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「終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ:木村 元彦著 世界は公平ではない・・・・ [本:歴史]


終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ (集英社新書)

終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ (集英社新書)

  • 作者: 木村 元彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/06/17
  • メディア: 新書

7.5点

NATOが介入し、一応一段落したように見えたユーゴ紛争。
しかし、悲劇は終わっていなかった。
当時、セルビア人による民族浄化が大々的に報道され、悪役となったセルビア。
私も、このニュースはよく覚えている。
しかし、逆の事も行われていた。
アルバニア人によるセルビア人の虐殺。
NATO介入後も、セルビア人、アルバニア人両方で誘拐され殺害された民間人は多数。
家を奪われ、追い出されたセルビア人も多数。
しかし、マスコミはセルビア人の悲劇に関しては口を閉ざしていた。
セルビア人の子供が、アルバニア人のテロに無差別に殺されても、ほとんど報道されず、
逆にアルバニア人の子供が被害にあえば、セルビアの非道さを宣伝するように世界的に報道される。
昔、敗戦後のドイツや日本の民間人が殺されたりしたことが、何年も埋れていたように、
敗戦したセルビア人は故郷を終われ、家族を殺され、家を略奪されても、誰も注目しないし、助けてくれない。
悪者とされ敗戦した国の人々に国際社会は冷たい。
現地に入っている平和維持軍ですら、追われるセルビアの民間人には救いの手を差し伸べない。
ルワンダで、虐殺されたツチ族に、手を差し伸べなかったように・・・。

また、イラクでも見られる、欧米諸国の介入が、内紛を起こし悪化させた状態が、ユーゴでも起きていた。
当時、欧米で、NATOによる介入に異を唱えた人は、民族浄化を独裁政権を擁護していると
各方面からかなりのバッシングを受けたという。
表面だけのマスコミの報道を信じる大衆の怖さも、ここにはある。

著者は、アルバニア、セルビア、どちらにも偏らないことを意図し取材をしている。
そこから見えてくるのは、被害者側と報道されているアルバニア人だけでなく、
セルビア人も、同じような悲劇に見まわれている事、
国際社会の介入がより状況を悪化させている可能性が高い事・・・・etc。

ユーゴ紛争に関しては、
宮嶋茂樹の「不肖・宮嶋空爆されたらサヨウナラ―戦場コソボ、決死の撮影記 (祥伝社黄金文庫)」と
サラエボ旅行案内―史上初の戦場都市ガイド」ぐらいしか読んでおらず、
今回、この本を読んでも、状況が複雑過ぎて、自分の勉強不足を感じる結果になってしまった。

きっと、ユーゴ紛争を知るには、ユーゴスラビアができた経過、チトー大統領の業績など、
紛争前の状態から、ちゃんと追わないとダメなのだろう。
ちなみに、宮嶋茂樹の「空爆されたらサヨウナラ」も「サラエボ旅行案内」も面白いです。
「サラエボ旅行案内」は、セルビア側に包囲され孤立し、
銃弾飛び交う戦場都市となったサラエボで暮らした著者による、戦場都市サバイバルガイドである。
過酷な生活を、ユーモア溢れる筆で表現している一冊。
絶版なのが残念。

この本の前半のメインになっているコソボ紛争は、セルビア領ではあるがアルバニア系住民が増えたコソボで、
独立運動がおき、それを弾圧したセルビア側に対し、NATOが攻撃をしかけた・・・というもの。

コソボは、古い歴史がある場所で、宮嶋茂樹による上手い例えに、
「京都に他の国の人間がどんどん増え、ある時独立する」と言い出したようなものというのがある。
アルバニア人が多く、アルバニアとも近い為、独立気運が高かったが、
セルビア人にとっても大切な場所であるのだ。
コソボでは、少数派のセルビア人の方が立場上有利であり、その結果裕福、
多数派のアルバニア人は不満を持っていたとも言う。
それが独立気運の高まりにつながったのか??

独立気運の高まりが、隣国アルバニアの影響も大きかったのも事態を悪化させている。
ユーゴより貧しいアルバニアからの移民が、NATO介入後、元々住んでいたセルビア人を追い出し、
財産を略奪している。
追い出されたセルビア人は、食べるものも無い(国際社会はここでも冷たい)難民キャンプに
閉じ込められている。
元々ユーゴに住み、セルビア人と共に暮らしていたアルバニア人ではなく、
外部から入った民族主義組織がセルビアの行った民族浄化と同じようなことをしている。
繰り返される負の連鎖。
NATOが、セルビア政府を倒すため支持した組織は、麻薬密売にも手を染めており、
旧ユーゴではNATO介入後、麻薬が蔓延しだす。
警察の役割を、その組織が担うようになった為、取り締まりが無いも同然になったからだ。

NATOの介入は、欧米では日本のような立場のドイツが自国主導の軍事介入の前例を作る為に
(アジアで日本が軍事行使しようとするのと同じような反発が欧米ではドイツに対してあった)
勇み足で行ったと宮嶋茂樹は書いていた記憶が。

誰が悪いのか?どうすれば良かったのか?今のユーゴはどうなっているのか?

うーん、あまり良く知らないせいで、雑多な情報が頭の中でまとまらず、
ちゃんと整理ができません。
勘違いしてる部分、ちゃんと消化できてない部分が、いっぱいある気がします。
もう少しユーゴ紛争に関しては読んでみようと思います。
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rudies

変な話しですが
南ア杯ワールドカップを観ていて、
改めて世界の国の歴史、現状なりに
興味が沸きました。
興味が沸くっていうのは語弊がありますね。
すみません。

前日本代表のオシム監督は
ユーゴスラビア出身でもあり
著者の木村元彦氏は
サッカーのライターもされていて
オシム氏の本も出されていますね。

この本は読んでいないので
早速チェックしてみます。(^_^)b
by rudies (2010-08-03 11:41) 

choko

rudiesさん

いえいえ、私も、ものすごく平和ボケした頭の時に読んだある本で、
世界って、まだまだ紛争地帯がいっぱいあるんだと知り、
同じく「興味が沸いて」、その後いろいろ読んでます(^^;)。
まずは、興味を持つってのが重要じゃないかなーと。

知ったからって、何が出来るわけじゃないけど、
それでも、知ったからこそ考えられる事って多いですし。

国家間の思惑が絡んでくると、物事って本当に難しくなる、
結局犠牲になるのは民間人なんだなーというのがこの本を読むと
よくわかります。

by choko (2010-08-03 14:02) 

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