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「オニキス」下永聖高著:多次元宇宙を題材にした、ちょっとお伽話チックなSF短篇集。 [本:SF]

オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)

オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)

  • 作者: 下永 聖高
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/02/07
  • メディア: 文庫
7点

多次元宇宙(本作では並行宇宙)を舞台にした短編2つと、SF短編2つ、
そしてエッセイ的な短編1つの、計5編の短編が収められている。

「オニキス」:過去を書き換えるマナという物質。
書き換えられた過去により並行宇宙が生まれる。
人々は、過去の書き換えによって記憶が変わっても、それを認識することはできない。
しかし、マナによる情報保存が可能になり、どのように書き換えが起きているか、
頭につけた装置により、記憶を保存することでチェックするというモニターに応募した主人公。
本に挟んだ栞の位置が変わっていたり、飼っていた熱帯魚の種類が違っていたり・・・
主人公を取り巻く環境は、書き換えの度に、変化していく。
それだけでなく、起きていなかった戦争が起きていたり、主人公の仕事も住まいも次々に
書き換えられ、恋人でさえも・・・。

「神の創造」:「妖精発生装置」という異世界と現実を結びつける装置。
それを部屋に置くと、部屋のあちこちで異世界の様子が観察できるようになる。
茶碗を洗い、掃除をすると、流し台の隅に歓喜する群衆が見え、お風呂に入れば湯けむりの向こうに
帆船の軍団が・・・・。
部屋と、異世界は互いに影響を受け合い、部屋が散らかり混沌とすれば、その辺りにある異世界の
国も混沌とする。
整理整頓され綺麗な場所では、異世界も秩序あり平和な状態が維持される・・。
異世界の住人から人は「神」として、人から異世界の住人は「妖精」として認識される。
自分の行動や部屋に置くものが、異世界にいろいろ影響を与え、確かに、
「妖精発生装置」のを使うと、人々は気まぐれな神のような立場になれる・・・。
流行りは終わってしまったが、それを使い続ける主人公・・・。

「猿が出る」視界の中に猿が出現するようになった主人公。
最初は、ストレスによる幻覚かと思っていたが、幻覚の猿は、徐々に進化していることに
気がついた・・・。

「三千世界」並行宇宙から来た人物に、しばらくの間交換渡航して欲しいと持ちかけられた主人公。
しかし、借金に追われる現実から逃れるため、平行宇宙を行き来するナビゲーターを
奪い、平行宇宙を次々と渡り歩くことに・・・。

「満月(フルムーン)」:タイの南方にある島に旅行した男が思うことは・・・。

自分が神のような存在、部屋を掃除したり、指輪をおいたり・・・そういう些細なことが異世界へ
多大なる影響を与えることができる「神の創造」は、あとがきにもあったけど、
ドラえもんの世界みたいで、ミニュチュアの世界を構築していくような楽しさがあって面白かった。
他の作品も、カツカツと科学交渉したり、設定をがっちり作ったりしたというよりは、
「こんな世界があったら」という、「ドラえもん的」というか、「おとぎ話的」というか、そんな印象。

次々に書き換えられる現実を描いた「オニキス」や、自分の世界と、ちょっとだけ違う世界
(通貨が違ったり、首都が関西だったり・・・)を渡り歩く「三千世界」も、
次々と移り変わる現状・世界の様子が面白かった。

でも、描かれる世界、アイディアは面白くても、ストーリーの方は、ちょっとまったりしていて
(よく言えば、優しいというか、語り口が甘いというか)、自分的にはすっきりせずイマイチ。
多くの主人公が、大変な状況でも、大きく動かず流されてる・・・って印象なのが、
すっきりしない理由かも。

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