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「土の文明史」デイビッド・モントゴメリー著:土が文明の寿命を決定する! [本ノンフィクションいろいろ]

土の文明史

土の文明史

  • 作者: デイビッド・モントゴメリー
  • 出版社/メーカー: 築地書館
  • 発売日: 2010/04/07
  • メディア: 単行本
7点

ジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」「銃・病原菌・鉄」(どちらもリンク先感想、
そしてどちらも傑作!)を読むと、農耕、木々の伐採、過放牧などにより土壌が侵食されるという事が、
文明崩壊の大きな要因の一つであることがわかる。

その「土」の部分だけに焦点を当てて論じた本。
植物を育てる肥沃な土壌。
その生成の過程や、気候、地形などによる特徴の違い、そして今、石油などの資源と同じように、
肥沃な土壌が使い果たされようとしていると、本書では警告する。

肥沃な土壌は、土壌生成と侵食の速度のバランスによるが1000年に数センチほどしか増えない。
その厚さは、場所によって差があるが30cm~50cm。
しかし、農耕により数十年で2~3センチの土壌が失われているという。
数センチ増えるのに1000年かかる肥沃な土壌を、数十年で無くしてしまう農業。

熱帯などだともっと薄いが、その上に落ち葉などの有機物で作られた層がある。
そして、熱帯の場合、この有機物で作られた層が流されてしまうと、その後土壌の再生が困難になる。

最初は、メソポタミア、ローマ帝国、ギリシャなどの文明の崩壊と、土壌侵食について述べられている。
人口が増え、農地が拡大し、土壌侵食が進み、河川は流れでた土壌によって浅くなり・・・、
土壌侵食が文明の崩壊に大きく影響を与えた事がよくわかる。
例外は、エジプト文明で、毎年ナイル川の氾濫によりもたらされる泥のおかげで、
7000年近くも農耕を続けていた。
しかし、それすらダムの建設によって失われたと書いてある。

酷い土壌侵食は、緑の森や平原を砂漠化する。

中世ヨーロッパでも、土壌侵食は激しく、アイスランドなどは薄い土壌が過放牧などにより、
ほとんど失われてしまったという。

そして、過去に文明を崩壊させる一因ともなった土壌侵食は、現代でもいろいろな所で行われている。
アマゾン川流域、ハイチ、ボリビア、西アフリカ、熱帯アジア、・・・・。

中盤は、アメリカの移民と、北米大陸の土壌消失の話がメイン。
土壌を保全したり、疲弊した土壌を回復するより新しく開拓した方がより利益をあげられる為、
どんどん消失していったアメリカの土壌。
大規模農業や、単一作物の栽培の弊害などについても語られている。
また、この「先を考えず、その時得られる最大の利益を確保しようとする」というアメリカ農民の姿は、
今のアメリカの企業の姿、強いてはグローバル企業の姿とも重なる。

著者も書いているが、昔、人はその文明を捨て別の地に行くことができたが、
地球規模で行われている土壌消失による文明の崩壊は、逃げ場が無い。

また、ジャレド・ダイアモンドは、人口と食糧の問題について、科学の発達により・・・と楽観的であったが、
この本の著者は、食糧が増えれば人口も増え、飢餓は無くならないと示唆している。
私も、その点についてはこの本の著者と同意見だ。

小さな島で、豚を食べる事をやめ、果物を育て土壌を守った人々の話は、ジャレド・ダイアモンドの本でも
取り上げられていたが、この島の人々が厳密な人口調整(増やさない)を行っていた事は、
この本で初めて知った。
今、日本も少子高齢化の問題が取り沙汰されているが、人口が増える事で発展する経済モデルを
切り替える時期に来ているのかもしれない。
また、豚の島で、思い切った政策がとれたのは、そこがお互いの顔をみな知っているような
小さな集団だったからだともなっている。

広がる大規模農場。
大規模農業の問題点として、経営者が現場を、農地を見ないということがあげられていた。
大規模農場だけでなく、貧困による無差別な畑の開拓も、また土壌を消失させる。
そして、広大な森林が失われている。
土壌問題は、世界規模で考えなければいけない環境問題であるが。
世界各国の足並みを揃えるのは、人が火星に移住するより難しい気もする。
緑豊かな島が、人が移り住んだ事により木の無い島になり、船も作れず、
島から脱出できなかった人達は死に絶えた・・・と言われている、イースター島。
地球が巨大なイースター島になってしまいそうで、怖いと思えた本。
ジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」「銃・病原菌・鉄」を読んでから、読むのがお勧め!

そういえば、アメリカの土壌の話で、1990年代頃、肥料会社が産業廃棄物を、
肥料に混ぜ込んで売っていたという話があってびっくりした。
重金属を含む肥料を、農民たちに売っていたんだとか。
それも大手が何社も。
理由は、産業廃棄物を処理するコストが浮くから・・・。
恐ろし~(-"-;A。

こういうむちゃくちゃは中国の話としてよく聞くけど、アメリカ企業も、
国内で健康被害が出たとして禁止されてる事を、それを取り締まる法律が無い国でやってたりする
(それがかなりの大企業だったりする)。
日本企業も知らないだけで、そういう事あるのかな?
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