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「さよならタマちゃん」武田一義著:漫画家アシスタントのがん闘病記!支え合える相手がいるって素晴らしいっ! [本:コミックエッセイ]

さよならタマちゃん (イブニングKC)

さよならタマちゃん (イブニングKC)

  • 作者: 武田 一義
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/08/23
  • メディア: コミック
9点

35歳で漫画家(帯によると「GANTZ」の奥先生らしい)のアシスタントをする著者に
宣告されたのは、睾丸のガン、精巣腫瘍。
早期発見なら生存率も高いガンだけど、著者の場合は、肺への転移も認められ、
抗癌剤による治療に入ることに・・・。
なかなかデビューできなかった現実、体をボロボロにする抗癌剤治療、酷い副作用・・・
それでも頑張れたのは、待っていてくれる人がいたから。
そして、ガン病棟で同じように頑張る人たちに会えたから・・・。

雑誌連載中から読んでいて、単行本の発売を楽しみにしてました(〃∇〃)!
辛い辛すぎる現実、そして想像を絶する抗癌剤の副作用、葛藤、死への覚悟・・・・、
重い部分もたくさんあるけれど、治療歴は長いけど明るく病室を仕切る「主」桜木さん、
検査入院で癌決定!超ハイテンションで、強がりを言いまくる大和田さん、
手術前は冷静、傷の治りが悪く治療が長引いたら卑屈になってしまった林さん、
超亭主関白な遠山さん・・・etc、様々な個性を持つ入院患者さんやその家族、
看護婦さん、そして自分の奥さん達への温かい著者の眼差しが心地よく、
心がじんわりじんわり温かくなるコミックエッセイ。

1話目が試し読みできるので、少しでも気になった方は、
モーニング、アフタヌーン、イブニング合同Webコミックサイト『モアイ』
(スクロールして見られるタイプ)
イブニングスペシャルサイト 
(ページをめくるタイプ)
を、是非(〃∇〃)!
とにかく、いい話です♪

抗癌剤の治療は恐ろしいほどに体を蝕むというのは、若くして癌で亡くなった伊藤計劃の遺作集
伊藤計劃記録:第弐位相」(リンク先感想)で知っていた。
癌が体を蝕むように、癌と一緒に健康な細胞も、内側からジワジワ破壊していく抗癌剤。
小説家の書く抗癌剤の副作用は、その表から見えない部分を感じさせてくれた。

しかし、こちらは、具体的な症状、辛さ、その時の気持ちが淡々と描かれ、
それはそれで、抗癌剤による治療の大変さを教えてくれる。
何も食べられないほどの吐き気に関しては知っていたけど、
味覚が変わってしまうこと(普通の食事が「泥の味」に感じられたりしまずくて食べられない)、
塩気の強いもの、カップヌードルやポテトチップなどのジャンクフード、
柑橘系などの飲み物なら、どうにか食べられる事など、知らなかった事がいろいろ。

そういう癌の治療や入院に関する事を知るにも良い本だけど、この本のメインは、
1人1人が持っている人生の重さや、家族や人とのつながり。

人は元気な時は、一人でも生きられる。
でも、先の見えない病気になった時、自分を支えてくれる、待っていてくれる家族の存在の
大きさがひしひしと伝わってきます。

1話に出てくる遠山さんは、超亭主関白で、毎日わざわざお弁当を作って運んできてくれる
奥さんを怒ってばかり。
でも、その2人の姿から、長年連れ添った夫婦の強い絆と愛情を感じ取る著者。
自分の祖父と祖母もそんな感じだったので、すごくよくわかる。
亭主関白で、頑固、私にとっても怖い存在だった祖父の、祖母が危篤になった時の必死な姿。
祖母が亡くなったのも悲しかったけれど、あまりにも悲しそうな祖父の姿もまた辛かった。

自分が死んだ時、妻がどれだけ悲しむかと想像し、妻より少しでも長く生きたいと望む著者。
この気持ちもすごくわかる。
大切な人を、悲しませることはしたくない。
生きることの意味、自分の為だけに生きるのではなく、人の為に生きる、人は支えあって生きている・・・
そういう気持ちを実感させてくれる本です。

結婚は、損か得かという話をたまにみかけるけど「損得」だったら上手くいかないんだと思う。
損得考えず相手を支える、思いやる、その気持ちをお互い持てるかってのが大切だなと、
思える本でもあります。

もう一つは、大きな壁が目の前に立ちはだかっても、人は前に進める事。
35歳で漫画家のアシスタント生活・・・著者は自分の将来に不安を抱き始めています。
そんな状況での精巣腫瘍発覚。
病気への不安、将来への不安、そして闘病生活の厳しさ・・・絶望的な状況で、
それに飲み込まれたりしつつも、少しずつでも一歩一歩と進もうと決心する著者の姿には、
励まされます。
大変な時、それに飲み込まれることはあるでしょう。
でも、その後、全てを投げてしまうか、もう一度前進できるかは、本人の考え方次第だと思いました。
もちろん、著者が1人でそれをできたわけではなく、そこには奥さんの手助けがあったからなんですが。

3人に1人は癌で死ぬ日本。
癌は身近な問題。
癌の治療について、知ることもできるし、それだけではなく、笑えて面白くて、
でも、いろいろ考えさせられて、感動する、そして登場人物達の優しさに心が温かくなる・・・
とてもとても良いコミックエッセイです(〃∇〃)!
すごくすごくお勧め!

そういえば、認知症も、80歳半ばには3~4人に1人と身近なもの。
認知症になった母親と、独身の息子のやりとりをほのぼの描いたコミックエッセイ
ペコロスの母に会いに行く」もお勧め(^-^)ノ。
認知症に対応する事の大変さ、でもその大変さの中でも幸せを見つけ出す著者の姿が胸を打ちます♪
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