SSブログ

「つなみ-被災地のこども80人の作文集」「『つなみ』のこどもたち-作文に書かれなかった物語」森健著 [本ノンフィクションいろいろ]

文藝春秋増刊「つなみ 被災地のこども80人の作文集」 2011年 8月号

文藝春秋増刊「つなみ 被災地のこども80人の作文集」 2011年 8月号

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/06/28
  • メディア: 雑誌

「つなみ」の子どもたち

「つなみ」の子どもたち

  • 作者: 森 健
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/12/07
  • メディア: 単行本


東日本大震災で、被災した子供たちが書いた作文を集めた「つなみ-被災地のこども80人の作文集」。
実は、この手の「読めば感動できるだろうなー」とタイトルからわかってしまう本って、
滅多に読みません(^^;)。
タイトルから感動モノだと察せられると「感動の押し売り」みたいな印象を受けちゃって。
この「感動モノは胡散臭い感」は、テレビ番組であまりにも「作られた感動モノ」っぽいのが
多いのが原因で、本は悪くないし、たまに、そういう感動モノが無性に読みたくなることもあるので、
タイトルでわかるって大事だとは思うのですが。

で、「つなみ」は、知っている方が、「すごくいい本で、自分だけが読んだのではもったいないから」と
貸してくれたので、読みました。
貸してくれた方も、子供の頃、きっと今の私たちには想像できないような大変な思いをされ、
その中で母親を亡くしたそうで、その時の気持ちが、作文の中の子供たちの気持ちと重なって
辛かった・・・と話していました。

家族が行方不明でも、作文の中で、悲しい、寂しい、辛い・・・というのが
前面に出てくることはありません。
「寒い避難所で、温かいおにぎりが出てホッとした」「がんばろう」「ありがとう」など、
地震や津波の恐怖、避難所での心細さなどが綴られた後に来るのは、前向きな気持ち。
知人の話では、「こんな大変な状況の中、辛いとか寂しいって言っちゃいけない」って
子供心に思っていたとの事。
この方は、何十年も経ってから、突然「もう泣いてもいいんだ・・・」と、
亡くした母を思って泣いたそうです。
作文を書いた子供たちも、親や周囲の人たちが大変な状況を見て、
自分が頑張らなくちゃと思っているのかもしれません。

また、「食事」って大切なんだなーというのも、作文を読んで思いました。
避難所で、恐怖と心細さと寒さと空腹に震えていた子供たちが、
食事が届くとみなホッとしたというような心情を記しています。

蛇足だけど、学年が上がるほど、文章力がアップしているのにも驚きました。
ほんの数年の違いだけど、格段に違います。
小1で拙い文章を書いていた子も、数年経ったら成長して、もっとしっかりした文章を
書くようになるんだろうなーなんて思ってしまいました。

80人の子供たちの作文、その1つ1つからいろいろな思いが伝わってきました。
--------------------------------------------------------------------------------------------------
そして「『つなみ』の子どもたち」の方は、作文だけではよく見えなかった(「つなみ」に簡単な補足は
ありましたが)、作文を書いた子たちの家族や状況を改めて取材した本。
作文を書いた中から、10の家族が取材されています。

「つなみのせいで大切なものも流されました」と書いていた女の子。
その大切なものが、母と幼い弟だったことは、作文の補足で知りました。

この追跡取材により、この家族は、一緒に住んでいた祖父母一家、
生き残った父親の別の市にある実家、その他親族合わせて13人もが津波の犠牲に
なったことがわかります。
祖父母や母親、そして弟を具体的ではなく「大切なもの」と書いた少女。
そこには、今回の事に打ちひしがれ、「あの時、ああしていれば・・・」と
底なし沼のような後悔に襲われている父への気配りがあったのかもしれません。
娘が父を支え、娘に支えられる事で、娘のために前向きになろうとする父の物語は、
強く心を打つものがありました。

避難所となったあるお寺では、震災3日目にしてしっかりした「約束事」を決め、
朝5時15分起床、6時からの読経・・など、規律がある規則正しい生活を避難民達は課せられます。
それが、その避難所にいた人々、子ども達に、とてもよい影響を与えたエピソードが語られていて、
「被災してた人達が自分達で何かをする・できる状況を作る」というのがとても大切な事がわかります。

他にも、小学生の甥っ子2人を、迷いなく引き取って育てる事を決めた一家の話や、
ちょっと不良っぽくなり、家族と没交渉になりつつあった高校生の少年の震災を経験しての変化
(作文だけだと、津波の中、家族のため奮闘した真面目な高校生のイメージだった)など、
この本を読まなければわからない、いろいろな話が語られています。

作文ではわからなかったその子供たちが暮らす地元の雰囲気、子供たちの地元への思い、
その後の変化、様々な事がわかることで、元の作文への印象も深いものに。

最後は、子ども達に作文を書いて貰おうと思うきっかけになったという、
吉村昭の「三陸海岸大津波」(感想は後日)に掲載されていたという子どもの作文。
それを書いた牧野アイさん(90歳前後)への取材記事が載っています。
家族全員を失った昭和8年の大津波の教訓を忘れず、いつも津波を意識して生きてきたという、
アイさんとそのお子さん達。
アイさんの津波への意識が、その子ども達にも受け継がれているのが興味深かったです。
が、同時に、地震があれば、どんな時でも必ず高台に逃げるを、大津波が無かった
何十年間も繰り返すというのは、かなり努力が必要な事で、教訓を風化させないというのは、
難しい事なんだとも思いました。

読むなら、「つなみ-被災地のこども80人の作文集」
「『つなみ』のこどもたち-作文に書かれなかった物語」、合わせて読んでみて下さい(^-^)ノ。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。