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「家」栗本薫著、「蟲」坂東眞砂子著:主婦の心理状態を描いた作品2作。作家によってかなり違うもんだなー [本:ホラー&ミステリー]

家 (角川ホラー文庫)

家 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 栗本 薫
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1993/12
  • メディア: 文庫
7点


蟲 (角川ホラー文庫)

蟲 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 坂東 真砂子
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1994/04
  • メディア: 文庫
5点

女性作家による、主婦の心理を中心に展開するホラー2作。

栗本薫の「家」は、郊外に長年の夢だった一軒家を手に入れた主婦規子の話。
憧れ続けた一軒家。そこで「普通の幸せな生活」を送る事が理想だった規子。
夢いっぱいで新居に引越したが、現実には、子供達は大学生と高校生。
既に自分の生活を持っている。
夫も、仕事が忙しく、家庭や自分を気にかけてくれない。
それでも、一軒家を手に入れた事に満足していた規子を、怪異現象が襲う。
勝手に点く電気やテレビ。昼間、誰もいないはずの家に感じる何者かの気配。
家は呪われているのか??怪異現象の理由は。

新居で頻繁に起きるポルターガイスト現象、金縛りの時に見た恐ろしい顔、
そんな現象に怯えつつも、新居に執着する規子。
自分の体験、怯えを家族の誰にも相談できない、規子の孤独。

家族の気持ちがバラバラなこと、親しい友人がいないこと、
様々な事に対し、理由をつけ自分を納得させる規子。
その理由が独りよがり過ぎずリアルな分、主婦の孤独を感じさせて怖い。
何だかんだと理由をつけ、自分を正当化し、問題に向きあおうとしないという部分もリアルだ。

栗本薫は、人間のそういう弱さとかずるさとか、エゴの部分を書かせると上手いと思うのだけど、
その辺がすごく生かされてる。
家で起きる怪奇現象より、規子の心理の方が怖いと思えるほどに。

怪奇現象と主人公の心理、それらが「家」という舞台の中で、複雑に絡み合う。
読み応えのあった一冊。

でも、主人公の規子の心理に共感できないと、きっと面白くないはず。
私も、学生時代とかに読んでたら、規子の心理はあまり理解できなかった気がする。
amazonの評価が真っ二つなのがわかる(^^;)。

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坂東眞砂子は「狗神」「死国」が映画化されているので、知っている人も多いのかな?

「蟲」も主人公は主婦。
妊娠して会社をやめた主人公めぐみ。
仕事を止め世間から取り残された感に悩み、苛立つめぐみ。

ある日、夫が仕事現場で拾ったという石を持ち帰ってくる。
「常世蟲」と掘られたそれ。
石が来てから、めぐみは、超常現象や幻聴・幻覚に悩まされるようになる。
そして、祖母がでてくる蟲送りの夢を頻繁にみるように。
その上、夫にも変化が。
夢は何かを警告しているのか?
そして常世蟲とは??

伝奇ホラーなのだけど、めぐみの不安定な心理、
それも怪奇現象に対する恐怖より、仕事をやめたことや、夫への不満などが中心になり、
常世蟲の怖さがでていない。

物語の中心をなすめぐみの心理と「蟲」がうまくリンクせず、
怖くなりそうで怖くならないまま、終わりを迎えてしまったというか。

読後、物足りなさ感が残った。
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コメント 4

ufavan

おお!!2冊とも読んでました♪(* ̄ω ̄)v
って言っても 蟲の方は、途中で投げ出した1冊でも有ります^^;
「蟲はどうした?!」って感じが・・・
なんか 日常の不満をダラダラ~っと聞かされてる様な

家の方は 「何かに執着し狂って行く自分」が怖いです
寂しいと死んじゃうのは、人間の方かも知れません

家の中でふと 孤独を感じた事が有る人は
分かる 怖さかもしれませんね^^
by ufavan (2010-07-08 08:03) 

choko

ufavanさん

そうそう「蟲」は、メインが蟲じゃないんですよね~(^^;)。
主人公の不安が狂気まで高まるとか、
「蟲」にまつわる怖さがもっとあるとか、
もう何個かエッセンスが欲しかった感じで終わっちゃいましたよね。

家は、この狂っていく過程を、うまく表現してあるのが
秀逸だなーと感心して読みました。
主人公の視野の狭さ、価値観の固定化って、
専業主婦を長くやっていると、陥る可能性が高いんですよね~。
私も専業主婦が長いので、ちと怖くもありました。



by choko (2010-07-08 09:46) 

コステロ

私もこの二冊、読んでました。

『蟲』の方はあまり憶えてないですね。
「死国」が結構面白かったので、期待していた分、スカを喰らった感が…。


『家』の方は、規子の価値観や思考に全く共感できなかったので
ラストにてのどんでん返しで、快哉を挙げたくなりました(笑

ただ「あれ?怪奇現象とか思わせぶりなホームレスとか
その辺は結局どーなったの?」とは思いました。
私としてはホラーと言うよりも
ブラックコメディ的なホームドラマとしての印象が強いです。
by コステロ (2010-07-09 12:04) 

choko

コステロさん

あっ、「死国」は面白いんですね。
「蟲」がいまいちだったので、どうかなーと思ってたんですよ。

「家」の方は、前半くらいに何となくオチが想像ついて
あたっちゃったんですが、でも規子の精神状態の描写が
よくて、かなり面白く読めました。
規子の心理は男性には、全く共感できないですよね~(^^;)。
でも、この手の打算的な考えや、こじつけ的な前向き心理って、
ここまで極端じゃなくても、子育て一段落ぐらいの
女性では、考えた事ある人も多いんじゃないかと思います。

ブックオフで買ったり、本棚に埋もれてた本を発掘して読んでるので、
読んでる方多いですね(^^;)。
発行年月日かなり古くて、自分でもびっくりです。
by choko (2010-07-09 21:05) 

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