SSブログ

「食べる西洋美術史」(「最後の晩餐」から読む)宮下 規久朗著:「食とキリスト教」という面白い視点からの考察 [本:歴史]

食べる西洋美術史  「最後の晩餐」から読む (光文社新書)

食べる西洋美術史 「最後の晩餐」から読む (光文社新書)

  • 作者: 宮下 規久朗
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/01/17
  • メディア: 新書

7.5点

中世ヨーロッパの宗教画・風俗画・静物画などの絵画を中心に、
アンディ・ウォーホール他現代美術にまで、絵画における「食」の取り扱いの変化と、
キリスト教との関連を追っている本。

食べ物や食事の風景か絵画のテーマに取上げられているのは、圧倒的に西洋美術が多いという。
日本をはじめ、他の文化ではあまり見られないらしい。
その理由を、キリスト教が、パンをキリストの肉、ワインをキリストの血として、
「食という物を重要な位置に置いたからだ」という視点から考察している本。

日本の昔の絵には、食に関する絵が少なかったかな?とちょっと思ったりしたんだけど
(確認していない)、キリスト教と食の関係という視点は面白いと思った。

言われて見れば、仏教がイスラム教、ヒンズー教が食べてはいけないものを指定しているのに比べ、
キリスト教は飽食を否定してはいるが、禁忌な食べ物というのは存在しない。
また、この本によると、聖書の一節には、「食べ物を食べて幸福になるという事」
(本来は、現世の快楽に身をゆだねてはいけない)を赦している文章もあるらしい。

中世オランダの風俗画・静物画で、食べ物の絵が多いのは、当時の飢えと隣合わせの食生活から、
強く人々が思っていた「美味しい物を食べたい」という憧れからで、
その為か、本当に日常食べられていた野菜などの絵は少ないという。
またオランダでの、宗教画と風俗画や静物画が同居している絵から、
徐々に風俗画や静物画が独立していく過程が面白い。

スペインでは、カトリック信仰が強く絶対王政の元、市民社会の発達がなかった為、
宗教画的な影響が色濃く残り、純粋に静物画に見えるものですら、
神聖な雰囲気を醸し出すものとなっていると著者はいう。

人が物を食べている絵、市場の風景、食べ物などの静物画・・・
普通だったら気にもとめない題材だけど、それらが16世紀以降のもので、
それが最初に描かれた頃の時代背景や、その後の美術史への影響・発展を知ると、
新たなる観点で西洋絵画が楽しめる。

絵画の解釈はいろいろあり、諸説入り乱れているけど、
キリスト教の影響下での「食」をテーマにした西洋美術史考察という著者の視点が新鮮で、
面白く読めた。
お勧め(^-^)ノ。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。