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「タイの田舎で嫁になる-野性的農村生活」森本薫子著:カルチャーギャップがすごい!でも、日本社会を省みる機会にも♪ [本ノンフィクションいろいろ]

タイの田舎で嫁になる―野性的農村生活 (JVCブックレット)

タイの田舎で嫁になる―野性的農村生活 (JVCブックレット)

  • 作者: 森本 薫子
  • 出版社/メーカー: めこん
  • 発売日: 2013/06
  • メディア: 単行本
7.5点

タイのイサーン(東北タイ)のムクダハン県の農村に嫁に行った日本人の著者。
タイ、それも田舎!農村!で暮らすということがどんな感じなのか、
そのカルチャーギャップにもめげず、それを受け入れ明るく語ってくれる著者の包容力も気持ちいい♪

日本でも、都市部に住む人が、農村などにお嫁に行けばかなりのカルチャーギャップがあるはず。
Iターンなどで田舎に移り住み、理想とは違う現実にぶつかり挫折する人も多いというし。
著者の場合、異国であるタイ、その上田舎の農村なので、とにかくそのギャップはすごい!

自然の中で暮らすということは、虫も多い。
日本でも虫を怖がってちゃ田舎暮らしはできないと思うけど、それ以上なようだ。
以前キャンプで自然を満喫して帰ってきた友人が、「将来田舎暮らしもいいなー」と言っていたので、
「こっちに比べて虫がすごいよ」と言ったら、即「無理だ」と諦めてた(笑)。
自分の田舎だと虫を怖がる人(特定の苦手な虫がいるとしても)は少ないが、
首都圏だと、男の人でも苦手って人が多くてびっくりだった。

食事は基本自給自足に近い。
自分で作った作物、育てた家畜、近くの池などで捕れた魚、その辺に生えている植物だけじゃなく、
著者の住む地域では、イモリ、蛙、虫なども普通に食するらしい。

飲水は雨水。
水浴びの水は、ためて置いたものが多く、ボウフラを食べてもらうのに魚が泳いでいたり、
濁っていたり。

自給自足で無駄の無い生活って憧れる部分もあるけど、食べたことがない食べ物への
抵抗感は年齢を経るにつれ大きくなっているので、もう既に自分は順応できない気がする・・・。
嫁に入って、最初は抵抗感があったり、美味しいと思えなかったものでも、受け入れ、
普通に食べている著者の順応力はすごいなーと素直に感心。

肉類は自分で育てた家畜を殺して食べる。
屠殺すれば近所におすそ分け、逆に近所からもおすそ分けが貰え、
食べ物の分かち合いが日常的に行われてるので、お金が無くなっても
飢えることはないだろうと、著者は言っている。

また、食べ物は自給自足に近くても、ちゃんと家電製品などはひと通り揃っているとの事。

「人のものは自分のもの、自分のものは人のもの」、私的私有概念が曖昧な部分があり、
他人が、自分の家の物を勝手に食べたり、持って行ってしまったりすることも多いという。
その代わり、自分がそれをやっても文句は言われないが、著者は最初それにストレスを感じたよう。
その辺も「郷に入れば郷に従え」という感じで、考え方を変えて対応している。

他にイサーンの農業に関して(収入だけに目を奪われ、支出の計算をちゃんとしないので、
儲かってるかどうかわからないが、気にしていない)、子育て、老後などについても語られている。

冠婚葬祭、子育てや老後に関しては、親類縁者や共同体が全員で協力する。
だから老後の心配はいらない。
子育ても、日本のように「自分のやり方・こだわり」が通用しないが、
その分周囲の手助けがたくさんあり、気楽だともいう。
人間関係が密接な為、田舎のうわさ話・人間関係の煩わしさについても多少語っているが、
「人間関係の煩わしさと無償の助け合いはセット」と、なんでも長所と短所があり、
その辺が表裏一体なのも、著者はちゃんとわかって受け入れている。
好き嫌い関係なく、苦手だからといって逃げず、適度な距離を探して助け合う、それが大事だとも。

時間に関してはルーズ。
時間に追われおらず、時間を無駄にしてはいけないという概念が希薄な為、
何かあれば、誰でも手を止めて手助けしてくれるという。
以前読んだ「世界幸せ紀行」で、「ブータン」にも同じような概念があった。

細部は違えども、昔の日本の農村を思わせる情景も多かった。
でも、そこで暮らすには、かなりの寛容さが必要なのも実感できる。
また、学歴軽視(子供は小学校で十分)の親も多い、子供の将来を子供自らが
選べないなどの問題点もある。

でも、このタイの農村の生活には、日本では得られない安心感があるという。
何かあったとしても周囲が助けてくれる、自分が死んだとしても、子供達は、
誰かがしっかり面倒を見てくれるだろうという、社会への信頼感。
老後もそう。

「ほどほどの近所付き合い」ではなく、「みっちりくっついた近所付き合い」から生まれる社会への信頼。
困った時、周囲のサポートがたくさんあるというのは、魅力的だけど、
人間関係も大変だし、助けて貰えるのは助かるが、その分の自分の労力だってすごい。
でも、そういう損得を計算してしまう時点で、ダメなんだろうなーとも思う。
損得計算をすれば、その場、その場で、不満もでやすい。
それが「当たり前」と感じられるのが大事なんじゃないかと。

現在日本では、他人のサポートはあまり期待できないので、国のサポートに期待してしまうが、
それも費用が肥大化し破綻しかかっている。
モデルとなっているスウェーデンなどの福祉も財政難でかなり大変なよう。
周囲のサポートも期待できない、国のサポートも期待できない、それが多くの人の、
不安につながっているのだろう。
でも、いろいろな知識を得て、「昔は当たり前」だった近所の互助が、
「当たり前」と思えなくなった今(宅急便ですら近所のを預からなくなったし)。
必要なのは「自立」、そして自分でどうしようも無くなった時は「諦め」しか無いのかも。
そして、運が良ければ家族がサポートしてくれると(^^;)。

サラっと明るくタイの嫁生活が書かれていて、気軽に読めるし、
でも、全然環境の違う「タイの田舎」にお嫁にいった著者の置かれた環境と、著者の考え方は、
今の日本の現状を改めて考える機会与えてくれる。
お勧め(^-^)ノ。
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コメント 4

kaoru

素敵な書評をありがとうございます!
偶然見つけたらなんと、アップしたてだったんですね。
メッセージをしっかり感じ取ってくださっていて嬉しいです~(#^.^#)

生活ブログも読ませていただきました。chokoさんの紹介しているスイーツが美味しそすぎて、目眩がします・・・(@_@)

著者
by kaoru (2013-09-11 22:08) 

choko

kaoruさん

こちらこそ、面白くてとてもタメになる本をありがとうございます♪
旅行ではなく、現地に根付いて暮らしているからこそわかることが、
たくさん書いてあり、とても参考になり、そしてとても興味深く、
面白く読むことができました(〃∇〃)♪

地域社会とのつながりの大切さ、でも、しっかり地域が結びつくことの
大変さを、改めて認識することもでき感謝です!

日常生活のブログの方まで見て頂いてありがとうございます♪
目眩がしそうなスイーツはマンダリンオリエンタルでしょうか?
滅多に滅多に行かないゴージャスな場所で、
普通なら、私もあの画像を見て目眩を起こしてる気がします(笑)。

異国の地で生き生きと生活しているkaoruさんの、強さ柔軟さ、
本当に、尊敬です。
これからもタイでの生活、頑張って、そして楽しんで下さい(^-^)ノ。
また次の本が出たら、絶対読みますね!
by choko (2013-09-11 23:33) 

kaoru

chokoさん、ありがとうございます。
そのお言葉を励みに、またネタ帳を増やしていきます(笑)

ブログや本の感想、時々読ませていただきますね~
(ダニ・マニア、ちょっと興味あります(@_@))
by kaoru (2013-09-12 20:47) 

choko

kaoruさん

わー、どんなネタが蓄積されるのか、とても楽しみです(*^.^*)♪
グローバル化が進む事によって、タイの田舎が変わっていくのか、
それともそれほど影響が無いのか・・なども興味があります♪

おおっ、「ダニ・マニア」に興味をお持ちですか(笑)。
ダニについて、すごくわかりやすく、興味深く書いてある本で、
お勧めです(^-^)ノ。


by choko (2013-09-12 21:56) 

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