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「鉄鼠の檻」京極夏彦著:物語の中で語られる「禅」が面白い♪ [本:ホラー&ミステリー]

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/01/05
  • メディア: 新書
7.8点

文庫版「文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)」他、
1冊を薄くして何冊かに分けた、分冊文庫版(4巻まである)も出てます。

箱根の禅寺「明慧寺」に、取材に訪れた関口・敦子など取材陣一行。
滞在先の旅館で、「姑獲鳥の夏」に登場した医師久遠寺や、
「明慧寺」の僧と取引きをする為やってきた古物商の今川などと出会う。
そして、雪に覆われた旅館の庭に、突然座った姿の修行僧の屍が出現。
周囲には足あとも無く、死体は何も無い空間から現れたように存在した・・・・。
それは、発端に過ぎなかった。
「禅寺」という一般社会と隔絶された世界は、関口らを飲み込んでいく。
そして、その禅寺の周辺を徘徊する赤い振袖の童女・・・。
禅寺という異世界の中で、京極堂は絡まりあった謎をとけるのか???

舞台は禅寺。
禅のうんちくが「これでもかっ!!!」というぐらい読めます。

旅館での懐かしい再開、新しい出会い、そして死体の発見、死体出現の謎解き・・・と
話が進んでいくんだけど、様々な情報が次々と羅列される序盤が長く、たるくてしょうがなかった(^^;)。
展開が「面白い!!」と感じられたのは300p過ぎ・・・。
この本、新書で2段組なので、文庫だったら1冊分読み終わってるぐらいの量。
(ちなみに新書版は826p、文庫版は1376p)

ただ「面白い!」と感じてからは、グイグイと引っ張られるように続きを読めて大満足♪
よく序盤で投げずに読み続けたと、自分を褒めたい(爆)。

「禅」や「禅寺」に関しては、以前読んだお坊さんの生活に関する
コミックエッセイ「坊主DAYS」(リンク先感想)で、禅の修行の話や、禅、公案に関して
ある程度の知識を持っていたので、イメージしやすくて助かった(「坊主DAYS」は臨済宗)。
「坊主DAYS」では具体例が出されていなかった公案が、小説内で展開されてて、
「なるほど~こんな感じなのか」とわかったのも良かった。
ちなみに「坊主DAYS2 お寺とみんなの毎日」も出てますが、
1冊目の方が坊さんトリビア要素が満載で面白かった。

また、タイミングよく「図解 ブッダの教え」を読み終えた直後で、
仏教の悟りとか、考え方とかの概略について読んだばかりだったのも、
禅や悟りに関しての話をより興味深く、楽しんで読めた理由か?
でも、「禅」VS「陰陽道」に関しては、面白かったという意見が多いようなので、
そういう背景が無くても楽しめるのかも。

この「鉄鼠の檻」で面白かったのは、元々修行が厳しく閉鎖的な要素を持つ「禅寺」、
それも檀家も無く、世間から忘れ去られ、法ではなく禅の規律に沿って運営されている、
超孤立した禅寺の中が異世界のように描かれている事。
そこで修行をしている僧たちもまた、別の価値観を持った異世界の人のよう。

それと、登場人物から受ける印象の変化。
次々と事件が起きる中、最初持ってたイメージがガラリと変わっていく人もいて、
その変化を違和感無く読者に受け入れさせてしまう部分に、著者の上手さを感じた。
人間の表面に見えている部分と、内面との差、表面も内面も大きな差は無いが、
見る視点を変えるだけで、全く変わってしまう人への印象、自問自答することや、
体験した事で大きく変化する内面や考え方・・・・
そういう要素がいろいろな部分に散りばめられているのも、また面白かった。

難点を言えば、誰が犯人かとか、トリックがどうとかにはあまり興味が持てず、
面白かったのは、禅問答や、上記2点に関してだったこと(ミステリーとしてはどうか?って感じで)

京極堂シリーズは、「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「狂骨の夢」(リンク先感想)、
そしてこの「鉄鼠の檻」と、4冊読んだわけだけど、「魍魎の匣」に続くヒットでしたV(≧∇≦)V。

「姑獲鳥の夏」と、登場人物が一部重なっているので、「姑獲鳥の夏」を読んでからの方が、
より楽しめると思います。

お薦め(^-^)ノ!

※おまけ
図解 ブッダの教え (歴史がおもしろいシリーズ!)」は、「聖☆おにいさん」(リンク先感想)を読んでいて、キリスト教絡みのエピソードはわかるものが多いのに、
仏教系のエピソードは知らないことも多かった為読みました。
漫画をより楽しむ為に読んだ本が、こんなところでも役に立つとは思わなかった(^^;)。

内容は、ギッチリ・ミッチリ・教科書的で、仏教の教え、仏陀の人生、仏陀の弟子達、仏教の種類・・・と、
仏教に関する事がいーーーーーっぱい書いてあります。
でも、簡単な説明が多いので、ちょっと疑問に思った事への解が無かったり、
知識の羅列が続くので消化しきれなかった部分も。
仏教の基礎知識をザッと仕入れるには良い本だとは思ったけど。

そういえば、「聖☆おにいさん」の作者中村光は、産休に入ったそうですね。
おめでたい事だけど、早く復活して欲しいな~!
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