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「人類が消えた世界」アラン・ワイズマン著:突然人類が消えた世界を多方面から検証! [本ノンフィクションいろいろ]

人類が消えた世界

人類が消えた世界

  • 作者: アラン・ワイズマン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/05/09
  • メディア: 単行本
8点

文庫版「人類が消えた世界 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)」も出てます。


人類がある時突然地球上から消滅したら、地球の、都市の姿はどう変貌するのか。
それを綿密にシミュレーションした本。

映画などで、倒壊したビル、荒れ果てた街・・・・荒廃してしまった近未来世界の姿を見る事は多い。

本書では、人が消えて放置された状態の田舎の一軒家が、風雨やカビ、
そして自然に侵食されて崩れていく様が目に浮かんでくるほど詳細に描写されている。

またニューヨークを例にして、高層ビルが、巨大な橋が崩壊する過程を、描き出す。
ポンプで水を汲み上げ維持しているニューヨークの地下鉄は人類が消えて数日で、
水に浸かってしまうという。

人間が作った建物で、最後まで残るのは近代文明の跡ではなく、
昔からある頑強な石造りの建物やカッパドキアなど地下にあるものだという。

それだけではなく、人類が消えた後、どのような樹木や動物達が繁栄するか、
人類がもたらした外来種の影響までも含め考察している。

また、紛争で打ち捨てられたキプロス島にあるあるリゾート地の様子から、
人がいなくなった街がほんの数年で廃墟になってしまう実例を紹介している。

著者は、現在のアフリカの生物の多様性に注目し、草食動物が草を食み、そこに木々が育つ、
育った木々を象がなぎ倒し、また草原になる・・ということに着目し、
移動する動物達が自然に与える影響が、環境の多様性を生み出し、
動物も多様になっていると考察する。
そして、動物だけでなく、マサイ族の放牧が、草食動物と同じ役割を果たしていると、
人間が自然と共存する姿も取上げている。
しかし、最近は政府の方針からマサイ族の定住化が進み、
象も己の安全のために移動範囲が狭まっているということから、その事の影響を心配してもいる。

農地は、人間が育てていた作物が数年で駆逐され、それでも尚、
そこで育てられていた作物の影響(土壌の性質が変化しているので)が何年も残るという。
犬は、ほとんど生き残れないが、猫は生き残るであろうという事も考察されていたりする。

人間が残した負の遺産、大気汚染や重金属の土壌汚染の影響がどれだけ先まで
(数千年から数億年・・・)残るか、また放置された原子力発電所や放射性廃棄物が
どのようなことになるかまでも、考察している。

この本の面白いところは、未来にだけ目を向けるのではなく、過去を振り返り、
人間がどれだけ自然に影響を与えてきたのかまで考察しているところである。

アメリカ大陸は、アフリカ大陸ほど動物の種類が多くない。
それはアフリカ大陸が人類の進化と動物の進化が同時に行われたのに比べ、
アメリカ大陸では、進化がある程度進んだ後、武器を持った人間が入って来たため、
多くの動物が絶滅させられてしまったのではないか・・という説を、
今までの人間が絶滅させた数々の動物達の例をあげ、説明している。

人間が一緒に連れて行った動物が、土着の生き物を絶滅させてしまった例や、
自然の姿が、人が木々を切り払い、耕作することにより、大きく変化した事なども述べられている。

しかし、人間が消えた後、自然は、いろいろな過程を経て本来の姿へと戻っていくという。
海もまた人類が消えた後、姿を変えるだろう。

またマヤ文明の崩壊の例をあげ、人類の未来をも考察している。
人類の未来の考察ではジャレド・ダイヤモンドの「文明崩壊」が詳しいが、
「文明崩壊」が楽観的未来感だったのに比べ、この著者の場合は、どちらかというと悲観的に思える。

子供を産むのを全人類がやめず、このまま増え続ければ、そう遠くない未来に地球は
人類を養いきれなくなるという説などが紹介されている。

この本は、作者の推測ではなく、それぞれの専門家にインタビューした内容が載っているので、
どの項目も詳細に説明されている点でも興味深く面白く読める。

壮大な仮説ではあるけど人類が消えた後の世界の綿密なシミュレーションや、
今まで人類が地球に与えた影響、そして今の状態から予想される未来の姿などを、
各専門家の意見を元に総合的にまとめた本。
お勧め!

読んだのが3年くらい前なんだけど、最近またちょっと読み返したので、
感想書いて放置してたのをサルベージ(^^;)。
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