SSブログ

「震災死-生き証人たちの真実の告白」吉田典史著:災害の教訓を活かすには・・・ [本ノンフィクションいろいろ]

震災死 生き証人たちの真実の告白

震災死 生き証人たちの真実の告白

  • 作者: 吉田 典史
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2012/02/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7点

東日本大震災について、遺族、検死医、消防団員、潜水士・・・多くの人の証言から、
当時の状況を明らかにしようとする本。

同じ東日本大震災を扱った石井光太の「遺体」(リンク先感想)が、
震災後の「遺体を巡る人々の死者を尊ぶ姿とその苦労と努力」を描いたのと違って、
こちらは「人々の証言から、当時の状況を知り、それを分析し、先に活かそうとする姿勢」が見える。
どちらのテーマも必要で大切な事だと思う。

震災の混乱時の検死の問題、マスコミの問題、安い報酬で動く地元の消防団員の安全が
保証されていない問題、自衛隊をなんでも屋として宣伝してしまった事の問題、
うやむやにしてはいけない問題点がいろいろある事が、この本を読むと見えてくる。

点数が低めなのは、著者の「遺族への肩入れ」が強すぎるように思えたというか、
家族、親族に犠牲者がいない人たちに対して、家族が無事だったのに、わがままや
贅沢を言ってて困ったもんだ的視点が気になったから。

犠牲者が出なかったから、家族が無事だったからそれだけでも良かったんだ、贅沢を言うなではなく、
生活の基盤を破壊された人々が、生き残った家族とこれから生きる為に、
車が必要だ、住む所が・・と訴えてくるのは当たり前だと思う。
それを贅沢だ、わがままだと切り捨ててしまうのは・・・と思ってしまった。
逆に、家族を亡くした方は、一番の問題が失った家族なので、その辺が表面に出てこないだけだと
思うのだけど。

もちろん、この本で書かれている「自助」、「自分で出来る事はするという姿勢や気持ち」
も大切だと思う。
ゴキブリが出たなど、些細な事でも110番してしまう、救急車をタクシー替わりに、
など、確かに最近、国や公的機関が何でもやってくれて当たり前な風潮が蔓延していて、
それは問題だと思うし、災害の現場で、やること・できることをやらず公的援助をあてにしているのは
まずいと思うけど、著者は、犠牲者が出なかった家族の要望を「贅沢言ってる」と
本当のわがままと一緒にしてしまっている感じが。

その点を除けば、震災での教訓を、これからの災害時にしっかり活かす為、
細かい部分もうやむやにせず、しっかり調査しようという著者のスタンスは評価できるし、
大災害という非常事態の中、人々が何を考え、どう行動するのか、そして、
その後の経過についてまでも、いろいろな人にインタビューして記事にしているので、
自分達が考えなければいけないことや心構えについて参考になる点も多い。
マスコミのあり方についても、問題提起している。
読んでみる価値はある本です。
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。