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「帰還せず-残留日本兵 六十年目の証言」何故兵士達は日本に還らなかったのか・・ [本ノンフィクション:戦争・戦記]


帰還せず 残留日本兵 六〇年目の証言

帰還せず 残留日本兵 六〇年目の証言

  • 作者: 青沼 陽一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/07/28
  • メディア: 単行本


7.8点

戦後日本に還らず現地に留まり生活を続けた残留日本兵へのインタビューをまとめた本。
帰還せず―残留日本兵六〇年目の証言 (新潮文庫)」(文庫版)も出てます。


著者はタイ、ベトナム、インドネシアなどに赴き、高齢になった残留日本兵に、
何故日本に還らなかったのかを繰り返し問う。

戦後60年ということもあり、生き残っている残留日本兵は少なく、みなかなりの高齢。
その人達が、何故日本に還らなかったか、戦中や終戦時の体験や気持ちも含め、
その思いを語っている貴重なインタビューでもある。

一番印象に残ったのは、激戦地であるタイ(撤退する最中に倒れた兵士が累々と転がり、
白骨街道と呼ばれるようになったインパール作戦があった)やベトナムに駐留していた兵士と、
ほとんど戦闘が無いまま終戦を迎えてしまったインドネシアの兵士の、
終戦時の気持ちの違いである。

激戦地では、敵の圧倒的な物量や、弾薬も食料も付き、先が全く見えない闘いに、
日本の負けを意識していた兵士も多かった。
戦争の行方より、自分が生きるか死ぬかそれだけで精一杯。
そんな中で聞いた8月15日の玉音放送(天皇の肉声による放送)。
呆然とした人も多かったろうが、やっと終わったと思った人も多い。

しかし、全く戦闘の無かったインドネシア駐留の兵士達は、
敗戦の予感を全く持たなかっただけに、玉音放送で日本の敗戦を告げられた衝撃は大きく、
自決するもの、自分達だけで戦おうとするものが多かったという。

激戦地の戦記物はかなり読んでいたけど、
インドネシアに関しては全く知らなかったので、自決するものの多さは衝撃だった。
また、激戦地のような混乱もなく、軍隊内の統制が取れていたため、
敗戦後、今まで厳しかった軍内部の上下関係が、
突然崩れてしまったことに衝撃を受けたと述べる残留兵もいた。

日本に還らなかった理由は人それぞれ。
インドネシア独立軍に入り戦いを続けるのを選んだ人もいれば
(インドネシア独立軍に入り戦った日本兵は多かったらしい)、
日本に戻って婿になるのだけは嫌だ(長男ではなかったため)と残った人もいる。

日本はアメリカ兵に占領されて何もないからという理由もあるし、
やむにやまれぬ事情から残らなければならなくなったという人もいる。
一度日本に帰ったが身内から見捨てられ、また戻ってきたという人や、
「日本人なら生きて帰るな」との思いで日本を離れたのに、
敗戦して戻れるわけがない・・という人もいた。

日本に帰還しなかった理由も、現地での生活もみな違うが、
みな、現在の生活に満足し、それでも日本も愛しているというのが印象的だった。

祖国ではない国で激動の時代を生きた人々の言葉から伝わってくる強さや生き様は、
先が見えず暗いと言われている現在を生きる私達を勇気づけてもくれる。

お勧め!!

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