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「庵堂三兄弟の聖職」真藤 順丈著:遺体から「物」を造り出す「遺工」の三兄弟の話。いいっ!! [本:ホラー&ミステリー]


庵堂三兄弟の聖職 (角川ホラー文庫)

庵堂三兄弟の聖職 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 真藤 順丈
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/08/25
  • メディア: 文庫
7.8点

遺体の皮を剥ぎ、骨を削り、脂肪を集め、ブックカバー、箸、茶こし、石鹸・・・
いろいろな物を造り出す職業「遺工」。
父親の跡を次ぎ、死体に話しかけながら「遺工」の仕事をする長男正太郎。
長男の仕事を手伝う粗野で汚言症の三男毅巳。
「遺工」の仕事を嫌い、家を離れサラリーマンとなった次男久就。
次男久就が、帰省し、久々に3兄弟が揃った。
そこに舞い込んできた、困難な依頼とは??

「遺工」の仕事は、墓場から死体を盗み出し(2件の殺人も犯している)、
人間の皮や骨で、ランプシェードやチョッキ、食器を作ったりしたエド・ゲインを思い出す。
エド・ゲインの行ったことは犯罪だが、この作品の「遺工」は、
死んだ家族をいつまでも身近に感じていたいというような遺族の依頼を受けて行われる、
れっきとした「仕事」である。

この本のメインは「遺工」の仕事風景。
腑分けをし、皮を剥ぎ、肉を溶かし、骨を削り、脂を集め・・・そのような人体加工の過程が、
延々と描かれている。

伊藤計劃がいう「世界観読み」には、すごく面白い内容。
でもストーリーが大きく盛り上がることはないので、グイグイ引きこむようなストーリーを期待すると、
がっかりするかも。

また、殺し屋専門の料理店を舞台に、そこに来る頭のネジが何本かはじけ飛んだような
個性的な殺し屋達、スプラッタ描写をメインに描きつつ、
その中に悲哀や愛をうまく埋め込んだ平山夢明の「ダイナー」と同じように、
メインの描写は死体解体・加工なのにも関わらず、根底には3兄弟のつながりの強さ、
家族愛のようなものが垣間見え、読後切ない気持ちが残る作品ともなっている。

解説が平山夢明なのも納得。

ちょっと異色なホラーティスト作品。
個人的にはすごく好きです(^^)。

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