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「他人事」平山夢明:現代の殺伐とした雰囲気を感じるホラー [本:ホラー&ミステリー]

他人事

他人事

  • 作者: 平山 夢明
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 単行本

8点

あけましておめでとうございます。

2008年最初に読んだ本がこれだというのは、いいのか悪いのか(^^;)。

でも、なかなか楽しめました。

今まで出ている短編集「独白するユニバーサル横メルカトル」「ミサイルマン」に比べ、スプラッタ描写が少なく、人間の持つ嫌な面、現代の殺伐とした人間関係、無関心、そんなものを感じさせる作品が多い。

表題作でもある「他人事」は、交通事故で車に閉じ込められた男女の話。自分達も酷い怪我をしながらも、外に放り出された女の子を気にかける2人。事故を発見した男性に、必死でいろいろと頼むのだが、男はこの緊急事態に陥った3人に対し、非協力的だった・・・。

他にも、引きこもりの息子を憎悪する父親の話や、定年退職を迎えると社会的保護を全く受けられなくなってしまう世界に生きる男の話、生徒複数から自殺予告を受取り、いじめの大元を突き止める為奔走する教師の話・・・など現代文明が抱える闇の部分をカリカチュアしたような作品が多い。

キレイにまとまってしまっている作品が多く、「独白するユニバーサル・・」に比べ意外性という面では弱いが、全体的に良いでき。

平山夢明の作品は、陰惨なスプラッタシーンが長すぎて苦手・・・なんて人でも楽しめると思う。

 


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「アイズ」鈴木光司:地味で怖くない [本:ホラー&ミステリー]

アイズ (新潮文庫 す 11-8)

アイズ (新潮文庫 す 11-8)

  • 作者: 鈴木 光司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 文庫

6点

 

日常に潜む恐怖を描いた短編集。

すっごく久々に鈴木光司の作品を読んだ気がする。

鈴木光司と言えば「リング」「 らせん」などで一世を風靡した作家だけど、私は「ループ」でホラー作品だったこのシリーズがSFっぽく変化してしまったのを「こういう展開はないでしょ?ホラーならホラーらしく終わって欲しかった!」 と怒って、その後離れてしまっていたのだ。

では、何で今頃読んだかと言えば、既に上記の事を忘れてしまっていたから(^^;)(「リング」「らせん」「ループ」どれも単行本発売とほぼ同時に読んでたので、読んだのはかなり昔)。

「何でずっと鈴木光司の作品を読んでなかったんだろ?」と考えてみて思い出したという。

いやーー、歳をとると怒りを持ち続けるパワーも記憶力もなくなりますね(爆)。

で、久々の鈴木光司作品なんだけど、面白かったかというと、そうでも無かった。
一言で言うと地味。よく言えば上品。
 
「謎→解明」というパターンは王道なんだけど、解明(オチ)の部分にインパクトが無い。
明らかに予想がつくオチであったり、「ふーん」で終わってしまうようなものであったり。
 
オチがイマイチでも、物語の経過で恐怖を与えてくれるものもあるが、普通の生活をしていて、ふと遭遇した不思議な出来事という内容が多いので、それも弱い。
 
全体に「生きるという事」というテーマが散りばめられていて、その部分はちゃんと伝わってくるんだけど、私が読みたかったのは、そんなテーマを訴えかけてくる作品では無いのだ。
 
ホラーをあまり読まない人がちょっと怖い話を読んで見たいな、って時に読むのがいい本なのかも。
 
B級ホラーのドロドログチャグチャの描写や、とんでもない展開や予想もできないオチに慣れた私にとっては、非常に物足りない作品だった。
 

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「壊れた少女を拾ったので」ガーン「弁頭屋」と同じ本だった・・・ [本:ホラー&ミステリー]

壊れた少女を拾ったので (角川ホラー文庫 123-2)

壊れた少女を拾ったので (角川ホラー文庫 123-2)

  • 作者: 遠藤 徹
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 文庫
 
 
「遠藤徹の新刊だーーーV(≧∇≦)V!」と、文庫だったのもあって内容をちゃんと確認しないで買ったら、単行本の「弁頭屋」と同じ内容の本だったよ・・・_| ̄|○。
 
よくよく考えて見れば、この文庫のタイトルになってる小説を読んでた。
 
「弁頭屋」は図書館で借りた本だから、ダブって持つ事になった訳ではないんだけど、やっぱりショック。
同じ本は、同じタイトルで出して欲しいよな~(>_<)。

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「鼻」曽根 圭介:久々に面白いホラーに出会った(^^) [本:ホラー&ミステリー]

鼻 (角川ホラー文庫 127-1)

鼻 (角川ホラー文庫 127-1)

  • 作者: 曽根 圭介
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 文庫
8点
 
「暴落」「受難」「鼻」3篇の短編を収めた短編集。
 
「暴落」は、その人の価値が「株価」として評価される社会を描いている。
自分の「株価」をあげる為に、人に親切にし、友人を選別し、家族すらも自分の株価を維持する為に切り捨てる。
そんな社会で、エリート街道を歩む主人公を襲った悪夢。
社会風刺色が強い作品。誇張はされているが、現代社会とリンクする部分が多いのが怖い。
 
 
「受難」は、目が覚めるとビルの谷間にある空き地に手錠でつながれていた男の話。
 
 
「暴落」と「受難」は、人間の孤独感、ヒリヒリするような焦燥感、無力感・・・そういうものが作品全体を覆っていて、読後も後を引く。
 
 
「鼻」は、人間が「ブタ」と「テング」との2つの種族に別れた世界を描いている。
2つの種族の違いは「鼻」だけ。
「テング」は「ブタ」に迫害され、捕まれば強制収容所に入れられてしまう。
医者である主人公は、違法なテング→ブタへの手術を依頼されるが・・・。
 
この作品は、他の2つとは違う別の雰囲気がある。
 
 
3篇ともクォリティが高く面白かった。
 
 
幽霊などは出てこないが、人間の奥底にある醜さ、怖さを見せてくれ、どれも印象深い作品となっている。
お勧め!!
 
 

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「エデンの黒い牙」 [本:ホラー&ミステリー]

エデンの黒い牙

エデンの黒い牙

  • 作者: ジャック・ウィリアムスン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/05
  • メディア: 文庫

7点

 

 

砂漠で人類の歴史を覆す発見がされた。その事を発表している最中、発掘の責任者である博士は、記者たちの前で不可解な死を遂げる。博士が持ち帰った遺物の秘密とは。その秘密が明らかにされる事を阻止しようとする組織とは。そしてその組織が崇拝する「夜の子」とは・・・。記者である主人公は、その謎を探っているうち、恐るべき真実を知る。

 

後書きを読むとすごく面白そうなんだけど(先に後書きを読んで、読む気になった)、ちょっと期待外れ。

書かれた当時は斬新だったのかもしれないけど、今読むと・・という感じである。

アイディア勝負は、年月が経っちゃうと辛いものがあるのかなぁと、読了後思ったけど、H・G・ウェルズの「神々の糧 」なんかは楽しめたから、それだけが理由じゃないらしい。

ライカンスロープの話ってあまり食指をそそられない、好みじゃないというのも大きい気がする。

生物が巨大化するパニック映画は好きなので、「神々の糧」は楽しめたのかもしれない。この作品は、センスオブワンダーが溢れてるので、そこも良かったんだろうけど。 

そうそう、主人公がウジウジしているのも、個人的にダメだった。「もっと自分を持て~!!」と読みながら思ってしまった。

でも、駄作という訳ではないので、ライカンスロープなどの話が好きなら読んでもいいかもしれない。

 


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「ミサイルマン」平山夢明らしい短編集 [本:ホラー&ミステリー]

ミサイルマン―平山夢明短編集

ミサイルマン―平山夢明短編集

  • 作者: 平山 夢明
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/06/20
  • メディア: 単行本

7点

 

 

独白するユニバーサル横メルカトル 」で、このミス一位をとった平山夢明の短編集。

傾向としては「独白する・・・」と同じで、拷問・虐殺などの残虐シーンや、グロシーンが多い。「独白する・・」が楽しめたなら、楽しめると思う。

ただなんというか、地図の独白で進む話があったり、シニカルな視点の作品があったり、印象に残る短編があった「独白する・・」に比べると、平凡な気がする。佳作ぞろいというか。

 

タイトルにもなっている「ミサイルマン」に出てくる、ちょっと頭の足りなさそうな青年のキャラクターはよかった。平山夢明はこういうタイプを書かせると上手いなぁと思う。

 


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「感染」映画のノベライゼーション [本:ホラー&ミステリー]

感染―J‐HORROR THEATER (角川ホラー文庫)

感染―J‐HORROR THEATER (角川ホラー文庫)

  • 作者: 塚橋 一道
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/09
  • メディア: 文庫
  • 4.5点

 

映画「感染」のノベライゼーション。

少し前、間違って仙川環の医療サスペンス「感染 (小学館文庫) 」を読んでしまったんだけど、これはちゃんと映画のノベライゼーションだった。

でも、映画の脚本を元に、それを忠実に小説にしているだけで、映画で曖昧だったラストがほんの少しだけわかる・・程度のもの。

映画を見た後読んでも、特に発見は無く、この小説を読むなら、映画を見た方が何倍も良いという感じ。イマイチ。

 

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「死者の体温」動機無き連続殺人者の日記 [本:ホラー&ミステリー]

死者の体温

死者の体温

  • 作者: 大石 圭
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1998/05
  • メディア: 単行本
6.5点
 
明確な動機も、感情もなく人を殺し続ける主人公。その殺人の日々を淡々と描いた作品。
 
サラリーマン生活をそつなくこなしながら、次々に人を殺していく主人公の日常が繰り返し語られる。その中で主人公は、自分の存在意義を、人を殺す理由を自問自答し続ける。
 
世の中で何ものとも置き換えられない「個人」の歴史を消す行為の偉大さ。逆に、1人が世の中から消滅したとしても変わらない世界の流れ。人の命の大切さ、はかなさを感じる話ではあった。
 
ただ、何も感じず人を殺すという主人公の内面が見えて来る後半、人間味溢れる態度をとったりする部分と、殺人をする裏の部分が上手く噛みあっていかなくなるのが気になった。もっと狂気に満ちた作品だと思っていたんだけど、きれいにまとまってしまったという感がある。
 
 
この作品と同じく、普通に仕事をこなしながら、無意味に連続殺人を繰り返す主人公の日々を描いた作品「アメリカン・サイコ〈上〉」の方が、その主人公の内なる狂気ぶりや、理不尽さが突出しており、そちらを読んだ後だと、同じような展開の作品の「死者の体温」のインパクトは弱まってしまう。
 
「アメリカン・サイコ」は、 本当に狂人の意識を覗き込んだような、無意味に長く細かい状況描写、嫌になるほど続く薀蓄・・・それが何度も繰り返される・・と、とっても読みにくいのが難点(一度投げました)。
 
狂気溢れる「アメリカン・サイコ」を読んでいなかったら、もうちょっと点数が高かったかも。

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「夏合宿」読後感の良いホラー [本:ホラー&ミステリー]

夏合宿

夏合宿

  • 作者: 瀬川 ことび
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 文庫
  • 7.5点

 

夏の合宿に1人遅れて参加した主人公が、夜の森の中で遭遇したものは??

 

怪談と妖怪話を合わせたような話が多い短編集。ちょっとクスッと笑ってしまうようなほのぼのした雰囲気が、この著者の作風なんだろう。

恐怖感は強くないけど、ほのぼのした雰囲気が心地よく、個人的には気に入ってしまった(^^)。妖怪話が好きな人に♪

 


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「くらら-怪物船団」好きな要素はいっぱいつまってるんだけど・・ [本:ホラー&ミステリー]

くらら―怪物船団

くらら―怪物船団

  • 作者: 井上 雅彦
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1998/12
  • メディア: 文庫
  • 6.5点

 

港町を襲う怪異。浜辺に次々と流れ着く異様な物。開発計画が神を怒らせたのか?祟り?呪い?

恋人の乗った船が沈没し、その港町に駆けつけた主人公の見た物は・・・。

 

奇怪なサーカス団、都市伝説、人を切り刻む連続殺人鬼、神社に祭られる異形の神々・・・。個人的には好きな要素がいっぱい入っているんだけど、どうものめり込めなかった。文章に、ホラー小説から漂ってくるウェット感というか、ジメジメした重さとかそういうのが感じられなかったのだ。ドライというかなんというか・・・。

いろいろな要素が詰まっている割には、大きな破綻もなく、最後まで飽きずに読めたので、及第点ではあるのだけど、何か物足りない。


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「騙し絵の館」伝奇小説を思わせるミステリー [本:ホラー&ミステリー]

騙し絵の館

騙し絵の館

  • 作者: 倉阪 鬼一郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 単行本
7.5点
 
 
この作品の前に読んだ「うしろ」が中途半端な内容だったのであまり期待しないで読んだ、倉阪鬼一郎のミステリー。
予想に反して、いい雰囲気の作品となっていた。
 
過去に脅える少女と、少女に忠実に使える執事、そして作品を発表しようとしない作家。巷を騒がせている連続少女殺人事件とこの3人の関係は??
 
本格派ミステリーを求めると物足りないと思うけど、伝奇小説っぽくて、とても良い。倉阪鬼一郎の文体の持つ雰囲気が良い方向に出ていると思った。
 
古風な館とそこに住む住人の怪しげな雰囲気を楽しんで下さい。
 
 

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「感染」ホラーじゃなくて医療サスペンスだった [本:ホラー&ミステリー]

感染

感染

  • 作者: 仙川 環
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/08/05
  • メディア: 文庫
  • 6点
 
ホラー映画に「感染」という未知のウィルスによる奇病の蔓延を扱った作品があり、それの原作かなと買ってみたら違ってた(←まぬけすぎ)。
 
映画「感染」は病院が舞台の、ドログチャ描写もあるホラーだったけど、こちらはそういう要素は全くない医療サスペンス。
 
主人公の夫は、離婚経験者。先妻の元にいる子供が誘拐され殺される。
同じ様に誘拐され殺害された子と、夫の子供には、移植手術を受けたという共通点が・・。誘拐事件当日、連絡が取れなかった夫はその後も不可解な行動を続ける。何故、誘拐された子供達は殺されたのか・・・。
 
移植絡みの謎が解き明かされていく辺りは「医療ミステリー」として面白く読めるのだけど、登場人物にあまり魅力が無く、ドラマ的に薄いのが残念。
軽く読めるという点ではいいかも。

 


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「サイレントヒル」ノベライゼーション [本:ホラー&ミステリー]

サイレントヒル

サイレントヒル

  • 作者: ポーラ エッジウッド
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 文庫
  • 5.5点
 
映画「サイレントヒル」のノベライゼーション。
映画の内容を追っかけているだけ。
これを読んで新たな発見があるわけでもなく、映画で表現されている怪しげなクリーチャーや変貌する街の様子を描ききっているわけでもなく・・・という事で、これを読むぐらいなら、映像の迫力がある映画を見た方が何倍もよい。
 
 

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「ジュリエット」切ないホラー [本:ホラー&ミステリー]

ジュリエット

ジュリエット

  • 作者: 伊島 りすと
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: 文庫
  • 6.5点
 
第8回日本ホラー小説大賞受賞作。
後書きによると、長編でホラー大賞を受賞したのは、「パラサイト・イヴ 」「黒い家 」そしてこの「ジュリエット」の3作品だそうだ。
 
個人的には、
人間の狂気の恐ろしさを描いた「黒い家」>>>バイオホラーというジャンルに脚光をあてた「パラサイト・イブ」>>>>>>>>「ジュリエット」という評価。
 
大賞受賞は、切な系の恋愛小説とホラーを絡み合わせたあたりが評価されたのか??? 
一応ホラーではあるが、恋愛小説という側面が強く、私の好みではなかった。
 
妻を亡くし、南の島のジャングルの中、開発が中断し放置されたゴルフ場の管理人としてやってきた男と2人の子ども。
島に着いてすぐ、老人から見てはいけないと忠告された、吊るされた貝殻から貝が抜け落ちる瞬間「魂抜け」を、彼らは目撃してしまう。
ジャングルに囲まれ人里から隔絶されたゴルフ場内のホテルで、彼らは不可解な出来事に次々に遭遇する。
 
作中でも触れられているが、舞台が孤立したホテルの中なので、映画「シャイニング」を思い出す。
最初は、確かに「シャイニング」の雰囲気が強くドキドキして読むことが出来た。しかし、それも中盤ぐらいまで。中心が切ない恋愛小説系にと移行してしまう。
 
ホラーティストの恋愛小説が読みたいのなら、いいのかもしれない。怖いのを期待すると肩透かしをくう。
読者を選ぶ作品だと思った。
 
 

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「独白するユニバーサル横メルカトル」異形の世界 [本:ホラー&ミステリー]

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

  • 作者: 平山 夢明
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/08/22
  • メディア: 単行本
8点
 
書店で「このミステリーが面白い」で1位の作品と紹介されてるのを見て、平山夢明がメジャーになってる~!!とびっくりした。
図書館で予約したら予約人数が多く、4ヶ月ぐらいまたされてしまった(^^;)。
表題作、「独白するユニバーサル横メルカトル」を始め、いろいろな趣向の短編集を集めた作品。
「独白するユニバーサル・・・」は、タイトルのまんま、地図の独白話。久々にメルカトルという言葉を見ました。地図が独白するって???と内容が想像つかないまま読んだけど、異色で面白かった。
他に、いじめられる子どもの話、拷問話、地獄の黙示録に出てくる密林の中の王国を思わせる話など、それぞれ趣向が違っていて楽しめる。どれにも共通するのは、ドロっとまとわりつくような重い雰囲気。血が飛び散る陰惨な描写も多いので、読む人を選ぶかも。
これが楽しめたら、長編の「メルキオールの惨劇 」もお勧め。個人的には、「メルキオール・・」の方が好き。
 

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「メドゥサ 鏡をごらん」井上夢人/面白いんだけど・・ [本:ホラー&ミステリー]

メドゥサ、鏡をごらん

メドゥサ、鏡をごらん

  • 作者: 井上 夢人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/08
  • メディア: 文庫
  • 6.5点

 

作家である藤井陽造は、全身をコンクリートで塗り固めるという奇妙な方法で自殺した。「メドゥサを見た」という謎の言葉を残して・・。作家の娘の恋人である主人公は、自殺した作家が最後に取材していた事を調査しはじめる。その時から、主人公の身の回りで奇妙なことが次々と起こり出す。続く怪死、記憶の喪失、取材先の村人の奇妙な対応・・・メドゥサとはいったい・・。

後書きに、この本の評価は高いか低いかで中間が無いというような事が書いてあった。残念ながら私は低い方。

後半近くまでとても面白く、ぐいぐい読ませてくれるし、その辺に作者の力量を感じるのだが、ミステリーから幻想小説へと変貌してしまうのがちょっと(-_-;)。幻想小説は、ちょっと苦手なのだ。でもミステリーとして、普通に終わっていたら、面白いけどずっと記憶には残らない、そんな作品になってしまったかもしれないと思うと、これはこれで作者の個性として認めるべきなのかも。

 


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「うしろ」倉阪鬼一郎 [本:ホラー&ミステリー]

うしろ

うしろ

  • 作者: 倉阪 鬼一郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 文庫
6.5点
 
女性専用マンション。そこに住む女性達は、毎夜悪夢に魘される。うしろから何かがしのびよる。うしろを見てはいけない。うしろを・・・。
 
夜中1人でシャンプーをしてるとうしろが怖い。鏡で自分を見てる時、鏡に写ったうしろにいる何かが見えたら怖い・・・うしろって怖いモノだと思う。この作品でもそういう部分を扱っているんだろうけど、どうもその怖さが伝わってこない。
 
呪いの正体が最初から見えているせいなのかも。緊迫感があまり無いのだ。それにマンションに住む女性数人にスポットを当ててしまっている分、感情移入もしずらく、「あーーー死んじゃった」ぐらいで終わってしまうのだ(^^;)。
 
倉阪鬼一郎の持ち味、言葉遊びや、漢字を使った仕掛けや演出などは面白かったが、作品全体にその雰囲気が漂うまでにはなっていなくて、平凡なホラーで終わってしまっている気がした。
 
とにかく怖くないってのが、問題。

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「香水-ある人殺しの物語」パトリック・ジュースキント [本:ホラー&ミステリー]

香水―ある人殺しの物語

香水―ある人殺しの物語

  • 作者: パトリック ジュースキント, パトリック・ジュースキント
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1988/12
  • メディア: 単行本
8点
 
原作を読んでから映画を見るか、映画を見てから原作を読むか悩んだけど、後者に。
私的にはその順番で正解だった気がする。
映画では「天才的な臭覚を持つ男」として、その才能から引き起こされる主人公の「行動」を中心に描かれていたが、原作の方はそういう行動を起こした理由もかなり描かれている。
映画の中では、トラが人を襲うのに思想的な理由がいらないように、主人公が香水の為に人を殺すのに対して深い理由は語られていない。しかし、主人公を不思議な存在として捉える事により、「香り」と「映像」に集約された演出がより生かされている気がした。
原作では、男の内面が描かれる分、掘り下げてあり、これはこれで面白く読めたが、もし小説が先であったら、映画を見て、主人公の掘り下げが足りない!と不満に思った気がするのだ。
原作の方も、不思議な魅力に溢れた作品で、ダークな御伽噺という側面を充分持っていて楽しめた。
 

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「黒娘」牧野修 エログロホラー? [本:ホラー&ミステリー]

黒娘―アウトサイダー・フィメール

黒娘―アウトサイダー・フィメール

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: 新書
  • 7点

 

モデルなみのプロポーションを持つアトムと、ロリータ系美少女ウラン。2人の行く先々には男達の惨殺死体が転がる。そんな2人を追う影の目的は?

感想を書くのに「どう書けばいいんだ~(>_<)」と悩んでしまった作品。

短編がつながるオムニバス形式で、一作毎に1人不幸を背負う女性が出てくる。その原因はどれも男。執拗なストーカーや露骨過ぎるセクハラ、そして女性を調教師飼う事を目的としている集団などに悩まされる女性を救うように、アトムとウランが男達を惨殺していくのだが、男性優位の社会にあぐらをかく男達を断罪する・・・というテーマでは無いと思える。

表向きは、男性優位社会に対する女性の闘いなんだけど、そこまで深い意味は無く、それは1つのエッセンスでしかないんじゃないかと・・・うーん、それとも深読みすべきなのか???やっぱり違うな。

そして、女性が読むとかなりイライラさせられるはず。ストーカーもセクハラも女性調教も、これでもか!!というぐらい男性の持つ嫌らしさ、醜さが強調されている。

そういうヤツラをアトムとウランがやっつけてくれるのは、悪VS善という構図でスカッとはするのだが、なんかモヤモヤーーとしたスカッでもあるのだ。アトムとウランに、悪いヤツをやっつけるという気持ちはなく、単に惨殺したいという理由で男達を殺しているというのが原因かな。

ただ、「蝿の女」でも思った事だけど、主人公であるアトムとウランというキャラクターに(特にウラン)怪しい魅力があるのは確か。牧野修は強い女性(それもS?)が好きらしい。

エロとグロが満載のホラーです。

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「くさり-ホラー短編集」筒井康隆 [本:ホラー&ミステリー]

くさり―ホラー短篇集

くさり―ホラー短篇集

  • 作者: 筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 文庫
  • 7.5点

 

筒井康隆の今までの短編の中からホラー系のものを集めた短編集。

筒井康隆に夢中になっていたのは高校生の頃なので、はるーーーーーーーーーか昔の話。「虚航船団 」以降は、あまり読まなくなってもいたので、読むのも久々。収録作品は以下の通り。

  • 生きている脳
  • 肥満考
  • ふたりの印度人
  • 池猫
  • 二元論の家
  • 星は生きている
  • さなぎ
  • 大怪獣ギョトス
  • 我輩の執念
  • 到着
  • たぬきの方程式
  • お助け
  • 怪物たちの夜
  • くさり
  • 善猫メダル
  • 「蝶」の硫黄島
  • 亭主料理法
  • アフリカの血
  • 台所にいたスパイ
  • サチコちゃん
「生きている脳」はかなり印象に残っていた作品だったのだけど、筒井康隆の短編だったのをすっかり忘れていた(^^;)。シュールな「ふたりの印度人」は久々に読んで笑ってしまった。数は多いけど、ショートショートも入っているので、ボリュームは普通ぐらい。
 
相変わらずカリカチュアされた醜悪とまでいえる生々しい登場人物達が大活躍。ホラーといっても、スラップスティック系、阿鼻叫喚系が多く、あれれ「母子像」と「佇むひと」が無いと思っていたら、この2作は「佇むひと―リリカル短篇集 」の方に取られていました。

筒井康隆とリリカル・・・あまり相容れないものがあるような気がして普通なら買わない気がするけど、この2作が入っているとなるとちと欲しい。「母子像」の方は、リリカル短編集の解説者の小池真理子さんのリクエストだったそうで、やられた~という気もします(^^;)。 


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「記憶の食卓」牧野修 食に対する嫌悪感全開 [本:ホラー&ミステリー]

記憶の食卓

記憶の食卓

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/09/26
  • メディア: 単行本
8点
 
名簿屋をしている主人公は、病的なまでにチャーハンが嫌いだった。ある日自分の詳細なデータが記載されている名簿を見つける。そこに載っているのは14人。しかし、自分以外の13人に全く覚えは無い。その上、名簿に載っている何人かは、連続殺人事件の被害者である事がわかる。危険を感じた主人公は、名簿に載っている人を次々に訪ねてみるのだが・・・。
 
拒食症、過食症、食にまつわる思い出せない嫌な記憶・・・何かしら食に関係するエピソードを交えながら話は進んでいく。
食べる事に関する嫌悪感が伝わってくる話。実際「食べる行為」というのは自分がする分にはいいけど、他人の行為なら気持ち悪い部分も多々あるものである。一度咀嚼された物は、自分が噛んだ物だとしても、汚いと思うし、嘔吐物も、排泄物も元は食べ物だ。
どこかの文化では、食事を人に見せる事は、排泄を見せる事より恥かしいとされると聞いた事がある(記憶が曖昧なので、本当かどうかわかんないけど)。
 
そんな食に関する嫌悪感をズルズル纏わりつかせながら、自殺、連続殺人事件、UFOと、話はどんどん進んでいく。
 
そして、本筋と平行するように進んでいく、もう1つの物語。この2つの物語の関係は?いろいろな要素が絡まりあい、状況が二転三転しながら話は進んでいく。なかなか読み応えがあるサスペンスミステリー。

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「ダークネス」倉阪鬼一郎 [本:ホラー&ミステリー]

ダークネス

ダークネス

  • 作者: 倉阪 鬼一郎
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/08
  • メディア: 単行本
  • 6.5点

 

立て続けに起きる原因不明の殺人事件。カレーがコトコトと煮える家庭で、突然妻が夫に襲いかかり、プロポーズの瞬間にプロポーズしてきた相手に少女が刃を向ける・・・加害者達には何の動機も見つからない。共通するのは、動脈を同じ角度で切りつけられている事と、加害者も犯行後すぐ心臓麻痺で死亡している事。人を殺人の衝動に向かわせるモノはなんなのか・・・。新種のウィルスなのか。この事件を担当させられた主人公は、事件の謎に迫る事ができるのか?

突然殺人鬼に変貌する平凡で善良な人々・・・という設定は同作者の「ブラッド」でも見られるが、オカルト色は「ブラッド」の方が強い気がする。どちらかというとホラーティストのミステリーサスペンスという感じか?

作品の途中途中に抽象的で事件を暗示する言葉が何度も挿入されているのが雰囲気を盛り上げるが、この著者の場合、他の作品でも使われているイメージと同じ様な物が使われている事が多い為、印象が重なりやすいのが難点。

倉阪鬼一郎の作品を始めて読んだ場合は、雰囲気に酔えるのだが、何冊も読んでいると「このイメージはあの作品でもあったなぁ」と思えてしまう。

そこそこ面白いんだけど、新鮮味があまり無かった。

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「蝿の女」牧野修 ブラックユーモア溢れるホラー [本:ホラー&ミステリー]

蠅の女

蠅の女

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2004/12/10
  • メディア: 文庫
8.5点
 
人里離れた所にある病院の廃墟探検をしていたオカルト部のメンバー。そこで、地中から光輝く男を掘り出す怪しい儀式を目撃する。そして次々に消えていくオカルト部のメンバー。儀式を行っていた怪しい女達に付きまとわれた主人公達は、助けを求める。主人公達の要望を聞き届け現われたのは「蝿の女」であった。
「救世主」vs「悪魔」という設定は割とあるが、悪魔側の「蝿の女」のキャラクターが凄くいい。オカルトホラーティスト満載なのに、とってもコミカルでスピーディー。そのバランスが取れていて、とてもいい味のホラーに仕上がっている。
主人公達を助けるのが「蝿の女」なので、ウジとかハエも大活躍。傷を直すのに傷口で蠢くウジ達。本来ならとっても気持ち悪いビジュアルなのに、ウジプリティー、ウジ頑張れ!とか思えてしまう。あっ、頑張るハエ達にもね(笑)。
「救世主」が、偉そうに説教を述べながら襲ってくるのも笑ってしまう。怖いのに笑える、そんなホラー。読んでいてとっても楽しかった。

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「病の世紀」牧野修 人体を発火させる黴、殺人鬼へと豹変させるウィルス・・ [本:ホラー&ミステリー]

病の世紀

病の世紀

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 文庫
  • 7.5点
 
 
人体発火を起こすカビ、黙示録の「666」を連想する形状をし、感染すると殺人鬼に変貌させるウィルス・・日本で次々に奇病が発生する。
奇病と、その背後に見え隠れする悪意ある意志という事で、ストーリーの流れは「傀儡后」を連想させる。
しかし「傀儡后」が、世界の終わりを予兆するような退廃的な近未来が舞台の近未来SFだったのと違い、こちらの舞台は現代の日本、「傀儡后」に比べるとホラーティストなバイオハザード物となっている。
電波系の人物とそれをウオッチするのを趣味としている人物が出てくるのだが、その描写は秀逸。
前半は奇病の発生、それと絡められた聖書の引用などホラー仕立てだが、後半は背後にある陰謀を探る事が中心となっているので、ホラーというよりサスペンス色が強い印象が残る。
もうちょっとホラーティストが強い方が好みだけど、バイオハザード系、奇病系は好きなジャンルだし、出てくる奇病はかなり独創的なので面白く読めた。

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「死の影」引っ越したマンションに隠された秘密とは・・ [本:ホラー&ミステリー]

死の影

死の影

  • 作者: 倉阪 鬼一郎
  • 出版社/メーカー: ワンツーマガジン社
  • 発売日: 2004/03
  • メディア: 新書
  • 6.5点

 

「ブラッド」で一躍脚光を浴びたホラー作家である主人公は(この作者の同名の小説「ブラッド」との関係は無い)、あるマンションに引っ越す。奇妙な紋章がそこかしこにあり、4階が立ち入り禁止になっているマンション。そして、そのすぐ近くに立つ新興宗教が経営する幼稚園では、園児が行方不明になる。

どうも印象が薄い本であった。ここに感想を書こうと思い立ったのだが、どんな話だったのか思い出すのにちょっと苦労してしまった。読んでまだ2ヶ月経ってないのに・・・。

部分部分は思い出せるし、個々のエピソードは面白いと思えるのだけど、全体の印象が散漫なのだ。何でだろ?単に物忘れが激しくなってるだけか??(゚_゚;)

いろいろ考えて見たけど、印象が薄いのは、詰め込み過ぎのせいじゃないかと思い当たった。

この作品では、宗教カルト、幽霊、サイコ殺人鬼、マンションに住む変な住人達など、いろいろな要素がギュっと詰まっているのだ。B級ホラーの要素盛りだくさんではあるのだが、逆に多過ぎて1つ1つが散漫に、その上、ラストではそれらを無理に収束させたという感じが拭い切れない。

あと一歩。


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「子守り首」童謡に隠された恐怖とは・・・ [本:ホラー&ミステリー]

子守り首

子守り首

  • 作者: 福谷 修
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫
7点
 
プロデューサーである主人公は、ある童謡を元にした「こもりくび」を新人歌手のデビュー曲として売り出す事になる。しかし、元になった童謡は、惨殺された女が死ぬ間際に歌った呪いの歌だという噂が。そして、曲を聴いた人々に次々と異変が・・・。
童謡というのは、何となく不気味な感じを受ける物が多い。そして、この作品では童謡の怖さが効果的に使われていると思う。
特に、「こもりくび」にまつわる噂の真相に主人公が近付いて行く辺りまでは、ぐいぐい読ませるものがある。「こもりくび」の発祥と関係があると思われる荒れ果てた廃村の描写は、不気味な雰囲気に溢れていて怖い。
「カゴメカゴメ」「とうりゃんせ」などに関しても少し触れられているが、ほんのちょっとだけ・・というのが物足りないのと、謎が解けていく過程が少し安易と思える部分があるのが残念だけど、最後まで飽きさせずに読ませてくれる、なかなかの佳作。

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「楽園の知恵-あるいはヒステリーの歴史」「アロマパラノイド-偏執の芳香」 牧野修 [本:ホラー&ミステリー]

楽園の知恵 -あるいはヒステリーの歴史

楽園の知恵 -あるいはヒステリーの歴史

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/11/26
  • メディア: 単行本
  • 8点

アロマパラノイド―偏執の芳香

アロマパラノイド―偏執の芳香

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 文庫
  • 6.5点
 
牧野修の短編と長編。
「楽園の知恵」は短編集。いくつかの章にわかれ、章ごとにかなり雰囲気が違う。
死体がいつまでも消えず、会話すらできる町の話や、狂人の妄想なのか、それとも現実なのか曖昧な世界など、ホラー系の話があるかと思えば、演歌と神秘主義との関係を鋭く(笑)追求したハチャメチャSF・・・etc、幻想、グロテスク、ナンセンスティスト爆発のエロ、バカSFなど、いろいろな話が楽しめる一冊。
この作者の作品は、ホラーの方が好きなのけど、今回はSFの方が面白かった。
特に科学の発展の途中で事故によりできてしまった、バイオ建材で覆われた島の内部での、バイオ家具達の話は、好み。全く人とは違う感性を持ったバイオ家具達の世界というのは、読んでいてワクワクした。

「アロマパラノイド」は、カルト宗教、UFOコンタクター、電波系の妄想、そして芳香が人に与える影響を素材にした、ホラーサスペンス(かなぁ?)。
血の芳香に見せられた連続猟奇殺人犯が書いた本に秘められた秘密と主人公の周辺で起きる不可解な出来事の関係は?という感じで、話は進むのだが、結局素材が生かされないままラストを迎えてしまった・・・という感じで消化不良。
「偏執」という言葉から連想するようなジメジメした狂気も感じられず、残念。

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「リアルヘブンへようこそ」「屍の王」「ファントムケーブル」他 牧野修 [本:ホラー&ミステリー]

屍の王

屍の王

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/09
  • メディア: 文庫
  • 8点
 
リアルヘヴンへようこそ

リアルヘヴンへようこそ

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 文庫

7点

 

スイート・リトル・ベイビー

スイート・リトル・ベイビー

  • 作者: 牧野 修
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 文庫 7.5点
  • ファントム・ケーブル

    ファントム・ケーブル

    • 作者: 牧野 修
    • 出版社/メーカー: 角川書店
    • 発売日: 2003/03
    • メディア: 文庫
    • 7点

    以前、「忌まわしい匣」を読み、面白かったので他の作品も読んでみたいと思っていた牧野修の作品をまとめて読んでみた。

    上記4点はホラーで、どれもなかなかの出来。

  • 「 リアルヘヴンへようこそ 」は、新しく開発されたベッドタウンに起きる怪異を描いた作品。
  • 悪意が街を覆い、人が徐々におかしくなっていく。しかしそれに気が着いているのは、少年と浮浪者達だけだった。
  • 人々が徐々に狂気に満たされていく過程は、そこそこ読み応えがある。
  • 外界と隔たれた街という点で、「ホームアウェイ 」に似ているのだが、後書きで作者も書いているのだが、日本国内でそういう街をあまり不自然ではなく作り上げているのには感心。
  • ただ、あまり閉鎖された街の怖さを感じなかった気がする。
  • また後半の闘うシーンは、もう一ひねり欲しかった気も。

屍の王 」は、壮絶な事件により娘を失った主人公が巻き込まれる恐怖を描いている。
娘を失った事から立ち直れない主人公が、ある小説を書き始める。そのタイトルが「屍の王」。
しかし、自分に「屍の王」を書かせようとする見えない力を感じ始め、以前同じタイトルの小説を書き、家族を皆殺しにした作家がいる事に気が着いた頃から、主人公は救いの無い運命の濁流に飲み込まれていく。
昔「屍の王」を書いた作家と主人公との関係は?「屍の王」を完成させようとする見えない力とは?愛娘を殺した犯人とは?
謎解きの要素も多く、かなり面白く読めた一冊。

スイート・リトル・ベイビー 」は、幼児虐待に主眼を置いたホラー。

我が子を虐待した過去がある主人公は、幼児虐待の電話相談の仕事をしていた。

保護され愛されるべき存在である幼児。そんな幼児を虐待をする親は何故存在するのか?

そんな疑問に答えを与えてくれる不可思議な事件に、主人公は巻き込まれていく・・・。

現実の幼児虐待の悲惨な状況を物語りに上手く織り込みつつも、愛すべき存在が、実は忌まわしい者であったらどうするのか?そんな日常に潜む恐怖を上手く描き出した作品。


ファントム・ケーブル 」は短編集。

「悪意」「異形のもの」などをテーマに、次々に惨劇が繰り広げられる。

忌まわしい匣 」の方が面白かった気がするが、こちらもなかなか読ませてくれた。

ちょっと小粒揃いかな?という気がするけど。


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「弁頭屋」「姉飼」遠藤徹 [本:ホラー&ミステリー]

弁頭屋

弁頭屋

  • 作者: 遠藤 徹
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/10/26
  • メディア: 単行本
  • 7.5点
 
姉飼

姉飼

  • 作者: 遠藤 徹
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 単行本
  • 7点
両方とも、異形の物を描いた短編集である。
「姉飼」で、「姉」という見世物にされ、串刺しにされる生き物の話を描いているように、遠藤徹は、普通の生活の中に異形の物を溶け込ませた話を書く。「何故?」という問いに答えはなく、異形の物達は、普通にその世界に存在するのである。
そこに広がるのは、血や臓物が溢れたおぞましい世界である。それを堪能したい方にお勧め。
ただ、短編集で、収録されている作品の傾向にばらつきがあり、ファンタジーっぽいのや、近未来っぽい作品、ドタバタ不条理物など、統一性に欠ける。
「弁頭屋」に収録されている「桃色遊戯」は、ダニが世界を破滅させる話で、生理的嫌悪感に満ち溢れた作品で、読んでいて体がムズムズしてしまった(^^;)。

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「ホームアウェイ」森村誠一 [本:ホラー&ミステリー]

ホームアウェイ

ホームアウェイ

  • 作者: 森村 誠一
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 文庫
  • 4.5点
 
 
郊外に憧れのマイホームを手に入れた一家。しかし、その団地への入居者が思ったように集まらず、予定されていたスーパーやバス、病院などの計画は立ち消えに。その上、テレビも見られなくなり、新聞も来なくなり・・文明と隔絶された陸の孤島のようになってしまった団地に住む一家を悪夢が襲う。
 
うーん、久々に外れという感じ
 
最初は、文明と隔絶される恐怖、広い家に移り住み家族が個室を持った事による一家断絶とその家の主婦の孤独、1人暮らしをする老人の悲劇などを絡めた、社会派ホラーなのかと思ったが、読み進んでいくと、それらはほとんど生かされず、途中から別の方に流れてしまった感じがする。
 
書かれたのがバブル崩壊直後ぐらいだったらしく、当時の郊外マンションの大量売れ残りが元になっているように思われる。そしてこの作品の舞台は、高尾山近辺のH市。どこをどうとっても八王子だ(^^;)。以前、入居開始後7年経っても空きが大量にあり、最大70%オフ(だったか?)で売りに出された公団マンションも八王子だった。
 
また、時代が1990年中盤の設定だと思われるのに、新居となった分譲マンション(作中では「団地」となっているが、「分譲される団地」というのも、これまた古い感じがする)の描写が、どう見ても30年ぐらい前の団地なのが気になった。
棟が階段で縦いくつもに分けられ、階段の両脇に部屋があるっていう団地スタイルは、10年ぐらい前の分譲マンションでは既に見られなかったと思う。なので、読んでいても、20~30年ぐらいまでの舞台設定で、現代の話を読まされているようで、違和感がずっとつきまとった。
横溝 正史が「白と黒 」という作品で、昭和30年代当時、庶民の憧れだった団地を舞台に起きた血なまぐさい事件を描いているが、「ホームアウェイ」の舞台である「団地」には、その年代の香りがするのだ。
現代社会に忍び寄る黒い陰を描いている前半部分は、このせいで、中途半端な感じを受けてしまう。
テレビが見られなくなるなんて件も、ちょっと無理があり、無理矢理文明から切り離した感じが強い。
 
また、次々と起きる事件は、新居に移った事により、文明と隔絶され、家族が断絶してしまう状況と根底であまりつながっておらず、現代風刺と思われる部分の設定は、最後に無理矢理のように使われただけ・・というのも悲しい。
 
 現代風刺みたいな部分を除いて、「ある平凡な主婦の体験した恐怖」を中心にして描けばもっとまとまりが出た気がする。
 

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