SSブログ

「トギオ」太朗想史郎著:世界がちゃんと構築されてない・・・ [本:SF]


トギオ

トギオ

  • 作者: 太朗想史郎
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2010/01/08
  • メディア: 単行本

5点

第8回(2009年)「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

口減らしされた「白」を拾った事から、主人公の家族は村八分にあい、
主人公も学校で壮絶ないじめにあう。
先が見えない貧しい村を逃げ出した主人公は、港町で生活をはじめる。
そして、周囲から隔絶された大都市「東暁」(トウギョウ)にどうにか入り込んだ主人公は、
妄想にふけり、悪事に手を染めて行くのだが・・・。

SFっぽい素材は使っているのに、何故かSFっぽさを感じない。
全体的には、勢いはあるけど、雑だなーという感じ。

近未来SFっぽい設定なのだけど、設定をつめておらず、世界観が曖昧。
その世界で生活している人が見えてこないのだ。
SFっぽい材料をいろいろ用意してあるけど、上手く生かせておらず、
お飾りになっているものも。

この世界で暮らす人の価値観、道徳観が、私たちとは「違う事」はわかるのだが、
それがきちんと説明されておらず、断片的にそれが示されるだけ。
「口減らしされた子」を拾ったせいで何故主人公の一家がここまで酷い目にあうのか、
殺人はダメなのに、酷いいじめ、暴力は許されるのか、善行をすることが何故悪なのか、
主人公の価値観と、この世界の考え方は一致しているのか・・・・いろいろ曖昧な事があり、
著者の頭の中では納得してるのかもしれないけど、読んでいる側には伝わって来ない。
また、こちらも詰めが甘くてブレがあり、登場人物達の行動や考え方が一貫した流れの中に無い為、
理解し難いも部分も多かった。
この辺を上手く書ければ面白いものになったと思うのだけど、描ききれておらず残念。

「このミス」は、新人に与えられるものだけど、
頭の中に描いた世界を、小説の中に上手く構築できていない、読者に伝えきれていないという、
新人らしい未熟さがすごく目立ってしまった作品な気がする。

ストーリーが起伏に飛んだ魅力的なものではない分、ディテールの粗さが致命的。

イマイチだったけど、面白い表現、おっ?っと思う描写もあったので、
もう少し経験を積めば、面白い作品を書く作家になるかもしれない。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。