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「助けてと言えない-いま30代に何が」NHKクローズアップ現代取材班著:助けを求めない30代ホームレス達 [本ノンフィクションいろいろ]

助けてと言えない―いま30代に何が

助けてと言えない―いま30代に何が

  • 作者: NHKクローズアップ現代取材班
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/10
  • メディア: 単行本
7点

30代の青年が、貧困の中餓死した。
真面目で勤勉だった彼。
しかし、この不況の中、職が安定せず、借金が増え、そのせいで職すら失い、貧困の中に落ちて入った。
彼が最後にメモに残した一言は「たすけて」。
しかし、親友が近所に住み、連絡を取り合う兄もいた彼は、生きている間、その言葉を発しなかった。

その事件を調べ始めたNHKの取材班は、助けを求めない30代ホームレス達の事を知る。

30代ホームレスに共通するのは、一見ホームレスであるとはわからないこと。
みな、身奇麗にしているし、ホームレスだと見られる事を極端に嫌がる。
ホームレスと悟られないよう注意して行動している。
そして、家族や友人に自分の現状を絶対に話さず、支援の手を差し伸べようとしても、頑なに拒絶する。
ホームレス支援をしている人の話によると、外で寝る為、
靴が独特の汚れ方をしているので判断できるという。

以前、何かの記事で30代のホームレスは、
「プライドが高く、見栄っ張り過ぎる為、家族や支援を頼ろうとしない」というのを読んだ。
上記の、30代ホームレスのイメージと重なる。

しかし、その内面は自分が思っていたのとはかなり違っていた。
私は、それらホームレスになった人々が、
「社会が悪いんだ、自分は犠牲者だ」との不満を抱えていると想像していた。

しかし、本書で語られる30代ホームレスの言葉は、正反対だった。
「自分が悪い、自分の努力が足りなかった。親にもこんな姿を見せられない」、
どの人も、自分を責めていた。

そこには、努力すれば報われた親世代を見て育ち、
就職氷河期に就職し、勝ち組負け組と言われる時代に生きた30代が、
親と同じように生きられなかった自分を恥じ、
困窮している現状を、時代ではなく、自分の努力不足として責めている姿があった。

20代の頃は、体力もありどうにかなった。
人に助けを求める事もできた。
しかし「30代になって人に助けを求めるのは・・・」という意識も、彼らを追い詰めている。
この辺の心理はすごくわかる。

また、彼らに「助けて」と言わせない社会にも、この本は言及している。

現在、「ニート」「ひきこもり」の問題の方が、30代~40代の問題としてピックアップされることが多い。
「ひきこもり」まで行かないが自立できず親に食べさせてもらい、
バイトなどのお金をお小遣いにしている30代~40代も多いと思う。
「いくつになっても親のすねをかじって」・・とこの生き方を見る世間の目は冷たい。

親が健在なのに、頼らずホームレスになってしまう30代の人達も、
そういう世間の目と同じ意識を持っているのかもしれない。

いまの社会、一人では自己責任を果たせない。
しかし、まだそれを認める風潮は弱い。
親に頼らず、一人で責任を負ってホームレス化する人がいる一方で、
親が裕福で、そのすねをかじって生きている、親が死んだあとどうするのだろう?と、
その先を心配してしまう人達、また親の資金が厳しくなり、働かない事を責められ、
その親に暴力を振るう人達が社会問題になっているからだろう。

真面目に働けばどうにかなった社会から、
真面目に働いても生活が立ち行かないワーキングプアが増えている社会への変化。
助け合いながら自己責任を果たす、それが普通と思える社会、
そんな社会に変化しないと、この先、どんどん厳しくなると思う。

でも、人々の意識が変化するには、まだまだ時間がかかりそうな気がする。
自分だって、何かあった時、助けて・・と言えない気がする。
面倒をかけたくないし、面倒をかけられたくない・・・そんな意識が根深くあるから・・・。
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コメント 5

コステロ

ん~、どうなんでしょうねぇ。

「自分の努力が足りなかった」と認め、自分を責める。
しかし、言い換えれば、「そこで努力するコトをやめてしまってもいる」わけですよね。

一方で親元に帰れば、当然「イチからのやり直し」を求められるわけで
それが面倒で全てを放擲している、とも取れるのではないか、と。

私は日本を離れて長いので良くは分かりませんが、
「不況で職がない」とはよく聞くその一方で
「少子化により人手が足りない」なんてハナシも聞きますし、
一度死んだ気になって、どんな辛い仕事でも、汚い仕事でもやってやる、
と言う気概が、一番欠けているものなのかもしれないな、と思ったりもします。
by コステロ (2011-02-09 11:23) 

choko

コステロさん

>一度死んだ気になって、どんな辛い仕事でも、汚い仕事でもやってやる、
>と言う気概が、一番欠けている
確かに、これが一般的な見解で、ホームレスまで追い詰められる人も、
持っている概念じゃないかと思います。
そして、これが助けを求められない理由にもなる。
必死にやってても、どうにもならないのは、
「自分の頑張りが足りないんだ」と。
ホームレスの人達も、きつい日雇いの仕事をしたり、
ハローワクに通ったりしているわけで、努力してないわけではないようです
(一度実家に戻ったけど、仕事が見つからず、家をでた人もいましたし)。

中には、努力を放棄している人もいると思いますが、
餓死した男性は、昼夜必死で働いたけど、
徐々に追い詰められ、不幸な結果を迎えたようです。

私は母子家庭で育ち、家に本気でお金が無かったので、
ほんのちょっとした突然の出費が、
生活を立ちゆかなくさせるのを、
徐々に生活を追い詰めていくのを、実感してます。

問題は、死ぬ気になって仕事をしても、収入は低く、安定せず、
先が全く見えない、勤務先の倒産、リストラ、病気など一つの躓きで、
立ち上がるのが難しくなるって事だと思います。

本の中にも、支援を得て就職した男性の話が載っていましたが、
生活は、赤貧、ギリギリのまま。

続きます
by choko (2011-02-09 17:36) 

choko

コステロさん(続き)
またきつい仕事って体を壊しやすく、それでより貧困に落ちる例が
アメリカには多いらしいですが、日本でもそうなんじゃないかなと。
この状態で、40代、50代になり体を壊したり、
より仕事が見つからなくなり、ホームレスになる人も多いようです。

必死に働いても生活も苦しい、将来も無い・・・その状態で自分が絶えられるか、
自分自身に置き換えてみても、できるか難しいです。

アフリカの工場の話で、真面目に仕事していれば昇給できる、
5年、10年後には安定した収入が得られる・・と希望がなければ、
頑張って働き続けるのは難しい・・・というのがありました。
仕事をするには、希望が必要だと。
日本には、その希望が無い職業が蔓延してる気がします。
10年、20年真面目に仕事をしていても、ある日突然解雇され路頭に迷う可能性が高い・・・
というのがいまの日本の現状で、本書でも、
いまは安定しているけど、明日は我が身との不安を持つ30代が
とても多い事が取り上げられていました。

この問題には、正規雇用が減った、給料の低下、少子化による景気の低迷、
仕事の海外流出、手に職では食べられない・・etc。
様々な要因が絡んでいる気がします。
by choko (2011-02-09 17:49) 

月きみ

はじめまして、これをみて、同じ世代が苦労している。私も同じです。病気しても無視される人、 渋谷をみると
寝られない町 寂しい町
なんか活気はあるが あてもなく、誰かを待つ人。 笛をふいて自分はここにいるよとアッピルする人
何のために自分が生きているか?答えが見つからない人達の辛い社会
私も苦しかった事 今は、やっと好きな人が出来ているけど 次の子供達の将来が心配です。テレビをずっと流して頂けますか?このテレビをみて自殺を留める人がでるから。放送をやめないでください。お願いします。
by 月きみ (2011-02-12 10:57) 

choko

月きみさん

コメントありがとうございます。
「助けてと言えない」の流れを組んでいると思われる、
「無縁社会」の新しいのと、再放送、ここ数日の間に放送されましたが、
見ましたか?
月きみさんがおっしゃる通り、この時代の閉塞感、孤立感は、
既に10代の若い人達へも影響しているようで、同じく心配です。

同じ境遇・心境の人が大勢いるというのがわかるだけでも、
気持ちの持ち方が変わりますよね。
月きみさんは、この番組で勇気づけられたのでしょうか?
放送を続けて欲しいという月きみさんの気持ち、NHKのサイトなどで、
番組スタッフに伝える手段があるような気がしますよ。
by choko (2011-02-12 22:38) 

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