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「コケはともだち」藤井久子著:「これもコケなんだ!!」と、身近なのに知らないコケがよくわかる♪ [本ノンフィクションいろいろ]

コケはともだち

コケはともだち

  • 作者: 藤井 久子
  • 出版社/メーカー: リトル・モア
  • 発売日: 2011/05/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7点

コケ、すっごく身近なのに、見過ごしてる世界。
ちょっと散歩すれば、あちこちにコケ。
普通の植物だと思っていたものも、植木の鉢などにはえていた可愛い植物も、
知ってみると苔だったりする!
そんな、身近なのに気がついていなかった新しい世界を教えてくれる本♪

根っこは見た目だけの仮根(水を吸い上げる機能が無い)、維管束無しという原始的な構造。
下等植物なんて呼ばれているけれど、平和主義者で、他の植物が生えないコンクリートや
ちょっとしたすき間に、こっそりはえているコケ。
虫に食べられないように、自分自身をまずくしたコケ。

というように、作者のいっぱいの愛が感じられるようなコケの特徴が載ってます。

コケというと1cm前後、大きくても3cm~5cmくらいと思っていたら、
30cmとかあるのもあって、自分が高等植物だと思っていたものがコケだった!!
なんてのもこの本で知った。
子供の頃、祖母の家の庭などでよく見かけた可愛い雑草は「タマゴケ」というコケだったし。

前半は、上記のような、コケの簡単でわかりやすい説明。
後半は写真付きで、代表的なコケが、タマゴケなら
「天真爛漫で誰からも好かれるアイドル。でも朔をよく見ると、目玉おやじを連想させやや不気味」
なんて、擬人化されて面白おかしく紹介されている。
ギャグがかなり滑りがちなのが難点だったけど(^^;)、
コケってこんなにいろんなところにはえてるんだ!
こんなに種類があるんだ~!
これもコケだったんだ~!!
と、いっぱい発見があって楽しく読めました。

すぐに読めるし、外に出ればすぐに活用できるし、
これを読んであなたも身近なのに、知らなかったコケとおともだちになりましょう♪
お薦め(^-^)ノ。

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「無縁社会 ”無縁死三万二千人の衝撃」NKH「無縁社会プロジェクト」取材班編著:NHKスペシャルの単行本化 [本ノンフィクションいろいろ]

無縁社会

無縁社会

  • 作者: NHK「無縁社会プロジェクト」取材班
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/11/12
  • メディア: 単行本
7.5点

一人孤独に亡くなり、遺体の引き取り手も無い人が1年で三万二千人にもいるという。
それら「無縁死」した方達の生きた軌跡を、そして、孤独に生きる無縁死予備軍である人々を
取材・放送し、大きな反響を読んだ「無縁社会」の単行本版。

亡くなったあと、身元がつかめなかった人は「行旅死亡人」とされる。
第一章は、長年住んでいた賃貸アパートで亡くなったにも関わらず
行旅死亡人となった男性の、身元を追う章。
取材班は、あちこち取材して周り、どうにかその男性の本籍と本名を突き止め、地元秋田へ。
地元で家業を継いだが、連帯保証人となり破産。離婚し、都内へ出てきた男性。
そこで真面目に定年退職まで社員として働き、その後も仕事をしていた。
ここから見えてくるのは、地元を離れ都心に出て働く人の人とのつながりの弱さだ。
真面目に生きてきたのに、孤独に死んでいった男性。
男性の住んでいた古い古いアパートは、取材の後取り壊された。
そこに住んでいた人も同じような状況の人達。
一人は、行くあてが見つからず自殺したらしい・・・。

第二章は「薄れる家族の絆」として、遺体の引き取り拒否がメインの章。
身元が判明しても、親族から遺体の引き取り拒否される遺体が急増しているという。
年齢的に、引き取り手になるのは、甥や姪の世代。
「ほとんど交流が無かった」と引き取りを拒否する甥・姪の立場もわかる気がする。

独身の場合、あまり親戚付合いをしなくても済んでしまうのも理由だろう。
子供がいると、煩わしいこともあるけど、何だかんだと親戚付合いする機会が多い。
介護のケースでもそうだけど、独身や既婚でも子どもがいなくて身軽だからこそ、
意識して親戚付合いをしっかりしておかないと、あとで困る事になる気がする。

第三章は「単身化の時代-生涯未婚の急増」と題して、50代~60代以上の単身者の
置かれている現状を取材している。
ただ、現在この世代は、生涯単身ではなく、子供と別に暮らしていたり、離婚経験者が多い。
単身者の多くが健康を損なう事や孤独死を恐れて生きている。
また高齢の人ほど、足腰が弱ったり、体の不調からほとんど外出できず、
一人で過ごすことになってしまっている方も多い。
現在50代までに一度も結婚した事がない人は16%だが、この後急増し30%(女性23%)まで、
跳ね上がると言われている。
離婚率も上がっているので、50歳以上で単身の人の割合も今以上に増えるだろう。
単身者の増加で、家族のセーフティネットが急速に崩れていくことに対しての危惧が指摘されている。

第四章では「社縁が切れた後に」として、頼れる身寄りが無い人が頼るNPO法人についてや、
会社を退職(定年退職も含む)した後、孤立してしまう人々の話が語られている。

第五章では「おひとりさまの女性たち」がテーマで、何かあった時、身内の代わりをしてくれるNPO法人に
登録する女性たちの取材をしている。
女性の方が、男性に比べると生活設計もちゃんとしていて、
社会とのつながりも積極的に作っていく人が多い。
それでも、孤独な女性たちの姿を追っている。

第六章は「若い世代に広がる「無縁死」の恐怖」として、この番組を見て、
将来の自分の姿と重ね恐れる若者たちの声を、取り上げている。
ツイッターやネット上で呟かれる「無縁死」への恐れ。
既に孤独を感じ、ネット上でつながりを求める人々・・・。

「人と会わないのは寂しいけど気楽」、この言葉から、
無縁死予備軍が想像以上に多いのではないか・・・と本書では指摘している。

これは、本当にそうだと思う。
ネット上の付き合いは、面倒な事があれば、即付き合いをやめる事もできるし、
お互い遠慮して深く個人的な事を聞いてくる事もなく、ぬるま湯状態な事が多い。
この状態に慣れてしまうと、普通の人付き合いって面倒になっちゃうんじゃないかな・・と思ってしまう。
ネット上の付き合いは、気楽だけど、その分、脆く儚いものだと20年近くネットを使ってると思うし。

ネット社会の問題については2011年2月に放送された「無縁社会〜新たなつながりを求めて〜」で、
ネット社会に耽溺しているような人が取材されていたが、過剰演出だと被取材者達が抗議している。
この番組見たけど、その時は「ここまでネットに依存してる人がいるの??」ってびっくりしたので、
蓋を開けてみれば・・・というのも納得。

第七章では、一度社会から孤立した男性が、まったく赤の他人の一家の中に、
家族同様に迎え入れられた話が載っていて、唯一明るい展望が見える章だ。

無縁死も気になるけど、その前の状態も気になる。
家族や周囲に迷惑をかけたくない、ピンピンコロリ(元気に生きてコロっと死ぬ)が理想と聞くし、
自分でもそうありたいけど、ある本で、ピンピンコロリと逝ける人は40~50人に一人で、
残りの人は、病気になって入院したり、介護が必要になったりするそうだ。

人は迷惑をかけないで生きられない、だから人と積極的につながりを持ち、
迷惑をかけたりかけられたり、それが当たり前の社会にならないと、
高齢化社会の問題は無くならない気もする。

実際、若い内は、一人でどうにかなってしまう事が多いので、
「自分は人に迷惑をかけず頼らず生きている。だから人から迷惑をかけられるのもいや」という人も、
多いと思うのだが、独身の人が増えて(子育てする場合、どうしても人に迷惑かけたり、頼ったりが必要)
そういう意識の人が増えると、結局最期は、自分に帰ってくる、「無縁社会」がより広がる結果に
なってしまうと思う。

本当は、もっと国の福祉が厚くなればいいのだろうけど、今ですら全然足りない介護福祉費、
高齢化が進むこの先、悪くはなっても良くはならない気がする。
福祉先進国スウェーデンですら、地域によっては財政が厳しくなってるという
スウェーデンの高齢者住宅における栄養失調問題)。

ご近所コミュニティや身内との付き合いをしっかりする、貯金をする、健康管理をしっかりする、
この3点を自分で努力するしかないのかも。
70歳過ぎると、同年齢の友人も頼るのが難しい状態になったりするので(知人に後見人を頼むなら
20歳くらいは年下じゃないと厳しいという話もあるし)、
高齢になればなるほど身内やご近所コミュニティが大切だとも思う。
でも、高齢になってからそれを作るのも難しいので、30代・40代からの準備が大切な気が。

「無縁死」も怖いけど、そうなる前、介護が必要な状態で一人・・というのが、
これから先、福祉の破綻などの可能性も考え、怖い。
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「戦慄!世界怪奇ミステリー」「本当は怖い宇宙」コンビニペーパーバック本2冊 [本ノンフィクションいろいろ]

戦慄!世界怪奇ミステリー

戦慄!世界怪奇ミステリー

  • 作者: 監修:南山 宏
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2011/07/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
4点


本当は怖い宇宙―最新理論があなたの常識をひっくり返す!

本当は怖い宇宙―最新理論があなたの常識をひっくり返す!

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: イーストプレス
  • 発売日: 2010/05
  • メディア: 単行本
7点

最近、コンビニでよく見かけるのが500円~600円くらいのペーパーバック。
コンビニ販売専用の本。

「呪いの村」「知らなきゃよかった!本当は怖い雑学」などセンセーショナルなタイトルのものがいっぱい。
そういうのに惹かれてたまに買ったり、立ち読みしたりしてます(^^;)。
読み散らかしてるので、ここに感想は書いてないんだけど、2冊ほど紹介。

「戦慄!世界怪奇ミステリー」は
1章:心霊写真(エクトプラズムなど)
2章:霊界通信
3章:幽霊
4章:不思議現象(人体発火など)
5章:悪魔
6章:超能力
7章:奇跡
という、鉄板に王道なラインナップ。
その上、私が子供の頃、数十年前に見たこの手の本とあまり内容が違わない気が。
人体発火とかエクトプラズムとか、昔読んだ本にも同じ写真や例が載ってたぞ。
ちょっと言葉遣いが大人向けになってるけど、基本小学生が読んで「怖い~!!」って思うような内容。
真実かどうかの検証とかはほとんど無しで、「こんな事件や怪異があった」というのがメイン。
読んでて子供の頃にタイムスリップした気持ちになりました。
子供の頃は、こういうのを読んで、マジで怖いと思ったし、面白く読めたけど、
今は全然面白く思えなくて、それが寂しかった。
トラウマ映画館」と併読してて、「ルーアンの悪魔事件」ネタが丁度被ってたのが印象深い。

「本当は怖い宇宙-最新理論があなたの常識をひっくり返す」は、予想以上にまとも。
センセーショナルな書き方、ネタを選んではあるけど、「太陽の黒点の影響」「ダークマター」
「ビッグバンの前の無の状態があった」など、一般的な宇宙の話や、
最新理論がわかりやすく説明してあって、思ったより楽しめた。
逆に「トンデモ本系」を期待してるなら買わない方が吉!

続編「新・本当は怖い宇宙―最新の驚愕情報から宇宙の謎に迫る!!」も出てます。

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「人類が消えた世界」アラン・ワイズマン著:突然人類が消えた世界を多方面から検証! [本ノンフィクションいろいろ]

人類が消えた世界

人類が消えた世界

  • 作者: アラン・ワイズマン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/05/09
  • メディア: 単行本
8点

文庫版「人類が消えた世界 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)」も出てます。


人類がある時突然地球上から消滅したら、地球の、都市の姿はどう変貌するのか。
それを綿密にシミュレーションした本。

映画などで、倒壊したビル、荒れ果てた街・・・・荒廃してしまった近未来世界の姿を見る事は多い。

本書では、人が消えて放置された状態の田舎の一軒家が、風雨やカビ、
そして自然に侵食されて崩れていく様が目に浮かんでくるほど詳細に描写されている。

またニューヨークを例にして、高層ビルが、巨大な橋が崩壊する過程を、描き出す。
ポンプで水を汲み上げ維持しているニューヨークの地下鉄は人類が消えて数日で、
水に浸かってしまうという。

人間が作った建物で、最後まで残るのは近代文明の跡ではなく、
昔からある頑強な石造りの建物やカッパドキアなど地下にあるものだという。

それだけではなく、人類が消えた後、どのような樹木や動物達が繁栄するか、
人類がもたらした外来種の影響までも含め考察している。

また、紛争で打ち捨てられたキプロス島にあるあるリゾート地の様子から、
人がいなくなった街がほんの数年で廃墟になってしまう実例を紹介している。

著者は、現在のアフリカの生物の多様性に注目し、草食動物が草を食み、そこに木々が育つ、
育った木々を象がなぎ倒し、また草原になる・・ということに着目し、
移動する動物達が自然に与える影響が、環境の多様性を生み出し、
動物も多様になっていると考察する。
そして、動物だけでなく、マサイ族の放牧が、草食動物と同じ役割を果たしていると、
人間が自然と共存する姿も取上げている。
しかし、最近は政府の方針からマサイ族の定住化が進み、
象も己の安全のために移動範囲が狭まっているということから、その事の影響を心配してもいる。

農地は、人間が育てていた作物が数年で駆逐され、それでも尚、
そこで育てられていた作物の影響(土壌の性質が変化しているので)が何年も残るという。
犬は、ほとんど生き残れないが、猫は生き残るであろうという事も考察されていたりする。

人間が残した負の遺産、大気汚染や重金属の土壌汚染の影響がどれだけ先まで
(数千年から数億年・・・)残るか、また放置された原子力発電所や放射性廃棄物が
どのようなことになるかまでも、考察している。

この本の面白いところは、未来にだけ目を向けるのではなく、過去を振り返り、
人間がどれだけ自然に影響を与えてきたのかまで考察しているところである。

アメリカ大陸は、アフリカ大陸ほど動物の種類が多くない。
それはアフリカ大陸が人類の進化と動物の進化が同時に行われたのに比べ、
アメリカ大陸では、進化がある程度進んだ後、武器を持った人間が入って来たため、
多くの動物が絶滅させられてしまったのではないか・・という説を、
今までの人間が絶滅させた数々の動物達の例をあげ、説明している。

人間が一緒に連れて行った動物が、土着の生き物を絶滅させてしまった例や、
自然の姿が、人が木々を切り払い、耕作することにより、大きく変化した事なども述べられている。

しかし、人間が消えた後、自然は、いろいろな過程を経て本来の姿へと戻っていくという。
海もまた人類が消えた後、姿を変えるだろう。

またマヤ文明の崩壊の例をあげ、人類の未来をも考察している。
人類の未来の考察ではジャレド・ダイヤモンドの「文明崩壊」が詳しいが、
「文明崩壊」が楽観的未来感だったのに比べ、この著者の場合は、どちらかというと悲観的に思える。

子供を産むのを全人類がやめず、このまま増え続ければ、そう遠くない未来に地球は
人類を養いきれなくなるという説などが紹介されている。

この本は、作者の推測ではなく、それぞれの専門家にインタビューした内容が載っているので、
どの項目も詳細に説明されている点でも興味深く面白く読める。

壮大な仮説ではあるけど人類が消えた後の世界の綿密なシミュレーションや、
今まで人類が地球に与えた影響、そして今の状態から予想される未来の姿などを、
各専門家の意見を元に総合的にまとめた本。
お勧め!

読んだのが3年くらい前なんだけど、最近またちょっと読み返したので、
感想書いて放置してたのをサルベージ(^^;)。
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「住まいの解剖図鑑」増田奏著:住まい設計の基本を素人でも楽しめるように解説 [本ノンフィクションいろいろ]

住まいの解剖図鑑

住まいの解剖図鑑

  • 作者: 増田 奏
  • 出版社/メーカー: エクスナレッジ
  • 発売日: 2009/11/20
  • メディア: 単行本

7点

建築士である著者による、住まいの設計の基本の基本に関する本。
建築を学ぶ学生向けなんだろうけど、過度に専門的ではなく、
設計なんて全く知らない私でも楽しめる内容。

『現在の住宅をかたちづくるありふれたモノやカタチには「ありふれるワケ」があるのです』

と、帯に書いてある通り、ヒサシの形、冷蔵庫・シンク・コンロ・作業場などのキッチンの並び順、
トイレ内の便座などの配置など、ありふれてて気にもとめない事の多くに、
ちゃんと理由があるのがわかります。

ありふれてて気にもとめない事だからこそ、設計でそのポイントを忘れてたりすると大変使いにくくなる。
設計をする人のプライオリティや考え方が反映される場所でもあるので、
建て主との調整が大切なんだなーって思える部分も。

イラストもわかりやすく、難しい事は書いていないので、サクサク楽しく読める一冊。
建築士を目指す学生さんに対し「悩んだ時は基本に戻れ」っていうのを伝えたいんだろうなって内容だけど、
ちょっと家の構造に興味がある人、これから家を建てたいなんて人にもお勧め♪
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「ヘッテルとフェーテル-本当に残酷なマネー版グリム童話」「マッチポンプ売の少女」マネー・ヘッタ・チャン著:円天・年金・・etcお金にまつわる怖い話 [本ノンフィクションいろいろ]

ヘッテルとフエーテル 本当に残酷なマネー版グリム童話

ヘッテルとフエーテル 本当に残酷なマネー版グリム童話

  • 作者: マネー・ヘッタ・チャン
  • 出版社/メーカー: 経済界
  • 発売日: 2009/11/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.5点

マッチポンプ売りの少女 ~童話が教える本当に怖いお金のこと~

マッチポンプ売りの少女 ~童話が教える本当に怖いお金のこと~

  • 作者: マネー・ヘッタ・チャン
  • 出版社/メーカー: あさ出版
  • 発売日: 2011/04/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.5点

現代のお金にまつわる怖い話を、グリム童話風に書いたもの。

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「ヘッテルとフェーテル」は、100万円預けると、100万円分の金券が貰えて専用サイトで買い物できる、
その上元金保証・・・どう考えても破綻しそうなのに、たくさんの人が騙された円天
株価の上下を100%的中させたメールの謎、超大手三●UFJ銀行などが行ってた恐ろしい罠、
国だって安心できない年金問題、貧しい人ではなく考案した人達を設けさせる「ホワイトバ●ド」など、
お金にまつわる怖い話がいっぱい。

グリム童話が、子供に対する警告の要素を含んでいるものが多いのと同じで、
この本は大人に対して、わかりやすーーーーく警告してくれてます。

成功した女性(女性はこう生きるべきって本をバンバン出してる方いますよね(^^;))の本を読み、
それに感化され、その生き方を真似しようとしたあげく陥る泥沼を、
トホホ感満載で描いてあったり(本を書いた女性は、自分が進めた商品なども売れてウハウハ)、
儲け話に対しては「100%儲かるなら赤の他人に教える人間などいない」とバッサリ切り捨てたり。

「あなたの借金整理します」という電車広告。
掲載費を知ったら、絶対電話しようとなんて思わないはず。

中学生の息子が読んでも理解できるくらい、わかりやすく、
でもツボを押さえて書いてあるので、参考にもなるし、すごく面白い!!
分かり切った事も、こういう人いそう・・・って感じで、ブラックに笑える内容になってます。

童話みたいな分かりやすい文章な為、「あっ!!」という間に読み終わるので、
立ち読みでも大丈夫な気も(^^;)。

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同じ作者による2冊目が「マッチポンプ売りの少女 ~童話が教える本当に怖いお金のこと~」。

世の中を動かしてるマッチポンプ-自作自演話や、知らなければ良かった世の中の裏話満載。
こちらは2011年4月発行なので、より最近のネタが多い。

本のタイトルと同じタイトルの章「マッチポンプ売りの少女」では、作られるファッションの流行の話が。
「今年は黒を主体にしたエレガント路線」と決まれば、それをオシャレだと宣伝し、
昨年まで流行っていたファッションは「ダサイ」という視点で記事を書いたりする。
B-POP(作中の固有名詞は微妙に買えてあります)は、
「鈍痛」が巨額の資金を使って流行っているように見せかけているとか。
どこまでこの本に書いてある事が真実なのか判断はできないけど、
流行っているように見えれば、飛びつく人も多いですし、作られた流行に踊らされてる人は多いはず。
ちなみに、私も食べ物系は宣伝に踊らされて良く買ってます(^^;)。

「ゴーグルをかけた猫」は、悪質会社を告発していたサイトが、ゴーグル検索に引っかからなくなった話。
「ネットの沙汰も金次第」ってことが書いてあります。
「コブラ社の小説大賞」をハンサムでイケメン俳優「水主マヒロ」がとった話などは、
やっぱりなーって感じ。
ちょっとだけ詳しい裏事情を知ることができます。

「アグデスと40人の泥棒」では「日本uniques」の超豪華ビルと、募金がどう使われてるかの話。
白柳さん(笑)がその仕組に気がついてから、「日本uniques」を通しての募金はやめてるらしい。

「だんごう三兄弟」「家を買った娘」はマンション購入や管理に関する怖い話。
他に「保険切り替えの罠」「天下りが無くならない理由」「税務署に楯突いた税理士は大変」
などの内容の話が。

また、最後の章「日本破綻」に関しては、「預金封鎖と新円切り替え」「貸し金庫の中身没収」など、
いろいろな国で実際にあった話を取り入れてあるけど、これが現実にならないとは言えないのが怖い。
「預金封鎖と新円切り替え」は第二次世界大戦直後、昭和21年に実際に日本で行われた事だとか。

「ヘッテルとフェーテル」と同じく、読みやすくわかりやすく書いてあるので、サクサク読めて面白いです。
世の中、用心するに越したことはないってわかる本だけど、
何でも疑ってかからなければいけない殺伐とした社会に生きているんだなーと
思ってしまう本でもあった。
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「ジャングルまるかじり」「イギリスはおいしい」ブラジルとイギリスの食文化 [本ノンフィクションいろいろ]

ジャングルまるかじり

ジャングルまるかじり

  • 作者: 林 美恵子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 1998/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
6点

イギリスはおいしい

イギリスはおいしい

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1991/03
  • メディア: -
6.8点

海外の食に関するエッセイ2冊。
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「ジャングルまるかじり」は、ブラジルに移り住んだ著者が体験した、
ブラジル食文化に関するエッセイ。

ワニ、カピバラ、ピラルク、アロワナ・・・etc、日本では普通食べられない食材が次々とでてくる。
超簡単な説明ではあるけど調理法法も載っている。

ブラジルでの生活についての記述も多く、
なかなか面白かったんだけど、点数は低め。

理由の一つは、「美味しくなかった」という話が多いこと。

アロワナを食べる話では、
「おいしくなーい!」と一口で止めた。
揚げ物も泥臭くて美味しくなかった。

・・・・というような記述が。

他もこういう部分が多く、それが目立つとやっぱり読んでいて、テンションが下がる。

また、野生の動物を殺して食べる「知り合いの現地の人々」の行動を非難しつつも、
他の「知らない現地人」が殺した野生の動物なら買って食べる(そして美味しくなくて残す)、
という、著者の独り善がり的な行動が、個人的には気になったから。

エッセイ本は、著者の考え方と共感できない部分があると辛いんだけど、
この本は、それに当てはまってしまった。

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「イギリスはおいしい」は、「まずい」の代名詞とも言われるイギリスの料理の評判と
相反するタイトルだったので、読んでみた。

第一章は、まぁ世間の一般の常識ともなってる、イギリスの料理のまずさと、
その理由が述べられている。

塩加減は全然気にしない。
昔から伝わる伝統的なイギリスの料理本に書かれている、
繊維が柔らかい野菜は20分、繊維が多いものは40分ほど茹でるという事が、
料理法として脈々と受け継がれている事などが、
まずくなってしまう理由の一つではないかと著者は推測している。
イギリスでは野菜を茹で過ぎる、何でもクタクタに煮てしまうとは聞いていたけど、
繊維が柔らかい野菜って、ほうれん草とからしいので、予想以上にクタクタだ(゚◇゚;)!!!

他にも、美味しい料理とまずい料理が並んでいたら、まずい方を選ぶというピューリタン的禁欲さや、
「食べ物に大切な時間や神経を浪費するのはばかばかしい」という価値観も大きいのではとも、
著者は推測する。
他の章でも出てくるが、料理に興味が無いふりをするというのが行儀の一種でもあるらしい。

で、最初にイギリス料理のまずさを述べてはあるが、この本は「イギリスはおいしい」である。
で、この後、イギリス料理の美味しさなどが語られるかと思ったら、次の章の冒頭でも、
「うへー」って感じの貧相でまずいイギリスの食生活が語られていて、ちょっと笑った。
でも、その後に、イギリスで長年栽培されている美味しいリンゴの話が語られている。

3章は、魚なんだが、まず最初はやっぱりまずそうな話。
あちらでは魚も茹でるのが普通らしい。
それも燻製にしたものを茹でる・・・というか熱湯につけて5分置いて火を通し、バターなどと食べる。
鯵の開きを熱湯につけ5分放置してふやけたものを、バターと一緒に食べるようなもの・・・と
本で例えているが、確かに、それはすっごくまずそう(^_^;)。

ただ、素材的には鯖の燻製や鱈子の燻製など美味しいものもあり、
料理法(イギリスの伝統をに沿ってはいけない)を工夫すれば、日本人にはとっては、
とても好ましく美味しいものとして食べられると著者は書いている。

イギリス庶民の食べ物、フィッシュ&チップスについてももちろん触れられている。
イギリスのチップス(ポテトフライ)には、塩コショウとたっぷりの酢をかけるのが普通らしい。
日本の酢と違って酸味の弱いマイルドなイギリスのモルトビネガーを使うらしいが、
ちょっと食べてみたい。

パンの章では、薄切りなパンしかなく、主食の概念が無いイギリスのパンの食べ方や、
日本人とイギリス人のパンへの考え方や、パン自体の違いなどが語られていて、面白かった。
日本で「イギリスパン」と呼ばれている上が盛り上がった食パンって、イギリスには無いんですね(^^;)。
スイスロールをスイス人が知らないのと同じか??

他にも味気ないサンドイッチや、とほほな弁当話、形式ばった大学を構成しているコレッジの
正餐「ハイテーブル・ディナー」、パブの食事の話、超大雑把に作られる家庭のホワイトソースなど、
食べ物話の合間から、イギリス人の価値観や生活が垣間見える話が語られ、面白く読めた。

でも、「イギリスはおいしい」かというと・・・・一部美味しいものがあるという感じで、
まずいものの話の方が面白かったし、多かった(^^;)。
結局、まずいものでも、愛着があったり、食べるシチュエーションで美味しく感じられるものだ・・
という結論だった気が。

それなりに面白かったけど、タイトルから期待した内容ではなかったのが残念。
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「これがC級グルメのありったけ-日本人の舌を揺さぶる」小泉武夫著:ほんとうに美味しそう!! [本ノンフィクションいろいろ]

これがC級グルメのありったけ―日本人の舌を揺さぶる

これがC級グルメのありったけ―日本人の舌を揺さぶる

  • 作者: 小泉 武夫
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 単行本
7点

文庫版「これがC級グルメのありったけ (新潮文庫)」も出てます。

小泉武夫氏は醸造学・発酵学が専門の教授。
奇食モノである「アジア怪食紀行」「地球怪食紀行」(リンク先感想)では、
かなりの奇食ハンターぶりを発揮してました。

奇食モノ以外にも、日本の食に関するエッセイ本をいくつか出していて、この本もそんな一冊。
前作に「ぶっかけ飯の快感 (新潮文庫)」があるようです。

この本で取り上げられているのは、サブタイトル通り、日本人なら食べたいっ!!
と思うようなものばかり。
ホカホカの白いご飯と組み合わせたら、それこそ「天国!」が見られそうなもの多数。

「ぶっかけ飯・ご飯もの」「鍋物・麺類」「納豆」(発酵学の教授らしく一章使ってる)「魚料理」「肉料理」
「野菜料理」「漬物」「ア・ラ・カルト」、章のテーマにそった旨いもの満載!!

味噌漬けにした鴨を炭火で焼いてご飯のおともにしたり、大学の研究室に、缶詰やら漬物やらを常備し、
わざわざ鰹節を削ってお昼ご飯を食べたり、沖縄で麺が見えないほど海老が乗っている「海老そば」に
舌鼓を打ったり・・・・日本全国で美味いものを食べるだけじゃなく、自宅や職場でも美味しい物への
探究心を忘れないのがすごい。

ただ、本のタイトルにある「C級グルメ」というのは当てはまるかな??との疑問も。
納豆や漬物の美味しい食べ方や、缶詰などを使った簡単レシピなど、
確かにC級と言っていいものもあるけど、そうじゃないものも。

「魚」「肉」の章では、捕ってきたばかりの猪、知人が育てている軍鶏、鰹釣り漁船の上で食べた鰹、
屠ったばかりのヤギをまるまる一頭・・・、普通の人が食べるには、難しい物もたくさん。
「鮟鱇鍋」「うにの貝焼き」なども高価なものだし。

「C級グルメ」というと、安く簡単というイメージがあるので、やっぱりそれで統一して欲しかったな。

でも、自宅でも気軽に楽しめそうな簡単レシピも紹介されているし、
何より、本人が本当に美味しい!!と思って食べてているのがわかる、
本人の感動と、その食材を食べてる臨場感が伝わってくるような表現がすごくいい。

読んでいるとグーグーお腹が空いちゃう本です(^^)。

教授が不味いものに出会った時の嘆きっぷりがすばらしい「不味い!」も面白かったです。
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「世界のとんでもマニフェスト」のり・たまみ著:とんでもマニフェスト、他の国だけじゃなく、日本にも多いんだね [本ノンフィクションいろいろ]

思わずのけぞる!? 世界のとんでもマニフェスト

思わずのけぞる!? 世界のとんでもマニフェスト

  • 作者: のり・たまみ
  • 出版社/メーカー: コスミック出版
  • 発売日: 2011/04/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7点

「世界中から集めたトホホな公約137連発!」ということで、世界中のとんでもマニフェストを集めた本。

「公約するだけなら問題なし」ということで、「ロリコンを認める」「アルマゲドン世界最終戦争を起こす」
「ロバ向けの福祉政策実施」「東京をおかまのまちに」「死ぬことを禁止」・・・などいろいろ。

「死ぬことを禁止」は、お墓がいっぱいになったブラジルのある市での提案。
これは以前ネットで読んだ気が。
その後どうなったんだろう・・と思っていたら、健康に気を使う市民が増えたとか。

「児童ポルノ所持禁止反対」「ポルノサイト遮断絶対反対」など、エッチ系の公約はかなり多いよう。
ポルノ産業内からこの手の公約を掲げての立候補も多く、割と票が集まったりしてるみたい(^^;)。
「AVからモザイクを無くせ」「性器解放」は日本でのマニフェスト。

「酢は体によいので毎日飲みましょう」(日本愛酢党)などの、当選より、宣伝を狙ったものも。
ロシアの「ビールが大好き」(ビール愛好者党)は単にビールが好きな人の集まりで、
国民の支持も得ていないらしいけど、
ドイツの「全ての仕事なんてクソだ。ビールの無料券を毎日配るので飲んだくれよう」という主張の
「ドイツ無政府主義ポゴ党」は国家の仕組みもちゃんと考えていて、支持もそれなりにあるとか。

「日本の全ての財産は私のもの。人権も私しか持っていない」「長男はあらゆる面で優れている」
「東京をすべて黄色にします」等、日本のマニフェストもかなりバラエティに飛んでます。
政見放送って、たまにとんでもないの放送されるけど、さすがに全部見る根性は無い。
日本の政見放送で印象深かったのは「日本政府を転覆させます」の外山恒一の政見放送でしょうか?
こういうのを放送できちゃうというのも、すごいですね(^_^;)。

「女は働くな、化粧もダメ」(タリバン政権)、「お金は全部没収」(カンボジア共産党-ポル・ポト)などの
ように、独裁政権だと極端な公約がそのまま実施されてたりするのは怖いです。

スイス政府の「すべの国家は敵である」というのは、
永世中立国であるスイスのスタンスがわかる興味深いマニフェスト。
武装中立、国民皆兵の国ですからね。
「永世中立国=平和的」と勘違いしていた学生の頃の私は、
スイスで軍人だと自称する人と話した時、何でスイスに軍??とか思っちゃいまし(^^;)。

とんでも法律で怖いと思ったのはアメリカの「野菜を育ててはいけません」でしょうか。
自分で野菜を育てたり、露天で売ったりしたら密売業者として逮捕、
種を持っているのもダメ・・という法律。
食の安全の為という理由らしいですが、それは建前で「企業保護目的」らしいとか。
もしそれが本当なら、グレッグ・イーガン描いた、企業がこの手のものを独占し、
貧しい人々が喘いでいる未来社会に一歩近づきそうな法律な気が(-_-;)。
昨年上院で可決したという話ですが、詳細はどうなのでしょ??

ちょっと読むと「何だこりゃー!」というマニフェストでも、そのマニフェストについてる解説を読むと、
ちゃんと効果があったりしたものや、別の意図があるもの、
解説を読んでも「何だこりゃー??」なものももちろんたくさんあり、
解説と合わせて読むとより楽しめる一冊でした♪
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「だれも知らなかったインド人の秘密」パヴァン・K. ヴァルマ著:「誰も知らなかったインド人の頭の中」冬野花著:インド人の不思議な内面がわかる!! [本ノンフィクションいろいろ]

だれも知らなかったインド人の秘密

だれも知らなかったインド人の秘密

  • 作者: パヴァン・K. ヴァルマ
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 単行本
7.8点

インド人の頭ん中 (中経の文庫)

インド人の頭ん中 (中経の文庫)

  • 作者: 冬野 花
  • 出版社/メーカー: 中経出版
  • 発売日: 2009/03/26
  • メディア: 文庫
7.5点

似たようなタイトルだけど、かなり内容は違う、でも根本はインド人ってどんななの?を書いてる本2冊。

インド人というと、カレーとサリーとヒンズー教。
西原理恵子が描いた、インド料理はデザートだろうが、何でもカレー、
そして、商人としてはのらりくらりとしつつ最強・・・というイメージくらいしかなかった(^^;)。
私の中のインド人は、一時期西原理恵子が描いたインド人像に占められていたと言っても、
過言ではない(^^;)。

-----------------------------------------------------------------------------
で「だれも知らなかったインド人の秘密」は、インド人である著者によるもの。

IT大国であったり、中国と同じ様に貧富の差の拡大や環境汚染が深刻だったり、
そうかと思うと貧しい農民が辺境の村でPCを使いこなしていたり、
印僑は華僑と同じ様に世界的な商売上手であったり、
また「見えないアジアを歩く」(これもまだ感想書いてない)で読んだ、
インド東部ナガランドにおける少数民族弾圧の実態など、
インドのイメージは多種多様で、1つにまとまらない。

そんな、インド人の実態を、インド人である著者ができる限り中立の立場で、
多面的に解説しようとしたのがこの本。

民主主義とカースト制が何故共存できるのか、何故インドはIT大国になれたのか、
インド人において宗教とは?、汎インド人とはどのようなものなのか、
そしてこれからインドはどうなっていくのか・・・などが、書いてある。

超合理的で、イギリスの植民地になった時は、「植民地になっちゃったほうが抵抗するより得」と
あまり抵抗しなかったと著者が述べるインド人の合理主義。
でも、イギリスの植民地であることが損とわかれば、即手の平を返す。
インドの神話では、神が相手を騙して勝利するケースもあり、
目的のためなら手段を選ばない側面を持っているという。
犯罪で手に入れたお金を元手に大成した場合でも、「成功した」ということからインドでは尊敬されるとか。

インド人による、インド人分析は、上記の例以外にも、
今まで想像もしなかったインド人のいろいろな面を見せてくれ、すっごく面白かった(^^)!

ただ、「ほんとかな???」と思うような分析も。
インド人は残酷だ・暴力的だと言われるが、それは違う・・と著者は否定する。
しかし、相変わらず宗教的影響が強い地方では、カーストが違う相手と恋愛した娘を身内が殺害するとか、
宗教的対立による混乱などがあとを立たない。

この本を読んで一つわかったのは、インド人が、白・黒はっきりではなく、
グレーな価値観を持って生きているということ。

中立であるかは別として、インドという国を知るとっかかりにはなる本!
情報量も多く(学術書寄りなので)、お勧めです(^-^)ノ。

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一冊だけだと、内容の検討もできないな・・・と、他にいいインドの本は無いかと思って読んだのが、
「誰も知らなかったインド人の頭の中」。
タイトルかなり似てます(^^;)。

でも、こちらは、インドに単身移り住んだ日本人女性によるインド滞在記。
「だれも知らなかったインド人の秘密」より砕けた言い回しで、サクサク読めます。

日本の常識なんてまーーーーったく通じないインド。
住む部屋を探すのだって超大変。
上層階に行くほど家賃が安くなるインド。
真夏の気温が45度にもなるインドでは、安普請の最上階の部屋は地獄そのもの。

不動産屋は見つかりにくく、行けば8割の確率でオーナーは不在。
5割の確率で明日、もしくは時間指定され、また来いと言われるが、
指定の時間に行っても8割の確率でオーナーはいない。
オーナーに会えても、8割の確率で、明日来いとか、○○時に来いと言われ、
条件に合った物件がありそうな時も6割の確率で、鍵が無いとか、大家に連絡してないとかで、
また来い・・・と。
やっと物件を見ることができても、それはお願いした条件とはかけ離れたものばかり・・・。
キッチン必須なのに、キッチン無しとか。

最初の章、部屋探しに関して読んだだけでも、インドの凄さがわかる。
ちょっとした修理を頼んでも、修理工は道具を取りに行ったまま帰って来ず、翌日来たり、
日本では数時間で終わる修理が数日もかかったりするという。

日常生活で起きた「日本ではありえない事」、インド人と宗教の関わりや影響、
日本とはかけ離れたインド社会の習慣・常識など、住んだからこそわかるインドが、
「日本人としての視点」で、面白おかしく書かれていて、楽しめた一冊。

あとがきで「インド人は矛盾している」と著者は書いている。
柔軟で石頭、どこまでもユルク、異常にストイック、何にも縛られず、でもがんじがらめ、
すごく清潔で不衛生、情に訴えるのが好きだが、とても情に薄い・・・。

これを読むと、インド人は、「インド人の秘密」で思った「グレー」ではなく、
「白・黒」両面を持っていて、それは状況によって出てくる面が違う・・という風に思える。

ヒンドゥー教による厳しいカースト制が根を卸している国、多種多様な神が存在する国だからこそ、
宗教を切り離さず合理的に現代社会と融合する為、そういう性格を持つようになったのだろうか?
それとも、そういう理由がなくてもインド人はそうなのか?

知れば知る程謎が深まるインド人でした(^^;)。
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「プラントハンター-命を懸けて花を追う」西畠清順著:世界各地の植物を探すお仕事。想像以上にハードだ・・。 [本ノンフィクションいろいろ]

プラントハンター 命を懸けて花を追う

プラントハンター 命を懸けて花を追う

  • 作者: 西畠清順
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2011/03/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7点

この本は、「株式会社 花宇」の5代目である若き著者が、自分の経験や、
植物や植物に関わる人々に対する気持ちを綴ったもの。

顧客の依頼してきた植物を探し出し、樹齢100年の木を海外から日本に運びこむ大プロジェクトをこなし、
植物を求めジャングルにでも入り込む・・・・冒険家みたいな仕事。

しかし、そういう派手な仕事だけではなく、職人の技量が要求される枝切りの修行をしたり、
手間暇かけて植物の世話をしたり、繊細な温度管理や環境管理が必要な開花調整をしたり、
地味で体力が必要で、根気がいる仕事でもある。

海外との取引が多いので、日本の常識が通じない商談や取引先と対応できる柔軟性も必要。

それが、この本を読んで知った「プラントハンター」というお仕事。
夢とロマンに溢れているけど、地味で過酷で長い下積みも必要で、
植物が本当に好きじゃないとやっていけない仕事だと思った。
著者は、2度ほど死にかけたらしいし。

著者の体験記であり、成長期でもあり、そして植物に対する真摯な気持ちを綴ったこの本。
全体的にあっさりしていて、もう少し、植物など詳しく説明してあるとより好みだったんだけど、
説明がくどくどと無い分読み易くもあります。

春になると、デパートなどの店内に飾ってある桜の枝。
それひとつとっても、いろいろな苦労がある事を知りました。
樹齢100年になるような樹をその国から持ち出す事に関してなど、
植物保護の観点から見て???と思ってしまう部分はあったけど
(その辺、植物保護的にも意義があるならあるで、もう少し深く書いてあると良かったんだけど)、
それでも、これを読むと、植物に対する新しい視点が得られると思います(^^)。

著者のブログはこちら
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「スウェーデン人のまっかなホント」ペーテル・ベルリン著:以前はバイキング、今は超福祉国家の人々の姿! [本ノンフィクションいろいろ]

スウェーデン人のまっかなホント

スウェーデン人のまっかなホント

  • 作者: ペーテル ベルリン
  • 出版社/メーカー: マクミランランゲージハウス
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 単行本
7.8点

ちょっとマイブーム「スウェーデン」の気配があるのだけど(来るかわからない)、
スウェーデンについては、ほとんど何も知らないので、取っ掛かりとしてこの本を読んでみました。

この「まっかなホント」シリーズは、何冊か読んだけど、どれも面白かった。
そして、この「スウェーデン人のまっかなホント」も、楽しく楽しく読ませて頂きました~♪

いままで読んだ「まっかなホントシリーズ」は、
「日本人のまっかなホント」と「フランス人のまっかなホント」
イギリス人のまっかなホント
ドイツ人のまっかなホント」「アイスランド人のまっかなホント」(リンク先全て感想)。
追記:「まっかなホント」シリーズ、感想一覧はこちら(上記以外もあります)。


現在、福祉国家として有名なスウェーデン。
でも、昔はバイキングの国として、ヨーロッパの国々を恐怖のどん底に陥れていた
(「蛮族の歴史」(リンク先感想)を読むとその辺ちょっとわかる)。
そのギャップの大きさがすごい!

スウェーデン人に対する各国の評価。
ノルウェー人は、誇大妄想の気があると信じ、デンマーク人はパーティの雰囲気を台なしにすると思い、
ロシア人は愚鈍だと評価し、スウェーデンに移民した人は中身が空っぽだと言う。

当のスウェーデン人達は、ノルウェー人のように素朴で実直に物をいい、
デンマーク人のように明るく、フィンランド人のように物静か・・と自認しているという。
そんなスウェーデン人の本当の姿とは?

まずは、長い気候や地理的な環境から、人生を一人鬱々と考え込む「憂鬱」。
もう一つは、圧力をかけられるとすぐ引く「従順さ」だそうだ。
遠い国の独裁や人種差別には声をあげるが、お隣りロシアに対しては何も言わない。
そして、何事も「ほどほどに完璧」。
金持ちや有名人は嫌われる。
唯一の例外は、スウェーデン自体の評価をあげた有名人だけだとか(^^;)。

スウェーデン人は、自分の国が大好きらしい。
同国人の間では、税金が高い、国民は愛想が無い・・・と自国の愚痴をこぼすが、
一人でも外国人が混じれば、欠点など何一つ無い国になるという。
外国人が自国批判をしたら、総スカンだとか。

酒に対しては、税金が恐ろしく高く、政府が飲酒に対して否定的なのが続いた為、
善か悪の両極端で中間が無い。
多くの人は、悪として飲酒を嫌い一滴も飲まないが、飲む人は大酒飲み。
密造酒も反乱しているが、密造酒の作り方の本を発行するのは禁止されているそうだ。
でも「こうすればお酒にならない」とうい本はいっぱいでてるらしい(^^;)。

小説は、深遠さと意味深さを追い求め、訳がわからないものが多いが、
批評家達は、その深遠さと意味深さがわからないと批判されるのを恐れ、批判しない。
他の北欧の国が代表的な作曲家や音楽があるのに比べ、スウェーデンの音楽は、
何の感動も呼び起こさず、聞く人の心にひたすら静けさをもたらすとか。
確かにスウェーデンの音楽って知らないなー。

刑罰については、銀行強盗は犯罪だが、銀行員の横領は辞職すればお咎め無しで、
退職金まで貰えるという(゚◇゚;)!
また飲酒運転など、軽犯罪の罰金は、その人の財産の額で決められるので、
同じ犯罪でも、金持ちはすごい金額を取られるらしい。

バイキングの国としての風習(?)で興味深かったのが、昔スウェーデンの男性は、
老衰などで自宅のベッドで死ぬことは、信じられないほどの屈辱だった。
なので、息子がいれば、断崖まで連れて行って貰い、突き落として貰ったそう。
現在の福祉国家としてのスウェーデンから見ると信じられない話だ。
ただ、この本では、福祉の重さに国家が破綻したら、この風習が復活するかも・・と書いているのだが。
確かに、今スウェーデンの医療は、曲がり角に差し掛かっているようで、
自治体によっては老人ホームの老人が栄養失調に陥っているとも聞く。

かなりシニカルだけど、笑える内容がいっぱい!
スウェーデンは、ほとんど知らなかった分、新鮮な話もいっぱい!

憂鬱で、従順、ユーモアがなく、でも真面目で、ギブアンドテイクやルールをきっちり守り、
自国を愛し、他人には心を開きにくいが寛容・・・・・・かなり捉えどころの無いスウェーデン人だけど、
親しみも湧きました(^^)。

やっぱりこのシリーズは面白い!!
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「土の文明史」デイビッド・モントゴメリー著:土が文明の寿命を決定する! [本ノンフィクションいろいろ]

土の文明史

土の文明史

  • 作者: デイビッド・モントゴメリー
  • 出版社/メーカー: 築地書館
  • 発売日: 2010/04/07
  • メディア: 単行本
7点

ジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」「銃・病原菌・鉄」(どちらもリンク先感想、
そしてどちらも傑作!)を読むと、農耕、木々の伐採、過放牧などにより土壌が侵食されるという事が、
文明崩壊の大きな要因の一つであることがわかる。

その「土」の部分だけに焦点を当てて論じた本。
植物を育てる肥沃な土壌。
その生成の過程や、気候、地形などによる特徴の違い、そして今、石油などの資源と同じように、
肥沃な土壌が使い果たされようとしていると、本書では警告する。

肥沃な土壌は、土壌生成と侵食の速度のバランスによるが1000年に数センチほどしか増えない。
その厚さは、場所によって差があるが30cm~50cm。
しかし、農耕により数十年で2~3センチの土壌が失われているという。
数センチ増えるのに1000年かかる肥沃な土壌を、数十年で無くしてしまう農業。

熱帯などだともっと薄いが、その上に落ち葉などの有機物で作られた層がある。
そして、熱帯の場合、この有機物で作られた層が流されてしまうと、その後土壌の再生が困難になる。

最初は、メソポタミア、ローマ帝国、ギリシャなどの文明の崩壊と、土壌侵食について述べられている。
人口が増え、農地が拡大し、土壌侵食が進み、河川は流れでた土壌によって浅くなり・・・、
土壌侵食が文明の崩壊に大きく影響を与えた事がよくわかる。
例外は、エジプト文明で、毎年ナイル川の氾濫によりもたらされる泥のおかげで、
7000年近くも農耕を続けていた。
しかし、それすらダムの建設によって失われたと書いてある。

酷い土壌侵食は、緑の森や平原を砂漠化する。

中世ヨーロッパでも、土壌侵食は激しく、アイスランドなどは薄い土壌が過放牧などにより、
ほとんど失われてしまったという。

そして、過去に文明を崩壊させる一因ともなった土壌侵食は、現代でもいろいろな所で行われている。
アマゾン川流域、ハイチ、ボリビア、西アフリカ、熱帯アジア、・・・・。

中盤は、アメリカの移民と、北米大陸の土壌消失の話がメイン。
土壌を保全したり、疲弊した土壌を回復するより新しく開拓した方がより利益をあげられる為、
どんどん消失していったアメリカの土壌。
大規模農業や、単一作物の栽培の弊害などについても語られている。
また、この「先を考えず、その時得られる最大の利益を確保しようとする」というアメリカ農民の姿は、
今のアメリカの企業の姿、強いてはグローバル企業の姿とも重なる。

著者も書いているが、昔、人はその文明を捨て別の地に行くことができたが、
地球規模で行われている土壌消失による文明の崩壊は、逃げ場が無い。

また、ジャレド・ダイアモンドは、人口と食糧の問題について、科学の発達により・・・と楽観的であったが、
この本の著者は、食糧が増えれば人口も増え、飢餓は無くならないと示唆している。
私も、その点についてはこの本の著者と同意見だ。

小さな島で、豚を食べる事をやめ、果物を育て土壌を守った人々の話は、ジャレド・ダイアモンドの本でも
取り上げられていたが、この島の人々が厳密な人口調整(増やさない)を行っていた事は、
この本で初めて知った。
今、日本も少子高齢化の問題が取り沙汰されているが、人口が増える事で発展する経済モデルを
切り替える時期に来ているのかもしれない。
また、豚の島で、思い切った政策がとれたのは、そこがお互いの顔をみな知っているような
小さな集団だったからだともなっている。

広がる大規模農場。
大規模農業の問題点として、経営者が現場を、農地を見ないということがあげられていた。
大規模農場だけでなく、貧困による無差別な畑の開拓も、また土壌を消失させる。
そして、広大な森林が失われている。
土壌問題は、世界規模で考えなければいけない環境問題であるが。
世界各国の足並みを揃えるのは、人が火星に移住するより難しい気もする。
緑豊かな島が、人が移り住んだ事により木の無い島になり、船も作れず、
島から脱出できなかった人達は死に絶えた・・・と言われている、イースター島。
地球が巨大なイースター島になってしまいそうで、怖いと思えた本。
ジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」「銃・病原菌・鉄」を読んでから、読むのがお勧め!

そういえば、アメリカの土壌の話で、1990年代頃、肥料会社が産業廃棄物を、
肥料に混ぜ込んで売っていたという話があってびっくりした。
重金属を含む肥料を、農民たちに売っていたんだとか。
それも大手が何社も。
理由は、産業廃棄物を処理するコストが浮くから・・・。
恐ろし~(-"-;A。

こういうむちゃくちゃは中国の話としてよく聞くけど、アメリカ企業も、
国内で健康被害が出たとして禁止されてる事を、それを取り締まる法律が無い国でやってたりする
(それがかなりの大企業だったりする)。
日本企業も知らないだけで、そういう事あるのかな?
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「家族の勝手でしょ!-写真274枚で見る食卓の喜劇」岩村暢子著:女性週刊誌の記事みたい [本ノンフィクションいろいろ]

家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇

家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇

  • 作者: 岩村 暢子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/02/19
  • メディア: 単行本
4点

現代家族の食卓の写真から、今の家族を考察する本。
いろいろな家庭に1週間の食事の写真を撮ってもらって、それを分析している。

まず、著者は家庭に関して、「こうあるべき」という確固たる固定観念がある人だと思った。
そして、その目線から、各家庭の粗探しをしている本・・・としか思えなかった。
また、彼女が思い描く昔の「家庭の食卓」って本当にあったのだろうか?という疑問も。

毎日、全く手抜きの無いしっかりした食事が3食・・・過去を振り返ってそれを出していた家庭って、
どれだけあったのだろう??
著者の観点からだと、1週間に一度の手抜きでも、「あーーあこの家庭もダメね」って感じになりそう。
著者自身が、普通は3日間ほどの献立調査しかしないが、それじゃダメで、
1週間写真を撮らせたからこそ把握できたデータだと言っているが、
過去の食卓でそういうデータは無いだろうし。
過去の無かった理想と照らし合わせて、持論論を展開している感がヒシヒシ。

また120人のデータをとったといい、
「この種の超定性調査としては、膨大かつ充分なものであり、定量調査におけるサンプル数の常識で
比較し、調査の信頼性を問う具はどうかご容赦頂きたい」と後書きが。
120人って少ないとは思うけど、それはいい。
でも、120人分のデータなら、もっと数値を出せたと思うのに、それが全く無く、
「ほとんど」「おおい」「少ない」という曖昧な数値で持論が展開されている。

例えば、初日と最終日の食卓。
だんだん貧相になってくと、初日と最終日の食卓の落差が激しい写真が紹介されている。
でも、120人中、そうなったのが何家庭あるかの数値は無い。

最近の主婦は揚げ物が下手で、「ほとんど」が焦げているか色が薄いかで、
よく出来ていると思うとそれは出来合いのもの・・・と書いてあるが、1週間120人の食卓で、
揚げ物を出した人が何人で、揚げ方が下手だったのが何人で、出来合いが何人・・・というデータは無い。
揚げ物って、そんなに難しく無いし、私の周囲で「唐揚げなどの揚げ物は楽だよね~」って話もよくでる。
もちろん揚げ物が苦手って人もいるけど、その苦手な人だけをピックアップしてるとしか思えない。
120人中、70人が1週間に揚げ物出して50~60人が下手だった・・・なら「ほとんど」だと思うけど。

茶碗蒸しやロールキャベツは主婦が手作りしないもので、たまに食卓にあると思うと、
「ほとんど」実家からの差し入れ・・・というのも、また曖昧で数値は無し。
茶碗蒸しやロールキャベツは頻繁に作るものでは無いし、ロールキャベツは、
だいたいキャベツが特売の時期に私などは作る。
だから、1週間調査の時期にキャベツが安くなきゃ作らないと思うし。
茶碗蒸しも、一週間の中で食卓に出る率は少ない。
例えば、茶碗蒸しが3例しかなくて、2例が差し入れ・・となれば、データとしては、
少なすぎて参考にならない。

冷凍食品使用率など、大雑把な傾向を見るには120家庭でもいいかと思うけど、
膨大にある料理の種類に関して、意見を述べるにはあまりにもサンプル数が少なすぎると思う。

以前、女性週刊誌で、幼稚園のお弁当が「ちんちん弁当」(冷凍食品を
レンジでチンしたものしか入ってない)って読んだ。
確かに、お弁当に冷凍食品を入れる率は増えているけど、全部ではない。
それを、データの詳細を出さず「今の母親は!」という視点で語っているのは、この本と似ていると思った。
園児30人の内、冷凍食品使用率とか、冷凍食品の品数・・・まで書いてあるならわかるし、
10年前の冷凍食品使用率に比べ・・・と比較してあるなら、増えてるのかとも思うけど。

タイトルに「喜劇」となっていたので、笑えるとんでも食卓を楽しむ本かと思って借りたんだけど、
著者の凝り固まった固定観念から「今の家庭は危険!!」って話をとうとうと聞かされる本だった。
以前、とんでも無い給食メニューを紹介した本を読んだ時も思ったけど、
1箇所悪い部分があるとそれをピックアップして責めているという感じがヒシヒシ。

息子の学校の給食、栄養士さんとかがすっごく考えてくれてて、楽しい給食のお知らせもあり、
という給食だったけど、たまにお楽しみ給食として、子供が喜びそうなメニュー揃い!なんて時もあった。
もし、そのメニューだけ見れば、「とんでも無い給食」に入っちゃうだろう。

この本も、120家庭しか調べていないなら、献立一覧などを巻末に載せるぐらいできるだろうし、
ちゃんとした食卓の家庭もあっただろう。
でも、ここで紹介されているのは、著者が主張したい「今の家庭の危機!」を裏付ける写真ばかり。

昔の家庭の良かった点というのがあるのもわかるけど、各家庭の粗探しみたいな事をして、
それを論じられても・・・と思ってしまった。

確かに「これはすごい!」って食卓もあったので、違うスタンスで語られていれば、
もっと楽しめたと思うのだけど、イマイチでした。
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「高層マンション症候群」白石拓著と「高層マンション暮らしてみれば」加藤淳子著 [本ノンフィクションいろいろ]

高層マンション症候群(シンドローム)(祥伝社新書224)

高層マンション症候群(シンドローム)(祥伝社新書224)

  • 作者: 白石 拓
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2010/12/01
  • メディア: 新書
6.5点

超高層マンション、暮らしてみれば…

超高層マンション、暮らしてみれば…

  • 作者: 加藤 純子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 単行本
7点

高層マンション関係の本、2冊。

------------------------------------------------------------------------------------------

「高層マンション症候群(シンドローム)」は、
「5年以上10階より上層に住む妊婦の流産率42.9%」
「揺れによるストレス」
「汚染空気の侵入」
「子供の自立の遅れ」
「地震時の危険」
など、高層マンションに住む、リスクと危険性について述べた本。

ヨーロッパ先進国では、高層マンションの建設を中止・禁止、
イギリスでは4階、スェーデンでは5階以上の子育てを制限する条例などがあるという。

理由は、主婦の精神疾患の発病率が高い事、子供に影響があること・・・etcで、
住むには適さないって事らしい。
これは知らなかったので、参考になった。
日本では、ほとんど知られていない(自分が知らなかっただけ?)事ですよね。

高層階と言っても、イギリスでは4階以上と、かなり低く(日本だったら中層階)、
他のヨーロッパ諸国ではどれぐらいの制限になっているのか、書いてなかったのが残念。

前半は、ヨーロッパで、高層住宅禁止の理由になっていることを、日本でのデータを元に検証している。
流産に関しては、元々6階以上に住む場合の方が流産率は高く、
最初に書いた「5年以上10階より上層に住む妊婦の流産率が42.9%」と、格段に上がる事らしい。
他にも異常分娩の頻度も高層階の方が高いという。

理由として、高層階に住むストレス(外出がおっくう、孤立、慢性的な揺れ・・・)があるのではと、
検証しているが、はっきりした結論はだしていない。

子供に関しては、呼吸器系の疾患やアレルギーが高層階ほど多いというデータがあるらしいが、
他に「高所平気症」や「親離れ子離れが遅れる」などの事例を挙げている。
ただ、これも、そういう事が言われている・・・という感じで、言い切ってはいない。

地震については、免震、耐震などの構造の解説や、超周期振動の問題、
地震の際、停電やエレベーターが止ったことによる高層難民について触れている。

センセーショナルに、「高層に住むのは危険!!」と事例だけを羅列して
むやみに不安を煽るということはしていないけど、
「高層階に住むのは本当に危険なのか?」という検証物ではなく、
「高層階に住むのはよくないんだ」という視点からのデータ分析の本になっている。

マンションを買う前に、「高層階にはこういうリスクがあると言われている事」を知るために、
読んでみるのもいいかもしれないけど、信じれば高層階が嫌になりそうだし、
読んでも全く気にしない人は、読む必要無さそうだし・・・微妙だ(^^;)。

ただ、地震の問題と老後の問題はあるかも。
先日、この近辺が震度5弱で揺れた時、上層階は揺れが激しい事が多く、低層階に比べ、
家具などの転倒など被害が大きかったのは確か。
地震の時、高層階に住むお年寄りなどは、自力で脱出出来ない・・・などの問題も起こりそう。
計画停電でエレベーターが使えなくなり、大変だったという話も聞いている。
地震で高層難民になった時も、歳をとって体力が落ちた場合、水などを運びあげるのが難しそうだし。
他のデータはともかく、この二つだけは、考慮しておいた方がいいかと。

-----------------------------------------------------------------------------------------
「高層マンションに暮らしてみれば」は、高層マンションの20階に移り住んだ著者によるエッセイ。
高層マンションに住んで良かった事、不便な事などが、つらつらと書いてある。

自分の住んでいるフロアのすぐ上で火事が起きたり、アメリカの同時多発テロの映像を見て、
引越しを決心したり(結局やめた)、予想以上に大きく聞こえる外の音、雷の音の凄まじさや、
風の問題、日当たりが良すぎる事、孤立化しやすいなど、高層マンションの怖さ、
不便さ、問題点などが書いてあるが、それでも、20階から見る眺望は捨てられない!と、
高層マンションの上層階を気に入っている著者。

これを読むと、上層階の良さって「眺望の良さ」だけな気がしたんだけど
(後は、マンション住まいであれば、満たされるものが多そう)、
逆に、その眺望をすごく気に入って、他のデメリットなんて問題なし!
という人もいるんだなーと、参考になった。

私は、どちらかというと、実用性重視なので、眺望よりは、他のメリットを取っちゃうけど、
こういう違う考え方のエッセイを読むのも面白い。

でも、エッセイだし、著者の個性もあるのだろうが、かなり主観的。
火事の話では、火元が遠ければ「鍵をかけて家の中にいるのが一番安全」と言い切ってたり(^^;)。
高層マンションの高層階での暮らしを客観的に分析する内容ではありません。

このエッセイが書かれたのは2002年。
今も同じマンションに住み、東日本大震災でも、大変だったようですが、
高層階のデメリットなど気にすることなく、前向きに生活していらっしゃるよう。

先日の東日本大震災、4階の母の家も、福島で揺れが大きかった為、
冷蔵庫や洗濯機、家具などが転倒し、家中めちゃくちゃになり大変だった
(近くに住む戸建てだった弟達の家は平気)。
心配して「4階から引っ越せば」と言ったら、「風通しもいいし、ここが気に入ってる」と、
地震の事など、全然気にしてない。
家の母も高層階向きな性格だなーと思ってしまった(^^;)。
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「電力・ガス業界の動向とカラクリがよ~くわかる本(第二弾)」本橋恵一著:原発の問題点もよくわかる! [本ノンフィクションいろいろ]

図解入門業界研究 最新電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本 (How‐nual Industry Trend Guide Book)

図解入門業界研究 最新電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本 (How‐nual Industry Trend Guide Book)

  • 作者: 本橋 恵一
  • 出版社/メーカー: 秀和システム
  • 発売日: 2010/12
  • メディア: 単行本
7点

「地球温暖化、原子力 難題を抱える業界を読み解く!」となっており、
エネルギー業界に関して、まとめてある本。

確かに、電力・ガス会社の動向や政府との絡みなどがよくわかる。

この本を読んで、同じような印象だった電力会社やガス会社などの特徴がよくわかって面白かった。
県ごとに各事業所が自立している東北電力(父が東北電力だったので、どこの電力会社もそうかと
思っていたら違っていて、そちらの方がびっくりした)、
社長を会長が選ぶ二重権力構造から脱し、勢いのある中部電力、
最大手な為矢面に立ちやすく難題も多い東京電力、
水力発電が多い北陸電力、大阪ガスと熾烈な闘いをしている関西電力・・・etc。
「関東電力と関西電力の差」など著者が取材をして感じたことを、ちょろっと書いてある部分も面白かった。
その他エネルギー関係の周辺会社に関しても記述があり、10個の電力会社以外にも(電力会社が
10個もあるのも知らなかったけど)いろいろな電気関係の会社があるのを知った。
また電力会社の横並びや、役所的な体質の問題点などに関しての指摘も。

地球温暖化問題、電力市場自由化、原油の高騰や、埋蔵量の問題なども分かりやすく書いてある。

そして、原発!!
原発に関しては第四章がまるまるあてられ、原子力発電の仕組みから、発電の方式、
高速増殖炉もんじゅや、プルトニウムを混ぜたMOX燃料の問題点、原発の不祥事、
コストの問題、原子力発電の主体者・・・など、いろいろな面が語られている。

再処理施設の問題のところでは、使用済み核燃料のリサイクルって、
世界でもほとんどできてない事を知ってびっくり!
イギリスとフランスがやってたらしいけど、イギリス撤退、フランスは頑張ってるけど、
その安全性に関してはいろいろと揉めているらしい(これに関してはちらっと別の本で読んだ)。
原発は「トイレなきマンション」と言われているらしく、本当にそういう状態なのを知って本気で驚いた。
使用済み核燃料のリサイクルって、再処理施設に対する反対運動などにより進んでいないだけかと、
思ったけど、技術的にも問題ありあり、その上、かなりの高コストらしい。

サラッとだけど、今までの日本の原発事故やデータ改ざんなどの問題にも触れているし、
今もちょっと言われているけど、下請け業者と電力会社の溝などについても書かれている。
日本原燃(使用済み燃料再処理施設関係)などは、管理職が電力会社からの出向で、
現場の作業員との溝がありスタッフの、モラル低下の問題が。
また日本原子力発電では、社長が電力会社など親会社からの天下りで、
現場の作業員達のモチベーション低下があるとの指摘も。

最期の章は、これからの2050年に向けてのエネルギー利用方法について、ざっとまとめてある。

全体的にサラッと書いてあるが、そのおかげで読みやすく、電力・ガス業界特徴や、
エネルギー問題について、基本的な部分が押さえやすくなっているのは好印象。
また海外のエネルギー事情、動向なども書いてあり、それも参考になった。
ただ、どれも詳しく書いてある訳ではないので、これを読んで疑問に思った事は、
自分でちゃんと調べる必要があるけど、電力・ガス業界を知る入門書としてはいい本(^^)。
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「図解雑学 原子力」竹田敏一著:基本の基本(^_^;) [本ノンフィクションいろいろ]

図解雑学 原子力 (図解雑学シリーズ)

図解雑学 原子力 (図解雑学シリーズ)

  • 作者: 竹田 敏一
  • 出版社/メーカー: ナツメ社
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 単行本
7点

福島第一原発事故、先が見えません。
放射能に関する情報も、とにかく危険!危険!ってのから、放射能は体によくて、
今原発敷地内に行けば健康になれる・・ってのまで。
「超危険←-------------------------→超安全」間の、どのレベルでも誰かが主張してる・・って感じです。

で、どの情報が正しいのか、少しでも判断できるように、「原子力」の基本の基本を読んでみました。

原子の構造から、核反応の仕組み、原子力発電所のタイプ、原発のメリット、放射線の種類や被爆、
チェルノブイリやスリーマイル島事故に関して、どれも図解してありわかりやすく解説してあります。

原子に同位体があるのは知ってたけど、どう違うのかとか、
ウランから何でプルトニウムができるのかとか、原子力について知ってる人には、
きっと当たり前であろう事をたくさん知らなかった私にとっては、かなり参考になりました。

でも、本当に基本の基本。
どれもあっさり書いてあるし、日本の原発は安全という観点で書かれているので、
今回の事故に関してだけみれば、あまり参考になりません。
原子力の知識が全然なくて、まず基本を知りたい人にはいいと思うけど。
特に、今多くの人が知りたい、被爆量と人体への影響については、
具体的な数値との照らし合わせが必要なので、当たり前ながら全く。

放射能の危険性に関しては、「はっきり誰が正しい!」ってのはきっと判断できないんだろうな。
誰の説を信じるか・・・ってなってしまう気がする。
健康とかダイエットとかもそうだけど、人体に関わるものの研究って、データを収集するだけでも、
膨大な時間や経費がかかるし、まだまだ結論が出ていないものが多い。

研究途中の場合、多くの学者は自分が信じてる説を主張するものなので、
現在、より混乱を招いているような。
先日読んだ、「ケニア! 彼らはなぜ速いのか」(リンク先感想)って本でも、3人くらいの学者が、
自説を展開してたけど、どの説も読めば納得しちゃう。
3人の説は、相反するものなのに(^_^;)。

ただ、少しでも知識を得ることで、荒唐無稽に近いような説に振り回されるのを避けたいと思う。
一番困るのは、一部正しいけど、その後は、データの検証をちゃんとせず推測で・・・って説。
それも、多くの人が「そうそう!」って思いそうなもの。
そう思える人の説が、現在かなり支持されてるようなのが怖い。

最近よく言われてるけど、「人は信じたいものを信じる」んだよね。
自分が「本当は危険なんだ!マスコミや政府は信用できない!」って思っている場合、
それを裏付けしてくれる説を支持する。
私も、もちろん「自分が信じたいものを信じる」傾向はあるので、
なるべくいろいろな説を読むようにしてるけど。

でも、放射能の危険性について考察した本でいいのを探すのは難しそう。
「放射能は危険!」と訴える本は、「放射能は危険」という強く偏った視点で書かれているものも多いし
(一冊借りたけど、あからさまに「放射能は悪!元凶!」って視点だったので読むのをやめてしまった)、
同じく安全を強く訴える本も視点が偏ってるし。
立ち位置が中立で、客観的に分析してる本があったとすれば、それはそれで、
詳しく論じ過ぎてて分かりにくそうな(^^;)。

以前、ダイオキシンの危険性について読んだ時、極端な視点で論じられているものは、
分かりやすく簡単で面白く(でも偏ったデータを使ってる気がしたし、基本的な間違いも)、
それに反論する為、ダイオキシンの危険性について、真面目にデータを検証して論じている物は、
あまりに詳しすぎて読むのが大変だった。

とにかく、今思うのは、福島への風評被害だけはどうにかして欲しい。
福島から来たとか、福島県ナンバーなだけで、嫌な顔されるとか、そんな話を聞くと本当に辛い。
同じ日本人なのに、そういう事を平気でする人がいるというのが悲しいよ。
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「妻と最期の十日間」桃井和馬著:突然くも膜下で倒れた妻。その迫り来る死を著者はどう受け止めたのか!? [本ノンフィクションいろいろ]

妻と最期の十日間 (集英社新書)

妻と最期の十日間 (集英社新書)

  • 作者: 桃井 和馬
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/12/17
  • メディア: 新書
8.5点

写真家でありジャーナリストである桃井和馬氏。
今まで読んだのは「観光コースでないアフリカ」「破壊される大地」(どちらもリンク先感想)。
ニ冊とも、世界の知られざる影の部分を浮き彫りにしたルポルタージュで、
とても興味深い内容満載、かなり面白かった。

世界の危険地帯を跳び回って取材をしているイメージの著者。
死は見慣れているはずと思っていたのに、40代でくも膜下により突然倒れ、
死を待つだけになった妻を目の前にしての、その動揺ぶりには驚いた。

はかりしれない喪失感に、夢と現実の区別が曖昧になり、「慟哭」の意味を身を持って初めて知る著者。

合間合間に挟まれる、壮絶な取材先での思い出。
1990年代共産主義が崩壊、混乱するロシアで、
毎日のように死体安置所に運ばれてくる、数多くの凍死者の姿、
ルワンダの人骨が山のようにつまれている虐殺があった教会、
虐殺に加わった人々が礼儀正しく、優しい普通の人々である事を知り、
状況さえ揃えば日本でもこのような虐殺が起きるだろう事に思い当たり凍る背筋、
取材先で見た悲惨で過酷過ぎる様々な国のエピソード。
そんな壮絶な光景を目の当たりにした時より、妻の死を目前にした時の、
著者の心の動揺が大きかったのが伝わってくる。

そして、作中で語られる妻の思い出は、キラキラと光り輝いていて、
彼の中で、妻の存在がいかに大きかったのかが伺いしれる。

眠れず、食べられず、疲弊し、現実を受け入れられず、喪失の予感に恐れ戦き、
心の中は、愛する者へ下された突然の死の宣告に恐ろしいほどに混乱しているにもかかわらず、
医者や見舞い客への対応を、しっかりこなす著者。
この時、著者に会った人達は、彼の心がここまで混乱しているとは、わからなかったと思う。

興味深かったのは、クリスチャンである著者の、奇跡と神の捉え方。
彼は「奇跡」を否定し続け、妻が状況的に絶対助からない事を受け入れようとする。
延命措置も望まない。
子供が、母親と最期の別れができるようにとの、数時間の延命すら拒否した。

彼は「祈る」=「願いが叶う」という「機械仕掛けの神」(自動販売機の神)を否定し続ける。
神に祈れば必ず願いが叶うのであれば、神は人間の欲望の範囲でしか存在しない
矮小なものだと評する。
彼は「奇跡を求めない」。
ブッシュとイラク戦争を引き合いに出し、「自分の都合の良い奇跡を求める信仰」は、
自分達の信仰が一番正しく優れていると信じる事になり、その正義の元に残虐な行為が
行われる結果になったと、「奇跡を求める信仰」を否定する。

異教徒同士の衝突は、いまだ世界各地で起きているし、その根源には、
確かにこの「原理主義思想」が働いているとは思う。

ただ、奇跡を祈ることが、即原理主義につながると、私は思わない。
例えば、ルワンダ虐殺の時、狭いトイレに7人で3ヶ月も隠れ助かったイマキュレーは、
神を信じる事を原動力に、奇跡を起こし、家族を虐殺した隣人達ですら許す
(著作「生かされて」の感想はこちら)。
全く逆なのが「ルワンダ大虐殺~世界で一番悲しい光景を見た青年の手記~」(リンク先感想)で、
この手記の著者は、奇跡を求め、それが叶わなかった思いが、より絶望を深めている。

と、神を信じる気持ちは人それぞれ違うし、その気持ちや、捉え方自体が、
その人の、人となりを表しているような気もする。
そして、自分の考えを貫き、極限状態になっても奇跡を祈らない著者の姿勢には、胸を打たれた。

くも膜下で倒れた妻が逝くまでの10日間の著者の気持ちを、克明に記録したこの本。
切なさ、悲しさ、寂しさ、そして強さが詰まっている本だと思う。
また、家族がいる普通の生活が、いかに幸せであるかを、再認識させてくれる本。
すっごくお勧め!

そして、東日本大震災直後に、何ヶ月も前に予約していた本が手元に来た偶然にも感謝。

避難所で「身内を亡くしたけど・・」「家族がまだ行方不明なんだけど頑張らないと・・」など、
悲しみは伝わってくるが、それでも落ち着いて、テレビのインタビューなどに答える人々。
そういう人達を、私は「強いな~、しっかりしてるな~」と思って見ていた。
日本人はあまり感情を表面に出さないと言われる。
きっと落ち着いてインタビューに答えた人々も、一人になった時、ふとした折りに、
著者と同じ気持ちに押しつぶされそうになっているんじゃないか・・・と思えるようになった。

震災で1万人以上の方が亡くなり、行方不明者もまだまだ多数いる。
どうしても、数字の大きさに目を奪われてしまうが、亡くなった方の数だけ、
嘆き、悲しみ、慟哭、祈り・・・著者が味わったような気持ちのうねりがあるのだろう。
この本を読むことによって、数字の大小や、テレビのインタビューなどで見せる
被災者の落ち着いた態度などに惑わされず、身内を失った一人一人の心の奥底にあるだろう、
悲しみや辛さを、しっかりと気付かせて貰った事がありがたい。
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「Gigazine-未来への暴言」山崎恵人著:インターネットの未来を考察する本 [本ノンフィクションいろいろ]

GIGAZINE 未来への暴言

GIGAZINE 未来への暴言

  • 作者: 山崎恵人
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2010/12/07
  • メディア: 単行本
7点

面白いニュースを集めたサイト「Gigazine」。
私もよく読んでます。

サブタイトルが「未来への暴言」なのに、そんなの全く意識に止めず、
「今までにGigazineに掲載された面白いニュース集」だと思って借りてしまった。
私の目は節穴です(-_-;)。

ということで、私の予想とは全く違い、内容は真面目。
Gigazineの創始者であり運営者である著者が、インターネットの現在と未来を考察した本。

本、音楽、フリーミアム、著作権、ファイル共有ソフト、少額決済システムなど、
インターネットビジネスに関する話が多め。

他に、インターネット社会を迎えているのだから、教育内容をを変化させるべきなどの話も。
ちょっとタイムリーだと思ったのは第10章の「入試の時パソコン持ち込み可・インターネット可であれば、
大学の教授はどういう問題を作るのか?」という章。

Gigazineの、敢えていろいろなジャンルを混ぜて掲載する運営方針の理由などは興味深かった。
最初の方で「専門バカになるな、オタクになれ」という話が語られている。

専門バカの特徴は、
特定のジャンルに興味を持ち、その知識は深いが、その他のジャンルに関しては興味を持たず、
知識が浅いのにバカにする。

専門バカは、価値観が狭量で、他者の価値観を認めず排斥し、かといって知識を広めようとはせず、
自分の知識は一般的なものだから敢えて広めるものではないという自信をもっているという。
オタクと部分的にかぶるが、専門バカとオタクとの違いは、オタクが、自分の好きなものその良さを、
人に広めようとする、いわゆる布教をするところらしい。

そして、Gigazineは、人が興味の無いものも広めようとする、オタク気質なニュースサイトなのだそう。

なるほど、確かにGigazineの記事は、いろいろなものがごっちゃだ。
ただ、私などは、各サイトのアクセストップニュースなど、
いつもカテゴリーがごっちゃなのを読んでいるせいで、言われるまで気にしてなかった。

でも、Gigazineの記事、アニメとかワンフェス、試食などは、すごく好きな人と、
それを載せるなら読まない!と強く反発する人がいるのだとか。

インターネットが当たり前の世代と、旧世代の対立の話もなかなか面白かった。
私などは、半分旧世代、半分新世代にいる人間で、新しい価値観に反発しつつも、
自分の親世代の反発を見ているので、反発しきれない・・・という微妙な立場。

著者の主張、あまり賛同できないもの、なるほど~と思ったものいろいろあったが、
どうも机上の理論っぽいなーというのが全体的な印象。
そしたら、本人が本書の中で「方向性を提示したり、あるべき考え方を示したりするのはできるが、
それを実際この世界の中で実現させていくにはどうしたらいいかわからない」と書いていた。
ほんと、そんな感じです。
でも、一つの考え、方向性として読むには面白かった。
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「ケニア!彼らはなぜ速いのか」忠鉢 信一著:長距離で圧倒的強さのケニア人、その秘密は遺伝?環境?それとも・・ [本ノンフィクションいろいろ]

ケニア! 彼らはなぜ速いのか

ケニア! 彼らはなぜ速いのか

  • 作者: 忠鉢 信一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/08/06
  • メディア: 単行本
7.5点

サンチャイ☆ブログ」さんで紹介されていて、面白そうだったので読みました。

マラソンなどで圧倒的な強さを誇るケニア人。
特に、多くのマラソン大会で優勝者を出しているのがケニアのカレンジン族。
ケニア人の10%にしか満たないカレンジン族の偉業。

著者は、その秘密に興味を持ち、取材を始める。

その速さの理由を遺伝子に求め研究を進めるサルティン教授などの説に真っ向から反対し、
「遺伝は全く関係ない」と遺伝子のデータを集めているヤニス教授の所を、著者は訪ねる。

「ケニアの生活と厳しい自然を生き抜く為に淘汰されて残った遺伝子」が理由・・・って
すごく説得力があるので、そう言われると納得してしまう。
最近、ヒマラヤのシェルパに、酸素の薄い場所でも活動できる遺伝子(かなりうろ覚え)が
見つかったなんて記事も読んだし。

でも、「遺伝子は関係ない」、「彼らの生活習慣の影響が大きい」と、
様々なデータを出して来るヤニス・ピツィラディス教授のインタビューに思わず納得。

まだまだ研究・調査段階のピツィラディス教授の研究を追うのかと思えば、
その後、著者は、「遺伝子が理由」という研究をしているサルティン教授も訪ねる。
サルティン教授のインタビューを読むと、「遺伝子説」が正しくて、前述したピツィラディス教授の意見が、
実は偏った見方・データの抽出による推測なんじゃないかと思えてしまう。

その上、サルティン教授の元で研究する、ラーション研究員は「足の形」が理由だと説明する。

どれもこれも、説明されると、なんとなく納得できてしまうのが怖い(^^;)。
興味深かったのは、どの科学者も自分の説が正しいと信念を持ち、
長年にわたって、半端じゃない苦労を重ねデータを取り、調査していることだ。

そして、著者は、ケニアの陸上選手達のキャンプも訪ねる。
ケニアのキャンプの中でも、特に孤立している、電気すら通ってないというキャンプ「カプサイト」で、
選手たちの練習や生活を見、コーチや選手たちにインタビューすると、
欧米の研究者達が主張していることとは、また違った「ケニア人の足の速さの理由」が見えてくる。

キャンプで互いに切磋琢磨しあう選手たち。
先進国方式で、練習メニューを細かく組んで、一人一人にあったメニューを・・・なんていうのとは、
全く違う練習をしている彼ら。
コーチは「彼らは体の調子・体の声を自分たちで聞いてペースなどを判断している」という。
「そこに速さの秘密が!!」と思うと、別のケニアのキャンプでは、
一人一人にあったメニューを組んでたりする。

読んでいくと、どれもが納得できる答え、でも、どれもが決め手ではない。
とにかく、いろいろな視点から「ケニア人の速さ」を考察していて、すごく面白い。

また、失業率が高いケニアで、走ることは仕事なのだという意識の違いや、
ケニア人の「だれだって練習すれば速くなる」という超ポジティブな考え方にも驚いた。

欧米では科学的根拠がある理論を元に指導されるが、ケニア人たちには全くそれが通じないという。
ケニア人達は分析が嫌いだという。

それに、この本、走っている時はこまめに水分を摂る、ペース配分する、
個々人にあった指導をする・・・・etc、マラソンの常識的なモノがほとんどケニア人には、
通用しないということも書かれている。

特に水分補給に関して、「水分補給をあまりしないほうがタイムが伸びる」という説の
ピツィラディス教授の論文が却下されたくだりは興味深い。
「水分をこまめに摂らないと脱水症状が起きて危険ですよ」という考えは、
スポーツ飲料メーカーが広めたものだという。
そして、「一般に言われているより、水分補給は少ない方が、
軽い脱水症状状態のほうがタイムが伸びる」という論文は、スポーツ飲料メーカーにとっては困る話だ。
この論文を提出した先のスポンサーがゲータレードだった事が、
却下の理由だろうとピツィラディス教授は推測している。

一般的に浸透している多くの常識が、企業の思惑によって操作されてるのが垣間見えて興味深い
(ダイエットの常識なんて、そういうのばっかりだし)。

マラソンをする人なら、一般的に言われているマラソンの常識と、ケニア人達の違い、
その辺だけでもすごく面白く読めるんじゃないかと思う。

マラソンをしない人も、「ケニア人の速さ」の理由に、これほどまで多数のアプローチがある事、
社会によって人の考え方は違う事、そして指導の仕方も全く違う事など、
物事の捉え方の多面性が見えて楽しめると思う(^^)。

お勧め~(^-^)ノ!

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「全日本食えば食える図鑑」椎名誠:奇食エッセイモノメイン。名古屋食文化ネタが面白かった♪ [本ノンフィクションいろいろ]


全日本食えば食える図鑑 (新潮文庫)

全日本食えば食える図鑑 (新潮文庫)

  • 作者: 椎名 誠
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/04/25
  • メディア: 文庫
6.5点

タイトル「食えば食える」から想像できるように、奇食・ゲテモノ系メインの食エッセイ本。
ウミヘビ、イソギンチャク、クラゲ、エゾジカ、他にも、知名度は低いけど、
写真を見ると、うげーってなる生き物達を食べてます。
ゴカイを生で食べる話は、心底すごい!!と思った。

ただ、以前も書いたけど、椎名誠のだらだら脱力したような文章苦手なんですよ。
途中途中話がよく脱線するけど、その脱線部分も面白く思えないし(^^;)。
なので、好きな奇食系ネタ満載だけど、評価低め。

ただ、amazonでの評価は高いので、椎名誠の文章が苦手じゃなければ、
楽しめるんじゃないかと。

この本の中に、名古屋の食文化を考察してる章があり、
それは椎名誠が感じた、名古屋の特殊性がよく伝わってきて面白く読めた。
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「助けてと言えない-いま30代に何が」NHKクローズアップ現代取材班著:助けを求めない30代ホームレス達 [本ノンフィクションいろいろ]

助けてと言えない―いま30代に何が

助けてと言えない―いま30代に何が

  • 作者: NHKクローズアップ現代取材班
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/10
  • メディア: 単行本
7点

30代の青年が、貧困の中餓死した。
真面目で勤勉だった彼。
しかし、この不況の中、職が安定せず、借金が増え、そのせいで職すら失い、貧困の中に落ちて入った。
彼が最後にメモに残した一言は「たすけて」。
しかし、親友が近所に住み、連絡を取り合う兄もいた彼は、生きている間、その言葉を発しなかった。

その事件を調べ始めたNHKの取材班は、助けを求めない30代ホームレス達の事を知る。

30代ホームレスに共通するのは、一見ホームレスであるとはわからないこと。
みな、身奇麗にしているし、ホームレスだと見られる事を極端に嫌がる。
ホームレスと悟られないよう注意して行動している。
そして、家族や友人に自分の現状を絶対に話さず、支援の手を差し伸べようとしても、頑なに拒絶する。
ホームレス支援をしている人の話によると、外で寝る為、
靴が独特の汚れ方をしているので判断できるという。

以前、何かの記事で30代のホームレスは、
「プライドが高く、見栄っ張り過ぎる為、家族や支援を頼ろうとしない」というのを読んだ。
上記の、30代ホームレスのイメージと重なる。

しかし、その内面は自分が思っていたのとはかなり違っていた。
私は、それらホームレスになった人々が、
「社会が悪いんだ、自分は犠牲者だ」との不満を抱えていると想像していた。

しかし、本書で語られる30代ホームレスの言葉は、正反対だった。
「自分が悪い、自分の努力が足りなかった。親にもこんな姿を見せられない」、
どの人も、自分を責めていた。

そこには、努力すれば報われた親世代を見て育ち、
就職氷河期に就職し、勝ち組負け組と言われる時代に生きた30代が、
親と同じように生きられなかった自分を恥じ、
困窮している現状を、時代ではなく、自分の努力不足として責めている姿があった。

20代の頃は、体力もありどうにかなった。
人に助けを求める事もできた。
しかし「30代になって人に助けを求めるのは・・・」という意識も、彼らを追い詰めている。
この辺の心理はすごくわかる。

また、彼らに「助けて」と言わせない社会にも、この本は言及している。

現在、「ニート」「ひきこもり」の問題の方が、30代~40代の問題としてピックアップされることが多い。
「ひきこもり」まで行かないが自立できず親に食べさせてもらい、
バイトなどのお金をお小遣いにしている30代~40代も多いと思う。
「いくつになっても親のすねをかじって」・・とこの生き方を見る世間の目は冷たい。

親が健在なのに、頼らずホームレスになってしまう30代の人達も、
そういう世間の目と同じ意識を持っているのかもしれない。

いまの社会、一人では自己責任を果たせない。
しかし、まだそれを認める風潮は弱い。
親に頼らず、一人で責任を負ってホームレス化する人がいる一方で、
親が裕福で、そのすねをかじって生きている、親が死んだあとどうするのだろう?と、
その先を心配してしまう人達、また親の資金が厳しくなり、働かない事を責められ、
その親に暴力を振るう人達が社会問題になっているからだろう。

真面目に働けばどうにかなった社会から、
真面目に働いても生活が立ち行かないワーキングプアが増えている社会への変化。
助け合いながら自己責任を果たす、それが普通と思える社会、
そんな社会に変化しないと、この先、どんどん厳しくなると思う。

でも、人々の意識が変化するには、まだまだ時間がかかりそうな気がする。
自分だって、何かあった時、助けて・・と言えない気がする。
面倒をかけたくないし、面倒をかけられたくない・・・そんな意識が根深くあるから・・・。
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「物乞う仏陀」石井光太著:アジア各国の物乞いや障害者のルポ・・・国によって人によって事情は様々 [本ノンフィクションいろいろ]


物乞う仏陀

物乞う仏陀

  • 作者: 石井 光太
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/10/13
  • メディア: 単行本
7.8点
文庫(物乞う仏陀 (文春文庫))もでてます。

アジア各国の、物乞いそして障害者を取材したルポ。

石井光太は、他に「地を這う祈り」「絶対貧困」(リンク先感想)を読んだ。

世界の貧困を取材し、その真実の姿を多くの人の知って欲しいという視点で語られる内容は、
どれも心に響くものだった。

そしてこの本もまた、深く考えさせられる内容になっている。
貧困=不幸ではない。
でも、貧困で不幸になっている人もたくさんいるし、不幸の理由も様々な事を教えてくれる。

アジア各国では、物乞いをしている人の多くが障害者である為、この本ではその両者を取り扱っている。
障害者施設や障害者を持つ家庭も取材しているので、物乞い=障害者ではないのだけど。

カンボジアは、ポル・ポト派の支配や、内戦・戦争と戦闘などで障害者になったものも多い。
著者が取材したのは、地雷を踏んで障害者となった若者。
その日暮しで、稼ぎは酒と女に使う、でも明るく前向きに生きている青年。
もう一人取材したのは、生まれつきの障害者。
かなり歳をとったとても人の良い男。
しかし、彼はカンボジアが持つ暗い歴史をも背負っていた。

ラオスでは、不発弾がそこらじゅうに落ちている場所に暮らす少数民族の取材。
不発弾が爆発して亡くなったり、障害者になるものが後を絶たない。
それでも、その場所に暮らす少数民族達。
彼らには、強い絆があり、著者の目に、そこで暮らす障害者達は幸せそうに見えた。
しかし、同じラオスの別の少数民族の取材では、障害者を持つ家族の不幸を目の当たりにする。

タイは信仰心から物乞いに施しをするものが多く、物乞いの収入はサラリーマン並、
ハンセン病だったりすると、かなりの高収入になるという。
見た目が悲惨であれば悲惨であるほど、稼ぎは高いという。
しかし、その影で物乞いとマフィアのつながりが問題とされてもいる。
作者が取材した限りでは、物乞いのマフィアのつながりは無く
(物乞いを管理するより、麻薬などの方が儲かるから)、
実はカンボジア人などのグループによる物乞い集団が多いとの事だった。

ベトナムは、枯葉剤の影響などにより、生まれながらの障害児も多い。
しかし、障害児が生まれた家庭は、悲惨だ。
ベトナムでは障害児が生まれるのは、親の前世の行いが悪かった為の災いであるとされ、
障害児が生まれた家庭は非難され、村八分にされるという。
以前、枯葉剤関係の本を読んだ時も、障害児が生まれた為疎外され、
その家庭が悲惨な状態になってしまった例がいくつか紹介されていた。
障害児が生まれた事で、貧しい家庭はより生活が立ち行かなくなる辛い状態に、
裕福な家庭ですら、お金では解決できない不幸な状態に陥ってた。

ベトナム人はアジア各国の中では、勤勉なお国柄だと言われている。
しかし、そのせいなのか、物乞いに対する施しは少なく、邪険にもする。
そんな悲惨な状態に置かれている都市部の物乞い集団を取材した著者は、
日本とは違う彼らの意識を知り感銘を受ける。

仏教国ミャンマーでは、キリスト教系の障害者施設の取材をしていた。
アジアの多くの国で、知的障害者の待遇は、かなり遅れているのが分かる内容だった。

スリランカでは、障害児を持つ2つの家庭の取材。
どちらも障害児がいてその世話に追われ、また生活は苦しく大変であるが、
2つの家庭の意識は対照的だ。

仏教徒の母親は、障害児が生まれた事を業として捉え、希望を持つことも、
夢をみることもすべて諦め、絶望の中で生きている。
同じ業の概念を持ちながら、ヒンドゥ教徒のタミル人家庭は、
3人の子供全員が障害者(小さな集落で近親婚を繰り返した為)であることを受け入れ、
この子供たちをきちんと育て上げれば来世で報われると笑う。
考え方一つ、環境一つで、状況は大きく変わる・・・と思わされるエピソードだった。

ネパールでは、ヘロインにより障害者になるものが多いという。
それも悲惨だったが、シンナー漬けになっていたストリートチルドレン達の話が、
読んでいて本当に辛かった。

そして、インド!
大国であり、喧騒と混沌の国。
この国の物乞いの話は、あまりにも救いがなかった。
インドも、物乞いに施しをするのが盛んな国である。
レンタルチャイルド・・・・子供を抱いている物乞いの方が、施しが多い為、
さらってきた子供を借りて物乞いするという。
そして、その子供達は、5歳くらいになると、手・足を切断されたり、
目をえぐられたり、顔を焼かれたりして、子供の物乞いになるという。
この話は、「地を這う祈り」で、手の切断あとも生々しい子供の物乞いの写真と共に紹介されていて、
かなり衝撃を受けた。
しかし、衝撃はそれだけではなかった。
中年の物乞い・・・・彼は同じように子供の頃、突然襲われ、足を切断され、
それから27年間も、物乞いで得たお金のほとんどを搾取されているという。
それらの人々の中には、眠らされ、知らない内に臓器を抜かれている人もいるという。
一度、この地獄に落ちたら抜け出る術は無いのか??
それを、インタビューできた、上記のシステムを統括するマフィアにぶつける著者。
マフィアの言葉に、著者は言葉を失った。
私も、マフィアの言葉に、底知れぬ暗い闇、絶望、やるせなさ、どう表現していいのか、
わからない気持ちを感じた。

貧困の中、障害を持っても明るく生きる人々がいる。
絶望の中、地を這うように生きている人々もいる。
考え方一つで、同じ境遇でも、幸福か不幸か違ってくる場合もある。
しかし、インドの話だけは、救いが見えない。
想像できないほど悲惨な世界があるんだ・・・ということを、痛切に感じただけだ。

私が打ちのめされたマフィアの言葉は、ここに書かない。
少しでも気になる方には、この本を読んで欲しい。
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「隕石の見かた、調べかたがわかる本」藤井旭著:隕石って思ったより落ちているんだね [本ノンフィクションいろいろ]

隕石の見かた・調べかたがわかる本―藤井旭の天体観測入門

隕石の見かた・調べかたがわかる本―藤井旭の天体観測入門

  • 作者: 藤井 旭
  • 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 単行本
7点

博物館などで展示されている隕石。
普通の石との違いがイマイチわからないことが多かった。

でも、この本を読むと、隕石の種類や特徴を知ることができて、
いつか自分も隕石を見つけられるかも??という気分にさせられる。

隕石は、大きく分けて「石質隕石」「鉄隕石」「石鉄隕石」の3種類にわけられるらしい。
一番多いのが「石質隕石」。
これは石でできたもので、パッと見、普通の石と見分けがつかない。
特徴はあるけど、しっかり観察しないとわからない感じ。

「鉄隕石」は鉄の固まりで、こちらは見ればわかりそうな形状をしている。
ただ、隕石全体の6%くらいしかない。

「石鉄隕石」は石と鉄が混じったもので、特徴もはっきりしているが、
鉄隕石よりも少なく、日本では一例のみの確認とか。

月や火星から飛んできた隕石などもあるらしい。
火星の破片が宇宙を漂い、最後に地球に隕石として落ちたなんてすごいなーと思ってしまった。

石隕石、鉄隕石、石鉄隕石の由来の話や、日本に落ちた隕石の数々とその場所、
世界の隕石やクレーター、隕石を研究することでわかることなど、隕石に関する様々なことが、
わかりやすく(子供向けだから)、でもしっかり説明してあって面白かった。

もし、夜空で大火球を見ることができたら、この本を思い出しそう。
その時は、隕石を探してみたいぞ(^^)。
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「不潔の歴史」キャスリン アシェンバーグ著:ヨーロッパ中世は垢まみれ。そして今のアメリカは不潔恐怖症! [本ノンフィクションいろいろ]

図説 不潔の歴史

図説 不潔の歴史

  • 作者: キャスリン アシェンバーグ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2008/09/22
  • メディア: 単行本
7.5点

ヨーロッパの清潔・不潔への価値観の移り変わりから、現代アメリカの不潔恐怖症までを、追った本。

古代ローマの大浴場は有名で、当時の人々は入浴を日課にし清潔にしていた。
しかし、4世紀頃からキリスト教の教義が入浴に否定的に、不潔である事を推奨するよう変化した事や、
伝染病への恐れなどから、「入浴」は堕落した行為、水に体をつけるのは体に悪い事、病気の原因、
垢が体を守ってくれるなどの価値観が徐々に広まり、中世ヨーロッパでは、
入浴というより、体を清潔に保つという事すら廃れてしまったという。
洗うのは人に見せる、顔や手だけ(髪の毛はベタベタ)。
水が悪いものだと思われていたので、高貴な人、王様などほど、体を洗わなかった。
清潔な服を着ていても、体は垢まみれ。
そんな状態が20世紀初頭まで続いた国もあるという。

中世ヨーロッパは、糞尿を道に捨てたり、その処理をちゃんとしていなかった為、
街中や、ベルサイユ宮殿までもが悪臭に満ちていたというのは、知っていたが、
入浴や体を清潔に保つという事に対し、ここまで否定的な価値観が広まっていたというのには驚いた。

貴族たちは、服を洗っていたが、貧民達は、一度来た服をずーっと来たまま。
冬服を子供に着せた親が、春までは脱がないので、シャツの前を縫ってしまっていたというような、
エピソードにはほんとびっくりした。

日本でも、平安時代、香が流行ったのは、貴族達がほとんど入浴しなかったせいだと言われるが、
ヨーロッパでも、そのような理由で香水が流行った。
日本では、入浴が大々的に否定される事は無く(江戸時代、銭湯が普及しだした時、
漢方医などは、温浴に否定的だったらしいが)、鎌倉時代の蒸し風呂から、入浴の習慣は脈々と広まり、
ヨーロッパのような、清潔恐怖症にはならなかったようだ。

ヨーロッパの衛生観念へ大きな影響を与えたのがアメリカで、
アメリカでは、石鹸業界のCM、体臭や口臭に関する否定的な広告が大きな影響を与え、
人々の衛生観念を大きく変化させた。
19世紀末のアメリカでは、不潔なヨーロッパ人、清潔なアメリカ人との区別もあったという。

しかし、本書に、アメリカでは何でも極端で、ルール化すると書いてあるように、
アメリカは極端な清潔志向、不潔恐怖症とも言える状況へ向かっていく。
現在の日本も似たような感じだろう。

ヨーロッパでは、女性が体毛をあまり剃らないのに比べ、
日本やアメリカでは綺麗なまでに処理する事の違いもこの辺にある気がした。

本書で紹介されているホラス・マイナー教授が書いた「ナーシレマの身体儀式」という論文は面白かった。
ナーシレマという人種は、成熟した市場経済を謳歌しているが、複雑な儀式をとりおこなっている。
と、その儀式の様子を事細かに描いているのだが、「Nacirema」は「American」を逆に綴った文字。
儀式とは、家庭での入浴。
軽蔑的に風刺的にアメリカ人を研究している論調で書かれており、
アメリカ人の清潔へのこだわりも、こういう視点でみると、かなり奇異な行動に見える。

しかし、アメリカ人の清潔へのこだわりは、ヨーロッパにも広がっていく。
不潔な環境や不潔な体は、皮膚病などの病気を引き起こしやすい。
医学の発達や細菌などの発見により、従来の「入浴や体を清潔にする事に否定的な医学」は消え去り、
徐々にヨーロッパでの衛生観念も変化していった。

しかし、最近では、清潔過ぎる環境が、
アレルギーや喘息患者を増やすという衛生仮説が話題になっている。
この本では、他にも清潔過ぎる環境により、糖尿病や関節リウマチ、
心臓疾患まで引き起こすとなっていた。

こういう本を読むと、自分が現在当たり前と思っていることが、
少し前までは当たり前ではなかったと知り、いつも驚く。
そして、衛生仮説などのように、不潔恐怖症とも言える現在の価値観を否定する新説があるのも面白い。
今「いい」と言われている事のいくつかは、後世には否定されているのかもしれない。

常識というのは、時代によって、これほどまでに変化するんだなーと思わせてくれる一冊。
アメリカでの衛生観念の広まりからは、CMによる煽動・洗脳の怖さも垣間見える。
お勧めです(^^)。
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「地を這う祈り」石井光太著:むき出しの貧困層の写真は、本当に魂を揺さぶられる(>_<) [本ノンフィクションいろいろ]

地を這う祈り

地を這う祈り

  • 作者: 石井光太
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2010/10/20
  • メディア: 単行本
8.5点

絶対貧困」(リンク先感想)で、世界のスラムや、
貧しい人々の生活を克明に描いたノンフィクションを出した著者による本。

「絶対貧困」は、最底辺にいる人々の生活を、苦だけでなく、楽しみや、
そこに生きる人々の逞しさも合わせて書いた本だけど、この本はズーンと重い。

頭から血を流して路上に横たわり、物乞いする子供の写真。
病院に連れていこうとする著者に、稼げなければもっとひどい目にあうからそのままにしておいてくれ、
と訴えるその子。

手を切り落とされたその断面も生々しい子供の写真。
そして、その傷をわざと化膿させようとする子供。
その方が、物乞いとして稼げるからだという。
そうやって稼いだお金は、腕を切り落とした相手に搾取されてしまうのにだ。

飢えを凌ぐ為、シンナーを吸い味覚を麻痺させて、新聞紙を食べるストリートチルドレン達。
見かねた著者が、シンナーを取り上げ、食事に連れて行くが、
シンナーがなければ、何も食べられない状態になっている子供たちの現実。

中絶され破棄される胎児の遺体、臓器売買の為についた傷跡を持つ人々・・・・・。
掲載されている写真も衝撃的だが、それに添えられている文章が、より事の深刻さ、
悲しさを強めている。

この著者の凄いところは、外から取材するのではなく、中まで入り込んで取材していることだ。
絶対貧困でも、スラムの家に泊まりこんだり、同じ物を食べたりしていた。
そうやって取材しているからこそ、見えてくる事、そうやって取材しない限りわからないことが、
この本には溢れている。

足が悪く台車に乗り、糞尿垂れ流しで路上生活している猛烈な悪臭をはなつ老婆。
トリートチルドレン達が、この老婆をたまに助ける、その理由とは?

姉の死体を路上に置いて、すがり泣き叫んで、物乞いする女。
死体が腐りだすまで連日それを続ける。
死体乞食というらしい。
身内の死体すら、物乞いの道具として使ってしまうのか・・・と思って読み続けると・・・。

貧しくどん底の生活の中から垣間見える人の優しさ、それだからこそより強く感じる悲しさ。

60億人の内、40億人が飢えているとも言われている。
出口の見えない貧困の問題。
それから目をそらさず、しっかりと見つめようとする著者の視線が胸に響く一冊!
お勧めです!!
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「マンション崩壊-あなたの街が廃墟になる日」山岡淳一郎著:南大沢の欠陥マンション、国立景観紛争・・ [本ノンフィクションいろいろ]


マンション崩壊 —あなたの街が廃墟になる日

マンション崩壊 —あなたの街が廃墟になる日

  • 作者: 山岡 淳一郎
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2006/03/23
  • メディア: 単行本
7.5点

近くに異国を思わせる街並みがある。
八王子南大沢のベルコリーヌ
minamio-beru.jpg
こんな街並みがひろがっていて、すごくステキ。

バブル末期に都市整備公団が、多摩ニュータウンの開発の一環として作ったニュータウン。

しかし、一時期ワイドショーでも取り上げられたように、大欠陥マンション群でもあった。
入居した直後から雨漏りに悩まされ、壁を崩せばコンクリートではなく、砂が詰まっていて崩れてくる、
壁の中から空き缶が出てくる、鉄骨が設計図通り入っていない・・・・
6団地、全46棟919戸は、日本では考えられないほど酷い欠陥マンションに悩まされることに。

この本では、マンションの住民と、責任逃れをしようとあの手この手を打ってくる行政との戦いに、
前半を裂いている。
結局22棟が建て替えすることになったが、資産価値の問題や、マンション住人同士の軋轢など、
そこまでたどり着くまでには、信じられないくらいの努力や苦労があったのがこの本を読むとよくわかる。

その間、移転先で亡くなった方、家の欠陥が元で病気になった方、一家離散になってしまった方、
行政による不手際、それが発覚してからも、責任逃れしようとする行政の態度により、
多くの人が苦しめられた。
ヒューザーの問題も酷かったが、相手が行政側なだけに、その態度・対応には、
憤りと背筋の寒さを覚えた。

町田市小山では、以前廃プラ工場が建てられる計画が内密に進められ、
反対する住民側と大揉めにもめた。
その時の説明会での、役所側ののらりくらりとした対応、勝手に進めておきながら、
「中止するなら、その土地を売却予定の会社に払う違約金2億円をどうするんですか!?」
なんて住民側に言ってきた、役所の人間を思い出してしまった。
土地が売却され、もう阻止は不可能・・・とまで言われたのが、何故か突然中止になった。
マスコミが取材に来たり、ヒューザーの問題が持ち上がったり、町田市側だけではなく、
八王子市民(町田市と八王子市の市境に建てられる予定だった)の反対も大きかった・・・
いろいろ理由は考えられるけど、ほんと謎。

後半で取り上げられている、国立景観問題は、国立という街が作られた経過から語られ、
なぜそこまで景観が問題になったのかが、よくわかった。
街の雰囲気を、景観を愛するがゆえ反対する住民を無視する民間企業、
頻繁に変わる制度と、それに、振り回される住民や企業。

他に、多摩ニュータウン全体に関する土地買収の話や、
高齢化が問題になっている永山などの話にも触れられ、行政の見通しの甘さ、考えの無さ、
そして制度の不備が、住民達に大きな問題を与えていることが語られている。

また、逆にコミュニティをうまくつくり上げることに成功したマンションや地域の話も語られ、
マンションや地域コミュニティの運営方法や大切さも実感できる。

豊田市で日系ブラジル人が増えた事から起きる、地域の軋轢を、
フランスの移民の暴動と絡めて考察している章も、興味深かった。
ブラジル人が1000人を超すまでは「お客さん」として、暖かく見守っていた地域の人々。
しかし、現在2万人以上。
日本人はブラジル人を嫌い、ブラジル人は日本人を嫌う。
そしてブラジル人入居者が多かった団地は、日本人が去り、ポルトガル語だけで生活できる、
しかしとても脆い閉鎖されたコミュニティになったという。
少子化が進む日本、いつか海外の労働者を受け入れなければならなくなった時、
フランスだけではなく、多くの国で問題になっている移民との軋轢について、
日本も、向き合わなければいけなくなるのかもしれない。

土地買収、マンション建設に置ける建物に対するチェック機能における行政の問題点、
景観問題など地域住民と民間企業のトラブルから見える法整備の不備、
コミュニティをつくり上げる住民側の意識の問題・・・メインは行政の問題に対するものだったが、
いろいろなことが見えてくる本だった。

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「アメリカン・スーパー・ダイエット」柳田由紀著:「デブのシリコンバレー」と呼ばれる街の取材など面白いネタいろいろ♪ [本ノンフィクションいろいろ]


アメリカン・スーパー・ダイエット―「成人の3分の2が太りすぎ!」という超大国の現実

アメリカン・スーパー・ダイエット―「成人の3分の2が太りすぎ!」という超大国の現実

  • 作者: 柳田 由紀子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07
  • メディア: 単行本
7点

「『成人の3分の2が太りすぎ!』という超大国の現実」・・・と帯にあるように、
アメリカの肥満とダイエットの現状を取材した本。

「太りすぎでドアからでられず壁をぶち抜いて救急車で運ばれた男がいる」
「太り過ぎで遺体が入る棺桶が見つからない」「肥満者用のグッズが大売れ」・・・・
ネットなどのニュース、コネタで、こういうアメリカの肥満ネタはよく見かける。
そういう小ネタ集かと思ったら、ちゃんと取材していて面白かった。

例えば、「太りすぎでドアからでられず壁をぶち抜いて救急車で運ばれた男」。
テレビでも、その映像が流れた事があるので、知ってる人も多いと思う。
日本でも有名なくらいなので、この事件はアメリカでも有名。
その上、この男性、同じ事を2度やっている。
そこから思い浮かべる男性のイメージは、懲りない自堕落で愚かな男。

この本では、この壁ぶち抜き男性マイケル・へブランコさんにインタビューしている。
勝手な想像とは違い、このへブランコさん、かなり頭脳明晰、
自分が太った理由に関しても、しっかり説明してくれる。
単に「びっくり仰天ニュース」と捉えていた事柄が、
へブランコさん自身の苦悩や努力、またアメリカの肥満問題の背景を見せてくれるものとなり、
興味深いインタビューになっていた。

「デブであることが何故悪いのか!」と訴える肥満革命の話なども興味深かった。
ただ、肥満革命に関しては、肥満し過ぎている事で、周囲への負担も大きく
(特注のベッドや椅子、その他の器具-これらは特注なので高額-、
職場では、広い通路を確保しなければいけないし、肥満よる病気での医療費への負担など)、
自堕落な行動が原因で太りすぎた人間を何故周囲が援助しなければいけないのか・・という
肥満ではない人達からの反発という問題もある。

「デブのシリコンバレー」「ラードの泉」と呼ばれる、
大規模なダイエットセンターが3つもあるダーラムの話は特に面白かった。

特に、アメリカのダイエットが、リバウンド前提(超体に悪いし、より太るのに)なのが興味深かった。
「人は弱いものだから、リバウンドは当たり前、だから定期的にダイエットセンターに通う必要がある」
ということである。
だから、一度ダイエットセンターに通ったら、一生定期的に通う必要があるらしい。

厳しい管理の元なら痩せるのは簡単、でもそれを維持するのが難しい・・・というのは、
どこでも共通らしい。

でも値段は、4週で60万~100万(宿泊滞在費別のケースも)とかなりの高額。
リピーターは1週7万~10万。
ダイエット終了後も三ヶ月に一度定期的に通う必要があるという。

これらの施設でダイエットを成功させたある男性は、年3回、各1ヶ月ずつ通っているとか。
毎年100万以上かかるわけだ・・・。

日本のエステの痩身もリバウンドする人が多いのに、
それを言わない事が多いのに比べ良心的と言えば良心的なのか??(^_^;)
リバウンド前提のダイエット・・・ということが問題だと思うんだけど・・・。
リバウンドする度に体重は増え、体も壊す可能性がどんどん高くなるのに。
でも、リバウンドしてくれれば、施設はいつまでも顧客が絶えないよね。
どの施設も、利用者の半分くらいがリピーターだったし。

また、胃の縮小手術を取材した章もある。
2種類の方式が紹介されていて、効果も絶大。
しかし、楽なだけではなく、問題点もいろいろ。
胃を小さくするので、栄養不足にならないよう、栄養剤の服用や定期検診が必要だし、
手術による危険や苦痛もあるという。
医療費もかなり高額。

また、この手術を受けた人へのインタビューもしていた。
彼は、術後の経過があまりよくなく、集中治療室に入り「死ぬほどの苦痛」を味わったという。
また、デザートや脂っこいものを食べただけで吐いてしまう状況だったのが、
少量で回数を食べる・・・などの事をしている内に、胃が何故か元の状態に戻り、
結局リバウンドしてしまったという。

彼は、「食べることに執着が強い自分が手術すべきだったのは、胃ではなく脳だったと思う」と
言っているとか(^^;)。

他にも「肥満者専用グッズ」の経済規模が拡大し続けている事や、
肥満者が置かれている医療保険の問題(肥満していると医療保険すら入れない)、
肥満者の恋愛などの章もある。

肥満という視点から、アメリカの問題点、そしてそれだけではなく問題を打破しようとする
アメリカ人のパワーが見えてくる。

デブの帝国―いかにしてアメリカは肥満大国となったのか」より、
あっさりした内容なので、とても読みやすいのもいい。

食べるな危険!!ファストフードがあなたをスーパーサイズ化する」と合わせて読むと、
よりアメリカの肥満の現状がよくわかるかも。
ダイエット本としては、この3冊の中では「食べるな危険!ファースト・・」が一番参考になると思うけど。

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「イスラムでニュースを読む」宮田律著:ちょっと古かったので時事問題が・・ [本ノンフィクションいろいろ]


イスラムでニュースを読む―イスラム紛争の火種をさぐる

イスラムでニュースを読む―イスラム紛争の火種をさぐる

  • 作者: 宮田 律
  • 出版社/メーカー: 自由国民社
  • 発売日: 2000/04/01
  • メディア: 単行本

6点

前半は、イスラム紛争の背景、後半はイスラム教について。

サブタイトルが「イスラム紛争の火種をさぐる」という事もあり、パキスタン、アフガニスタン、
アフリカのイスラム諸国、中東のイスラム諸国の動向や、それとイスラム教の教えの関係、
イスラエルの影響やテロが活発な背景・・・などいろいろ触れられているんだけど、出版年度が2000年。
イスラム世界が大きく動いたアメリカ同時多発テロの前なので、参考にはなっても、
やっぱり情報が古い。
イラク、フセイン政権なども健在の頃だし。
フセイン政権のその後なども推測しているけど、さすがにアメリカが攻撃をしかけるとは、
著者も思っていなかったらしい(^^;)。

ただ、オサマ・ビンラディンにもかなり触れており、アメリカ同時多発テロ前に、
「オサマ・ビンラディンをここまで紹介した本はない」(帯にも書いてある)のだろう。

後半の、イスラム教については、コーランの解釈や、教義についてかなり詳しく書いてある。
イスラム教をざっくり知るというより、利子の扱いがどうだとか、財産分与はどういう解釈があるのだとか、
狭く深く系なので、この本で扱っているテーマを詳しく知りたい人向け。

ということで、今読むには、前半はちょっと内容が古いなーという感じ。
もちろん、いまだ解決していない問題が多いので参考にはなるけど、
どうせ読むなら、最近の動向まで含めた本がいいし。

後半は、私的に、深くて狭すぎ。
本の表紙の雰囲気は軽い読み物系だけど、実際の内容は普通は表紙が無地な大学のテキスト本系。

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「図説 着物の歴史」橋本澄子著、「ひと目でわかる きもの用語の基本」・・着物の事いろいろ [本ノンフィクションいろいろ]


図説 着物の歴史 (ふくろうの本/日本の文化)

図説 着物の歴史 (ふくろうの本/日本の文化)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2005/08/20
  • メディア: 単行本
7点

ひと目でわかる きもの用語の基本 (特選実用ブックス きもの)

ひと目でわかる きもの用語の基本 (特選実用ブックス きもの)

  • 作者: (社)全日本きもの振興会推薦
  • 出版社/メーカー: 世界文化社
  • 発売日: 2008/07/11
  • メディア: 大型本
7.5点

「図説 着物の歴史」は、桃山時代から明治くらいまでの、
「小袖」の模様の移り変わりをカラー写真メインで紹介した本。

着物の歴史を詳しく追うには不向きだけど、現在まで伝わる「着物」の歴史をざっと追い、
博物館に収めてある、歴史ある綺麗な模様の着物を堪能するには良い本。

古墳時代から現代までの装いの歴史を、簡単に紹介した章もあるし、
私みたいに、この辺りの知識が皆無に近い人向け。

「黒茶片身替鉄線唐草扇散模様繍箔」とか「鬱金綸子地染分花丸模様絞繍」とか、
これを読むまでは「何が何だか(゚_。)?」だった着物の説明が、
少しわかるようになったし。

ということで初心者向けなのだけど、着物を全く着ない私には、
それでも、よくわからない用語がいっぱい。
「摺箔」「繍箔」「縮緬」「綸子」・・・解説があるのもあるけど、
いまいちピンと来なかったり、違いがわからなかったり。



なので「きもの用語の基本」も借りてみました。

「留袖」「振袖」「付け下げ」「小紋」などの着物の種類、「袋帯」「名古屋帯」「兵児帯」など帯の種類、
「手描き友禅」「型染め」など染めの種類、「縮緬」「綸子」などの白生地の違い、
「紬」「御召」「麻・上布」「紗」「羅」「絽」「裂織」「科布」など織りの種類などが、
写真付きで説明されていてわかりやすい。
「金襴緞子」って一つの言葉じゃなく、「金襴」と「緞子」な事を知りました(^^;)。

メインは、全国各地の染めと織りの紹介。
大島紬、東京友禅、加賀友禅などメジャーなものから、
着物に興味が無い人は知らないマイナーなものまで、その特徴が紹介されてます。
これも、ほとんどがカラー写真付きなので、とてもわかりやすい。

本当は、呉服屋さんで実物を見て説明してもらうのが一番だし、百聞は一見にしかずなんだけど、
着物を買うつもりもなく呉服屋さんに行くのは敷居が高すぎるので、これで満足。
今までイメージが一緒だった「京都友禅」と「西陣織」(私の知識はこのレベルでした)の
違いもわかったし(^^;)。

これぞ、私が求めていた本!という感じで当たりでした(^^)。
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