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「世界の「独裁国家」がよくわかる本」橋本五郎監修:独裁は悪い事ばかりではないが、恐ろしいほどの悲劇を生み出すことも [本:歴史]

世界の「独裁国家」がよくわかる本 (PHP文庫)

世界の「独裁国家」がよくわかる本 (PHP文庫)

  • 作者: グループSKIT
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2010/02/01
  • メディア: 文庫
7.5点

現存する独裁国家、過去に独裁国家であった国、そういう国を社会、政治、経済、文化、国民、
いろいろな面に言及しつつ、紹介した本。

第一章は、現在も独裁国家である国。

アジアでは、北朝鮮、中国、ベトナム、ミャンマー、シンガポール、ラオス、サウジアラビア、
シリア、オマーン、カタールなど。
「北朝鮮」は、金正日が亡くなり、この後どうなるか注目されている。
独裁体制が崩れるかは、中国がどう動くかって気がするけど。
ゴミ捨て禁止、チューインガム持ち込み禁止などの法律が超厳しい「シンガポール」も、
直接選挙による大統領制ではあるが基本的には一党支配。
しかし、独裁制だからこそ、経済が発展した側面も。

「ベトナム」も一党支配による独裁政権だが、対応は柔軟。
ベトナム戦争の話を読むと、ホーおじさん(ホー・チ・ミン)は、素晴らしい人な印象を受けるのだけど、
社会主義国家ならではで、悪い情報が出てこない為、完全にそうなのかは不明(調べてないのもある)。

「サウジアラビア」は、王族による支配。
イスラム教の聖地があるせいもあり、戒律は厳しく、外国人に対しても厳しい。
石油資源のおかげで、経済・国内情勢は比較的安定←鎖国状態に近いので詳細は不明。
親米政権なので、エジプトやリビアのように、急激な崩壊は無い??

「シリア」は「ジャスミン革命」の影響で国内で内乱が置き、先が見えない状態。

「カタール」は、絶対君主による首長制。
国民の大半が公務員、5年勤めれば生涯の給料保障と、大学を卒業すれば土地が貰え、
教育・医療無料と、豊富なオイルマネーで、世界で一番裕福で贅沢な国とも言われている。

欧州・中央アジアの独裁国家は「リヒテンシュタイン」「ベラルーシ」「トルクメニスタン」「ウズベキスタン」
「カザフスタン」「タジキスタン」「アゼルバイジャン」など。
「リヒテンシュタイン」を除くと、旧ソ連諸国が目立つ。

「リヒテンシュタイン」は人口3万人ちょいの、人口も少なければ、面積も小さいという国。
憲法もあり、選挙も、複数政党もあり立憲君主制に近いが、「君主大権」という、
いざという時、議会を無視できる権利を国王が持っている点でこの本では「絶対君主制国家」として
扱われている。
ナチスヒトラー台頭の時、ナチス寄りの議員が増えそうな自体になったのをこの「君主大権」で
阻止した事があるという。

「トルクメニスタン」は、大統領の像や肖像画があちこちに掲げられていたり(北朝鮮の金日成・金正日の政策をもっともっとナルシーにした感じ、
以前テレビで見たけど、凄いインパクトだった(^^;))、変な記念日を作ったり、
前大統領ニヤゾフの変な政策が印象的だった。
変な政策をたくさん行ったが、豊富な資源による利益を国民にも還元した為、旧ソ連諸国の中では、
経済的には成功している方。
ニヤゾフが亡くなった後も、相変わらず政策は迷走しているらしい。

「ウズベキスタン」はイスラム原理主義とロシア支配の板挟みな為、強力な指導者を必要とする
状況にもある独裁国家。
が、「ヒゲをはやした男(イスラム教徒に多い)は逮捕拷問」「子供の強制労働」なども問題点も多い。

「カザフスタン」は、ソ連時代に移民して来たロシア人が多い、ロシア寄りの一党独裁国家。
首都の強引な移転など問題もあるが、経済発展もしている。

「タジキスタン」は、資源に乏しく、国自体が秘境のような場所にあり、旧ソ連諸国最貧国。
一党独裁国家だが、大統領の支持率は高いらしい。

アメリカ大陸の独裁国家は、「キューバ」「ベネゼエラ」「ボリビア」「トンガ王国」があげられている。

南米は、独立運動時、アメリカによる経済と政治への介入があり、
アメリカやアメリカ企業に優位な経済政策の押し付け、政治の腐敗、
その為の貧富の差の拡大など様々な問題が起きた為、反米政権も多く、
その為、アメリカによる経済制裁を受けている国も多い。

「キューバ」はカストロ政権の元、ソ連など社会主義国の崩壊、アメリカの経済制裁により、
貧しい状態が続いている。
ただ、他の社会主義国にありがちな、支配者と被支配者の貧富の差は大きくなく、みんな貧しいらしい。
また医療、教育などは無料であり、キューバからアメリカに移り住んだ人が、
医者にみてもらうお金が払えず家族が死んだ時、キューバにいれば・・と言っていたのを思い出す。
独裁政権だからこそ、思い切った政策もとれる。
食糧難のおり、農業の地位を高めたり、都市部でも有機肥料(臭い)を使った畑作が推進されたりした
というのを、以前何かで見た。
キューバの人々を苦しめているのは、独裁者ではなく、アメリカな気がする。
これは、以前のイラクなども、独裁政権より、多くの人々を苦しめていたのが経済制裁だったことと、
つながるものが。
捏造された理由で始められたイラク戦争も、多くの民間人が犠牲になり、フセインの独裁政権と、
今の治安が悪化したイラク、どちらがいいのか甲乙付けがたい気がするし。
特にキューバの場合、独裁者カストロのカリスマ的人気が高かった事からも、
独裁者=人民を圧政で苦しめるではないことが伺い知れる。
ヤマザキマリの「世界の果てでも漫画描き キューバ編」(リンク先感想)を読むと、貧しくて大変だけれど、
幸せに過ごす人々の生活を垣間見ることができる。

「ベネゼエラ」は強烈な反米のチャベス大統領が有名。
ブッシュ大統領に対する「ブッシュはアメリカ史上最も知能指数の低い大統領だ」とか、名言いろいろ。
オバマ大統領の就任を歓迎もした。

「ボリビア」は、クーデターが頻発していた国。
1826年の独立以来、160年間にクーデター200回以上。
大統領、平均在任期間1年3ヶ月、最短一時間。
平均在任期間は、今の日本も似たようなもの??と思うけど(^^;)、
その理由が、追放、国外逃亡、暗殺、自殺・・・と、大統領になっても全然安心できなかった国。
最近、やっと安定したとか。

「トンガ王国」は、民主化の動きもあるが、福祉政策の充実で、国王の人気も高い国。

アフリカの独裁国家には「リビア」「チュニジア」「エリトリア」「ウガンダ」「ブルキナファソ」「カメルーン」
「スーダン」「チャド」「スワジランド」「ジンバブエ」などがあげられている。

「リビア」は先日カダフィの独裁政権が崩壊した。
独裁国家には含まれていないが「エジプト」のムバラク政権も倒れた。
で、丁度、この本、リビア革命の起きる直前に読んだので、リビア革命は不思議だった。
この本に書いてあったのは、教育・医療無料で、識字率はとても高く、パンなどの食料も国が安く提供と、
オイルマネーにより国民の生活は豊か、先進国と同じようにニートで悩んでいる・・というような事
だったからだ。
なので、欧米などによる情報操作(嘘ではなく一部を過大に伝える)による、石油の利権を狙った
軍事介入・・という見方があるのも納得できる(真相は闇の中だけど)。
ボスニア紛争では、アメリカの広告代理店の情報操作により、民族浄化を行ったセルビア(
実際はクロアチア人、ムスリム人たちも同様のことを行なっていた)が、
世界中から「悪」という認識を持たれ、NATOなどが「人道的立場」で介入し、
セルビア側が敗戦した事もあるし。

「チュニジア」-アラブの春を引き起こした「ジャスミン革命」が起きた国。
この本が書かれた時は、まだジャスミン革命は起きていない。
ただ、欧米よりの路線をとっていた為、イスラム原理主義を抑えなければならず、
独裁かイスラム原理主義かの狭間にいた国ではあるらしい。

「ブルキナファソ」は、政治腐敗は酷いが治安はいい独裁国家。
北朝鮮、フセイン政権下のイラク、軍事独裁下のミャンマーなども治安はよかったはずなので
(一番怖いのは国家権力だ)、一概にいいとは言えないだろうけど。

南部が独立し、アフリカでは20年ぶりくらいに国家が誕生した「スーダン」。
この本では、まだ南スーダンは独立していない。
北部アラブ系イスラム教徒の民兵(ジャンジャウィード)などによる、
南部黒人(キリスト教徒)の虐殺(ダルフール紛争)などで有名だった国。
本書では、欧米が批判している「多数派イスラム教徒による少数キリスト教徒の弾圧」ではなく、
その根源に、欧米の植民地支配や、独立後の内紛にアメリカ、旧ソ連などを始め諸外国の
介入があったことをあげている。

「チャド」は、政治腐敗ナンバーワン。でも膨大な石油の利権は、反政府軍との闘いで消えている国。

「ジンバブエ」は、普通には表記できないほどの(6.5×10の108乗%とか←24時間で価格が倍)、
天文学的数字のインフレで有名な国。
ジンバブエは、独立時はアフリカで最も豊かな国の一つだった。
それが今では失業率80%、市場経済はまともに機能せず、インフレ率はハイパー!!!!
その原因は、独裁者ムガベ大統領が次々に行ったダメダメな政策。
昔、この国の内情やムガベ大統領の失敗政策の事を知った時、指導者がダメだと、
本気で国はダメになるものなのだ・・と思った。

後半は、20世紀の独裁者として「ヒトラー」「スターリン」「ムッソリーニ」「フランコ」「サラザール」
「ポル・ポト」など、
23人の独裁者について、経歴や功罪について述べられている。

ヒトラーに関しては、かれの遺産としてのアウトバーンなど。
スターリンは、あまりいいところ無しなんだけど、ソ連という大国を作り上げたということで、
評価する人もいるらしい。

第二次世界大戦では3国同盟だったのにあまり存在感が無かったムッソリーニは、
マフィアの壊滅や、バチカン市国の成立などをの功績があり、人気も高かったとか。
ナチスドイツと組まなければ・・・だったらしい。

スペインのフランコは、軍事独裁体制を敷きながらも、優れた外交手腕で、
第二次世界大戦を「中立」という立場で無傷で乗り切り、戦後もファシズム軍事独裁体制なのにも
関わらず西欧の一員として認められるという功績を残したとか。

ポルトガルのサラザールはかなり面白い独裁者で、元々は経済学者。
経済の研究にしか興味がなく、嫌々ながらも財務大臣になる条件として「経済政策への不干渉」という
条件を出したらしい。
そして、破綻状態にあったポルトガル財政の赤字を1年で解消。
首相になった後も、目的は「国家による経済統制と安定」で、政策を行った人。
ストライキや労働者運動の弾圧など問題はあるけど、今の日本にも必要な人かもしれない(^^;)。

ルーマニアのチャウシェスクは、妻エレナの政治への介入以来、独裁色を強めたとか。
水素記号も知らないのに科学者を名乗っていたエレナのエピソードは、かなり無茶苦茶で面白い
(この本には載ってないんですが、どこで見たかも忘れた)。

ユーゴスラビアのチトーは独裁者だけど英雄。
「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字」のユーゴスラビアを
まとめていたカリスマ。
チトーが死んでユーゴスラビアは分裂・紛争。
偉大過ぎる独裁者は、亡くなった後に悲劇を生むというのと、その手腕に感心した記憶がある。
もっとチトーが長生きしていれば「ユーゴスラビア人」(チトーが提唱していた)という概念が
しっかり人々に根付いて、分裂しなかったのかもしれない。

ブルガリアのジフコフは、超ソ連追従型独裁者。
なんと、ブルガリアをソ連支配下に入れないかと、ソ連に提案までしている。
ソ連側は、不可解過ぎる申し出だった為、断っているぐらい。

アルゼンチンのペロンは、妻エヴァ(マドンナ主演「エビータ」のモデル)の人気で政権を把握。
妻の死や経済政策の失敗で失脚。
中米ニカラグアの独裁者ガルシアは、アメリカと対立していた英雄サンディーノを暗殺し、
アメリカに協力的だった為、アメリカも彼に協力し、独裁政権を樹立させる事ができた独裁者。
ドミニカ共和国のバラゲールは、暴力、脅迫その他独裁者らしいことをたくさんしたが、
とにかく自然保護に力を入れた独裁者として有名。
それは、現在もドミニカ共和国があるイスパニョーラ島を航空写真で見ると一目瞭然(「不都合な真実」掲載)。
昔「不都合な真実」を読んだ時見た、この写真は衝撃的だった。
西側ハイチは森林伐採により国土が荒廃、最貧国の一つに。
ドミニカ共和国は独裁政権下で、森林伐採を軍を使ってまで阻止した為、現在も残っている。
他にも独裁政権下で厳しい環境保護を行ったという。

韓国からは「全斗煥」の紹介。
これを読むと、韓国が民主化されたのってほんとここ20年くらいの事なんだなーと改めて思います。
昔は、近くてすごく遠い国だった。

カンボジアのポル・ポトは、貨幣経済の廃止、農耕社会を理想とし、知識人などを虐殺した有名な独裁者。

タイは、不思議な国で、頻繁にクーデターが起きるが、ほとんどが無血クーデターの上、
市民への大きな影響も無い。
これは、国民に慕われる国王の存在が大きく、クーデターを起こしても、国王の承認を受けなければ
ならないという背景が大きい。

イラン・イスラム共和国のホメイニは、イスラム上級法学者で、「法学者の統治」という体制を作りあげた。
非イスラム的なものは弾圧の対象になったが、汚職などは減ったという。

イランのフセインに関しては、彼の増長の原因が、アメリカなどによる武器援助であるとしている。
彼の功罪に関しても触れてある。

独裁者としてあげられているのに少し違和感を感じるのが、ブータンのワンチュク王。
最近来日したので、知っている人も多いと思う。
ブータンは、国民幸福度が高い国としても有名。
ワンチュク王の統制下、絶対君主制から立憲君主制への移行に成功したというのは、本当に凄い。

現在、「日本人が知らない世界と日本の見方」を読んでいるんだけど、
その最初の方に、いかに「民主主義」が愚行をおかしやすいか、大衆の扇動されやすさと合わせて
書いてあって興味深い。

独裁政権の怖いところは、ダメな独裁者が政権を握ってしまった時、
その影響力を無くすのが難しいところだよね。
二代目がダメな事も多いし。

現在グダグダな日本の政治。
強力なリーダーシップをとれる政治家が必要な気がするけど、
国会議員でその器の人っていないような・・。

ということで、世界の独裁者について、いろいろ知る事ができる一冊。
なかなか面白かったです(^^)。
ざっと内容を書いたけど、もっと詳しく知りたいなら、読んでみて下さい♪
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コメント 4

コステロ

英邁な独裁者が政治を取り仕切るのが国家の理想だ、
などと言うハナシは良く聞きますね。

反面、独裁者がアホだと悲惨なことになりますケド。

ニヤゾフのインパクトは強烈ですよね。
「メロンの日」とか、子供みたいでいいなぁ、って(笑
by コステロ (2012-03-29 09:21) 

choko

コステロさん

そうそう、独裁者が悪いと、「もうもうどうしましょ!!」的悲惨な
事になるので、やっぱり独裁は怖いですよね。
ずーっと存在し続ける英邁な独裁者・・・やっぱコンピューターでしょうか(^^;)。

ニヤゾフの政策は笑えるのが多いですよね。
CBSニュースだったかでニヤゾフの政策とインタビューを放送してたのを
見たのですが、すごかったです(笑)。
経済的に大失敗はしてなかったのが、北朝鮮との違いでしょうか。
by choko (2012-03-30 00:12) 

NO NAME

トンガはアメリカ大陸の国ではありませんけれど、実際にそう書いてあるのですか?
by NO NAME (2013-04-28 23:36) 

choko

NO NAMEさん

言われてみれば、トンガは、太平洋、オセアニアの方が合ってますね(^^;)。

私の写し間違いなのか、元がそうなのか、元の本が無いので、
はっきりしなくて、すみません(^^;)。
by choko (2013-04-29 00:19) 

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