビモノの傑作「屍鬼」よりこの作品を先に発表したからといって意味ないぞ(-_-;)と
思ってしまった。

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「死霊列車」は、狂犬病のような症状の後、人を襲うようになる奇病が蔓延した日本を描いた作品。
本土はすでに病気が蔓延し、政府は北海道に移転してしまう。
鉄道マニアである高校生の少年は、生き残った人々を乗せた列車を走らせ、北海道に向かう。
その途中途中で、繰り広げられる惨劇。
襲い来る病気に感染しゾンビのようになった人々。
少年たちは、無事北海道にたどり着けるのか?

「吸血蟲」に比べると文章はまだよくなってるけど、相変わらず説明口調なのは変わらない。

また、くどくど説明する割には、説得力がなく、登場人物に感情移入しにくいのも同じ。

ゾンビみたいな形相で人に襲いかかる感染者達を「人を撃つのは倫理的に・・」と、
躊躇し仲間が次々に犠牲になる自衛隊とか、
身を守る為に感染者を殺す行為に眉をひそめる主人公とか、
そう登場人物達が思ってしまうのがわかるような説得力が文章になく、
「こんな状況で何甘いことを言ってるんだろ??」と思えてしまう。

襲い掛かる感染者の群れから逃げる為に、勝手に列車に乗り込み、
動かそうとるす高校生の行為に対し、
突然「盗みはいけない!」と説教する人物が現れたり、
全体的に説教くさいと思えるシーンも多く、それは前作でも気になった。

また、相変わらず言葉の選び方もよくない。

主人公の女性がまだ状況を知らず、死体が転がる街中を放浪する緊迫感あるシーン。
主人公に向かって「逃げろ!」と叫んだ男性。

「チワワを飼ってる田村という男が叫びながら・・・」
という表現なのだが、何でチワワ??
緊迫感があるシーンがチワワという言葉で台無しに。
いや、「チワワ」がその後何かしら展開に関係があるならいいんだけど、
この男、そう叫んで勝手に車で逃げちゃうだけなのだ。

そういう言葉の選び方、表現のまずさが要所要所に見られる。

ホラーというのは行間を読ませるのも大切だと思うのだけど、
下手な説明調の語り口、余計な描写などが、それを壊してしまっている。

話的には、こちらのほうが「吸血蟲」より面白かったけど、
この著者の文章はホラー向きではないと思ってしまった。

この2冊を読むなら「屍鬼」を読みましょう。
ハードカバーだと分厚い本で上下巻、文庫本になったら全5巻という長さだけど、
面白いよV(≧∇≦)V。
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コメント 6

コステロ

「屍鬼」は、私も読みましたが
吸血鬼に関する設定や、作品の根幹となる思想など
藤子・F・不二雄の「流血鬼」そのまんまのパクリなんですよね。

なので、そのコトに対する不快感が勝ってしまって
個人的にはあまり楽しめなかったのですが、
あくまでもそーゆーモノとして割り切っった上で今読み返せば
また違った印象を抱くかもしれません。
by コステロ (2010-03-04 13:30) 

ufavan

僕は屍鬼とても面白かったです!
十二国記も大好きです!!

早く続き出ないかなぁ~・・・って話変わっちゃいました
ごめんなさい^^;
by ufavan (2010-03-04 15:03) 

choko

コステロさん

そっか、コステロさんはあまり楽しめませんでしたか~(>_<)。

吸血鬼物とか、ゾンビ物とか、元があっていかにそれを
膨らませるかだと思ってる部分があるので、
あまりパクリ感が無かった私は楽しめました。
そう割りきって読めば面白いと思いますよ~(^^)。


by choko (2010-03-04 18:30) 

choko

ufavanさん

未読ですが、「十二国記」も面白いみたいですね(^^)。
友人が大ファンです。

で、これって、まだ完結してなかったのですか??
既に完結したとばかり・・・(^^;)。
by choko (2010-03-04 18:32) 

じみりん

最近ぜんぜん本を読んでいないのですが‥私も「屍鬼」は大好きです♪
十二国記の最初に出た「魔性の子」は、ちょこさんも気に入るんじゃないかと思うので、一度読んでみてくださいな。(一話完結なのでコレだけで大丈夫です)
ところで今回の『チワワ』に妙に受けてしまいました!確かに緊迫感が台無しだ~(笑)
by じみりん (2010-03-06 00:40) 

choko

じみちゃん

「魔性の子」・・・・・・「屍鬼」が面白かったので、
勢いで買ったかもしれない・・・で、どこかに埋もれている気が(^^;)。
全く忘れてたけど、じみちゃんにお勧めされて思い出しました~!
頑張って発掘してみますO(*^▽^*)o~♪

で「チワワ」、じみちゃんに受けて貰って嬉しい~♪
この「チワワ」で感じた脱力感を書きたくて、
この感想は書いたようなものだし(笑)。
by choko (2010-03-06 03:10) 

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