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「家鳴り」篠田節子著:人の怖さを描いたホラー短編集。怖いです [本:ホラー&ミステリー]


家鳴り (新潮文庫)

家鳴り (新潮文庫)

  • 作者: 篠田 節子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/05
  • メディア: 文庫

7.5点

少しSFの要素が入ったホラーが多めの短編集。
特筆すべきは、著者の人物描写。
人を多面的な角度で捉えるのが上手い!

例えば、「操作手(マニピュレーター)」では、ボケの始まった姑を介護する嫁が出てくる。
献身的に嫌がらず寝たきりの姑に尽くす嫁。
姑への優しい言葉かけも、気配りも本心からなのに、
それでも嫁の心に「姑が死ねば」という気持ちが一瞬過ぎったりする。
そういうちょっとした描写が、作品を深いものにしている。

収録されているのは、
「幻の穀物危機」
「やどかり」
「操作手(マニピュレーター)」
「春の便り」
「家鳴り」
「水球」
「青らむ空のうつろのなかに」

一番好きなのは「幻の穀物危機」。

この話は、首都で大地震が起き、多くの被災民が地方へと移動したことによるパニックを描いている。
一部の傍若無人な被災者の行動が、田舎の平凡な善人であった農民達を、凶行に駆り立てる。
「やりたくはないけど、やらなければいけない」と言いつつ武器を用意する農民達。
その描写はリアルで(戦時中、派兵先で住民達から食べ物を奪い取った兵士達と、
それに対抗した住民達の立場を思い出す-両方共元々は悪人ではないのだ)、
こういう状況は有り得そう・・・と思えるのが怖い。

他の話も、人間の奥底にある怖さを描いた作品が多く、何とも言えない余韻が残る。
お勧めです(^^)!!
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