SSブログ

「ザ・ロード」コーマック・マッカーシー著:終焉を迎えた世界の中、父と子は南を目指す・・・ [本:SF]


ザ・ロード

ザ・ロード

  • 作者: コーマック・マッカーシー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/06/17
  • メディア: ハードカバー
7.5点

2010年6月26日(土)から公開される映画「ザ・ロード」の原作。
文庫版「ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)」も出てます。

ブログ「Rudies的なつまみ喰い乱れ読み」さんで教えて頂きました。

植物は枯れ果て、生き物は死に絶え、どこまでも焼き尽くされ灰に覆われた世界が広がるなか、
冬の到来と寒さを避ける為、ひたすら南を目指す父と子。
毛布や少ない食料を入れたカートを押しつつ、
南へ南へと向かう親子に希望はあるのか・・。

設定自体は割と使い古された話で、目新しさは感じなかったけど、
この話の場合、「父と子」の視点のみで淡々と語られているのが特色。
そのせいか、近未来SF的な設定なのに、SF色はあまり感じず、文学の色が強い。
なのでジャンルをSFにするか悩んでしまいました。
SFの場合、変わった環境に人の気持ちがどう変化していくのか・・ってのも重要だと思うのだけど、
この作品の場合、環境はかわっても、父親が世界が終わる前の価値観を持ち続けている、
模索し続けているのが、SFらしさを感じない理由かも。

道中、人目を避けるように慎重に慎重に行動する親子。
何故なら、文明が無くなったこの世界では、暴力が世界を支配し、
多くのものは略奪と殺戮で生き延びていたから。
生きるために略奪するもの、暴力で人を支配するもの、
人としての尊厳すら失ってしまった者・・・
旅の途中で出会う生き残り人々の多くが、そうなってしまっている状態の中、
息子に「善き人、悪しき人がいる」と説く父親。
しかし、その父親ですら、二人が生き残る為に、
人を見殺しにしなければならない状況に何度も遭遇する。

飢え、寒さ、恐怖、そして絶望に覆われる生活の中、
そして生き抜く為に過酷な選択をしなければいけない状況が続く中、
交わされる父と子の会話は重く、厳しい。
しかし、互いを思いやる行動はどこまでも優しい。

淡々としたストーリー展開の中、人として生きる事とはどういう事なのか、
考えさせられる本になっている。

すごくいい話だと思う。
読んだ人の多くは感動すると思う。

でも、道尾秀介の「龍神の雨」の感想でも書いたけど、
いい話と好きな話は別なんだよね(^_^;)。
若い頃読んでたら、影響も大きかったろうし、好きになってたかもしれないけど、
既に擦れちゃった私。
読むのが遅かったというか・・。

私の個人の好みは別として、お勧めの本ではあります(^^)。








ちょっとネタバレ注意。







この作品のラストは、これでいいんだと思うし、作者が言いたかった事も
そこにあるのだろうけど、予定調和過ぎて私としてはもう一捻り欲しかった。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。