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「或るろくでなしの死」平山夢明著:浮浪者、嫌われ者・・・平山夢明らしいグロテスクさで彩られた死の数々 [本:ホラー&ミステリー]

或るろくでなしの死

或るろくでなしの死

  • 作者: 平山 夢明
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/12/22
  • メディア: 単行本
8点

平山夢明の「死」をテーマにした短篇集7作。

●「或るはぐれ者の死」は、浮浪者が気がついた、道路で惹かれて干からびている
動物の死体のようになっていた、子供の死体の話。
●「或る嫌われ者の死」数が減り絶滅種となった「日本人」。日本人は大事に保護されつつも、
人々に嫌われていた・・・。
●「或るごくつぶしの死」都合の良いセックスパートナーと思っていた、
知恵が足りなさそうな女との間にできた子。
ネグレクトに至る心理というのは、こういうものなのか・・・と思える短編。
●「或る愛情の死」子供を失った母親の変貌の話。
●「或るろくでなしの死」殺し屋と殺しを目撃した少女。少女は、口止め料としてハムスターをねだるが、
しばらく可愛がった後、ハムスターの頭を叩き潰してしまう・・・。
●「或る英雄の死」昔、我が身を犠牲にしてまで助けてくれた先輩。
昔「英雄」だったとは思えない、呑んだくれてイカレている先輩が遭遇した恐ろしい出来事とは・・・。
●「或るからっぽの死」ある条件が無いと「人が見えない」男。
彼が、はっきりと見える女性に出会った時、悲劇は始まった・・・・。

ツーンとくる体臭、ドブ川や汚物の鼻をつく臭い、酔っぱらいの酒臭い息、路上の嘔吐物、
ドロドロとした血、黄ばんだ歯、うつろな目、陰惨な暴力・・・・・多くの話が、
そういう嫌悪感を感じさせるもので溢れている。

そしてこの本で扱われている「死」というのは、それを通して、人間の無常さや、狂気、
おぞましさ、弱さ、醜さ・・・・などを鋭く抉る。

表題作「或るろくでなしの死」の殺し屋と少女の関係は、少しだけ「ダイナー」(リンク先感想!傑作!)を思い出す。
胸糞悪くなるような描写と、殺し屋と少女の心の機微の対比がいい♪

スプラッタ描写は控えめだけど、愛情あふれていたはずの母親の変貌ぶりや、
赤子を気にしつつも、自分の都合の良いように責任転嫁して見捨てる男の心理、
唯一人間らしい行動をとったのが、人から蔑まれている浮浪者だったりと、
どれも、現代社会を毒をもった描写で風刺していて、面白く読めた。
すごく毒があるけど、どこか切なさもある、そんなホラーが読みたい人にお勧め(^-^)ノ。
でも、残酷描写もあるので、それが苦手な人は注意!
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