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「戦場の掟-Big Boy Rules-」スティーヴ・ファイナル著:イラク戦争で暗躍する傭兵。その問題点とは・・・。 [本ノンフィクション:戦争・戦記]


戦場の掟

戦場の掟

  • 作者: スティーヴ・ファイナル
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/09/25
  • メディア: 単行本
7点

2008年度ピューリッツァー賞受賞作品。

イラク戦争では、「民間警備会社」の「傭兵」達が大活躍している。
物資輸送や要人の護衛をし、アメリカ軍ですら、それに頼っている。
彼らは、戦死者にはカウントされない。
アメリカ兵の何倍もの傭兵が亡くなっている。
一番の問題は、傭兵達が、法律に縛られていない事だ。
我が物顔で好き勝手に振る舞い、時に民間人を殺し、理由もなく気まぐれに殺したとしても、
その行為は罪に問われない。
副題の「Big Boy Rules」は、強いものが法律!それをイラク国内で実践しているのだ。
アメリカは、その傍若無人な行いにも、見て見ぬふり。
特に、アメリカ国務省などと強い結びつきがある「ブラックウォーター」社は、
イラクで好き勝手しているが、止める術は無いという。
そして、イラク国民に、アメリカなどへの憎悪を埋め込んでいく。

チェイニー元副大統領が、この民間警備会社で大儲けしているというのを以前読んだ。
大量のお金が使われる戦争。
それらが、この数も把握できず、出来たり消えたりしている民間警備会社へと注ぎ込まれている。
正規軍の死亡者数が増える事を嫌った(国民のイラク戦争への反発を抑える為)為、
このような法律無視、規律も無い民間護衛会社が幅をきかせる結果になってしまったのかもしれない。

軍隊と違い、互いを信頼することも無く、厳しい規律も無い傭兵システムの問題点や、
その危険過ぎる任務と、危険な任務を行うには足りない装備や計画を、取材の中、感じる著者。
そのような中、傭兵5人がトレーラーの護衛中襲撃され、誘拐されるという事件が起きた。
アメリカ兵が誘拐されれば、全力をあげて捜索するアメリカ軍も、
傭兵の誘拐事件では積極的に動こうとしなかった。

誘拐された5人と関わりがあった著者は、この誘拐事件を、
傭兵の家族の様子も含め追い続けた。

大まかな内容は上記した感じ。

しかし、この本、とても読みにくい。

訳のせいもあると思うけど、何の説明も無く、脈絡なく傭兵何人かの人柄やプロフィール、
彼らと話した事が長々と綴られ困惑。
中盤過ぎに、長々と紹介されていた傭兵達が、誘拐拉致事件の被害者だとわかったのだが、
この事件、アメリカでは有名なのかもしれないが、私はほとんど知らなかったので、
何で、次々に傭兵の人生とか家族の話が語られるのか戸惑ってしまった。

また、イラクでの傭兵の民間人に対する残虐な行為を紹介しつつも、
視点が傭兵側なので、傭兵が存在するという事自体が問題である事、
いつも危険に晒され、誘拐されても真剣に捜索して貰えない傭兵の置かれている危険な立場、
そのどちらが中心なのか、曖昧になってしまっている。

傭兵がイラクで行っている法律を無視した行いのほうが問題だと思うのだが、
著者が書きたかったのは、誘拐される直前まで行動を共にしていた傭兵達だったからかもしれない。
私が重視した部分と、著者が重視した部分が違ったというか。

今回登場するアメリカの傭兵達は、刺激を求めて、高額な報酬を求めて、
理由はいろいろあれど自ら志願して戦場に行っている。
この本では取り上げられていないけど、イラク戦争で基地で土木工事をしたり、
戦うのではなく雑用をさせられている人々は、いろいろな国から集められ、
働く場所がイラクだと知らされないまま連れてこられた人も多いという。
そして、過酷な環境でバタバタ死んでいるという。
もちろん、彼らもイラク戦争の死者にはカウントされない。

戦死者の数を少しでも減らしたい、対面を保ちたいという各国の思惑が、
ますます状況を悪化させ、真実を闇に葬ってしまっていると思った。

この本で語られているのは、イラク戦争の闇のほんの一部だと思うけど、
その一部を知るだけでも、重い辛い気持ちになるのは確か。

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コメント 4

ufavan

みんなが世界平和を願う一方で
戦争で利益を得る人がいて それに群がる労働者が居て・・・
殺すのが楽しいってヤツまで居てーー;

人が居る限り 平和なんて・・・って思ってしまうのは
こう言う所 なんですよね。

内容を聞いてるだけで 重い気持ちになります orz

by ufavan (2010-07-05 08:13) 

rudies

大昔読んだ落合信彦の「傭兵部隊」
フレデリック・フォーサイスの「戦争の犬たち」
ホントに若い時の何も知らない者だったので
カッコ良いなあと思ったものです。(^_^;)

映画「ハートロッカー」にも出てきました。

実のところ、戦争を起こす国、政治家が居る限り
傭兵という職業は無くならないと思います。
by rudies (2010-07-05 10:49) 

choko

ufavanさん

そうなんですよね~。
人間がいる限り・・・ってのは私も思います。
「ハーモニー」みたいな世界になれば、なくなるのかもしれませんが。

戦争ものは、視点によっては、ほんとどんよりしちゃいます(>_<)。
by choko (2010-07-05 11:42) 

choko

rudiesさん

傭兵の会社もいろいろで、軍隊みたいに規律がきちんとしている所も
あれば(カッコいいと思うのはこちらでしょう)、
何をやっても・・・のところもあるようで。
特に、上記にも書いてある、最大手のブラックウォーターは
酷いらしく、その上、どこも手を出せない・・ってのがやるせないです。

傭兵が必要であるなら、それをしっかりコントロールして欲しいですよね。

by choko (2010-07-05 11:45) 

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