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「SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと」チャールズ・ユウ著・円城塔訳:仮想空間+タイムマシンもの。円城塔が好きな人に♪ [本:SF]

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 作者: チャールズ・ユウ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/06/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.5点

建造中に若干の損傷を受け、途中で開発計画を放棄された「マイナー宇宙(MU)31」。
作業が中止された時点で、物理法則は93%しかインストールされていなかったため、
予想不可の現象が起きる。
主人公チャールズ・ユウは、タイムマシンの修理とサポートの為、TM31-娯楽用タイムマシンに乗り、
サポートコンピューターのアニメのお姫様声で自己評価が低く泣き虫でも、一生懸命
のタミー(ビジュアル的には「眼鏡っこ」か?)と、不実在犬エドと一緒に、
「現在-不定形」の無時制の状態で10年近く過ごしている。
タイムマシン開発の研究をしていた主人公の父は時空のどこかに行ってしまい失踪。
母は、心を病み「60分の切り取られた時間の中」で、幸福な時間をループして過ごす施設で暮らす。

「タイムマシン」は、過去を窓から覗き見るようなもの・・・という設定なので、
タイムパラドックスものではなく、量子力学を基調とした多次元宇宙論がベース(?)。

舞台となる宇宙も、「タイム-ワーナー・タイム社」が所有する宇宙であり、
その宇宙に関して、「ニューヨークとロサンゼルスが不可視的に非可逆的にマージされ、
ハワイとアラスカも飲み込み、かつてアメリカであったものを包括した一つの巨大都市」
「グレーター・トウキョウが時空断層にそって自発的に分岐し、一つのトウキョウは地球を横断し、
もう一方は位置を確定されずロスト・トウキョウと呼ばれている」・・・と、部分的には
描かれているが、がっちり書かれているわけでもない。

きっちりしたハードSFではなく、後書きにあるように、SF風な純文学に近い内容。

断片的に語られる、でもトータルの量は膨大な、タイムマシンの原理、この宇宙の様子、
この世界の主軸をなす「継時上物語学」・・・・の合間をぬって進んでいくのは、
主人公の、少年時代、家庭環境、孤独な人生、そして父親探しのストーリー。

で、読み始めて、「すっごく円城塔っぽい!」と思ったら、訳が円城塔でした(^^;)。
今までの彼の作品と同じく、リズム感のよい、フワフワした、でも掴みどころがないような
不思議な文章で語られてます。
どうも、原文もそんな感じなので、円城塔訳というのは、正解なのかもしれない。
でも、円城塔の作品に比べると、主人公であり、作者と同じ名前のチャールズ・ユウ、
個人の人生を深く追った作品。
円城塔は、登場人物の一人の物語をじっくり掘り下げるというよりは、世界観書きという印象が。

内容も、わかるようでわからない部分が多数で、人を煙に巻いた印象。
それでも、このとらえどころの無い話が、面白く感じるのは、円城塔の文章の魅力もあるのかも。

円城塔が好きならお勧めな気がする。

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