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「世界屠畜紀行」内澤旬子著:面白いが、「屠畜」より「部落差別」問題がメインなような・・。 [本ノンフィクションいろいろ]

世界屠畜紀行

世界屠畜紀行

  • 作者: 内澤 旬子
  • 出版社/メーカー: 解放出版社
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 単行本

7.3点

世界の屠畜に関して、その方法や、家畜を屠畜して行われる行事などだけでなく、
屠畜業者への差別や、生き物を殺すことへの考え方・嫌悪感に対する国ごとの違いにも言及した本。

日本では、キレイに切りそろえられたり、パック詰めされた肉がスーパーや小売店に並んでいる為、
その前の工程を意識する人は少ないし、意識したとしても、嫌悪感だけを持つ人も多い。

「肉は食べるけど、その前の工程は考えたくない・全く知らない」人に
「家畜達は、どう屠畜(屠殺)され、どう解体され、肉になっていくのか」を伝える事を通じて、
「屠畜という現実から目を背けず、家畜たちの命やその作業をする人たちに感謝しながら肉を食べよう」
ってのが、この本の意図かと思ってたんだけど、そうではなく、
実はメインは「部落差別」に起因している「屠畜業者差別問題」だった。

とにかく、ずっと違和感を感じたのは、「部落差別問題に起因している屠畜業差別」に関する事なのに、
日本全国どこでも、当たり前のように、「屠畜という職業に」差別があるという趣旨のことが、
何度も繰り返されたこと。
実際、関東以北では、「部落差別」って知らない、もしくは知識として知っていても、
その現状を実際目の当たりにしたことがない人も、地域によっては多いと思う。
「屠畜業者差別」に関しても、「そんな差別あるの?」って思う人も多いんじゃないだろうか。
しかし、この本を読むと、「屠蓄業者は日本全国、どこでもひどい差別を受けている」と思えてしまうし、
この書き方は、今まで考えた事も無かった人に「そうか屠畜業者って差別される卑しい職業なんだ」と
新しい価値観を植えつけてしまう可能性も高い。

最期の方でこのルポが連載されたのが、「部落解放」という月刊誌だったのを知り、
「部落解放」に取り組んでいたり、興味がある人が対象読者なので、このスタンスも納得もしたけど、
「世界屠畜紀行」というタイトルの印象や、「(部落差別問題の一貫として)屠畜業者の差別がある」
の(部落差別問題・・・)という前提がほとんど語られず、「日本人は全員」というスタンスで語られる為、
一部問題を、当たり前の事として拡大して論じているような印象をあちこちで受けてしまった。
「屠蓄業者が差別されない国」=「差別の無い国」のようなスタンスがあったりとか、
全体的に、細かい部分は割愛し、単純に出来事を結びつけて、主観的に結論を出してしまっている
論調がすごく気になった。

「屠畜」という行為に嫌悪感を持つ人は多いし、動物愛護団体の、場合によっては手段を選ばない
活動により、近年確かにそのイメージが落ちている国は多い。
その点に関してどうやったら解決できるかという方向性は、
本書が「部落差別で屠蓄業者は差別されている」の視点から、
「屠蓄業者が差別されるのは変」(しかしこの主張からは「部落差別」という前提が抜ける)という
スタンスで語られている為、ほとんど示されていない。

最近話題の農業畜産高校を舞台とした荒川弘のマンガ「銀の匙」でも、
「肉を食べる=命を奪っている」ということが、書いてあるが、こちらの方が、
私が期待したテーマには近いものが。

ルポの内容自体は、韓国の犬食、バリ島のでの村ごとの祭りで行われる、豚の解体や丸焼き、
エジプトのラクダの屠畜様子や、各家庭で羊をつぶす「犠牲祭」の明るい様子、
同じイスラム教の儀式でも菜食主義が多いヒンドゥー教の国インドでの、
人目を避けるように行われる犠牲祭の様子、
イスラム国家でも、EU加盟を目指すトルコでの「ヨーロッパの価値観」を受け入れた文化の変化、
同じく社会主義国家から、資本主義国家、そしてEU加盟へと社会が変化するチェコでの
屠畜に関する制度の変化(どちらも、各家庭で屠畜ができなくなる)、
アメリカの大規模(すぎる)な屠畜場の現状など、興味深く、面白い内容が多かった。

エジプトや、バリ島、チェコでは、屠畜を子供にも見せるし、
「食べるために屠畜することは、神への供物を捧げ、みんなで食べるために行為なので良い事」
というバリの文化、「動物を犠牲にして人間は生きている事を改めて認識する為に行われる犠牲祭」
「命をもらう為に大切に家畜を育て、どの部分も大切に使うモンゴル」、など、意識も様々。

先進国や一部の国では、動物愛護団体などによる圧力や嫌がらせから、
屠蓄業者が警戒心を強めているケースも多く、屠畜の現場がより人目から
隠されるようになっている傾向もあるようだ。

信じる宗教によって特定の動物を食べない人(イスラム教は豚、ヒンズー教は牛)かなり多いだろうし、
「動物を殺すのが残酷だから肉は食べない」という趣旨から、ベジタリアンになる人は多いだろうけど、
「動物だけ食べない」「肉も魚も食べない」「野菜しか食べない」・・・・など、ベジタリアンでも様々。
動物は食べるだけでなく、化粧品、そのた生活雑貨の様々なものに使われているので、
それすら避けようと活動している団体もあるという←生活するの大変そうだ。

肉を食べる人でも「屠畜に関しては普通は意識していないが、言われれば嫌悪感を感じるけど、食べる」
「命を奪っているからこそ、感謝しつつ食べる」「特に深く考えず食べる」いろいろ。
また、ベジタリアンに対し「動物だって植物だって生きているんだから(動物と魚にも当てはまる)、
区別するのは変」という人もいる。
どれも「主観」の問題だと私は思う。
だからこそ、なかなか相いれないものがあるが、主観に正義・倫理の後ろ盾がつくと、
「自分が正しい!違うのは悪!」と声高に主張することができ、それが長く続けば、
その価値観が優勢になることも多い。
その辺が語られてるかなーと思っていたんだけど、それはほとんど無かった。

具体的なルポ自体は面白かったけど、テーマ自体は「部落と差別」に起因したものを、
「日本人の特質」として論じている為、実際の状態と離れていて違和感がありすぎた。
それに「差別」って、差別の対象は様々だけど、ちょっと調べればどの国でもあることがわかる。
「差別問題」を「屠畜業」だけで論じることに無理がある気もした。
「差別問題」を提起するにも、もうちょっと違う書き方だったほうが良かったような。
そういう意味で残念。
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「地層の見方がわかる -フィールド図鑑」鉱物って難しい・・・・ [本ノンフィクションいろいろ]

地層の見方がわかるフィールド図鑑―地層を見に行こう地形や鉱物を調べよう

地層の見方がわかるフィールド図鑑―地層を見に行こう地形や鉱物を調べよう

  • 作者: 青木 正博
  • 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本
7点

「鉱物図鑑系」(感想こちらこちら)の本を何冊か読んだんだ。
石英、長石、黒雲母・・・などはある程度わかるんだけど、
カンラン石、角閃石、輝石、花崗岩、結晶片岩・・・・・とにかく、ちゃんとイメージができず、
あやふやな事が多かったので、基本に戻ろうかと思い、この本を借りてみた。

地層のでき方だけでなく、泥岩、花崗岩、玄武岩、チャート・・・いろいろな岩石のでき方、
構成などが紹介されていて、ぼんやりしていた事の一部はわかったけど、
やっぱりイメージできず?ヽ(゚◇。)ノ?

花崗岩とか玄武岩とか言われても、ちゃんとイメージできないのが問題なんだなーと思い、
ネットで調べてみたんだけど・・・・花崗岩にもいろんな種類、色があり・・・、
玄武岩にも・・・・、流紋岩にも・・・・(以下同文)、「こんなの見分けられない(-_-;)!!」と思った。

そういえば、「趣味の鉱石トレジャーハンター―鉱石採集探険記」で、鉱石を見分けるのは、
専門家でも難しい場合が多く、ちゃんと調べてもらわないとダメなケースもある・・・って事が書いてあった。
ケイ酸塩鉱物とか、硫酸塩鉱物とか分類があり「化学組成」も大きいけど、
結晶構造の影響も大きいらしい。

なんか凄く複雑。
「はっきり特徴があって、わかりやすい」ってものではないのが、
ちょっと調べただけでわかったよ←これがこの本を読んだ成果??(^_^;)

中学校の理科の復習をした気分。
火成岩・火山岩・深成岩、堆積岩・・・・・玄武岩、安山岩、流紋岩、花崗岩・・・・中学校当時も、
各石の写真見ても区別がつきにくかったけど、今でもやっぱわからないや(。◇。)?

でも、実は、まだ悪あがきしてます。
撃沈したけど・・・・それは後日記事をアップします。
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「ときめく鉱物図鑑」阪井薫著・監修宮脇律郎:初心者向けかと思ったら、そうでもない [本ノンフィクションいろいろ]

ときめく鉱物図鑑

ときめく鉱物図鑑

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2012/01/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

5点

本の薄さと、タイトルから初心者向けの鉱物図鑑かと思ったら、短い説明のなかに、
「珪酸塩鉱物」「コランダム」「亜鉛鉱床の酸化帯」・・・・etc、固有名詞がずらずら並んでいて、
「????」な事多数。
本は薄く、文章量が少ないので、豆知識もほんのさわりだけ。

用語の解説も、巻末にあり、最初にあれば、本編を読んでいる時の助けになったのに・・と思った。
「図鑑」ということで、組成式なども書いてあるので、通しで読むんじゃなくて、
ちょっとこの鉱石を調べたい・・って時に使うのがいいのかな?
でも、それだったら、もっと詳しい本の方が使えそう。

初心者には敷居が高く、詳しい人には物足りない、そんな中途半端な感じを受けた。
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「僕はしゃべるためにここへ来た」笠井信輔著:東日本大震災、被災地の取材での苦悩 [本ノンフィクションいろいろ]

僕はしゃべるためにここへ来た

僕はしゃべるためにここへ来た

  • 作者: 笠井信輔
  • 出版社/メーカー: 産経新聞出版
  • 発売日: 2011/10/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7点

フジテレビの朝の番組「とくダネ!」でお馴染みの笠井信輔アナウンサー。
東日本大震災での現地取材での苦労や悩み、そして震災報道の裏側を書いた本。
まだ彼が駆け出しだった頃行った、阪神大震災の現地取材での失敗談なども語られている。

タイトル「僕はしゃべるためにここへ来た」は、被災地の人々を前にして、
「取材より、ボランティア活動をした方が役立つのではないか」、と葛藤した著者が出した結論。

(きつい思いを)言葉にしなければならない。
(悲惨な光景を)リポートしなければならない。
(悲しみ、苦しむ)被災者に声を掛けなければならない。
なぜなら「僕はしゃべるためにここ、被災地にきたのだから。

と、著者は前書きで書いている。

インターネットでは書けても、テレビでは絶対言えない言葉や、放送しなかった映像についての
エピソードは、「テレビ」という媒体の特徴がよくわかる。
影響が大きいものだからこそ、公的な倫理観を意識しなければならない。
ちょっとでもそれを外れると、非難の嵐になる。

笠井アナの被災地でのリポートで、子供が母親の死体を発見する様子をルポしたものがあった。
私も見たのだが、「これを放送しちゃうのか・・・」という気持ちを持ったし、
やっぱり賛否両論の渦が巻き起こった。
でも、この本を読んで、少し否定する気持ちは消えた。
最近、テレビは、感動モノを撮るためのやらせが多いけど、この取材は、
何のスクープも取れない可能性が高い、多くの被災者との同行取材の1つで、
たくさんの取材の中の1つの出来事である事が伝わってきたから(テレビを見た時は、
こういうシチュエーションを狙って同行取材してた印象を受けたんだけど)。

被災地に入るテレビクルーの苦労もいろいろわかった。
笠井アナは、取材中トイレに行かなくて良いように(避難所のトイレ問題は深刻で、
阪神大震災の時は、大勢来た取材陣が、ただでさえ処理問題で困っている避難所のトイレを
使って問題になったらしい)、カロリーメイトなど、かさが無いものを食べていたらしい。
また報道陣が避難所のトイレを使わなくて済むよう、紙おむつなどの支給もされていたとか。
レポートの時、テレビでは身奇麗に見えていたけど、スーツのままで何日も寝ていたり、
現地で物を購入するのも厳禁だったり、テレビからは伝わってこない、
報道する側の苦労がいろいろわかる。
しかし、被災者を前にして、こんな苦労は苦労ではない・・と、自分を戒める笠井アナ。
また特定の被災者に便宜を図ることも難しく(私も、私も・・・となってしまったり、
○○テレビはやってくれた・・と他の報道陣の迷惑になる可能性が高い為)、
その辺の苦悩もあったようだ。

被災地はまだまだ大変な情報なのに、トップ記事が計画停電になってしまい憤慨する現地スタッフ。
指示を出す上層部と、現地に入っているスタッフの意識の違いなども興味深かった。

悲惨な状況のなかでも、ついついスクープを期待してしまったり、笠井アナの本音も、
ちらほら書かれているが、全体的には真面目で道徳的、書いたら大問題になるような内容は無かった。
さすがに局アナだし、そんなことは書けないだろうけど(^^;)。

被災地の過酷な現状については、もっと詳しく書かれている本がたくさんあるけど、
報道する側の大変さ、苦労、心構えなどがわかる点で興味深く読めた本だった。
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「遺体-震災、津波の果てに」石井光太著:震災によって奪われた多数の命。その膨大な遺体は、生き延びた人達を奔走させる・・・ [本ノンフィクションいろいろ]

遺体―震災、津波の果てに

遺体―震災、津波の果てに

  • 作者: 石井 光太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/10
  • メディア: 単行本
8.5点

貧困の中でどん底の生活をする世界の人々に関する、読み応えのある数々のルポを書いている著者
石井光太が、今回は、東日本大震災の被災地に赴き、今回もまた胸に来る、
そして考えさせられるルポを届けてくれた。

タイトルの通りテーマは「遺体」。
東日本大震災の現時点での死者は15,854人、行方不明者は3,155人だそうだ。
信じられないほどの人が犠牲になったのが、数字を見ただけでもわかる。
遺体を捜索したり、搬送したりする映像も見た。
たくさんの数の遺体が、そこかしこに転がっていたことも、本で読んだりして知っている。

でも、この本を読んで、現実は、自分の想像を遥かに越えて、もっともっと厳しく大変だったことを知った。

この本は、死者・行方不明者合わせて千人以上の被害を出した岩手県釜石市を舞台にしている。
水産業を生業とする総人口4万人ほどの町。

最初に驚いたのは、ライフラインが寸断された状態での、情報の遅さ。
震災当日や翌日、離れた場所の私達が、津波の被害状況をテレビで見て既に知っていた時、
同じ市に住んでいて津波の被害にあわなかった地区の人達は、「津波が来た」という話は過小評価し、
聞いていても、そこまで悲惨だとは現地を見るまでわからなかったケースがいくつも紹介されている。

家の近くでは、震災で、駐車場のスロープが崩れ2名の方が亡くなり、その映像はテレビで何度も見た。
実際によく知っている場所だったので、かなり衝撃だった。
でも、ある日、実際に崩れたスロープを見て、テレビの映像を通して知る・感じるものとは、
全く違う、生々しさ、何倍も強い衝撃を感じた。
現実を認識するというのは、こういう事なのかもしれない。

そして、次々に遺体安置所に搬送される遺体。
体育館にずらーっと並べられた遺体。
被災した医者も多く、どんどん増えていく遺体の検死や歯形のチェックをする医者・歯医者も少ない。
一日中、やってもやっても、数が減らない、逆に増えていく遺体の、検死や歯形のチェックをする医者達。
その上、小さな市なので、途中、知人の遺体に遭遇することも多い。
冷えきった体育館の中、連日行われた、検死の過酷な実情。

遺体の捜索、搬送も、想像以上に大変な事がわかった。
日が経つにつれ腐敗しはじめる遺体。
遺体などほとんど見たことも無い市の職員達が、体力があるなどの理由で遺体の搬送業務を
命じられるが、次々に脱落してしまう。
この本では取材されていないが、自衛隊や消防団の人達も同じように大変だっただろう。
以前、自衛隊だったという人が、土砂崩れ現場の捜索で、遺体にスコップがささった感触が
いまでも忘れられない・・・と何年も前の事を言っていたし。

また、自分の家族が行方不明な人達が、「自分の家族の遺体を早く捜索して!」と
詰め寄ったり、先にやってもらえないとわかると、暴言を吐いたりということも、頻繁にあったという。
「お金を出すからちゃんとしたお葬式を!」と葬儀業者に泣きながら詰め寄ったり、
テレビでは放送されない、現場の大変な状態が、いろいろ描かれていた。
多くの人が「自分の家族を優先して!」と思ってしまう気持ちもわかるし、
多くの人にそれを求められても、限界があり、それに答えられない遺体捜索をしている人達の
辛さも理解できる。

また、火葬場の問題も想像以上に大きい事を知った。
震災で近隣の火葬場が壊れ、火葬が全く間に合わない状態に。
遺体は日々腐敗していくし、捜索が進み、数もどんどん増えていく。
自分がこのような状態で死んだら土葬でもいいなーと思っていたけど、
土葬されてしまうと、お墓には入れず、後でお参りする場所が無いなど、
残された人達が辛いんだと、この本を読んでわかった。

数でしか見ていなかった遺体。
しかし、医者・歯科医・市の職員・消防士・自衛隊・葬儀業者・お寺の住職、そして残された遺族・・・、
亡くなった方の尊厳を守り、供養してあげるため、多くの人々が翻弄され、また過酷な状況の中、
精一杯の努力をしていたことを、この本を読んで知った。

「東日本大震災」を、被災地の大変さを、今まで全く知らなかった別の視点で捉えることが出来る本。
そして、一人一人の地道な努力が、震災直後の混乱する被災地を支えていたことが、
伝わってくる本でもある。
とてもお勧め!!
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「無縁社会の正体 血縁・地縁・社縁はいかに崩壊したか」橘木俊詔著:「単身急増社会の衝撃」藤森克彦著:無縁社会をデータで読み解く [本ノンフィクションいろいろ]

無縁社会の正体―血縁・地縁・社縁はいかに崩壊したか

無縁社会の正体―血縁・地縁・社縁はいかに崩壊したか

  • 作者: 橘木 俊詔
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2010/12
  • メディア: 単行本
6.5点
単身急増社会の衝撃

単身急増社会の衝撃

  • 作者: 藤森 克彦
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2010/05/26
  • メディア: 単行本
7点

無縁社会 ”無縁死三万二千人の衝撃」「無縁・多死社会-団塊の世代が死に絶えるとき!データでわかる日本の未来」などと合わせて読んだ本。

どちらも、単身世帯が急増し、無縁社会となりつつ現代日本社会をデータで解析している。

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「無縁社会の正体」は、かつて日本の人々を結びつけていた血縁・地縁・社縁の崩壊に注目している。
何故崩壊したのかを、それぞれのケースごとにデータで追い、解析。

離婚率、婚姻率、出生率、単身世帯数などの変化。
敗戦による地域社会の崩壊、長く続く不景気と低賃金による貧困率の増加、
貧困世帯が多い世代。
DVや児童虐待、結婚意思率や、結婚に求めるメリット、離婚の理由、若者の失業率、・・etc、
かなり広範囲にデータを集め、そこから現代社会が何故無縁社会に向かっているのかを、
著者は推測する。

また、かつて血縁・地縁・社縁と、3つの縁により支えられて来た日本が、
その3つを失い、これから先、国やNPOの支援が必要になってきていることを指摘している。

無縁社会になりつつある理由に関しては、面白く読めたが、この先どうするか、どうすべきかに関しては、
一般的な事しか述べられておらず物足りない部分も。

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「単身急増社会の衝撃」も、同じようにデータを解析しているが、
より細かく、また章の終わりに「まとめ」を書くなど、分かりやすい解説となっている。

また、「血縁・地縁・社縁」の3つを検証するため広範囲にデータを集めた「無縁社会の正体」に比べると、
「単身急増社会」の原因に直接関係すると思われるデータが多く、データの種類も多め。
都道府県別の傾向や、介護保険の利用率や、介護が必要な人に対しての主な介護者のデータ、
介護の現状など、介護に関する具体的な話も多い。
海外での単身世帯の増加の状態や、対応などにも触れている。

この先、どうすべきかの考察もこちらの方が詳しい。

データ解析に終始している印象の「無縁社会の正体」に比べ、
こちらのほうがより突っ込んでいる印象をうけるのは、後書きに書いてあるが、
著者が父親の「老々介護」「遠距離介護」に直面し、苦労したからだと思われる。

こちらの方がお勧めだけど、視点が若干違うので、興味がある人は両方読んでもいい気がする。
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どちらを読んでも思うのは、現在未婚率が上がり、将来単身世帯が急増し、
少子高齢化がもっともっと進み、社会的に大きな変化があるということ。

最近も「孤立死」のニュースが頻繁に報じられている。
その内、あまりに多すぎて、報じられすらしなくなるのかも。
「孤独死」と「孤立死」、一時期は一緒になっていたけど、最近は別々に見る傾向が。
それだと「孤独死」と「孤立死」似ているようで大きく違う。
家族がいても、家族の留守中に突然亡くなってしまう可能性がある。
誰にも見とられず「孤独死」するの可能性は、誰でも持っている。
しかし、その後、長期間遺体が発見されないのが「孤立死」。
遺体の腐敗などで住まいへのダメージも大きく(高齢者に家を貸したがらないなどの弊害がでたり、
貸主の負担も大きい)、今問題になっているのはこれ。

単身世帯の増加は、介護保険をも、どんどん圧迫するだろう。
単身世帯で介護を受けている場合、介護保険対象から外れ、自己負担になるような、
本来家族がいればやってくれる事を、ケアマネなどが、代行して行なっている事も多い。
単身世帯の方が、同居や、近くに家族がいる人より、手がかかることが多い。
でも、単身世帯が増えれば、当然、手が回らなくなり、そういうサービスをどうするのかなども
問題になるだろう。

独身世帯が増えるに従い、もっともっと公的援助の充実が望まれるけど、
どーっと高齢者が増える前、現時点で、既に予算的に逼迫していて、
介護サービスの状況はどんどん利用する側に厳しくなっている。

結局、お金がある人は、お金を貯めて、高くても民間に頼むって感じになるだろうけど、
お金の無い人は、家族・身内頼り。
ある程度年齢があがってしまうと、同年代の友人のサポートを期待するのは厳しくなるし、
昔にもどって家族とのつながりや結婚重視に戻るのかもしれない。
究極の選択としては、「本人が希望すれば安楽死を認める法律ができる」かな?
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「信仰が人を殺すとき」ジョン・クラカワー著:神の名の元、人を殺す心理とは [本ノンフィクションいろいろ]

信仰が人を殺すとき - 過激な宗教は何を生み出してきたのか

信仰が人を殺すとき - 過激な宗教は何を生み出してきたのか

  • 作者: ジョン・クラカワー
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2005/04/20
  • メディア: 単行本
7.8点

エベレストで多数の死者を出した遭難事件を扱った「空へ」、
荒野に一人旅だった青年の人生を追った「荒野へ」(「イントゥーザワイルド」(傑作!)として
映画化もされてます-感想こちら)。
ジョン・クラカワーのこれらの作品は、綿密な取材により、様々な視点からテーマとなる事件を捉え、
それを詳細にまとめあげていて、どちらも名著!
そして、この「信仰が人を殺すとき」も、期待を裏切らない内容O(≧▽≦)O。

ただ、タイトルから、「魔女狩り」「宗教戦争」「イスラム過激派」・・・など、
宗教的対立で死んだ人は膨大で、そういういろいろな宗教の歴史も含め、
考察したものかと思って読んだら、「モルモン教」のルポで、最初はガッカリ。
でも、読了後の感想は「読んで良かった!!」です。

モルモン教は、アメリカ生まれの新興宗教。
タバコ、アルコール、珈琲が禁止など戒律が厳しく、素朴で勤勉。
過去に一夫多妻制で迫害を受けたが、一夫多妻制を禁止し、アメリカに溶け込んでいる宗教。
布教活動が盛んで、日本でもよく見かける宣教師はモルモン教の事が多い。
ってぐらいのイメージで、実はあまり興味が無かった。
一時期、アル・ヤンコビックの「アーミッシュパラダイス」(Youtube)で紹介されていた、
アーミッシュと混同してたくらいだし(^^;)。

この本は、熱狂的なモルモン教の信者(モルモン原理主義者)が、
実の弟の妻と幼い娘を「神のお告げ」により殺害したという事件を中心に、
強い信仰心が殺意に変わる過程を、モルモン教の血塗られた歴史や、迫害、
一般社会への歩み寄りと、原理主義の発生などその弊害を挟みながら、詳細に描いている。
ちなみに、モルモン教は信者を着実に増やしている宗教で、2080年には信者が2億人を越えるとも
予想されているという。
ある程度の信者数を確保している宗教としては、創設の過程が、はっきりわかるというのが珍しく、
創設時のことはほとんどわからない、キリスト教、イスラム教などができた時も、
同じような過程を歩んだのではないだろうか・・と思える内容。
そして今でも熱狂的な信仰心は、善良である人を、殺人にかりたてる可能性があるとも思えた。

創設者はジョセフ・スミス。
旧約聖書・新約聖書が土台になっていて、それに独自の解釈を加えた内容。
最初の頃のモルモン教は、一番問題になった「一夫多妻制」を提唱してはいなかった。
ただ、教義は、ジョセフ・スミスが「神のお告げに」よりどんどん追加していた為、
彼の望むままに教義が変更できたらしい。
一夫多妻制への嫌悪感は、初期モルモン教徒には強く、スミスは、一夫多妻制を実践しながらも、
なかなか、それを公にはしていなかったらしい。

一夫多妻制というと、イスラム教もそうだけど、モルモン教の教義では、「女性は男の所有物である」
と道具と同じ扱いで(イスラム教でも、女性がそのような扱いをされているケースもあるが、
家庭内の権利が強かったりもする)、夫には一切逆らわない従順さが求められるという。
女性の目から見ると、単に、浮気したい男の気持ちを正当化する為や、
圧倒的男性優位の立場を教義に取り入れただけ・・と感じられる経過だったけど。
モルモン教には「肌が白いのが善」という人種差別の要素もあるし、何か理由をつけて
「自分は何かより絶対的に優位である」という差別意識は(異教徒、性別、人種に対して
多くの宗教で見られるが)、みっともないと思うんだけど、
今の日本の「勝ち組・負け組」意識もそうだけど、多くの人が好むものなんだろうね。

一夫多妻制は、社会の反発の強さに、結局それをモルモン教内でも禁止したが、
ジョセフ・スミスの教えに一途になろうという熱狂的な信者は、それに不満を抱き、
分離し、原理主義となった。
モルモン教の本流(末日聖徒イエス・キリスト教会等)、原理主義(多数の宗派あり)とも、
今現在も分離を繰り返している理由・状況は、他の多くの宗教が、
多数の宗派にわかれた理由・状況をも想像できる。

最初に述べられているのは、アメリカ、カナダ、メキシコなどに存在する、一夫多妻制を実践している
原理主義コミュニテイの問題。
結婚相手を選ぶ事もできず、命令されるまま14歳前後で結婚させられる少女達。
近親相姦なども行われているようだが、生まれながらにして、
モルモン教の教え(神に背けば地獄に落ちる・モルモン教以外は堕落している等)の中で
育った少女達は、警察が介入しても、本当の事は言わず、多くの事件は
うやむやになっているということが述べられている。
アメリカなどに、司法が介入できないコミュニティが存在しているというのは、かなり衝撃的だった。

その後、モルモン教の迫害と血塗られた歴史が語られる。
選民意識が強く、コミュニティ周辺の住民と馴染もうとしなかった初期モルモン教徒達は、
何度も住民たちと衝突し、お互いを殺しあったり、家を破壊しあったりして、その地を追われ、
コミュニティの移動を繰り返した。
南北戦争前後、インディアンなどとの闘いもあった時期の話だ。
創設者スミスも、監獄に囚われた時、暴徒たちに襲われ殺害されている。
逆に、幌馬車隊を襲って女・子供関係なく100人以上虐殺し、それをインディアンのせいにしたり
-インディアンをけしかけて襲わせ、仲裁すると油断させ、皆殺しにした-(マウンテンメドウの虐殺
冒険者を警察の手のものと勘違いして殺し、それをインディアンのせいにしていたなどの事件もある。

モルモン教は、アメリカに、司法を無視した、神の国をつくろうとしたが(訓練した兵隊もいた)、
一夫多妻に対する外部からの反発の大きさに、存続の危うさを感じ、
結局、一夫多妻制を禁止する事にしたが、それが熱狂的信者の離脱、原理主義を発生させた。
白人優位(黒人-黄色人種も-は悪魔の手先←皮膚の色が濃いのは、神に逆らった罰だという)
という教義もあり、現在それも否定しているが、人種差別意識は、強く残っているという。

モルモン教の歴史は、きっと多くの宗教がたどってきた道なのではないかと思う。
他の宗教を否定し、自分達だけが選ばれた人間だという選民思想と優越感、
それによる外部との対立と迫害がより結束を強くし、信仰心を厚いもの、そして場合によっては、
強迫観念的なものとまでなっていく。

実弟アレンの妻と子供を殺害した、ロン・ラファティとダン・ラファティ。
二人は熱心で敬虔なモルモン教徒だったが、モルモン原理主義に触れ、狂信者へと変わっていく。
そこには、自分の妄想や願望を「神の声」として正当化していく過程が、はっきり見てとれて興味深い。
彼らは「自分が間違ったことをしようとしたなら、神が止めたはずなので、間違ってはいない」
と、殺人を正当化し、反省することは無かったという。

後半に書かれている、熱心な信者がみな狂信者になるのかという問いや、
狂信者は精神的に病んでいるのかという話はとても面白かった。

教祖や狂信者になるものの多くは、自己愛がとても強いという。
神の前に、自分は一人の人間だと卑下するのか、自分も神になれると思うのか・・・。
自己愛が強い人間は、他人に認めて欲しい気持ちが強く、否定されると強い反発を抱く。
そういう人間が追い詰められた時、「神の名」の元に、自分を正当化し、自分に都合の良い教義だけを
取り入れ、その内、自分の望む教義を創りだしていく。
ロイもダンもアメリカ人の1%はいるという「自己愛人格障害」であり、教祖になる人の多くは、
この要素を持っているという。
これは、すごく納得。
ダンは、自分が神に選ばれた人間、預言者であり、もうすぐ世紀末が来て、多くのものが滅びる中、
自分は神の国に召されると信じている。

また、熱狂的な宗教心が元で人を殺した人は、精神障害なのかという問いには、
明確に「NO!」と答えている、裁判の答弁について載っている。
もし、神のお告げによって人を殺した事が精神障害で責任能力無しなのであれば、
「宗教を信じている」「霊を信じている」「迷信を信じている」・・・・etc、それらほとんどすべての人が
精神障害であり、罪に問えなくなるという話。
熱狂的信者と、精神障害で責任能力が無いと思える人との
対比(コミュニケーションがとれるか・・etc)も、とても興味深い内容だった。

熱心なモルモン教徒だったが、その後無神論者になった人物のインタビューも面白かった。
無神論者になった彼は、過去を振り返り、何かを信じる事は幸せだと言っている。
「自分はなぜここにいるのか」などの疑問に宗教は答えてくれるし、性的虐待が蔓延していたり、
近親相姦が行われていたらしいが、それは他でも起きているし、子供を育てるには
コロラド・シティは素晴らしい場所だったと、彼は回想する。
しかし彼は探究心が旺盛で、大学に行った事から、モルモン教が教えていた事
(地球は出来て6千年だとか)と科学の矛盾に目を潰れなくなる
(子供の頃は、「そういうことには疑問をもたないように」と預言者に言われ実践してきた)。
科学と宗教の矛盾から教会を離れるものが出ることから、より教育から子供たちを遠ざけようとする
教会の立場や、コミュニティで凝り固まった偽りの教義を教え込まれ育てられる子供達を心配し、
自分の子供たちの「生活の幸せ」より、子供達が自由にものを考えられる事が一番大切だと、
無神論者になった男は言う。

もう一つ、後半で興味深かったのは、モルモン教会が隠そうとする「マウンテンメドウの虐殺」など、
負の歴史を、熱心な信仰心から書籍として発表し、破門された男のインタビューだ。
彼は、悪い部分を隠そうとすることが、モルモン教徒を弱くしているという。
いいことだけを教えられ信仰していた人々が、そういう真実を知って離れていくことを危惧しての
出版だった。

厚い本だけど、その分情報はたっぷりで、宗教が出来る過程や、それに惹かれる人々、
コミュニティの形成、拡大、分裂、狂信者、熱心な信者でも、考え方や行動は一人一人違う・・・
など、いろいろなことを教えてくれる本。
オウム真理教の事件も、きっと当てはまる部分が多いはず。
モルモン教に興味が無くても、「宗教」というものに興味があるのなら、読めば、絶対面白い!
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「つなみ-被災地のこども80人の作文集」「『つなみ』のこどもたち-作文に書かれなかった物語」森健著 [本ノンフィクションいろいろ]

文藝春秋増刊「つなみ 被災地のこども80人の作文集」 2011年 8月号

文藝春秋増刊「つなみ 被災地のこども80人の作文集」 2011年 8月号

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/06/28
  • メディア: 雑誌

「つなみ」の子どもたち

「つなみ」の子どもたち

  • 作者: 森 健
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/12/07
  • メディア: 単行本


東日本大震災で、被災した子供たちが書いた作文を集めた「つなみ-被災地のこども80人の作文集」。
実は、この手の「読めば感動できるだろうなー」とタイトルからわかってしまう本って、
滅多に読みません(^^;)。
タイトルから感動モノだと察せられると「感動の押し売り」みたいな印象を受けちゃって。
この「感動モノは胡散臭い感」は、テレビ番組であまりにも「作られた感動モノ」っぽいのが
多いのが原因で、本は悪くないし、たまに、そういう感動モノが無性に読みたくなることもあるので、
タイトルでわかるって大事だとは思うのですが。

で、「つなみ」は、知っている方が、「すごくいい本で、自分だけが読んだのではもったいないから」と
貸してくれたので、読みました。
貸してくれた方も、子供の頃、きっと今の私たちには想像できないような大変な思いをされ、
その中で母親を亡くしたそうで、その時の気持ちが、作文の中の子供たちの気持ちと重なって
辛かった・・・と話していました。

家族が行方不明でも、作文の中で、悲しい、寂しい、辛い・・・というのが
前面に出てくることはありません。
「寒い避難所で、温かいおにぎりが出てホッとした」「がんばろう」「ありがとう」など、
地震や津波の恐怖、避難所での心細さなどが綴られた後に来るのは、前向きな気持ち。
知人の話では、「こんな大変な状況の中、辛いとか寂しいって言っちゃいけない」って
子供心に思っていたとの事。
この方は、何十年も経ってから、突然「もう泣いてもいいんだ・・・」と、
亡くした母を思って泣いたそうです。
作文を書いた子供たちも、親や周囲の人たちが大変な状況を見て、
自分が頑張らなくちゃと思っているのかもしれません。

また、「食事」って大切なんだなーというのも、作文を読んで思いました。
避難所で、恐怖と心細さと寒さと空腹に震えていた子供たちが、
食事が届くとみなホッとしたというような心情を記しています。

蛇足だけど、学年が上がるほど、文章力がアップしているのにも驚きました。
ほんの数年の違いだけど、格段に違います。
小1で拙い文章を書いていた子も、数年経ったら成長して、もっとしっかりした文章を
書くようになるんだろうなーなんて思ってしまいました。

80人の子供たちの作文、その1つ1つからいろいろな思いが伝わってきました。
--------------------------------------------------------------------------------------------------
そして「『つなみ』の子どもたち」の方は、作文だけではよく見えなかった(「つなみ」に簡単な補足は
ありましたが)、作文を書いた子たちの家族や状況を改めて取材した本。
作文を書いた中から、10の家族が取材されています。

「つなみのせいで大切なものも流されました」と書いていた女の子。
その大切なものが、母と幼い弟だったことは、作文の補足で知りました。

この追跡取材により、この家族は、一緒に住んでいた祖父母一家、
生き残った父親の別の市にある実家、その他親族合わせて13人もが津波の犠牲に
なったことがわかります。
祖父母や母親、そして弟を具体的ではなく「大切なもの」と書いた少女。
そこには、今回の事に打ちひしがれ、「あの時、ああしていれば・・・」と
底なし沼のような後悔に襲われている父への気配りがあったのかもしれません。
娘が父を支え、娘に支えられる事で、娘のために前向きになろうとする父の物語は、
強く心を打つものがありました。

避難所となったあるお寺では、震災3日目にしてしっかりした「約束事」を決め、
朝5時15分起床、6時からの読経・・など、規律がある規則正しい生活を避難民達は課せられます。
それが、その避難所にいた人々、子ども達に、とてもよい影響を与えたエピソードが語られていて、
「被災してた人達が自分達で何かをする・できる状況を作る」というのがとても大切な事がわかります。

他にも、小学生の甥っ子2人を、迷いなく引き取って育てる事を決めた一家の話や、
ちょっと不良っぽくなり、家族と没交渉になりつつあった高校生の少年の震災を経験しての変化
(作文だけだと、津波の中、家族のため奮闘した真面目な高校生のイメージだった)など、
この本を読まなければわからない、いろいろな話が語られています。

作文ではわからなかったその子供たちが暮らす地元の雰囲気、子供たちの地元への思い、
その後の変化、様々な事がわかることで、元の作文への印象も深いものに。

最後は、子ども達に作文を書いて貰おうと思うきっかけになったという、
吉村昭の「三陸海岸大津波」(感想は後日)に掲載されていたという子どもの作文。
それを書いた牧野アイさん(90歳前後)への取材記事が載っています。
家族全員を失った昭和8年の大津波の教訓を忘れず、いつも津波を意識して生きてきたという、
アイさんとそのお子さん達。
アイさんの津波への意識が、その子ども達にも受け継がれているのが興味深かったです。
が、同時に、地震があれば、どんな時でも必ず高台に逃げるを、大津波が無かった
何十年間も繰り返すというのは、かなり努力が必要な事で、教訓を風化させないというのは、
難しい事なんだとも思いました。

読むなら、「つなみ-被災地のこども80人の作文集」
「『つなみ』のこどもたち-作文に書かれなかった物語」、合わせて読んでみて下さい(^-^)ノ。
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「レンタルチャイルド」石井光太著:手足を切られ、目を潰され、物乞いし、搾取される子供達。インドムンバイの現実 [本ノンフィクションいろいろ]

レンタルチャイルド―神に弄ばれる貧しき子供たち

レンタルチャイルド―神に弄ばれる貧しき子供たち

  • 作者: 石井 光太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/05
  • メディア: 単行本
8点

石井光太は、世界の「貧困」の中で生きる人々の現状を取材しているルポライター。

今まで読んだ著書は「絶対貧困」「地を這う祈り」「物乞う仏陀
ルポ 餓死現場で生きる」(リンク先感想)。
どれも、衝撃的な貧困の現実を教えてくれるルポ。

この「レンタルチャイルド」は、インドムンバイに2002年、2004年、2008年と取材に行った時のルポ。
貧困の泣きたくなるほど厳しい現実だけでなく、インドが大きく様変わりしていく様子も克明に描いている。

2002年のルポは、物乞いでの稼ぎを多くする為、手足を切り落とされたり、目を潰されたり、
大怪我を負わされて物乞いをさせられている浮浪児達を取材したもの。
路上で物乞いをしているがマフィアに稼ぎのほとんどを奪われてしまう浮浪児達や、
マフィアに育てられ、囲い込まれている子供・・・・、どちらの生活も悲惨である。

大怪我を負わされ路上に転がされているのに、病院に連れていこうとした著者の手を、
「稼ぎが無ければもっとひどい目にあう」と、怯え拒む浮浪児。
マフィアに目を潰されたり、足を切断されたりしているのに、
「それは自分達の稼ぎが悪いからしょうがない」と答える、マフィアに囲い込まれている子供たち。

意外だったのは、気まぐれで暴力を振るうマフィアを、「パパ」と言って慕う子供の気持ちだった。
目を潰されたり、障害を負わされ、一人では生きていく事ができないまだ10歳前後にもならない
子供達がすがるのが、その傷を負わせたマフィア達であるというのが、なんともやるせない。

2004年の取材では、障害者にされ物乞いをさせられていた子供達のその後を追っている。

衝撃的だったのは、マフィアに囲われ、物乞いをさせられていた弱々しかった子供達が、
育った事で稼ぎが悪くなり、マフィアの元を追い出された後、暴力的な集団を作り、
強盗、暴行、強姦・・・・様々なことを行うようになっていた事。

女の浮浪者達は、売春や強姦の結果、父親もわからぬ子供を孕む。
それらの赤子の一部は、政府から許可を受けている、福祉施設に「売られ」、
外国から来る養子縁組を求める人々に引き渡される。

その事務所に乗り込んだ著者は、そのマフィアのボスに、「貧困の中で一生生きるのと、
外国で養子として育てられるのとどちらがいいのか」と、問われる。
ボス自身に、「自分は養子として引き取られたかった」と言われ、幼児売買という犯罪と、
貧困の中で育つことの過酷さとを、天秤にかけ、何も言えない著者。

2008年の取材では、近代化が進み、ムンバイから追い出されてしまった浮浪児達を追う。
以前取材したマフィアもほとんどが壊滅し、しかしその後からより暴力的な黒人グループが入ってきて、
貧困層の人々は、以前より苦しんでいた。
ムンバイを追い出された浮浪児達の多くは施設に送り込まれる。
そこは、福祉施設とは名ばかりの、閉じ込め放置するだけの場所で、そこから逃げてくる子も多いという。
施設の方も、逃げる子供の多くは、衰弱しすぎていたり、薬中毒だったりして手間がかかるので、
見て見ぬふりだという。
また、郊外には、ムンバイを追い出された浮浪児達が集まっていた。
近代化が進んでも、貧困の問題は解決していない、逆により悲惨な状態になっているようにも思えた。

この本で印象的だったのは、貧しい人々の助け合いだ。
仲間と協力しなければ生きていけない為、その繋がりは強い。
しかし、グループごとの対立もあるし、トラブルなどでグループを追い出されれば悲惨な状態にもなる。
トラブルであるマフィアを追い出された男は、次の日には、他のマフィアに
捉えられ傷つけられ物乞いをさせられる。
弱肉強食の世界だ。

そんなマフィアも、裕福であるわけではなく、やはり貧困の中で生きている。
浮浪児だったものが、マフィアになり、浮浪児を喰い物にするという連鎖。
そのループは、どこまで行っても貧困の中だ。

そして、自分達が障害を負わせた子供たちを追い出す事に後ろめたい気持ちを持っていたりする、
というのも意外だった。
物乞いのために、赤ん坊を借りる女乞食達も、赤ん坊に情がうつらないよう、数カ月で
赤ん坊を交換するという。
情が移り借りた赤ん坊を連れて逃げたという女乞食の末路は悲惨だ。
自分が食べるのに困っていても、瀕死の仲間の面倒をみていたりもする。
親に虐待され逃げてきた浮浪児になった子供が、心の奥底に持っているのは、
虐待していた親が、優しくなって探しに来てくれることだったりもする。
貧困の中での深い情、それは固くて脆い。

3回の取材によるルポは、想像以上に厳しく、過酷な貧困の実態を教えてくれる。
それは、ヘドロでできた底なし沼のように深く、汚く、おぞましい現実だ。

唯一の救いは、疣だらけで周囲から嫌悪されていた男に囲われていた状態だった若い男が、
著者の通訳をすることで、マフィアと顔見知りになり、その許可を得て、
靴みがきの仕事をすることができるようになり、
その後、建築現場の仕事へと移る事で、酷い貧困から抜け出す事ができた・・ということだ。
その通訳も、浮浪児で子供の頃、片目を潰され、大人になって、物乞いでも稼げなくなり、
貧困の中で一生を終えるはずだったのが、著者との出会いで運命が大きく変わったのだ。

インドの発展と、その影にいまだある貧困の厳しさ。
2008年から既に4年、きっとインドの貧困の状況はもっと変わっているだろう。
でも、インドの発展が貧困にあえぐ人々にとって良い事かというと、
2008年の状況を見るかぎりそう思えないのが辛い。
これを読むと、インドは中国以上に格差のある社会のまま発展しているように思えた。
お勧め!
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「すごい和食」小泉武夫著:和食の良さと、東北の郷土料理 [本ノンフィクションいろいろ]

すごい和食 (ベスト新書)

すごい和食 (ベスト新書)

  • 作者: 小泉 武夫
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2011/11/09
  • メディア: 新書
6.8点

いろいろな奇食を食べたり、和食や世界の発酵文化を紹介したり、
その旺盛な好奇心と行動力は脱帽物。
そして口語体でわかりやすい文章で書かれている小泉武夫氏の本。
何冊も本が出ているけど、今回は、和食の素晴らしさと、震災被害にあった地域の
郷土料理を紹介する内容になっている。

ただ、和食の良さに関しては、同じ著者の他の本でも取り上げている事が多いので、
新鮮さが無い為、点数低め。
他の和食に関する小泉武夫氏の本を読んでいない人なら、楽しめるかも。

食物自給率や、グローバル化による伝統食文化の崩壊、西洋風な食事になったことによる
健康への影響など、真面目な内容が多いが、さらっと書いているだけなので、少し物足りない。

被災地になった東北郷土料理の紹介は、著者がその地を訪れた時のことをおりまぜて紹介してある。
震災前そこで生活していた人々の生活や温かい人柄が伝わってきて、
著者に共感し、一刻も早い復興を願ってしまった。

彼の生まれ故郷である福島の紹介と一緒に書かれていた、
恐ろしいほどに食に執着していた著者の幼少期のエピソードは、あまりに破天荒で笑えた。
また、最後の方では、世界の伝統食として、世界一臭い缶詰シュールストレミング、
アザラシのお腹の中に鳥を入れて発酵させるキャビヤック、口噛みの酒などが紹介されていて、
面白かった。

楽しめる部分もあったが、いろいろなテーマの内容を少しずつ集めて、
一つの本にしてしまった感があり、まとまり感に欠けているのが残念。
この著者の本を全部読みたいという人ならいいけど、
あまり読んでいない人なら、他の本の方が楽しめそう。
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「関東大震災」吉村昭著:関東大震災の悲惨さだけでなく、デマの広がりと怖さについても語った本 [本ノンフィクションいろいろ]

関東大震災 (文春文庫)

関東大震災 (文春文庫)

  • 作者: 吉村 昭
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/08
  • メディア: 文庫
7.3点

吉村昭が「関東大震災」について取材したり、調べたりした事をまとめたもの。

「関東大震災」直後の町の様子、その後の火災の広がり、各地の被害状況、
混乱の中広がるデマ、朝鮮人殺害、マスコミの功罪などの他に、
関東大震災以前にあった地震予知に関しての論争についても触れられている。

大正12年9月1日に起きた「関東大震災」。
倒壊した建物の下敷きになったり、津波に襲われたり・・・・。
しかし、火災での死者の数が最も多かった。
特に一箇所で4万近い人が焼死したという本所区被服廠跡。
他でも、火災による焼死者が数多く出た。
火災の被害が広がったのは、人々が持ちだした大量の家財道具に火が燃え移ったことも、
大きいという。
本書では、猛火に包まれ人々が逃げ惑う阿鼻叫喚地獄のような状況になった
本所区被服廠跡の様子が、克明に描き出されている。

地震の後の火災が広がったり、その火災で多くの橋が焼け落ちたのは、
上記したように、群衆が家財道具を持って移動したからで、
警察によって、橋を渡る前に、無理やり荷物を捨てさせられた橋は焼け落ちず、
多くの人が助かったというケースもあるという。
民衆は警察に反発し、最初は言うことを聞かなかったが、
持参した荷物に火が燃え移る様を見て、その後捨てるようになったという。

この本で多くのページを割いているのが、デマの広がりと、その恐ろしさである。
「朝鮮人が井戸に毒を」「朝鮮人が集団で襲ってくる」などのデマが、
実際にあった日本人による強盗団の発生などと入り交じり、多くの人に信じられ、
多くの朝鮮人が自衛団によって殺害された。
訛りのあった東北人なども「日本語が怪しい」と襲われたり、
日本人と判明した後でも殺害されたり、極限状態に置かれた群集心理の恐ろしさが伝わってくる。
また、警察など公的機関が、そういうデマを否定しても、信じようとしなかった、
情報が少なく錯綜する中マスコミが根拠の無いデマを本当の事のように広めてしまったり、
そして、民衆は数ある情報の中から、自分が信じた事に基づいて各自がバラバラに行動したり・・・・
などの状況は、少し前の、東日本大震災の、買いだめや、放射能の風評などと通じるものがある。

今回の原発は、政府発表が後手後手で、隠されていたことも多かったため、
政府の言うことをそのまま信じるというのが危ないという事も思ったが、
情報が錯綜している中、各自が自分の判断で動くという状況も、
また危険な結果、パニックを生みやすいということがわかる。

「阪神淡路大震災」のことを扱った「大震災名言録―「忘れたころ」のための知恵」を
読んだ時も思ったけど、人は、前の過ちを忘れてしまい、同じような過ちを繰り返すのだなと思った。

人口が密集している上、人と人との繋がりが弱い首都圏で大地震が起きたら・・・・
この本を読むと、地震やそれによる火災の被害も恐ろしいと思ったけど、
デマやパニックによる混乱も同じくらい恐ろしいものになると思った。
震度5の地震でも、買いだめによる品切れや、ギスギスした雰囲気が生まれたくらいだし・・・。
篠田 節子の短篇集「家鳴り」の中に首都圏が地震に襲われるという話があるけど、
その話の中で語られる群集の怖さが、本当になってしまうのかも・・・・と思えたり。

2012年3月11日で、丁度震災から1年。
テレビでは、特集も組まれ、それを見ると復興が余りにも進んでいない事や、
原発周辺の先の見えなさに胸が痛くなる。
過去の教訓を生かすと共に、今被災地で懸命に生きている人達の助けが少しでも出来れば、
被害を受けていない人達の多くが、受けている人の立場になって考えられれば・・思ってしまった。
私自身は、被災地の作物を買ったり、募金くらいしかしていないのだけど・・。
被害に合われた方達が、一刻も早く元の生活に戻れることを願ってやみません。
そして、原発の問題と補償も少しでも早く解決して欲しい。

また必ず来るという関東の直下型地震への備え、心構えをしっかりしなければとも、
改めて思った。
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「オーストラリア人のまっかなホント」ジョゼフ・ケネス・ハント著:アメリカ人と似ているようでかなり違う [本ノンフィクションいろいろ]

オーストラリア人のまっかなホント

オーストラリア人のまっかなホント

  • 作者: ジョゼフ・ケネス・ハント
  • 出版社/メーカー: マクミランランゲージハウス
  • 発売日: 2000/04
  • メディア: 単行本
7点

各国の特徴を面白おかしく、紹介してくれる「まっかなホント」シリーズ。
楽しめるし、知らなかったよ!って内容も多いので、いろいろ読んでます。
今まで読んだ「まっかなホント」シリーズ一覧はこちら

南半球の大陸、オーストラリアに住む人々。
アメリカ、カナダなどと同じく、イギリスからの移民がメインで作られた国。
しかし、最初は流刑地だった。
原住民はアボリジニ。
カンガルー、コアラ、牛。
食べ物はBBQ。
グレートバリアリーフなど、素晴らしい自然がある。
まぁ、メインのイメージはこんな感じ。

オーストラリア独自の有袋類はともかく、イメージ的にはアメリカ、それも自然が厳しい
田舎のアメリカに近かったんだけど、それは遠くは無かったけど、近くも無かった。

アメリカと似ていると思ったのは、自分の国以外のことは、あまり感心が無いこと。
また、BBQが大好きな事。

ただ、イギリスの流刑地で、イギリスとの関係が深いが、トータルで見ると
オーストラリアは、いろいろな国の移民が集まっている。
アメリカも移民が集まった国だけど、「それぞれの出身国ごとに常識は違う」というのを、
アメリカより認めているらしい。
だから、人が何をしようが、あまり気にしない。
個性的で、自分が楽しいのが一番!

また、オーストラリア人は、無謀な夢、勝てない相手、政府などの権力に果敢に挑むことを好み、
とても応援する。
でも、挑む姿は好きでも、成功してしまえば、それは敵。
成金などは、嫌われる。

また、犯罪者でも動機が誠実で、一般人が標的でなければ、尊敬や名誉を集めるという。
違法であれ、権力に楯突いたりする行為もそうだ。

日本の捕鯨船に対するシーシェパードの妨害工作を、オーストラリア人が指示しているのは、
この辺が大きいのかもと思った。

法に関しても、かなり認識は甘く、交通法規を破るくらいは全然問題なし、
でも事故を起こした途端犯罪者として見られる・・というのも、大らかと言えば大らか。

家への執着が強いのは、イギリスっぽいが、その理由については「不可解だ」としか書いていない
(イギリスの場合、住む住所や家で、社会的地位が判断されたりするが、
オーストラリアはどちらかと言えば総中流)。

また自然は思った以上に過酷。
外で物を食べるなら、蠅の襲来で食べ物が真っ黒に見えるようになるのは当たり前、
蠅を追い払う為、座ってなんて食べていられない、
ブッシュは毒蛇、毒蜘蛛、サソリなど危険な生き物がいっぱい。
それでも子供の頃から、そこで遊ぶので本能的に危険な場所は避けて通れるようになるらしい。
郊外でのBBQは、毒蛇など危険がいっぱいのブッシュでの、薪拾いから始まるサバイバル。
外国人は避けた方が無難だとか。

この本で書かれているオーストラリア人は、過酷な自然の中で生活し
(夏暑い地域は40度近くにもなる)、個性的で細かいことは気にせず、
ギャンブルやビールやBBQで、人生を楽しむ事が一番!
ってイメージ。

「まっかなホント」シリーズの中では、あっさりさっくりと特徴が紹介してあるので
(家のところでもそうだったが、「何故そうなのかオーストラリア人にもわからない」というのがちらほら)、
ちょっと物足りない感があった。
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「全米注目!少女誘拐事件の被害者が結婚」と「信仰が人を殺すとき」 [本ノンフィクションいろいろ]

信仰が人を殺すとき - 過激な宗教は何を生み出してきたのか

信仰が人を殺すとき - 過激な宗教は何を生み出してきたのか

  • 作者: ジョン・クラカワー
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2005/04/20
  • メディア: 単行本


昨日見たニュース「全米注目の少女誘拐事件 大人になった被害者が結婚」という記事。
2003年、14歳の少女が寝室から連れ去られ、9ヶ月後に犯人の男とその妻と3人で
歩いているところを発見され、保護されたという事件(エリザベス・スマート誘拐事件wiki)。

あれれ、既視感が・・・・。
と思ったら、現在読んでいる「信仰が人を殺すとき」で取り上げられていた事件だった。
この本の最初の方で、モルモン原理主義者と重婚の問題を取り上げていて、
エリザベスを誘拐したのが、モルモン原理主義者で、エリザベスは二人目の妻としてさらわれたのだ。
エリザベスは原理主義者では無かったがモルモン教徒ではあった為、犯人の主張する
教義に感化されやすい状態で、状況を受け入れ(洗脳)、逃げようともせず、一緒に行動していた・・・と
本書には書かれている。

しかし、ちょっとだけ記事を検索した限りではこの事件にモルモン教という名前があるのは少ない。
犯人は重婚主義者」という記事では、モルモン教の名前が出ているが。
犯人の男は、精神障害として、最初は責任能力無しとされたが、その後有罪になったらしい。

このタイミングで、このニュースを読まなければ、スルーしてたと思うし、
モルモン原理主義や重婚など、この事件でメインになる部分も、気が付かなかったと思う。
「精神的障害で責任能力無し」も、熱狂的信者がそう判断されるなら、
多くの宗教的犯罪は責任能力無し・・・となってしまう気がして怖い。
また本書で書かれている「エリザベスの洗脳」については、否定する意見(恐怖のあまり
逃げられる時でも逃げようとしなかった)があるというのも知った。
こういう「おおっ!」って思うタイミングってたまにあるけど、ちょっと嬉しい。

「信仰が人を殺すとき」は、まだまだ序盤(厚い)。
序盤でも衝撃的な内容(モルモン原理主義者達の、重婚、14歳前後で相手も選べず結婚などの事が、
アメリカやカナダで町(コミュニティ)ぐるみで行われているなど)が書かれているので、
読了したら、何が見えてくるんだろう??

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「ルポ 餓死現場で生きる」石井光太著:栄養失調・児童労働・子供兵・・・世界の子供達が置かれている過酷な環境 [本ノンフィクションいろいろ]

ルポ 餓死現場で生きる (ちくま新書)

ルポ 餓死現場で生きる (ちくま新書)

  • 作者: 石井 光太
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2011/04/07
  • メディア: 単行本
8点

世界の貧困現場などを中心に取材している石井光太氏のルポ。
世界の貧困地区で子供達が置かれた状況を、いろいろな視点から捉えている。

今まで読んだ著書は「絶対貧困」「地を這う祈り」「物乞う仏陀」(リンク先感想)。
どれも、知られざる世界の貧困の現状を、克明に描いたルポ。

第一章は表題にもなっている「餓死現場での生き方」。
現在、世界で飢餓に苦しんでいる人は10億人。
世界の人口の7人に1人。
特に、子供が多く、途上国で死ぬ5人に3人が栄養不良だと考えられているという。
こういう数字は、いろいろな資料で見る。
しかし、石井光太の本は、一味も二味も違う。
他の章でも、数字だけではわからない、貧困の中にいる子供達の姿、現状を捉えている。

私たちがイメージする、飢餓の現場に生きる子供達の姿は、
栄養失調でガリガリにやせ細り、弱りきって横たわっている、
タンパク質不足でお腹だけがぽっこりと出た子供。

でも、そういう子供達だけではないことを、この章では書いている。
骨と皮だけになり、お腹がぽっこりと出た、飢えている子供達も、楽しそうにサッカーをして遊んだりする。
体力がなく、長時間遊べなくても、遊ぶのだ。
家の手伝いも、食べるために、お金を稼いだりもしなければいけない。
骨と皮だけになった飢餓状態の中でも、彼らが「生きなければいけない」事がわかる。

飢餓状態に置かれている家庭の脆さも書かれている。
飢餓状態の家庭では、食事は1日一食。
それも、パンのような主食が少しだけ・・という事も多い。
栄養不良は、免疫力を低下させ、感染症にもかかりやすくなるし、失明などの他の病気ももたらす。
また父親が食事をとった残りを、子供や女達が食べる為、
成長期の子供達にとっては、栄養は絶対的に足りない。
しかし、父親が、病気になった子供に分ける為、食事を減らした結果、
稼ぎ頭である父親自身が倒れてしまい、家族がもっとひどい状態に陥った例などもあげてあり、
父親が優先で食事を得ることが、仕方が無い事であるなどにも触れられている。

また、貧困の中では、他の家族との協力がかかせない。
稼ぎが足りない時は、他の家族が面倒をみてくれるし、その逆もある。
貧困の中でのセーフティネットだ。
しかし、他の家族の面倒を見るため、余剰なお金があったとしても使わざる得ず、
余剰金をためて貧困から抜け出す事ができない。
中には、かなり仕事がうまくいっているにも関わらず、協力しあっていた他の家族
数家族がどれも経済的に困窮していて、それを助ける為、自分の子供を学校にもやれず、
働かさなければならない・・・など、お互いを助けあう為のセーフティネットが、
貧困スパイラルからの脱出を難しくしているケースが多いという。

第二章は「児童労働の裏側」。
子供達が、危険な労働に安い賃金で従事させられているのは、テレビなどでも放送されているので、
知っている人は多いと思う。
著者も、危険な労働や、劣悪な環境での、児童労働に対しては、問題視している。
しかし、普通の工場での児童労働も、世界的な「児童労働反対運動」から、
子供達が締め出されたりしている。
その結果、安全で稼げる職場を失い、食べていくために、売春や危険な労働をしなければ
いけなくなる子もいるという。

また、売春に関しては、望まずその仕事に従事させられている少女、
逆に、飢餓に苛まれ、いつ強姦されるかもわからない貧困の中で生きるより、
もしくは家政婦としてその主人に、安い賃金で性的虐待を受け続けるより、
終わりの無い貧困の生活から抜け出す手段として、売春を選ぶ少女もいる。

第三章は「無教養が生むもの・奪うもの」として、公用語が話せない事の問題、
劣悪な環境で育つことで常識が欠如してしまうこと(これはアメリカなどの貧困世帯でもある)、
迷信の功罪などが取り上げられている。

ケニア・ナイロビ周辺のスラムを例にあげているが、教育を受けられず公用語が話せない為、
孤立してしまい、社会に入れず、隔絶してしまう人達の事が書いてある。
それは、狭い町の中に国境があるようなもの。
その想像以上に大きな弊害についても述べられている。

第四章は「児童結婚という性生活」を取り上げ、幼くして本人の意思とは関係なく嫁がされてしまう
少女達について、その危険と弊害、逆にそれが必要であったり、それが少女の救済の手段にも
なっている社会について述べられている。

しかし、幼くしての性行為や妊娠は、感染症の危険を増大させたり、出産時のトラブル、
また胎児への悪影響など、問題も多い。

第五章は「ストリートチルドレンの下克上」として、子供だけで路上で暮らす子供達について、
そういう境遇に陥った背景や、彼らの未来について述べている。
ここで述べられている、アフリカ(社会と隔絶してグループ化孤立化凶悪化する)と
アジア(社会に関わり、グループ同士の交流も盛ん)のストリートチルドレンの違いと、
その社会環境や薬物との関係は、興味深かった。

第六章は「子供兵が見ている世界」として、無理やり兵士にさせられた、
もしくは志願した子供達の事が語られている。

悪名高いのは、アフリカでの子ども兵で、誘拐したり、時には集落を襲い、自分の家族をその子供に
殺させて、戻れないようにして連れ去ったりして、兵隊、それも最も危険な任務に当たる兵隊にする。
また、麻薬を与え、戦闘への恐怖を消し去ったりするため、解放されても、心の傷や、
麻薬への依存など、その後の問題も大きい。

ネパールのマオイストに参加している兵士の中には、親が子供を兵隊にしたという話が載っていた。
その親は、マオイストを指示しているわけではなかったが、町に子供を働きに出すと、
奴隷のように扱われ、行方不明になってしまうという。
それよりは、兵隊にした方が、たまには顔も見られるし、ましなのだという。
貧しい人々が普通に働くことすら難しい・・という現状がそこにはある。

第七章は「なぜエイズは貧困国で広がるのか」として、栄養不良、売春、無教養、薬物・・
第六章までで語られた様々な事柄が絡み合い、エイズが貧困国、
特にサハラ以南のアフリカで広がっている理由と、
エイズの子供達、エイズで親を亡くした子供達についての章。

著者が繰り返し書いているのは、貧困の現場や、子供達を取り巻く環境は、
複雑であり、ケースごと、その社会毎に違う。
それを知ろうとせず、頭ごなしに否定してしまうと、助けるつもりの働きかけの結果、
より不幸になってしまう子供達も多く出る。
どれも、その社会、その背景、その当事者、それを良く知った上で、
何ができるのかを考えなければ、いけないのだ。

そして、この本は、そういう様々なケースを、その社会背景も考慮して取り上げ、教えてくれる。
また、数字だけではわからない、貧困の中の子供たちのリアルな現状も教えてくれる。

世の中は、数字だけではわからない生活・文化があり、また良と悪だけでは簡単に割り切れない、
複雑なものであることがわかる本。
お勧め!!
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「図説雑学 よくわかる量子力学」夏梅誠・二間瀬敏史著:量子力学は理解出来ないものらしい・・・ [本ノンフィクションいろいろ]

よくわかる量子力学 (図解雑学)

よくわかる量子力学 (図解雑学)

  • 作者: 夏梅 誠
  • 出版社/メーカー: ナツメ社
  • 発売日: 2005/11
  • メディア: 単行本
7点

二間瀬敏史氏の「宇宙の始まりと終わり」(リンク先感想)はとても面白かったけど、
量子力学が絡んでくると、かなりわやや。
何年も前から量子力学が全然わからないので、
量子力学を少しでもわかることを、今年の抱負にもしてみた(^^;)。

で、同じ著者の「よくわかる量子力学」を読んでみた。
しかーし、この本の第三章に恐るべき事実が!!

「量子力学は理解できるものではない」

だそうだΣ( ̄ロ ̄lll)。
普通の人だけじゃなく、専門家ですら、理解できないんだそうだ。

でも、ある事象を説明するのに、こういう性質・ルールがあるだろう・・・という推測はできる。
量子力学ってそういうものらしい・・・・_| ̄|○。
その雲をつかむような事象を研究している人達、それもまた理解不能だ・・・。

で、この本、7章にわかれ、最初の1・2章は、日常的なことを引き合いに、
量子力学の基礎の基礎の基礎、ぐらいの説明がされている。

実は、思ったよりも身近な量子力学。
太陽電池、ビデオカメラなど光に反応する装置や、
CDプレーヤー、バーコードリーダーなどのレーザー機器、半導体機器などは、
量子力学を使っているという。
第一章は、光の性質を例えに量子力学とはどんなものなのかが語られている。
遠くの星が見えるのも、日焼けするのも、量子力学なら説明できるという。
量子というのは、粒子でもあり波動でもある・・・というのが、この章で説明されていること。

この章で、光=電磁波(というより、電磁波の一種)なのを知りました(^^;)。
旦那が少し前、量子力学について質問した時、チョロっとそんな事を言ってた記憶があるんだけど、
光と電磁波は別物だと頭から思い込んでたので、「何か変なことを言ってる」とスルーしてました(爆)。
思い込みって怖い。

第二章は量子と原子の世界について。
原子の中の電子は、何故原子核に落ちないのかとか、原子核の周りのどこを回っているのかなどが、
量子力学を使って説明されてます。
またスペクトル分析した時でる謎の暗線「フラウンホーファー」線や、それができる理由などの説明も。

第三章からが本格的な量子力学。
第三章「量子力学のルール重ね合わせ」では、量子の持つ「波」と「粒子」の性質とか、
重ね合わせなどに関連して、シュレディンガーの猫なんかの話が書いてある。
すでにわややになりかけ。

第四章では演算速度が恐ろしいほど速い「量子コンピューター」についてや、量子コンピューターが
もし開発されれば、現在使われている素数を使った暗号すら役に立たなくなるというような話。
第五章では「不確定性関係と量子暗号」で、量子は全ての性質を完全に決めることができない性質を
使った量子暗号の話。
第六章は「量子からみあいと量子テレポーテーション」で、量子のからみ合いを利用して、
量子をテレポーテーションさせるという話。
・・・・・・・・・・・四章~六章、部分的にしかわかってません(-_-;)。
特に六章はダメダメ。

第七章は、量子力学を使ったブラックホールの説明。
ホーキング放射の話などが載ってます。
ブラックホールという馴染みのある題材だったので、まだ前の三つの章よりはわかったけど、
前の章の説明が前提なので、やっぱりわかんない部分はわかんない(^_^;)。

ぼんやりと、量子力学ってこんなものなんだーってのはわかったけど、やっぱりぼんやり曖昧。
本の途中で、「この説明でわかった気になった人、それは間違いです」って指摘があるんだけど、
最後まで読んでも、きっと私はその状態(^_^;)。

まぁ半歩くらいは前進したんじゃないかと・・・・。

でも、イラストも豊富、例えも多く、わかりやすく解説してあるのは確かなので、
入門編としてとっかかりにはいい本な気がします♪
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「スイス人のまっかなホント」ポール・ビルトン著:すごくユニークな国スイスのことを知ろう♪ [本ノンフィクションいろいろ]

スイス人のまっかなホント (まっかなホントシリーズ)

スイス人のまっかなホント (まっかなホントシリーズ)

  • 作者: ポール ビルトン
  • 出版社/メーカー: マクミランランゲージハウス
  • 発売日: 2000/01
  • メディア: 単行本
7点

各国の特色を面白く教えてくれる「まっかなホント」シリーズ。
今まで読んだのは
「日本人のまっかなホント」と「フランス人のまっかなホント」
「イギリス人のまっかなホント」
「スウェーデン人のまっかなホント」
「ドイツ人のまっかなホント」「アイスランド人のまっかなホント」
(全てリンク先感想)。
追記:「まっかなホント」シリーズ、感想一覧はこちら

永世中立国スイス。
平和的なイメージがあるけど、国民皆兵で、徴兵制度を採用している武装中立の国
(「自国を攻撃したら、占領して得られる利益以上に損害を受けるぞっ!」ってな感じ)。
核シェルターも国民全員分用意。
EUへの参加も国民投票で否決。
ヨーロッパのど真ん中にあるのに、EU非加盟、通貨もスイスフラン、我道を行く国、スイス。

そんなスイスの事がいろいろわかる一冊。

スイスは、カントンと呼ばれる州が集まった国で、カントンの自治権は、アメリカの州より強く、
独自に税金を集め使い、独自の法律、司法、警察があり、ミニ国家に近い。
その上、公用語は、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つ。
国民は、各カントンへの所属意識が強く、ミニ国家乱立状態に近いので、
大統領の存在価値は、外国の客をもてなす為・・・ぐらいの意味合いだったりするらしい。
そして、カントンごとに特色があり(誰でも-頭が少しおかしくても-医者として開業できる
カントンすらあるらしい)、よく分裂しないでまとまっていると思うほど。

その上、スイスは投票の国。
カントンで何か決めるにも、スイス連邦で何か決めるにも、投票・投票・投票。
あらゆることを投票で決めるという。
投票で決まった事で問題が生じれば、また投票により改善。
3ヶ月置きに、投票があるという。
それがこの国をまとめている一つの理由でもあるらしい。
自国の未来のために、投票で税金をあげるのを決めてしまったりって事もあったらしい。

スイス人の気質は、ドイツ人に近いようだ。
というか、ドイツ語を話す人が多い為で、ドイツ人は心配症。
ドイツ語を話す人達は、あらゆる事を心配して、準備している。
「失敗するのは当たり前、でも準備は万端だ」という感じ←この辺、ほんとにドイツ人に似ている。
フランス語を話す人達は、フランス人気質に近く、自分たちは最高であるという思想と理想を持つ
哲学者であり、ドイツ語を話すスイス人は夢が無いと心配するという。
イタリア語を話すスイス人は、あまり心配しないが、人口の10%しかいないので問題無いらしい(笑)。
国民全員が入れるだけの核シェルターを用意しているというのを見ても、
その心配症の程度がわかる。

各カントンの行事とかも紹介されていたけど、とにかく「国」自体が変わっているので、
各カントンの個性が霞んでしまうほど。
堅苦しく、真面目で、均一的、でも、各カントンの個性が強くバラバラ・・・、
わかったようで、やっぱりわからないスイスという国が少しだけわかる本。

「図説スイスの歴史」(リンク先感想)を読むと、その成り立ちなどから、もうちょっとこの国がわかる。
他のカントンと戦争もしたけど、話し合いでの解決も多く、カントン同士の対立に他のカントンが仲裁に
入ったり、バラバラになるのをどうにか避け、中世~近代の戦乱の時期も、
いろいろな国とうまくわたり合い、カントンの集合体、スイスという「国」を作り上げた国。
でも、「何でちゃんとまとまっているんだろう??」という根底の部分は、やっぱり謎。
スイスは興味深い国です。
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「すぐわかる楽しい江戸の浮世絵」文章の中味が中学生向けっぽいのに、春画などの紹介も。 [本ノンフィクションいろいろ]

すぐわかる楽しい江戸の浮世絵―江戸の人はどう使ったか

すぐわかる楽しい江戸の浮世絵―江戸の人はどう使ったか

  • 作者: 辻 惟雄
  • 出版社/メーカー: 東京美術
  • 発売日: 2008/08
  • メディア: 単行本
4点

「すぐわかる楽しい江戸の浮世絵」ということで借りたけど、美術的な視点ではなく、
「江戸の人はどう使ったか」というサブタイトルに主眼を置いた本だった。
この時点で期待外れ。

浮世絵は、当時のファッションを先導し、広告としても使われ、読み物でもあり、プロマイドでもあった。
そんな事が書いてある。

現代と、江戸時代を比較している事が多いのだが、「現代は~」の部分が長すぎ、
文章の半分近くが現代がどうこうで終わっているページも多かった。
また、その「現代は~」の話が、敢えて詳しく書く必要な事が無いことも多く、
現代と江戸時代を比較して、教訓的な事が書いてある部分も稚拙、
対話文で構成されている「浮世絵講座」も子供向けっぽい内容で、
「中学生向け??」と思えてしまった。
でも、かなり露骨な春画なども乗っており、中学生向けとは思えないし。

全体的に、文字が大きく文章量が少ないにも関わらず、
書かなくても良い事がだらだら書いてある印象。

「浮世絵」の紹介も、「ハイセンスな女はお化粧のアイテムにも気を使う」など、
雑誌的なコピーがついていたりして、解説としては役に立たないものが多かった。

春画などの紹介が無ければ、中学生辺りにいいのかと思えたけど、大人が読むには物足りず、
子供が読むには、内容に問題あり・・・という一冊だった。
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「宇宙の始まりと終わり」二間瀬敏史著:はるかな未来、銀河は蒸発し陽子や中性子すら消える・・? [本ノンフィクションいろいろ]

宇宙の始まりと終わり

宇宙の始まりと終わり

  • 作者: 二間瀬 敏史
  • 出版社/メーカー: ナツメ社
  • 発売日: 2011/07/20
  • メディア: 単行本
8.5点

宇宙に関する事って、科学の進歩や新しい発見などで、どんどん新しい説が唱えられたり、
以前予測されていたことが確認されたりしている。
なので、(簡単な)宇宙論を読むのは面白いのだけど、「何故?何で?ヽ(゚◇。)ノ?」とその理論に
ついていけないことも。
「AだからB」というのを噛み砕いて説明してあっても、
「全然わからん(。◇。)?」となってしまう事しばしば。

この本は、この手の初心者向け宇宙論の中では、かなりわかりやすい内容になっていて、
すごく面白く読めた。

現在の地球や太陽系、銀河、宇宙全体の様子、太陽系やその惑星の成り立ち、
インフレーション膨張から始まると言われる(インフレーション膨張の前は不明)宇宙の始まりと形成、
そして、現在の科学で予想される未来の宇宙。
現在、過去、未来の大きな章にわけられ説明されている様々な事柄が、
イラストや例えを使い、そして段階を追って順に丁寧に説明されているので、かなりわかりやすい。

以前別の本で読んだ、宇宙形成の途中で起きる「宇宙の晴れ上がり」も、今までモヤモヤしてたのが、
「あーなるほど~!」とよくわかったし、「晴れ上がり」と言われる所以もなんとなく納得。

暗黒物質があると言われる理由やその性質や影響、ハッブル望遠鏡の名前で有名な天文学者
ハッブルの数々の功績、グレッグ・イーガンの小説「万物理論」の万物理論というのが
この本で扱われている「超弦理論」と「大統一理論」であり、小説を読んだ時は「?ヽ(゚◇。)ノ?」だった
その内容が朧げながらわかったこととか、新しくわかった事、今まで知らなかったこと、
モヤモヤしてた事への指針、などいろいろな発見があって、
読んでてワクワク、とてもとても楽しかったO(≧▽≦)O!

永遠の物だと思っていた、原子核を構成する陽子や中性子すら、10の36乗年くらい先には、
壊れて消滅する、なんて衝撃的な内容も。

宇宙論は諸説あるだろうし、今現在も新たな発見があるのかもしれないけど、
それを理解するにも、基本の部分はわかってないとダメなので、
その足がかりとして、とても面白く、参考になる本としてお勧めO(≧▽≦)O!!

でもでもでも、やっぱり量子力学はわからん(-_-;)!!
かなり噛み砕いて説明してあるので、一瞬わかったつもりになるんだけど、
それを元に理論を展開されると、「駄目だ~わからん・・・(-_-;)」になってしまう。
やっぱりわかってない状態から脱していない。

一つの粒子が同時にいろいろな状態を持つ(シュレディンガーの猫だなきっと)、
粒子は波動である、波動だからうんぬん(この辺からわからなくなる)・・・・etc。
ミクロの世界は「想像を絶する状態」だということなので、想像しようとせず、
理解しなければいけないんだろうけど、想像できないことってやっぱりわからん。
量子力学の基礎は、授業でとってたという旦那に質問しようにも、質問内容すらまとまらない、
何がわからないのかわからないところに、自分のわからなさが出てます(^_^;)。

宇宙論を読む時、避けて通れない量子力学。
その壁は高すぎ。
粒子が古典物理の法則を無視して壁をすり抜けるように、私もある時、
壁を越えるのではなく、すり抜ける事ができるんだろうか??
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「はみだしシェフの世界やけっぱち放浪記」アンソニー・ボーディン著:いろいろな視点から「食」と「シェフの仕事」を見る [本ノンフィクションいろいろ]

THE NASTY BITS―はみだしシェフの世界やけっぱち放浪記

THE NASTY BITS―はみだしシェフの世界やけっぱち放浪記

  • 作者: アンソニー ボーディン
  • 出版社/メーカー: バベルプレス
  • 発売日: 2011/09
  • メディア: 単行本
7点

たまに日本テレビの「世界まる見え!テレビ特捜部」などで、シェフがガイド役の海外グルメ番組を見る。
そういうシェフが、グルメ旅行記を本にしたのかなと思って借りてみたら、
その予想は半分当たってて、半分外れてた。

アンソニー・ボーデインは、ディスカバリーチャンネルで、世界各国を旅行し、その国の料理を
紹介する「アンソニー世界を喰らう」という番組を持っている。
ベテランシェフであったが、「キッチン・コンフィデンシャル」のヒットにより、作家に。

「アンソニー世界を喰らう」の紹介に「美食のインディ・ジョーンズ」と書いてあったように、
本書で読む限り、とにかく何でも食べるし、好奇心も旺盛。
イヌイットが目の前で解体したアザラシの肉や脳みそを、血まみれになりながら生で食べるし、
ベトナムの汚い屋台でも舌鼓を打ち、そうかと思えばハリウッドに進出した
正統派フランス料理をも楽しむ。
ニューヨークのお気に入りの高級寿司屋「雅」で出される、数々の寿司を愛し堪能する。
たくさんの料理が紹介されているし、美味しいものには惜しみない絶賛を、
そうでないものには辛辣な評価を下している。

欧米(特にアメリカ)のレストランの話は、かなり詳しく記述されているのだけれど、
「知っているのが前提(欧米向けに書かれている為)」で書かれている為、
店名やオーナーシェフ、料理の名前が羅列され感想が書かれていても、全然ピンと来ないのが残念。
唯一知っていたジェイミー・オリヴァーは、ジャンクフードとお菓子で構成されていた、
学校給食を改革したシェフとして、私の持つ印象は良かったんだけど、著者は毛嫌いしていた。
でも、何故だかは不明。
以前ジェイミーをテレビで見た時、甘いマスクで、お客さんから、アイドルのような扱いを
受けていたので、日本の川越達也みたいな感じなんだろうか??
「川越達也みたいなシェフは嫌い」って言えば、日本で通じるけど、外国人にはわからない、
そんな要素が、この本の欧米関係の記事は、数多く見られた。

でも、アメリカ人の彼にとって馴染みの無い、ブラジル、中国、ベトナムといった海外の料理は、
描写も詳しく、すごく美味しそうに感じたものが多かった。
料理の紹介で一番面白かったのは、スペインの奇才、フェラン・アドリアの「エル・ブジ」の料理の紹介。
以前、テレビで見たことがあるけど、まるで科学の実験のような料理風景と、
今まで見たことも無い料理の数々に、「どんな味がするのか一度食べてみたい!!」とすごく思った。
その摩訶不思議な姿と、今まで食べたことのないような目新しい感動を味あわせてくれる
美味しい料理の数々が、かなり詳しく紹介されていた。

でも、この本の「世界食べ歩き紀行」的な部分は半分。
アメリカのセレブシェフの内情や(成功と失敗の分かれ目等も)、本当は厨房を支え、
実際料理をしている、でもスポットが当たらないメキシコ系やヒスパニック系のスタッフの話、
過酷な下積み時代に著者が得た物、、シェフとして必要な能力や心構え、
パニックと隣り合わせの厨房、そしてパニックを乗り越える方法、悪いレストランの見分け方、
各国の材料や料理法を組み合わせて新しい料理を作るシェフ達、
そしてその考えと対立する地場物、伝統的な方法にこだわるシェフ達、
著者が嫌悪する「ローフード」の話など、欧米のレストラン文化史のような話しも多い。

また著者が治安が非常に悪かったニューヨークの昔を懐かしんで書いた記事は、
いろいろな場所で、ニューヨークの今と、昔を具体的に比較し、
(今は開発されキレイになっているけど、昔は危険な場所だった所多数)、
著者本人も書いている通り、面白い視点のニューヨークガイドになっている。

意見を率直に言い(過ぎ)、過激な意見も入っているが、今まで自分が否定していた事でも、
いい面があれば認めたり、考えを改めたりする、柔軟な姿勢には好感が持てた。

これを読んで、欧米のレストランのシステムというのは、日本の「料理人が料理する」とは全く違った
システム、オーナーシェフは、料理をしなくなり、プロデュースやマネージメントにシフトするのが
一般的なんだなーと思った。
確かに、寿司屋のように、料理長と数人の料理人で賄えるこじんまりとした店、
少ない席数の店が多い日本の高級料理店と違って、席数が多く、コース料理で出す品数も多い、
フロアにすらサービスの為スタッフが大量に必要な、フレンチなどの高級レストランとでは、全く違う。
そんな、文化の違いをいろいろ考えさせてくれた一冊。

そういえば、著者は、地場物にこだわる、伝統的な料理に敬意を抱いているタイプ。
でも、新たなる事にチャレンジする精神も評価しているし、また伝統的な料理に拘るあまり、
外国産のものを全て否定するという態度には、国粋主義者の匂いを感じ取り嫌悪している。
著者の場合、素材を最大限に生かすのが大切だという「味追求型」。
外国産の食べ物が、輸送の時のX線照射で発がん性があるとわかったとしても、
それが美味しければ、迷わず「美味しい食材」を選ぶと書いている。
そういう著者のスタンスや、いろいろな物に出会って考えが変わった事などが
書いてあるのも面白かった。
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「空白の天気図」柳田 邦男著:原爆・終戦直後の広島の台風被害を描いたドキュメンタリー!面白い!! [本ノンフィクションいろいろ]

空白の天気図―核と災害1945・8・6/9・17 (文春文庫)

空白の天気図―核と災害1945・8・6/9・17 (文春文庫)

  • 作者: 柳田 邦男
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/09/02
  • メディア: 文庫
8点

ちょびさんのブログ「自転車に乗って」で紹介されていたので、読みました。

昭和20年9月17日。
敗戦直後、原爆の被害から全く立ち直っていない広島を直撃した「枕崎台風」。
全国の死者行方不明3000人以上、その内2000人以上が広島での被害だった。
原爆による設備・装置の破損、職員の怪我や放射線による障害、戦争の為、足りない物資・食料・・・、
様々な困難のもと、地道に観測と調査を続けた広島気象台隊員の姿を描いたノンフィクション。

広島気象台を舞台にはしているが、気象情報が戦争の作戦行動に重要だった事から、
徐々に軍の支配下に組み込まれつつあった気象庁や気象情報の扱いなど、
第二次世界大戦下で、日本の気象台が置かれた立場などにも詳しく触れられている。

また、原爆投下直後、気象台職員が体験した爆風の凄さ、爆風で設備が破壊され、
怪我人も出た広島気象台の惨状や、その後の放射能の影響により次々に体調不良を起こす
職員が続出した中で、業務を続けた気象台職員達の苦闘。
それと合わせて、原爆を落とされた広島の壮絶な状況や、放射能がどのように人体に影響を
与えたか、原爆病の症状などについても、語られている。

通信網が破壊され、気象データを観測しても、予報を流せない状況の中でも、
気象台職員達は「一日も欠かさずデータをとる」という地味な業務を堅実に続けていく。
その考え方が、後に、地道な聞き取り調査により、黒い雨の降雨範囲や
火災による突風が起きた地域を把握できる資料の作成へともつながっていく。

そして、戦後の通信網の貧弱さが、勢力の強い台風の襲来や進路をを適切に把握できず、
また一般の人々に知らせることもままならず、大きな被害へとつながっていった過程も描かれている。
日頃何気なく見ている天気予報、それが膨大なデータの集積の結果であり、
その背後には多くの人々の地道な仕事があること、気象情報の大切さなどが改めて実感された。

このドキュメンタリーを通して、職業意識をしっかり持ち、地味で目立たない仕事を着実に
こなすことの素晴らしさ、そういう意識を持ち仕事をしている人々が社会を支える礎になっている
ということも伝わってくる。

著者が「ノンフィクションの作品性は、単なる取材の記録でも羅列でもなく、
歴史的真実の部分に関して、どれだけ読者の心のなかに澱を残すことができるかに関わっている」
ということをあとがきで書いている。
そして、その著者の目指す作品性が、本書にはしっかり反映されている。
また少しでも調べられる事は追求して調べるという著者の緻密な取材態度により、
原爆投下直後から、室戸台風襲来、そして放射能の与えた影響まで、
広島の人々の様子が臨場感あふれる筆で描かれ、ドキュメンタリーとして、素晴らしい内容になっている。
すごくお勧めです(^-^)ノ。
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「無縁・多死社会-団塊の世代が死に絶えるとき!データでわかる日本の未来」超高齢化社会と独居世帯の増加の問題 [本ノンフィクションいろいろ]

無縁・多死社会 (データでわかる日本の未来)

無縁・多死社会 (データでわかる日本の未来)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2010/12/08
  • メディア: ムック
7.5点

帯に
「他人事じゃ済まない!衝撃のデータ
2030年、日本人の3人に1人は高齢者!
必要な介護職員212万人、療養病床50万床!
社会保障費207兆円、現役世代の負担は1.8人で高齢者1人
男性の3人に1人、女性の4人に1人は生涯未婚!
70万人ひきこもりの第一世代高齢者突入!
20秒に1人が死ぬ時代はもう始まっている!
次の孤独死はあなたかもしれない」
と衝撃的な事例がずらずら。

第一章は「無縁多死社会の肖像」。
最初に、路上生活者などを援助するNPO法人の話。
そこには、一度路上生活者となりながらも、そのNPO法人で働くようになり、
やりがいも、社会とのつながりもでき、逝ってしまった時もその仲間に見送られ、
孤立死ではなかった明るい事例が取り上げられている。

しかし、その後の章はどれも重い。
遺品整理屋さんへのインタビュー、孤独死して発見が遅れた時の特殊清掃同行記、
ゴーストタウン化するニュータウンなど、無縁・多死社会が既に始まっている事を伺わせる内容。

第二章は「おひとりさまの行く末」

少し前、NKHの「助けてと言えない」を読んだ時、ホームレス化する30代が、
「自分が悪い、自分で何とかする」と内罰的だったのに驚いたが、
この本で取り上げられている30代は、私が元々持ってたイメージに近い。
「仕事が無いのは、生活が苦しいのは社会が悪い」と声をあげる人々だ。
そして、こういう人達の就労支援をしている人達の声は厳しい。
「どうにかして働く場所を見つけてあげても、人間関係、仕事が難しい、上司が嫌・・・
ちょっとした事で9割がすぐやめてしまう、本当に働く気持ちが無い、
働いた実績を作り生活保護をどうにかして受けようとばかりしている」という。

30代ホームレスにも、真面目に社会復帰しようとする人と、そうじゃない人、
2通りいるのかとも思うのが、9割がすぐ仕事を辞めているというのを聞くと、圧倒的多数が、
やる気が無いのか?
この本では「助けてと言えない」に出てくる人の自己責任発言も、
単なる「見栄による虚勢」だと手厳しい。

また現在30代~40代のひきこもりの人達(平均年令現在32歳で、年々上がっている)。
彼らの親が年金を払っていた為、多くのひきこもりは年金受給資格があるという。
それらひきこもりが大量に年金受給者になった時の問題も書いている。

第3章は「多死社会の介護と終末医療」について。
老人ホームなどでは、介護度が高くなったりすると退去しなければいけないタイプのものも多い。
そんな中、訪問介護、宿泊(ショートステイ)などの施設を備え、介護から看取りまでのサービスを
してくれる施設の紹介がされている。

後期高齢者の増加による医療費などの負担増の問題や、医者・看護婦・介護職員の人手不足問題も。

また、単身者が急増する中で、単身である事のリスクについても述べている。

第4章は「無縁・多死社会、衝撃のデータ」として、帯にあるような未婚率の増加予想や、
高齢化社会が進むにつれ、年金、社会保障費などがどれだけ増大するかなどの
データが掲載されている。

これを読む限り、現時点でこれから来る超超高齢者増の社会に対しての対応は、
ほとんどされていない気がする。
年金や介護保険の状況を見ても、確かにこのままでは将来破綻するのがみえている。

リーマンショックだって、サブプライムローンが破綻するというのは、
サブプライムローンができた時点で言われていた事だけど、避けられなかった。
多くの人に嬉しい、そして都合の良いローンだったからだ。

滅びる前に、自分たちの生活を見直せた文明はほとんど無い。
未来が大変だと言って、現状の生活を、より窮屈なものに変えるのは難しい。
自分の生活がすごく厳しくなっても、日本の将来のために、税金を大幅にアップしてもいい
という人は少ないだろう。
「有意義に使われるのか?」という政府への不信感が大きいのも理由だろうけど。
また、少子化少子化と叫ばれているけど、国の為に、子供を生むという人は、
戦時中までならともかく、現代にはほとんどいないだろう。

「無縁社会 ”無縁死三万二千人の衝撃」の感想でも書いたけど、
やっぱり自分で対策するしかないのかもしれない。

アメリカは、病気(盲腸などの病気でも)が原因で中流から貧困層に落ちる人が多いけど、
それは「自己責任」が原則の社会だからだ。
日本も、将来アメリカと同じように、老後困っても救済されにくい社会になってしまうかもしれない。
介護保険も年金もあてにできない未来。
アメリカは、貧困層を助けるセーフティネットが充実しているというけど、
日本の場合、それがとても弱いという。
これからの課題は、民間のセーフティネットをいかに発展させるかと、
いかに老後を公的支援に頼らず生きていくかの準備か??
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「見えないアジアを歩く」見えないアジアを歩く編集委員会編: [本ノンフィクションいろいろ]

見えないアジアを歩く

見えないアジアを歩く

  • 作者: 見えないアジアを歩く編集委員会編著
  • 出版社/メーカー: 三一書房
  • 発売日: 2008/04/01
  • メディア: 単行本
7.5点

取材に入れない為報道されない、だから知られていない紛争地帯。
アジアのそんな場所を取材した一冊。

・ミャンマー(ビルマ)国内で、弾圧迫害されるカレン族
カレン族は、第二次世界大戦の東南アジア近辺の戦記を読むとよく名前を目にする、
タイ北部・西部、ミャンマー東部・南部に住む民族である。
ビルマ政府の弾圧により、現在、難民となっているカレン族も多く、
虐殺により小さな村の消滅も見られるらしい。
また、ビルマ軍に追われ、山中を逃げ惑いながら暮らす人も多く、
タイの難民キャンプには14万人のカレン族の難民がいるという。
著者は、タイ側からカレン族居住地に密入国している。
そこには、象を調教してくらす、自然に囲まれた農村があった。
一時期、日本の支配下にもあったため、老人の中には日本の歌を歌える人もいる。
しかし、外界と閉ざされた村は、子供の死亡率が高く、またビルマ軍、カレン民族同盟どちらもが
地雷を使用するため、地雷による被害者も多いという。

・内紛のスリランカ北部と、津波被害の酷かった東部
仏教徒のシンハラ人による支配に対して、北部に住むイスラム教徒のタミル人組織
「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)が独立を求め内紛状態になったスリランカ。
著者が訪れたのは、停戦後、復興に向けての動きが始まった北部。
まだまだ紛争の爪あとが残っており、燃やされ弾痕の後が生々しい家屋が点在する場所もある。
また東部は、紛争だけでなく、スマトラ沖大津波による津波被害にもあっている。
北部、東部の取材では、紛争による被害、紛争の中生きる人々のたくましさや、苦労などが語られている。

・津波被害で現地の内紛状況が知られるようになったインドネシアのアチェ
インドネシアといえば、観光地。
スマトラ沖大津波の時、被害の大きかったインドネシアのアチェが、
イスラム教徒による反政府運動で、内戦状態にあり、救援活動が難しいということを知って驚いた。
スマトラ沖大津波の後、内戦は収束し、復興を目指すこの地域に著者は入っている。
内戦は終わったが、国軍の拷問センターの中でも有名な「ランチュン・キャンプ」は立ち入り禁止で、
国軍の虐殺行為は、闇の中。
人々の、国軍の残虐行為に対する心の傷は根深く、また、大津波復興の為に、
大量に流れ込んだ他の国からの援助資金は、一部の人たちだけをうるおす事になっているなど、
まだまだ解決への道は遠い事が、書かれている。

・インドの中の民族弾圧地帯ナガランド
インドの中、隔絶された地域ナガランド(「ナガランド州」ではなく、
ナガ族が暮らすより広域の場所を指す)。
山岳少数民族ナガ族が住むそこは、入るには政府の許可が必要な禁断の地。
理由は、この地はインドが虐殺、拷問、あらゆる蛮行を行った民族浄化の地であるから。
今でも、その詳細は明らかになっていないという。

第二次世界大戦時、日本軍の兵士の屍が連なった「白骨街道」を作り出したインパール作戦。
ナガランドはインパールのすぐ近くなので「コヒマ」(ナガランド首都)「ディマプール」(玄関都市)など、
第二次世界大戦の戦記を読んだ人には、見覚えがある地名がちらほら。
かなりの山奥なのがわかる。

インド人はアーリア系だけど、ナガ族はモンゴロイド。
そして、「コヒマ」は、アジア系の日本人とよく似た人々の笑顔と、
顔立ちが違う銃を構えてうろつくインド兵に遭遇。
インド軍士官は、怪しいと思った人物は許可無く逮捕殺害しても罪に問われない
「国軍特別権限法」が適用されている軍事制圧都市でもある「コヒマ」。
日本人とナガ族は、同じモンゴロイドなので、日本人旅行者は、
ナガ族と間違われて殺される可能性もあると著者は指摘している。
発展し続けるインドの裏の顔がここにある。
また、ビルマにもナガ族居住地があり、そこは現在も弾圧・虐殺が続いているという。

・チェチェン共和国の歴史と現状
チェチェンといえば、ロシアからの独立紛争を何年も続けていた国。
チェチェン国内に急進派を生み出す事になった、ロシアによる無差別虐殺が行われた国というイメージも。
でも、どんな国なのか、国自体のイメージはあまり無かった。
この本を読むと、全土に歴史的建造物(戦禍で破壊されているものも多い)が散らばり、
そして破壊されつくした街並みが何百と連なり、市内のあちこちにロシア傀儡政府による検問所があり、
市民すら自由に移動できない、まだまだ紛争は終わっていない国だという事がわかった。
外国人が入国するのが困難で、それは、他の国でも見られる「虐殺の跡」を知られたくない為である。
また、この国の人々が、圧倒的な軍事力のロシアに対して抵抗を続けた原動力ともなった、
社会基盤や伝統にっついても触れられている。

この記事の途中で、チェチェン武装グループが起こしたとされた「ベスラン学校人質事件」に
ついて触れられていた。
死者行方不明者500名(犠牲者の多くが子供)を出したこの事件。
かなり不可解な点が多いことが、言われている。
チェチェンのテロとロシア政府は発表したが、実際犯人側にチェチェン人はいなかった。
交渉がまとまりそうな状況だったにも関わらず、強行突入が行われたと、訴える被害者達の家族も多い。
テロ弾圧の口実を作る為、ロシア政府が起こしたテロではないかという噂が絶えない事件であるが、
この本を読むと、チェチェン側が起こしたテロとロシアが主張→調べてみると怪しい点が出る→うやむや
という事件がかなり多いらしい。

・バングラディシュ政府が隠そうとする民族虐殺地チッタゴン丘陵
モンゴロイドの少数民族に対する弾圧・虐殺が繰り返されたチッタゴン丘陵は、
紛争終了後も、政府軍が駐屯するバングラディシュの「隠された地」になっている。

・イラク・シリア・ヨルダン・クェートの今
2002年~2004年くらいの間の、イラク・シリアなどのルポ。
経済制裁で、イラクの人々が困窮する様子などを描いている。
独裁政権への経済制裁は、独裁者に支配される人々を二重に苦しめる結果になるのがよくわかる。
イラク・シリアなどは、現在また情勢が大きく変わっているので、最新のルポも読みたいと思った。

など、上記した事が書かれている。
複数の記者による共書なので、読みやすい内容のもの、共感できるもの、
記者のあまりの熱意に引いてしまうもの等、いろいろ。
ただ、どの記者も、取材に入っている場所の現状を心から憂えており、
興味本位・話題取りの為の取材ではない事が伺われる。

また、皮肉な事に、隔絶されているからこそ、伝統文化が色濃く残り、
自然が保護されている側面などもうかがい知れる。

観光地だったり、経済的発展が目覚ましかったり、そういう印象が強いいろいろな国の、
隠れた闇の部分を取材した本。
この手のルポものは、ちょっと古くなると、状況がガラリと変わってしまう場合もあれば、
相変わらずの事も多い。
現状がどうなのか、確認するのが難しいのが難点。
でも、興味深い内容で、お勧めです!

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「ヤノマミ」国分拓著:アマゾンに生きる、現代とは全く違う価値観の元生きている人々 [本ノンフィクションいろいろ]

ヤノマミ

ヤノマミ

  • 作者: 国分 拓
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2010/03/20
  • メディア: 単行本
8.3点

2009年NHKスペシャルで放送された「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」で、
150日間ヤノマミ族を取材した著者によるルポタージュ。

ヤノマミ族は、アマゾン広域に集落などを作って住んでいるが、その中でも、
文明化がほどんと進んでいない「ワトリキ」(風の地)という167人が住む集落に滞在したルポ。

10年間の交渉の末やっと取材が許されたらしい。
ヤノマミ族は、自分たちを「ヤノマミ」(人間の意)と呼び、
よそ者は「ナプ」(人間では無いもの)と呼ばれる。
集落に悪いことが続いたり、何かトラブルがあれば、殺されてもおかしくないという、
かなりリスクの高い取材だったらしい。

「NHKスペシャル」の方を見ていないけど、かなり衝撃的な内容だったとか。

ヤノマミ族の出産は、女性が森に入って子供を産み落とす。
そして、その場で生まれた子を育てるか、精霊にするか決めるという。
精霊にする場合、殺して、その遺体をシロアリに食べさせるという。
著者は、目の前で、生まれたばかりの子が、14歳の母親に殺されるシーンも目撃している。
これは、堕胎の技術を持たないヤノマミの人々の、人口調整法である。

「ワトリキ」では、精霊になる子が、生まれた子の半数以上と高い。
その理由が、近くにFUNASA(ブラジル国立保健財団)の保健所ができ、
乳幼児の生存率が高くなったかららしい。
文明の介入がいいのか悪いのか、考えてしまうエピソードだ。

また、殺した獲物の腹の中から出てきた胎児を弄ぶ子供達の話もあったが、
これも映像として放送され、かなりのインパクトがあったらしい。

数日かけて遠出し行う猿刈りでは、足手まといになる記者たちが狩りに同行するのを男たちは嫌がる。
それだけではなく、猿を一匹も狩ることができない記者達は、食事をわけてもらうこともできず、
持参した食料が尽き、空腹のあまり倒れそうになる。
下手をすれば、そのまま餓死しかねない状況。
この時は、長老の一人が指示を出して、記者たちを助けてくれたが、
「弱肉強食」「仲間でないものに親切にすることが良いという概念が基本的に無い」
ということが、わかるエピソードだ。

アマゾンでは、技術さえあれば、一人で生きられるからだろう。
砂漠の民ベドウインの場合、一人ではどうにもならなくなる可能性があるので、
困っている人は必ず助けなければならないという概念あるというのと対照的だ。

ヤノマミの女性達からも、体力も無く、狩りもできない記者達は、一人前の男とは見てもらえない。

別れのシーンでも、テレビでよくある涙の別離シーンは無い。
ほとんどが無関心だ。
何回かに分割されているが、トータル150日の長期滞在でも、よそ者はよそ者。
ナプはヤノマミにはなれないのだろう。

ただ、別離への無関心に関しては、仲間が死んだ時もそんな感じなので、
死と身近な事が、「別離」に関しても特別な事とは思えないということなのかもしれない。

偉大なる長老「シャボリ・バタ」が「ワトリキ」という村落を作り上げるまでの話は興味深かった。
それは文明との遭遇、文明側の人間が持ち込んだ病原菌による厄災(全滅した村も多いとか)、
過酷な体験、そして逃避の歴史でもある。
採掘の為アマゾンに入り込む採掘者達は、ヤノマミ達の生活を脅かす
(現在は保護されているが、その法律もアマゾンの利権を狙っている人達からの反対意見が多く、
いつ無くなっても不思議ではない)。
「ワトリキ」が文明を受け入れず、昔の生活を送っているのはシャボリ・バタの影響が大きいという。
しかし、著者が滞在した「ワトリキ」も若い世代は、文明への拒絶感が少なく、
シャボリ・バタがいなくなれば(取材中既に体調を崩していた)、このまま昔の生活を続けるのは
難しいのではないかと、著者は推測していた。

ヤノマミ達との生活のルポは、自然の中で生きていくたくましさ、そして非情さ、
生と死への考え方の違い、様々な事を考えさせられた。
密林で原始的な生活を営む人々は素朴ではあったが、「素朴で暖か」というイメージからは、
かけ離れたものだった。
読んだ後、ヤノマミの世界の厳しさにのまれて、胸が痛かった。
彼らの生活は、マイペースで、仕事ですら遊びのように楽しんだり、そういう側面もあるのだが、
やはり、生と死が身近で、弱肉強食の世界であり、仲間内の厳しい掟があり・・・、
安穏とした世界に生きている自分には、いいようの無い怖さがあった。

お勧めです!
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「空爆されたらサヨウナラ―戦場コソボ、決死の撮影記」「儂は舞い降りた―アフガン従軍記」 「ああ、堂々の自衛隊」他宮嶋茂樹作品 [本ノンフィクションいろいろ]

ああ、堂々の自衛隊 (双葉文庫)

ああ、堂々の自衛隊 (双葉文庫)

  • 作者: 宮嶋 茂樹
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 1997/06
  • メディア: 文庫

儂は舞い降りた―アフガン従軍記 上 (祥伝社黄金文庫)

儂は舞い降りた―アフガン従軍記 上 (祥伝社黄金文庫)

  • 作者: 宮嶋 茂樹
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2005/08
  • メディア: 文庫

不肖・宮嶋空爆されたらサヨウナラ―戦場コソボ、決死の撮影記 (祥伝社黄金文庫)

不肖・宮嶋空爆されたらサヨウナラ―戦場コソボ、決死の撮影記 (祥伝社黄金文庫)

  • 作者: 宮嶋 茂樹
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 文庫


「戦場カメラマン」というと渡辺陽一さんが有名ですが、
私が「戦場カメラマン」というものをはっきり認識したのは、
宮嶋茂樹氏の著作を読んだ4~5年前。

どの著作も体を張って特ダネを求め、戦場で奔走する(戦場に行くまでの方が大変だったりもするけど)
宮嶋茂樹氏の行動力とパワーに脱帽。
いつ死んでもおかしくない状況でも、ユーモアを忘れず、特ダネの為に奮闘する姿も素晴らしい!
最近は、お年を召したせいか、ここで紹介している本で感じられるパワーは、
無くなっちゃってるようですが。

で、一時期、とにかく大量に読んだのと、図書館で借りたものが多かった為、
何を読んで、何を読んでないのか、わからなくなってしまいました(^^;)。
一部メモみたいなのをこのブログの下書きに放り込んであったのを、サルベージ。
ちゃんとした感想じゃなく、覚書です。

まず、「ああ、堂々の自衛隊」。
これは宮嶋茂樹氏が、自衛隊カンボジア派遣の時、出港から自衛隊に同行した時の事をまとめたもの。
宮嶋茂樹氏は、日本も軍を持つべきだ!という考えの人なのだが、
戦場になってしまった場所に住む人々の感じ方や、自衛隊の置かれている状況を読むと、
なるほど~と思ってしまったりする。
宮嶋茂樹氏の著作を読むまで、あまり「日本が軍」を持つというか自衛隊が「軍」になるという事に
関して深く考えた事が無かったのを、考えさせてくれた本でもある。
と書くと、真面目そうな本のようにも思えるが、エロ話あり、
ゲロあり(カンボジアに向かった船は恐ろしく揺れ、みんな吐きまくりで、
宮嶋氏も抱え込んだ便器に妻の名前を付けたらしい)、PKOの大変さありと盛りだくさんな一冊です。

「不肖・宮嶋空爆されたらサヨウナラ―戦場コソボ、決死の撮影記」
最初に読んだ宮嶋茂樹氏の本。
旧チェコで扮装地帯となったコソボ自治区に潜入し写真を撮った時のルポ。
本を買ったきっかけは本屋でパラパラ見ていた時、「京都や奈良に、
別の国の人間が大量に住むようになり、独立を宣言したら日本政府はどうするのであろうか?」
(文章まんまじゃないので違うと思うけど、こんな内容)という文章が目に止まったから。
民族紛争というのは、何故起きるのかイマイチピンと来ていなかったんだけど、
なるほどと思ってしまったのだ。
戦場カメラマンのかっこよさは全く無く、とにかく毎日プレスセンターに日参する姿から、
戦場となっている地で取材する大変さが伝わってくる。
書く人が書いたらもっと悲壮でシリアスなものになりそうだけど、
宮嶋茂樹テイストに溢れ、笑いあり、厳しい突っ込みあり(特にNHKとか)、
でも平和ボケした頭に考えさせてくれるものありの一冊。

「儂は舞い降りた―アフガン従軍記」
戦場もそうだけど、とにか
アフガニスタン近辺の山道は怖い!
と思える本(^^;)。
アフガンに入る為、道無き道を車で突き進む宮嶋茂樹。落ちたらサヨウナラ~という状態である。
そんな山道なので、落ちる車もある訳で、落ちたほかの国のマスコミの人間を救ったり、
戦場にたどり着く前だけで1つの冒険状態。
とにかく、山道部分だけでも読む価値あり。悲惨です。
もちろん戦場に辿りついてからも悲惨続きなんだけど、それを感じさせない宮嶋節がまたいい。

他にもいろいろ読んでますが、どれも面白かったです♪
興味を持ったなら、まず、興味のある題材の一冊(海外取材ものの方が、凄いエピソード満載)を
とにかく読んでみるのがお勧め(^-^)ノ。

読んだもの
不肖・宮嶋のビビりアン・ナイト(上) イラク戦争決死行 空爆編 (祥伝社黄金文庫)
不肖・宮嶋inイラク―死んでもないのに、カメラを離してしまいました。
不肖・宮嶋 死んでもカメラを離しません (祥伝社黄金文庫)
不肖・宮嶋 踊る大取材線 (新潮文庫)
サマワのいちばん暑い日―イラクのド田舎でアホ!と叫ぶ
不肖・宮嶋 メディアのウソ、教えたる! (14歳の世渡り術)

読んだような気がするもの。
不肖・宮嶋 誰が為にワシは撮る
不肖・宮嶋 史上最低の作戦 (文春文庫PLUS)

読んでないと思われ(読んだような気もするんだけど・・)読みたいもの
不肖・宮嶋 国境なき取材団
不肖・宮嶋 戦場でメシ喰う!
不肖・宮嶋撮ってくるぞと喧しく! (祥伝社黄金文庫)
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「仕事がない!-求職中36人の叫び」増田 明利著:結局会社にしがみつくのが一番?? [本ノンフィクションいろいろ]

仕事がない!-求職中36人の叫び

仕事がない!-求職中36人の叫び

  • 作者: 増田 明利
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2011/02/12
  • メディア: 単行本


年代別された36人の、失業の理由と現状を数ページずつまとめた本。
失業の理由は、倒産、希望退職に応募、指名解雇、社長ともめた・・・etcだが、
全員が仕事が見つからないか、転職先が派遣、契約、バイトなど安定していなかったり、
給料が低いなどで先の見通しが立っていないのが共通。

また、リーマン・ショック以後急激に業績が悪化し、リストラや倒産したケースも多く、
リーマン・ショックの影響の大きさが垣間見える。

20代~30代前半ぐらいだと、仕事が見つからない理由の多くがスキル不足。
特にバイトなどを点々としていた場合、正社員への道は閉ざされているような状態。
高校中退などの場合は、学歴もある程度絡んでくるし、
大学を卒業した時点で就職が決まっていない場合も、その後の就職は厳しくなる。

30代~40代前半は、正社員になれても給料は恐ろしく低い、
派遣・契約社員などならそこそこの給料は貰えるが、何年か経てば年齢で仕事が来なくなるリスクと、
将来と現在の板挟みのケースが多い。

悲惨だと思ったのは、40代後半~50代で、何年も真面目に仕事をこなし
中間管理職の地位にいた人たちが、中途半端にスキルがあることで敬遠されたり
(飛び抜けたスキル・経験-実務実績+高い語学力+実用的で難易度が高い資格-など
会社が求めているものをすべて揃えている場合は別)、年齢が理由でほとんど求人も無いという状況。

仕事が見つからないという現状が淡々と書かれているので、今仕事を探している人には、
あまり参考にならないような・・・。
どちらかというと、何か不満があったりして仕事を辞めようと思っている人が、
現状の厳しさを認識する本だと思う。
最後の章に「辞めてくれと言われたら」という、会社のリストラ対策もあるし。

結局、会社が倒産しない限りは、指名解雇されそうになっても居残る・・・
というのが一番なんじゃないかと思ってしまう本。
再就職に「これっ!」と言った方法はなく、個人のスキル・経験・人脈、そして運が頼りだから。

最近、友達に聞くと、パートですら厳しい状況だとか。
子供がいると土日は休みたいけど、それだとなかなか見つからない。
土日両方出られるとか(片方だけ休みでも難しいらしい)、土日だけならあるという話だけど、
子供が小さいと厳しいよね。

ほんと、不景気だなー(-_-;)。

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「ドイツ人のまっかなホント」「アイスランド人のまっかなホント」アイスランドって小さいんだw(゚o゚)w! [本ノンフィクションいろいろ]

ドイツ人のまっかなホント

ドイツ人のまっかなホント

  • 作者: シュテファン・ツァイデニッツ
  • 出版社/メーカー: マクミランランゲージハウス
  • 発売日: 1999/10
  • メディア: 単行本
6点

アイスランド人のまっかなホント (まっかなホントシリーズ)

アイスランド人のまっかなホント (まっかなホントシリーズ)

  • 作者: リチャード セール
  • 出版社/メーカー: マクミランランゲージハウス
  • 発売日: 2000/05
  • メディア: 単行本
7.2点

その国の特徴をシニカルに、そして面白おかしく説明してくれる「まっかなホント」シリーズの、
「ドイツ人」と「アイスランド人」を読みました。

今まで読んだのは
「日本人のまっかなホント」と「フランス人のまっかなホント」
「イギリス人のまっかなホント」
「スウェーデン人のまっかなホント」
「スイス人のまっかなホント」
(全てリンク先感想)。
追記:「まっかなホント」シリーズ、感想一覧はこちら

--------------------------------------------------------------------
面白おかしくその国の知られざる内情を教えてくれる「まっかなホント」。
毎回、新鮮な驚きに満ちていたのですが「ドイツ人のまっかなホント」は、そうでもなかった。

完全主義で堅苦しく、悲観的で、素朴で実直。
そんな元々持ってたイメージをより強固にしてくれる本・・・って内容でした。

完全主義な故、現実世界でそれを実現できないことから、夢見るロマンチストでもあるドイツ人。
秩序が大好きで、すべてのものを分類したがり、
「許可されていないことは禁止されている事」と認識するドイツ人。
そして、間違ったこと(明文化されていないこと)をしている人を指摘するのが大好きだとか。
ただ、外国人には寛大。
外国人がやっていたら何も思わない事でも、自国の人間がやっていたら精神状態を疑うし、
近所であれば引越しも考えるとか。

曖昧な物言い、ソフトな言い方をせず、全てをはっきり言うドイツ人。
「今何時かわかりますか?」と聞けば「はいわかります」と返ってくるという
(自閉傾向のある人は住みやすそう??)。

また休むのも仕事で、休みの間自分を向上させる努力をしたか(外国語を習いに行ったりなど)が
重要だという。

会話もどうでもいいお天気の話などの雑談はとんでもなく、いかに身のある話
(健康や仕事の心労・重圧、etc・・・)をするかが重要だとか。

ユーモアですら「真面目」なんだそうだ。
この本が他のシリーズに比べ堅苦しい感じを受けるのは、そのせいなのかもしれない。
どうも、笑う部分であまり笑えない(^^;)。
大仰すぎるのかも。

ドイツ人というのは、一般に思われているイメージとそんなに違いがないのか、
自分が思ってるイメージと合いすぎていたのか、
それともこの本が「赤裸々なまっかなホント」部分を書いていないのか・・・・。
ドイツ人の一般的なイメージをより強くしただけという印象で、普通でした。

---------------------------------------------------------------------------------------------
「アイスランド」といえば、数年前、超バブルの後、経済破綻したのが印象深い国。
その後火山が噴火して、ヨーロッパの飛行機事情にも影響を与えてましたが。
でも、アイスランドのイメージはそれくらい。

「経済破綻」した割には、現在のギリシアとかに比べて、大騒ぎになってないなーとは思ってた。
でも、この本の最初で、国の概略を読んで、その理由がわかった。
人口「26万人」・・・・少ないw(゚o゚)w!!(この本は10年ほど前に書かれたもので今は31万人程)。
これって、日本だと中堅の地方都市と同じくらい。
経済規模も小さいから、影響が少なかったんだ。
それくらい、アイスランドについては知らなかった。
一部「アイルランド」とごっちゃになってたくらいに(^^;)。

知らないことが多い分、興味深く読めました。
ただ、10年ちょっと前(1999年)の本なので、バブルと経済破綻を経験した今の状態とは、
かなり違いがあるかもしれないけど。

この本を読んでアイスランドに抱いたイメージは「田舎の農村的国家」(^^;)。

アイスランド人は、バイキングの子孫であることを誇りにし、自分たちを世界最高の国に住む、
世界最高の国民だと思っているという。
だから、外国人が自分の国の事をあまり知らないことを知ると、ショックを受けるし不快に思う。
しかし、小国だから立場が弱いことも知っており、その分団結力も強い。
外国に対しの評価は厳しいが、タラ戦争に負けてくれたイギリスは、心の友だそうだ。
また他のバイキングの子孫の国への親近感は無いらしい。

26万人しかいないこの国民の半分以上が、首都レイキャビクとその周辺に住む。
都市部では、どの人も親戚だったり、知人の知人だったり、同級生だったり、縁続きだ。
テレビの視聴率は高い。
国民誰もがいつかかならず出演できるから。

車は普及しているけど、馬車を停めて話し込むように、町中で知人を見つければ、
平気で車を停め、話し込んでたりする。

農民はカナヅチとヒモ一本で何でもできるという固定観念が強く、科学・工学など実用的な学科、
書物から学んだことを軽視する。
しかし、教養が軽視されているわけではなく、哲学者や、弁護士、医師は尊敬される。
有能なエンジニアより、無能な哲学者の方が尊敬される社会に、水も漏らさぬ理論も、
水道管も存在しないと著者は書いている。

文化系の知識は重視されるようで、白夜があり、長い冬の夜が続くこの国での読書率は、
かなり高いし、読書を愛好する人も多い。
歴史文学「サガ」はアイスランド文化の糧だという。

政治家は嫌われていてボロクソに言われているが、その割には再当選する。
警官は、真面目で国民から愛されている。
商売熱心で独立心旺盛な為、すぐ会社を起こすが、倒産する会社も膨大だという。

さて、この本を読んで一番インパクトがあったのが、著者がイギリス人だということ。
今まで読んだ「まっかなホント」シリーズでは、必ずその国の人間が出筆していた。
その上、この本に協力してくれたアイスランド人の名前は明かせないらしい(^^;)。
「自国を風刺的に書く」というのは、誰もがどこかで必ずつながっているという小さなこの国では、
かなり立場を悪くする事なのかもしれない。
そんな所からも、アイスランドという国の特徴が見えてくるような。

新鮮な驚きが多くて楽しめた一冊でした♪
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「ふむふむ 教えて、お仕事!」三浦しをん著:「仕事」に関するインタビュー本かと思ったら、中心は「人」だった。 [本ノンフィクションいろいろ]

ふむふむ―おしえて、お仕事!

ふむふむ―おしえて、お仕事!

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/06
  • メディア: 単行本
5点

「靴職人」「染織家」「漫画アシスタント」「大学研究員」「フィギュア企画開発」・・・
いろいろな仕事についてる女性に、直木賞作家である三浦しをんがインタビューした本。
直木賞をとった「まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)」は、映画化された時、
町田駅前が撮影に使われたのと、山田ユギの漫画版「まほろ駅前多田便利軒 1
を読んでいるので知ってたけど、小説の方は未読。

で、「教えて、お仕事!」ということで、「仕事内容」に関するインタビューかと思ったら、
その仕事をしている「女性」に重きが置いてあるインタビューで、内容的に期待はずれ。
仕事内容にも触れてるけど、対象である女性の生活とか性格とかに割いてある部分が多い。

また著者のインタビューは、聞き手にまわり、うまく話を引き出すのではなく、
変に自分の事を語りたがる「でしゃばってるインタビュアー」という印象が強かった。
著者のファンでもあれば別なんだろうけど、著者に興味が無いので違和感が・・。
インタビューと言うより、できの悪い対談、だらけたおしゃべり・・・みたいになってしまっている
部分が多々あって気になった。

仕事内容に関してや、それに対する姿勢は面白かったけど、半分くらいは、どうでもいい内容だった。
内容に即した「働く女性!」みたいなタイトルだったら読まなかったのに。
タイトルから期待したのとはかなり違ってイマイチ。
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「お前なんかもう死んでいる プロ一発屋に学ぶ50の法則」有吉弘行著:超後ろ向きな前向きさが目からウロコ! [本ノンフィクションいろいろ]

お前なんかもう死んでいる ~プロ一発屋に学ぶ50の法則~

お前なんかもう死んでいる ~プロ一発屋に学ぶ50の法則~

  • 作者: 有吉 弘行
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2010/06/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.8点

少し前(震災前後に読んだので記事アップのタイミングを逃してしまった)
ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
7割は課長にさえなれません」なんかをざっと読んだ。

「ワーキングプア」では、非正規雇用の拡大と弊害などについて。
これに関しては、2006年発行とちょっと古い本なので、既に言われている事が多く、再確認という感じ。

「若者は・・」と「7割は・・」は、採用側と採用される側のミスマッチや、
年功序列の問題点などがメインに語られていた。
言いたいことはわかるんだけど、どうもピンと来ない感じ。
結局、既にみんなが満たされるほどのパイが無いわけで、年功序列を廃止して、
若者にパイを振れば、中高年だけでなく、その家庭の子供達までが影響を受ける。
何かを変革すれば、どこかにしわ寄せが行き、血が流れるわけで、
その痛み、弊害まで触れられていないのが気になった。
この辺は血みどろになっちゃうけど、日本の将来を考えればしょうがない!ぐらいの勢いがあるなら、
なるほど~とか思ったかもしれないけど(^^;)。
ただ確かに、今のままじゃ日本はまずいと思うし、先が見えない閉塞感はすごくある。

そんな時、おおおおっと思ったのが、「猿岩石」で一発あて、現在「毒舌」で再ブレイク中の
有吉弘行のこの本!

もう、最高に後ろ向きな前向きさ!
一度地獄を見た著者だからこそ書ける内容!

はじめに「ザマアミロ!一億総芸人時代がやってきた」と、将来安泰なはずだったサラリーマンが、
いつ落ちるかわからない芸人と同じになったと著者は喜んでる。
上記の本でピンと来なかったのは、企業の体質を変えようとしてるからなんですよね。
実際は、人々の考え方や価値観が先に変わらなきゃダメなんだなーと、この本を読んですごく思った。

将来安泰なんて無いっ!先は見えない!これが当たり前!
実際そうなりつつあるのに、それを受け入れられないからこそ焦る。

地道に努力すれば報われた社会。
家を持って、配偶者と子供達と暮らす、そして老後は悠々自適・・・
そういう昔ながらの幸せに対しての評価は変わり、望む幸せのタイプも多様化してしまっているけど、
いまだにそう思う人も多いだろう。
でも、これからの社会、今まで当たり前だったことは当たり前じゃなくなる可能性が大。
データでも将来、男性3人に1人、女性4人に1人が生涯独身。
独身である理由はいろいろあるけど、そこには貧困が大きく影を落とす。
ワーキングプアがこれからもどんどん増えていく可能性も大。
先が見えない自分の将来に絶望する人も増えるだろう。
そんな社会に向けて、この本には、心構えがいっぱい。

1章~3章までは、有吉のブレイク中からどん底生活までの実体験。
一度に給料4000万貰ったり、月収が100万だった頃から、
月収0が、何年も続く生活に。
自分のプライド、あがき、自殺した方が楽だと思ったのを思いとどまった理由・・、
ローゼ(ノイローゼ)にまでなった有吉の見た地獄の話はかなり重いです。
でも、重いからこそ、伝わってくるものがあるし、
リアルだからこそ、そこで発見した各法則も納得行くものが。

第4章「プロ一発屋9つの法則」と第5章「現代人へ贈る15の法則」は、
来るべき社会に対する超後ろ向きだけど、参考になる視点がいっぱい。

「身の丈以下の会社を選んで、お山の大将でいよう」
「人からは過小評価されよう」
「万が一の時に備えて行きつけの店では愛想良く(働かせてもらう為)」
「世の中実力じゃなくて運だけ」
「先のことなんて考えない方がいい、暗い未来しか見えないから」
「夢や希望なんて持たない!潰れた時のダメージの方が大きい」
「自分磨きしてるより、人を見極める努力をしろ」・・・etc。

夢や希望の話は、開店前のパチンコ屋さんに夢と希望を持って並んでいる人が、
引き合いに出されてました(^^;)。
この手の参考事例が、ツボをついてて面白い。

「「やりがい」なんて、金物屋のババアの手芸品だ!」(他人から見れば陳腐で自己満足って事
でしょうか)とか、「自己実現、やりがいの基準なんて時給1250円だ」とか(^^;)。

特に印象的だったのは、節約してお金をたくさん残して無くなったお年寄りの話。
「みんなは、こんなに貯めたのに使わないで逝っちゃって」というけど、
「通帳にお金があるなーって安心感の中幸せに死んでいった」と有吉は断言する。
お金が全く無い、通帳の残高を見て震え上がった経験があるからこそ言える言葉。

「高田純次」の処世術とかぶるところもあったけど(高田純次も一時期苦労したみたいだしね)、
笑えるネタも多く面白かった。

ここまで後ろ向きに生きていく人ばかりな社会になったら困るけど、
時代の閉塞感に押しつぶされそうになった時、こういう価値観もあるんだなーって、
読むのにはすごくいい。
いつか、息子に読むよう薦めるかもしれない(^^;)。

ダチョウ倶楽部の上島竜兵がすごく(人の?)いい人だというのもわかる。
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「大震災名言録 忘れたころのための知恵」藤尾潔著:面白い!そして阪神淡路震災での教訓を風化させない為にも読んで欲しい [本ノンフィクションいろいろ]

大震災名言録―「忘れたころ」のための知恵

大震災名言録―「忘れたころ」のための知恵

  • 作者: 藤尾 潔
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1997/08
  • メディア: 単行本
7.5点

文庫版「大震災名言録―次の災害を乗り越えるための知恵」も出てます。

「阪神淡路大震災」のいろいろなエピソードを、笑いと共に紹介したルポ。
笑えるのに、ためになる話がいっぱい!!
そして、喉元すぎれは何とやら・・・で、災害の教訓は忘れ去られてしまうものも多いことを実感。

それを特に認識したのが、本書で紹介されてた以下のような記事。

・住民たちは「温かい義援金とか言ってるけど、集めた金は全然入ってこない」と言っている
・新聞に出たところばかりに同情が集まる
・いつも憎まれ役の自衛隊は大いに感謝された

これは阪神淡路大震災の時の記事ではなく、なんと昭和34年伊勢湾台風の時のもの。
阪神淡路大震災の記事としか思えないと著者は書いているけど、
私は先日の東日本大震災の記事としか思えなかった。
50年前と状況があまり変わっていないというのがショック。

阪神大震災の教訓で活かされているものも、もちろんある。
ボランティアに行く時は、自分の寝るところ・食事などは自己責任で準備と、
東日本大震災では言われたが、これは阪神淡路で、行けば何とかなるというボランティアが多く、
現場をより混乱させたから。

支援物資も、ゴミのような物が大量に送られてきて、その仕分けに忙殺されるボランティアが多発した
阪神大震災での問題点が、東日本大震災で支援物資を送る時の注意として紹介されたりした。

この本でも、使えないボランティアや、ゴミのような支援物資に関することが、
どれも笑ってしまうようなエピソードとしてたくさん紹介されている。
本を読んで笑うのと共に、自分を省みて、気をつけなきゃと思えるのもいい。

また使えないボランティアの話だけではなく、ボランティアにお使いを頼んでお金を払わない
強かな被災者のエピソードなども紹介されている。
「おつかいを頼んでお金を払わない避難民がいますが、お金は取りましょう」というお達しが、
ボランティアの間に出たとか(^^;)。

地震当日、地震で落ちて音声しかでなくなったテレビを見て、
「テレビのスタジオが停電してるのかな?」と勘違いしてた話や、
倒れてきた家具に埋もれていたのに、金縛りにあったと思っていた話など、
地震直後の笑えるエピソードもいろいろ。

地震直後のデマに関しても、
避難所のW小学校で元コックさんが作ったゆで卵が大好評

何でこんなに美味しいんだろ

あれは温泉卵らしい

W小学校で温泉が湧いた

入りに行こう
と、W小学校に問い合わせたくさん・・・なんて例で紹介されてたりする。

逆に、教訓を活かしたために、問題になったんじゃないか?と思えることも。
東日本大震災の時、ある支援団体が、支援物資を持って避難所を訪問したら、
避難所の人数分に足りないので受け取れないと突っ返されたと怒っていた。
私も、「お役人って頭が硬いのかな?」とその時は思ったんだけど、
阪神淡路の時、支援物資が平等に行き渡らないと、「何で自分は貰えないのか?」と
大騒ぎになったとか。
その事例を教訓にしての事だったのかもしれない。

マスコミの功罪、宗教団体活動活性化、いろんな会社の社員への対応、山口組の炊き出し、
自衛隊の活躍、自警団、避難所の食事、非情な解体業者、避難所のリーダーの地位争奪戦・・
面白くて為になる話が満載!

東日本大震災でも似たような問題が起きている事もたくさんあるし、
逆に関西人ならでは・・と思われる事柄も。
また、東日本大震災でも同じことが起きてるんじゃないかな?と予想はできても、
マスコミなどでは報道されていない為、知ることができない事柄もいろいろ。

大きな災害が起きた時、自分が大災害に巻き込まれた時、
この本の内容を心の隅に留めておくだけでも、役に立つはず。
お薦めです(^-^)ノ。

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