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「フルトヴェングラー」吉田秀和著:著者のフルトヴェングラー関連文をまとめた一冊。フルトヴェングラーの生演奏の臨場感が伝わってくるよう・・ [本ノンフィクションいろいろ]

フルトヴェングラー (河出文庫)

フルトヴェングラー (河出文庫)

  • 作者: 吉田 秀和
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/12/03
  • メディア: 文庫
7.8点

「もしも何でも願いが叶うとしたら」と問われたら、「大金持ちになりたい」とか
即物的なものを排除すれば、「フルトヴェングラーの生演奏が聴きたい」とか答えるかもしれない。
私が生まれた時には、既に鬼籍に入っていたフルトヴェングラー。
彼の音楽のテンポの激しい緩急は、苦手という人も多いけど、
彼の音楽に魅入られている人も多く、最も偉大な指揮者と評価する人も多い指揮者。
クラシックは齧っただけの私も、彼の音楽に魅入られている一人な気がする。

CDショップで流れているクラシック、今までにたった3回だけ「これは誰の指揮?」と指揮者を
確認したことがあるんだけど、どれもフルトヴェングラーだった。
特に、ほとんどクラシックを聴かなかった頃、CDショップで耳にしたベートーヴェンの「運命」は、
あまりに印象的で、その時流されているCDを確認した事が、フルトヴェングラーと私の出会いだった。
最初に耳にしたフルトヴェングラーの「運命」は、1937年10月録音のものな気がするけど、
印象的だったフルトヴェングラーの運命をもう一度聴きたいと思ったのが、出会いから、
10年くらい経ってからなので、はっきりはせず。
1943年、1947年、1954年録音の運命も聴いたけど、1937年が一番近い気がするだけ。
他の録音も好きだからいいんですが・・・ってことで、フルヴェンの「運命」だけは、
CDを何枚も持っている(^^;)。

1954年に亡くなってしまったフルトヴェングラーが残した録音は、録音技術がまだまだだったのと、
フルトヴェングラー自体が録音にあまり積極的ではなかったせいで、かなり音が悪い。
CDを聴いていると、音が潰れたり、はっきりしなかったり、「ああっ、もっといい音で聴きたいっ!」という
欲求がものすごく募ります。
音源が悪くても、すごくいい演奏なんだけど、「これがいい録音だったらもっと素晴らしいんじゃ!」と
思ってしまうのです。

で、吉田秀和氏のフルトヴェングラー関連文をまとめたこの本。
前半の章のいくつかは、著者が聴いた、フルトヴェングラーの生演奏について書かれた文で、
その臨場感、素晴らしさ、フルトヴェングラー指揮の元のベルリン・フィルの様子、
フルトヴェングラーの作り出す音楽と空間の凄さが伝わってくる内容。
あーーー、フルトヴェングラーを生で聴けたなんて羨ましい~!!というのと、
演奏の雰囲気を生々しく伝えてくれるその文章にものすごく感謝!というのと、
相反する気持ちを持ちながら読んだ。

フルトヴェングラーの音楽、その特徴とも言えるテンポの激しい変化、それは、
聴衆がその変化に気がつく前から、入念に準備されている、萌芽から成長し繁茂し老廃・・・
一つの生命の流れのように繋がっていると著者は、評したりもしている。

「譜面通りに指揮する」というのと対照的に、フルトヴェングラーは、譜面を曲を事細かに研究し、
どうやったら作曲家の意図した演奏を奏でる事ができるか・・・というのをに尽力した指揮者。
そこには、フルトヴェングラーの意図も入るわけで、その辺が好き嫌いが出る理由な気もする。

本書には、ブラームスの交響曲や、ベートーベンのエロイカなどについて、譜面を用いた
詳しい解説もあるが、私には難しすぎて大雑把にしかわからなかった(^^;)。
それでも、ブラームスの交響曲4番が、他の指揮者のものだと、センチメンタル過ぎて苦手なのに、
フルトヴェングラー指揮のだけは、すんなり受け入れられるのは、著者が解説したような理由から?
など、クラシックに浅くしか関わっていない私の説明できない感動の理由を、
この著者が解説してくれているような気分になれた。

また、ナチス支配下のドイツにとどまって指揮を続けたフルトヴェングラーの
「芸術は政治的な事柄とは全く関係ない」という音楽観と、
祖国を捨て亡命し、ナチス支配下で指揮を続けるフルトヴェングラーを痛烈に
批判し続けたトスカニーニの音楽観を、それぞれの祖国、ドイツとイタリアの文化観に
まで広げて語っているのは興味深かった。

フルトヴェングラーを語るだけでなく、他の指揮者についてや、ベートーベンやブラームスなどの
作曲家のその曲の背景にある意図、音楽史、レコードの存在意義、
そして、クラシックそのものについてまで、著者の見解が述べられており、
それらもとてもおもしろく読める。

フルトヴェングラーファンだけでなく(嫌いな人は、すごく褒めてあるので、読むのが厳しかも(^^;))、
クラシックを少し齧っただけの人でも楽しめる内容になってます。
でも、一番は、フルトヴェングラーの生演奏の「静かな熱狂」に関する記述でした♪
あー、生演奏聴いてみたい!!
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コメント 6

コステロ

本文とは殆どカンケーないんですが。

「即物的なモノは除く」という条件で願いがひとつかなうなら、
私は『巌流島対決』をこの目で観てみたいですねぇ。
モチロン「猪木vs.マサ斉藤」のじゃなくって
「武蔵vs.小次郎」の方ですが(笑

別に「小次郎や武蔵が好き」と言うワケじゃァないんですが、
「真剣での立会」と言うのモノを一度観てみたいですし、
まして“巌流島”は日本でもっとも有名な決闘ですんで。

しかも、巌流島に関しては、詳細はわりと謎らしい。
後世、武蔵はこの決戦について殆ど語らなかったらしいので。

小倉藩の剣術師範として、でかい面をしすぎて恨みを買った小次郎が
よってたかってタコ殴りにされた。決闘の名目や武蔵の存在は、
島に誘い出すための口実に過ぎなかった、と言うハナシもあるらしい。
その辺の事実関係にも興味がありますね。
by コステロ (2012-07-13 10:00) 

choko

コステロさん

おお、すっごく剣豪(褒めすぎ?)コステロさんらしい願いですね~!

巌流島の戦いは、諸説あるようですから、実際に見てみたいってのわかります。
こういう絶対叶わない願いを叶えるには、やっぱりドラえもんが
机から出てきてくれないとダメなんでしょうか(笑)。
あードラえもんいいなー。
by choko (2012-07-13 18:26) 

コステロ

「ドラえもんの道具で、何が一番欲しいか?」ってのもありますよね。

私だったら『どこでもドア』『タイムマシン』『悪魔のパスポート』辺りでしょうか。
何れも“悪用すること”を前提に想定してますが(笑
by コステロ (2012-07-14 10:26) 

choko

コステロさん

コステロさんの希望を見て、「私ってなんて純真♪」と改めて思っちゃいましたよ(笑)。

欲しいのは「どこでもドア」子供の頃歩いて目的地に行く時とか、
遅刻しそうな時欲しかった。
今は旅行がしたいですね~。
「ポラロイドインスタントミニチュア製造カメラ」と「ガリバートンネル」、
本屋さんを写して本読みたい放題、ケーキ屋さんを写して、
ケーキ食べたい放題。
「タイムマシン」過去の史実を確認したい。
かなり即物的なものが多いですが・・・・小市民ってこと(^^;)??

でも、一番は「ドラえもん」本体ですよね。
「大金持ちになりたい」と同じで汎用性高いし(笑)。
by choko (2012-07-14 11:14) 

コステロ

“改めて思った”と言うコトは、「常日頃からそう思ってるけど~」と言うコトにもなりますが、これはツッコミどころと解釈してよろしいのでしょうか?(笑

でまぁ、「本読みたい放題」も「ケーキ食べ放題」も、カネさえあれば
ドラえもんの道具に頼らずとも、現実として可能なんですよね。
だから結局のところ「道具を使って大金を得る」のが一番良い。

そこで

『どこでもドア』:銀行やカジノの金庫に行って、そこに積まれた現金をくすねる。ただし犯罪。

『タイムマシン』:宝くじの当たり番号や株の相場などを予め知っておき、それを買う。ただし「タイムマシンは金もうけに利用してはならない」と言う法があるらしい。

『悪魔のパスポート』:これさえあれば何でもやりたい放題。ただし堂々とコトが行える分、却って罪悪感に苛まれるらしい。


何事も一長一短ですな。
by コステロ (2012-07-15 11:07) 

choko

コステロさん

剣道の「突き」のような、予想外のツッコミで焦りましたよ(笑)。
自分は、小心者なので、あまり悪事(笑)などは考えないし、
世間の人もそうなのかなーと思っていたのですが、
そうでも無いのかと(^^;)。

そうそう、世の中の願いの大半って、お金があれば解決しちゃうんですよね。
実際大金持ちになったら、価値観が変わって、小市民的な事じゃ
満足できなくなるのかもしれませんが、
そんな金持ちになったことがないので、想像できないし(^^;)。

ケーキを好きなだけ食べたい、(あっできれば、食べたいだけ食べても
太らない体にもなりたい!)とか、願ってるのが平和ですね。

タイムマシンって金儲けに利用しちゃダメなんですか!
それは知らなかったです。
利用すれば、いろいろ儲けられそうですもんね~!

一番簡単なのは、「もしもボックス」で自分が「大金持ちの世界」でしょうか?
そしたら犯罪にならないし。
でも、「もしもボックス」って数ある道具の中でも、かなりやばい道具だと思います(^^;)。
by choko (2012-07-15 18:52) 

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