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「熱帯夜」曽根圭介著:「サスペンス」「ディストピア」「ゾンビ」、相変わらず面白い!! [本:ホラー&ミステリー]


熱帯夜 (角川ホラー文庫)

熱帯夜 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 曽根 圭介
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/10/23
  • メディア: 文庫
8点

短編集「」(リンク先感想)のクオリティがとても高かった曽根圭介の短篇集。

「熱帯夜」、「あげくの果て」、「最後の言い訳」の3つの短編が収録されてます。

「熱帯夜」は、借金取りに脅される夫婦のトラブルに巻き込まれてしまった男の話。
サスペンスタッチで、グロテスクな描写もあるが、話自体はきれいにまとまってる作品。

「あげくの果て」は、近未来の日本社会を描いたディストピアもの。
失業率は上がり、多くの人が貧困に喘ぎ、高齢者の医療費が問題になっている、そんな日本社会。
老人達を保護しようとする組織「銀」と、
自分達の未来の為、そしてこんな社会を創り上げた老人達を排斥しようとする若者集団「青」の抗争。
そんなすさんだ社会の中、家族思いの優しい男は、家族の為、自分を救ってくれた仲間を裏切り、
真面目で努力家の少年は、未来への閉塞感から、自暴自棄になる。
破綻した社会が、善良で真面目な普通の人々の意識を犯していく様が、リアルで怖い。
また、家族の為にやったことが、ボタンの掛け違いのようにずれ、
負のスパイラルを産み出していく皮肉な展開が胸をうつ。
日本の未来、本当にこうなってしまいそうな、そんな怖い話。

「最後の言い訳」は、蘇生者と呼ばれる生き返った人々がいる社会の話。
何も食べなくてよく、肌色がグレーがかった以外は、生前と変わらないと思われていた蘇生者達。
しかし、蘇生者達には、裏の一面もあった・・・。
ゾンビ物ですが、両親を蘇生者に食い殺された主人公の視点で語られる話が面白く、
よくあるゾンビ物となっていないのがいい!
甘酸っぱい切なさと、ブラックユーモアの効いた作品。

ということで、「鼻」同様、3作とも完成度の高い作品になってました。

特に「あげくの果て」と「最後の言い訳」は、人間の優しさ、弱さ、脆さ、無力さ、醜悪さ
などがうまく描かれていて、読後あとを引きます。

とてもとてもお勧めV(≧∇≦)V!
「鼻」を読んでいない人は、そちらもお勧め!!!

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コメント 2

rudies

この本の単行本が図書館にあったので
明日、借りてきますっ!!(^_^)b
by rudies (2010-11-26 19:58) 

choko

rudiesさん

わー、借りましたか♪
曽根圭介の世界、楽しんで下さいね~(^-^)ノ。
rudiesさんなら、きっと気に入ると思います♪


by choko (2010-11-26 23:48) 

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