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「サはサイエンスのサ」鹿野司著:クローン、iPS細胞、科学と宗教・・新たな視点を提示してくれる科学エッセイ! [本ノンフィクションいろいろ]

サはサイエンスのサ

サはサイエンスのサ

  • 作者: 鹿野 司
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/01/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.5点

サイエンスライター鹿野司氏による、科学エッセイ。
2011年星雲賞ノンフィクション賞受賞。
科学的視点から見ると・・、科学というものは・・・いろいろな事例をあげながら、
著者が世の中のいろいろな現象をどう見ているか語ってくれる本。

一章は「カラダを変えるサイエンス」。
ヒトゲノムの解析で、DNAの98%はタンパク質生成を行なっていない、
使われているのはたった2%、98%はジャンクという発表があったのを覚えている人は多いと思う。
それが2004年の事だという。
ところが10年も経たずに、ゲノムの7割はRNAに転写され活動しているらしいという
結果がでているという。
「遺伝子という言葉は死語になった」などの章では、遺伝子の概念が大きく変わりつつある事が
述べられている。
小学校の頃習ったことならともかく、数年で、新説が覆されてしまう科学。
またクローンの可能性や倫理観、iPS細胞、インフルエンザ騒動や予防に関する誤解などに
関しての著者の見解も面白かった。

二章は「ココロを変えるサイエンス」。
自然自然というけれど、身近に人間が全く関わっていない本当の自然なんて無いうそ臭いと、
化学調味料をちょっとだけ使ってもケガレテル、無農薬ならカラダに悪くても良いという風潮を、
食物では無く思想を食べてると、言い切る著者。
自然はよい、自然に帰るなどの、自然への甘美なノスタルジーの幻想を、
その幻想を打ち砕くナウシカ漫画版を引き合いに出して、
●●万歳主義、教条主義に陥らない事の大切さを説いている。
またコミニュケーション障害の問題をエヴァを例に語ったり、宗教と科学の共通点とか
(同じものって意味ではなく)、キリスト教徒仏教の立ち位置の違い、
開祖あり・無し宗教、自閉症のものの見方、チンパンジーと人間、などの話も面白かった。

三章は「セカイを変えるサイエンス」
ヨーロッパの「装甲としての法」と、日本の「拘束具としての法」という視点はかなり面白かった。
また人間の認知というのがいかに曖昧なもの、いい加減なものであるかを、
コンピューターに「猫」を教えられないという例をあげて語っている。
その流れから人工知能とか、今まで無視されてきた周囲の環境が勝手にやってくれる情報処理や、
人間の認知が曖昧だからこそできることなどについて、著者の考えが述べられていて、
これまた興味深い。

四章は「ミライを変えるサイエンス」
最初に深海にはクラゲが大量にいるということが、近年やっと発見されたという事から、
事象の盲点、そこにあるのに見ようとしなかった真実について触れられている。
他に「はやぶさ」が低予算だからこそ、様々なトラブルを乗りきれた事や、
テレパシーマシン・ドリームマシンの実現の可能性などについて、近年の研究結果などから、
推測している。
地球温暖化についての考察も。

科学的視点を混じえながら、宗教や経済、コミニュケーション、環境問題・・・
と様々な話題を扱っている本。
啓蒙本ではあるけど、著者が巻末で書いている通り、上から目線を避け、
「こんな面白い見方もできるんだよ」と語ってくれているような本で、読んでいて、
新しい発見があるし、著者の意見に賛同するしないに関わらず、いろいろ考えさせられる本。

この本を読んだきっかけは、ネットで読んだ彼のインタビュー
”今のマスコミのスタイルは、自分の直感と違うと「バーカーバーカ」の視点で語る、
著者のスタンスは、「人は説得できないと思っているので、
自分の考えはこうだよって並べるだけ・・」”
というのに、共感を覚えたから。
「バーカバーカ」の姿勢ってマスコミだけじゃなく、ネットなどでも蔓延してると思う。
物事って立場や人、状況によっていろいろな見方ができると思うんだけど、
「自分が正しい!それがわからないのはバカ」みたいな意見を読むとどうしても拒否しちゃう。
他人を落として、自分は偉い・正しい的な視点ってみっともないと思うんだけど・・。
「自分はこう思ってる・こうしてる」って書いてくれれば、面白い意見なのに、
相反する意見を頭から否定して見下してるのを読むと、
「そんなの周囲の評価が気になるのかな?」「短絡的な視野だな~」と残念に思ってしまう。
ビートたけしの「下世話の作法」の感想でも書いたけど、相手の意見に納得したり、
興味を持てるかってのは、相手に対する評価で大きく違ってくるので特に。
世の中、立場が違えば考え方も違ってくるし、どんな状況でも合う「正解」というものは、
無いと思うし。
もちろん、他を否定して言い切るのは、物事を強く推し進めたりする時に必要なケースもあるし、
問題提起をし、叩かれるのや議論も覚悟で言い切るのはありな場合もあるけど。

とにかく、インタビュー記事がきっかけで読んだこの本、「面白い事を伝えたい」って著者の
考えが伝わってきて、かなり楽しく読めました(^^)。
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