「アースバウンド-地縛霊」リチャード・マシスン著:地縛霊は色情狂って話(^_^;) [本:ホラー&ミステリー]
4点
夫の浮気で亀裂が入った夫婦仲を修復する為に、思い出のハネムーンの地で、
別荘を借りたデヴィッドとエレンのクーパー夫妻。
しかし、その別荘には超美人の地縛霊が・・・・。
で、その地縛霊が色情狂の幽霊で、デヴィッドに迫って、デヴィッドは精力抜かれてへろへろ~!
って話です(^^;)。
浮気の反省で来ているはずのデヴィッドが、地縛霊に誘惑されちゃったあと、
あまり反省の色が見られないのが痛い。
一応反省してるけど、自分への言い訳ばかりがだらだらと続く。
最後は、奥さんの為に奮起するんだけど、それまでの行いから、
それすら褒めてあげられない・・・・女性が読んでもつまんない話だと思う。
男の浮気って、こういう心理で起きちゃうんだよ、許してくれよ・・・って言い訳されてる気がして。
ソフトなエロシーンがあちこちにあるので、エロチックホラーを読みたい人向け??
デヴィッド、取り憑かれて死んじゃっても全然OK!って思えるほど魅力が無いし
(奥さんは悪くないんだけど、キャラクターに深みが無い)、
そのせいか、全然怖くないのも致命的。
リチャード・マシスン、「地球最後の男(アイ・アム・レジェンド)」がカオスな本棚から発掘できず、
これを読んでみたけど、失敗だった。
敢えて読む必要無し(-_-;)!
夫の浮気で亀裂が入った夫婦仲を修復する為に、思い出のハネムーンの地で、
別荘を借りたデヴィッドとエレンのクーパー夫妻。
しかし、その別荘には超美人の地縛霊が・・・・。
で、その地縛霊が色情狂の幽霊で、デヴィッドに迫って、デヴィッドは精力抜かれてへろへろ~!
って話です(^^;)。
浮気の反省で来ているはずのデヴィッドが、地縛霊に誘惑されちゃったあと、
あまり反省の色が見られないのが痛い。
一応反省してるけど、自分への言い訳ばかりがだらだらと続く。
最後は、奥さんの為に奮起するんだけど、それまでの行いから、
それすら褒めてあげられない・・・・女性が読んでもつまんない話だと思う。
男の浮気って、こういう心理で起きちゃうんだよ、許してくれよ・・・って言い訳されてる気がして。
ソフトなエロシーンがあちこちにあるので、エロチックホラーを読みたい人向け??
デヴィッド、取り憑かれて死んじゃっても全然OK!って思えるほど魅力が無いし
(奥さんは悪くないんだけど、キャラクターに深みが無い)、
そのせいか、全然怖くないのも致命的。
リチャード・マシスン、「地球最後の男(アイ・アム・レジェンド)」がカオスな本棚から発掘できず、
これを読んでみたけど、失敗だった。
敢えて読む必要無し(-_-;)!
「首ざぶとん」朱雀門出著:現代を舞台にした怪談 [本:ホラー&ミステリー]
7点
華道教室に通うまりかと、怪談話を蒐集している師匠龍彦。
二人は、「おざぶ・・・おざぶ・・」という声が聞こえるという穴を調べに行くが、
そこは足を踏み入れてはいけない、禁忌の場所だった・・・・。
というストーリーの表題作「首ざぶとん」を含む、まりかと龍彦がメインキャラクターの、
現代怪談全4編が収録されている。
「ともだち」は、携帯に割り込んでくる不気味な男の声。
「ひじり」では放火する怪しげな作業服姿の男たちにまつわる怪異。
「羊を何度も掘り出す話」は、何者かに操られるようにして掘った穴の中に蠢く異形のモノ。
どれも、現代を舞台にしながらも、怪談のおどろおどろしい雰囲気が出ているのはポイント高し!
祟り、禁忌、異形の物・・・その手の物が、うまく現代に溶け込んでいる。
惜しいのは登場人物の魅力や肉付けが乏しい事。
サブキャラである龍彦の性格は掴みどころが無いし、主人公まりかのキャラクターも薄い。
他の登場人物に関しても、特徴がいまいちぼんやり。
この辺が巧く書けてると、連作ものとしての魅力も増すし、
もっと作品に奥行きがでて面白くなったのにと、ちょっと残念。
でも、怪談ものとしての雰囲気はちゃんとあるし、
夜読んでいると、ぞーっとした気分になれるし、なかなか楽しめました(^^)。
華道教室に通うまりかと、怪談話を蒐集している師匠龍彦。
二人は、「おざぶ・・・おざぶ・・」という声が聞こえるという穴を調べに行くが、
そこは足を踏み入れてはいけない、禁忌の場所だった・・・・。
というストーリーの表題作「首ざぶとん」を含む、まりかと龍彦がメインキャラクターの、
現代怪談全4編が収録されている。
「ともだち」は、携帯に割り込んでくる不気味な男の声。
「ひじり」では放火する怪しげな作業服姿の男たちにまつわる怪異。
「羊を何度も掘り出す話」は、何者かに操られるようにして掘った穴の中に蠢く異形のモノ。
どれも、現代を舞台にしながらも、怪談のおどろおどろしい雰囲気が出ているのはポイント高し!
祟り、禁忌、異形の物・・・その手の物が、うまく現代に溶け込んでいる。
惜しいのは登場人物の魅力や肉付けが乏しい事。
サブキャラである龍彦の性格は掴みどころが無いし、主人公まりかのキャラクターも薄い。
他の登場人物に関しても、特徴がいまいちぼんやり。
この辺が巧く書けてると、連作ものとしての魅力も増すし、
もっと作品に奥行きがでて面白くなったのにと、ちょっと残念。
でも、怪談ものとしての雰囲気はちゃんとあるし、
夜読んでいると、ぞーっとした気分になれるし、なかなか楽しめました(^^)。
「死ねばいいのに」京極夏彦著:何が面白いかわからなかったよ・・・ [本:ホラー&ミステリー]
5点
一人の女性が殺される。
その女性と関わりがあった人の元に、一人の若者が訪ねてくる。
その女性の事を教えて欲しいと。
頭も悪いしもの知らねえし、喧嘩も弱い・・・そう自称する若者。
その若者と話している内に、人は自分の昏い心の中を覗き込む・・・。
うーん、何て言っていいのか困る話。
一応殺人事件は起きてるけど、ミステリー仕立てでもない。
話が進んでいく内に、殺された女性の不幸な身の上が明らかになるけど、
それが大事な訳でもない。
殺された女性の事を聞かれているのに、何故か自分の事ばかり話してしまう、
自分中心にすべてを考えている関係者達。
その心に潜む闇がテーマなのだろう。
その闇を指摘され良心の呵責と自己弁護の狭間で揺れる人の心を、
若者の放つ「死ねばいいのに」という言葉がえぐる・・という流れが全6章で繰り返されるんだけど、
自称も、話し方も、設定も「頭が悪い、もの知らない」と言ってる青年の言う事が、
あまりに正論過ぎて浮いてる。
ここまで語れるんだったら、こんな生き方はしないだろ・・・って思ってしまう。
章の途中まで、頭が悪い青年は、章のクライマックスになると作者が憑依して、
作者の言いたいことを代弁をしてるような感じが(^^;)。
「人の心の昏い部分」もあまり目新しい部分は無かった。
普通の人が誰でも持っている心の闇なら、もっと上手に書いてる話があると思うし。
「数えずの井戸」(リンク先感想)でも思ったけど、
相変わらず京極夏彦の構成力は凄いし、上手いなとも思う。
最後にはちゃんと落ちもあって感心もしたけど、内容的には読んでてイライラするだけで、
面白い話とは思えなかった。
外れ!
「肉食屋敷」小林泰三著:いろいろ詰まったホラーミステリー [本:ホラー&ミステリー]
7点
小林泰三のホラー・ミステリー短篇集。
表題作「肉食屋敷」は、ある実験により科学者が産み出してしまった生き物の話。
2作目「ジャンク」は、ウェスタン調の近未来。資源が枯渇し、死体が資源として使用されている世界の話。
3作目「妻への三通の告白」は、サイコもの。
4作目「獣の記憶」は、自分の中の凶悪な別人格に怯える男の話。
「肉食屋敷」はグロテスクな屋敷内部の雰囲気が良かった。
「ジャンク」は、この短篇集の中では、一番気に入っていて、
死んだ馬を使った人造馬などや、その修理の描写が楽しめた。
ただ、3作目、4作目は、ある程度オチもみえたし、途中経過も楽しめずイマイチ。
小林泰三は、どのテーマを書かせてもそれなりに面白いし、ちゃんとまとまってるんだけど、
そのちゃんとまとまってる部分がこじんまり感じてしまって物足りない。
上手く破綻(変な表現だけど)してると、もっといいのになー。
小林泰三のホラー・ミステリー短篇集。
表題作「肉食屋敷」は、ある実験により科学者が産み出してしまった生き物の話。
2作目「ジャンク」は、ウェスタン調の近未来。資源が枯渇し、死体が資源として使用されている世界の話。
3作目「妻への三通の告白」は、サイコもの。
4作目「獣の記憶」は、自分の中の凶悪な別人格に怯える男の話。
「肉食屋敷」はグロテスクな屋敷内部の雰囲気が良かった。
「ジャンク」は、この短篇集の中では、一番気に入っていて、
死んだ馬を使った人造馬などや、その修理の描写が楽しめた。
ただ、3作目、4作目は、ある程度オチもみえたし、途中経過も楽しめずイマイチ。
小林泰三は、どのテーマを書かせてもそれなりに面白いし、ちゃんとまとまってるんだけど、
そのちゃんとまとまってる部分がこじんまり感じてしまって物足りない。
上手く破綻(変な表現だけど)してると、もっといいのになー。
「地図男」真藤 順丈著:地図に物語を書きこむ男の話・・・散漫過ぎる [本:ホラー&ミステリー]
6点
「庵堂三兄弟の聖職」(リンク先感想)が面白かったので、「地図男」も読んでみました。
「庵堂三兄弟の聖職」が第15回日本ホラー小説大賞受賞、
この「地図男」が第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作品。
「RANK」が第3回ポプラ社小説大賞特別賞受賞。
と、立て続けに賞を取ってる作家さんです。
東京を放浪しながら、抱えた地図帳に物語を書き込む男。
アドベンチャーブックのように、話はいろいろなページに飛び、
また書きこまれた物語も多岐に渡っている。
その男に会うたびに、地図帳に書かれた物語を追う男。
地図男とは、いったい何ものなのか??
小説の中で、小説が語られるタイプなのだけど、面白い要素があっても、尻切れトンボ。
一番長く語られる、衝動が抑えられない少年と、動きを止められない少女の話は面白かったが、
本筋との辛味が中途半端。
結局まとまりがなく、散漫なイメージのまま終わってしまった・・という感じ。
私が面白いと思った「庵堂三兄弟の聖職」も、賞を取った後、本にするにあたって、
かなり手を加えた作品(賞を受賞した時点では、勢いはあるが・・・って感じだったらしい)で、
手を加えなければ、この「地図男」と同じような感じになってたのかも。
面白い部分もあったので、もうちょっとまとまりがあれば、楽しめたと思うだけに残念な作品。
地図つながりで、地図帳が語るという平山夢明の「独白するユニバーサル横メルカトル」(リンク先感想)
みたいな物を期待してたのも、いけなかったのかも。
「熱帯夜」曽根圭介著:「サスペンス」「ディストピア」「ゾンビ」、相変わらず面白い!! [本:ホラー&ミステリー]
8点
短編集「鼻」(リンク先感想)のクオリティがとても高かった曽根圭介の短篇集。
「熱帯夜」、「あげくの果て」、「最後の言い訳」の3つの短編が収録されてます。
「熱帯夜」は、借金取りに脅される夫婦のトラブルに巻き込まれてしまった男の話。
サスペンスタッチで、グロテスクな描写もあるが、話自体はきれいにまとまってる作品。
「あげくの果て」は、近未来の日本社会を描いたディストピアもの。
失業率は上がり、多くの人が貧困に喘ぎ、高齢者の医療費が問題になっている、そんな日本社会。
老人達を保護しようとする組織「銀」と、
自分達の未来の為、そしてこんな社会を創り上げた老人達を排斥しようとする若者集団「青」の抗争。
そんなすさんだ社会の中、家族思いの優しい男は、家族の為、自分を救ってくれた仲間を裏切り、
真面目で努力家の少年は、未来への閉塞感から、自暴自棄になる。
破綻した社会が、善良で真面目な普通の人々の意識を犯していく様が、リアルで怖い。
また、家族の為にやったことが、ボタンの掛け違いのようにずれ、
負のスパイラルを産み出していく皮肉な展開が胸をうつ。
日本の未来、本当にこうなってしまいそうな、そんな怖い話。
「最後の言い訳」は、蘇生者と呼ばれる生き返った人々がいる社会の話。
何も食べなくてよく、肌色がグレーがかった以外は、生前と変わらないと思われていた蘇生者達。
しかし、蘇生者達には、裏の一面もあった・・・。
ゾンビ物ですが、両親を蘇生者に食い殺された主人公の視点で語られる話が面白く、
よくあるゾンビ物となっていないのがいい!
甘酸っぱい切なさと、ブラックユーモアの効いた作品。
ということで、「鼻」同様、3作とも完成度の高い作品になってました。
特に「あげくの果て」と「最後の言い訳」は、人間の優しさ、弱さ、脆さ、無力さ、醜悪さ
などがうまく描かれていて、読後あとを引きます。
とてもとてもお勧めV(≧∇≦)V!
「鼻」を読んでいない人は、そちらもお勧め!!!
「庵堂三兄弟の聖職」真藤 順丈著:遺体から「物」を造り出す「遺工」の三兄弟の話。いいっ!! [本:ホラー&ミステリー]
7.8点
遺体の皮を剥ぎ、骨を削り、脂肪を集め、ブックカバー、箸、茶こし、石鹸・・・
いろいろな物を造り出す職業「遺工」。
父親の跡を次ぎ、死体に話しかけながら「遺工」の仕事をする長男正太郎。
長男の仕事を手伝う粗野で汚言症の三男毅巳。
「遺工」の仕事を嫌い、家を離れサラリーマンとなった次男久就。
次男久就が、帰省し、久々に3兄弟が揃った。
そこに舞い込んできた、困難な依頼とは??
「遺工」の仕事は、墓場から死体を盗み出し(2件の殺人も犯している)、
人間の皮や骨で、ランプシェードやチョッキ、食器を作ったりしたエド・ゲインを思い出す。
エド・ゲインの行ったことは犯罪だが、この作品の「遺工」は、
死んだ家族をいつまでも身近に感じていたいというような遺族の依頼を受けて行われる、
れっきとした「仕事」である。
この本のメインは「遺工」の仕事風景。
腑分けをし、皮を剥ぎ、肉を溶かし、骨を削り、脂を集め・・・そのような人体加工の過程が、
延々と描かれている。
伊藤計劃がいう「世界観読み」には、すごく面白い内容。
でもストーリーが大きく盛り上がることはないので、グイグイ引きこむようなストーリーを期待すると、
がっかりするかも。
また、殺し屋専門の料理店を舞台に、そこに来る頭のネジが何本かはじけ飛んだような
個性的な殺し屋達、スプラッタ描写をメインに描きつつ、
その中に悲哀や愛をうまく埋め込んだ平山夢明の「ダイナー」と同じように、
メインの描写は死体解体・加工なのにも関わらず、根底には3兄弟のつながりの強さ、
家族愛のようなものが垣間見え、読後切ない気持ちが残る作品ともなっている。
解説が平山夢明なのも納得。
ちょっと異色なホラーティスト作品。
個人的にはすごく好きです(^^)。
「怪刺す」木原浩勝著・挿絵伊藤潤二:価値は伊藤潤二のみ!! [本:ホラー&ミステリー]
2点(+1点←伊藤潤二挿絵・短編分)
実際にあった怪異を蒐集し、最強タッグが放つ絶叫絵噺集
というのが帯のキャッチ。
実際あった怪異譚+伊藤潤二の挿絵という本なのだけど、「怪異譚」にあたる部分が酷い。
ほとんどひねりの無い、よくある現代版怪談を、語るだけ。
それも、小説というより、単なる「説明」。
雰囲気を盛り上げるような文章表現を使っていない部分を補う為に、
文字を大きくしたり、字体を変えたり・・・・・素人がやるならともかく、
そんなのに頼るなんて、小説として出していいレベルじゃない。
巻末にある、木原浩勝の話を原作として書かれた伊藤潤二の短編は、
普通に面白かったけど、話が面白いのじゃなく、伊藤潤二の絵の勝利!
伊藤潤二の表紙に騙されて買ってしまい、かなり後悔(-_-メ)。
伊藤潤二の本なら、何でも欲しい!という人以外はお勧めしません。
「ミミズからの伝言」田中啓文著:・・・・グログロスプラッタ駄洒落ホラー [本:ホラー&ミステリー]
5.5点
角川ホラー文庫ではシリアス物しか出していなかった田中啓文の、駄洒落ホラー集とも言える一冊。
「ミミズからの伝言」
「見るなの本」
「兎肉」
「秋子とアキヒコ」
「牡蠣食う客」
「赤ちゃんはまだ?」
「糞臭の村」
の7編が収録。
「ミミズからの伝言」は、人の体内でミミズが大量に増殖して内蔵を食い破ったり、
人を襲ったり、ミミズミミズの作品。
先日記事にしたミミズの踊り食い映画「ミミズバーガー」を見ていると、
ビジュアル的によりリアルに思い描けて、楽しめると思う作品。
グロ炸裂!グログロホラーです。
「見るなの本」は、いじめネタ+学校の怪談もの。
いじめネタがかなり陰湿(田中啓文は嫌な人間とか陰湿な行為を書かせるとすごく上手い)。
でもホラーとしてはそんなに怖くない。
「兎肉」は、仏教の自己犠牲もので、有名な話なだけに、オチがある程度見えてしまう上、
その先の話もドタバタで終わってしまってイマイチ。
「秋子とアキヒコ」は、自分が好きになる相手が次々に惨殺される少女の話。
スプラッタ描写は少しあるが、オチのインパクトが弱い。
「牡蠣食う客」は、遠い惑星で、見た目は純和食、
しかし食材はおぞましい姿のその惑星の物が使われている食事を振舞われた男の話。
グログロスプラッタの調理シーンと、鳥肌モノの食事シーンが楽しめた作品。
割と好きです。
「赤ちゃんはまだ?」は、もしかしたら、好きな人は大絶賛なのかな?
著者がこの作品を読みなおして、
この原稿を渡した先から次の仕事の依頼が来なかったのがわかる、
とまで思った、超駄洒落脱力系ホラー。
私は、ラストに呆然・・・あまりのしょうもなさに、立って読んでたら崩れ落ちてたよ・・。
「糞臭の村」は、田中啓文がシリアスで書いてる「禍記(マガツフミ)」や「蝿の王」などにも見られる
古代神ネタを糞尿エログロ駄洒落で彩った作品。
糞尿の臭いが漂ってきそうなホラー。
あとがきにもあったけど、7作品中6作品が駄洒落がらみ。
駄洒落はあまり好きじゃないので、評価低め。
駄洒落キワモノとんでも脱力エログロスプラッタ系ホラーを読みたい人にならお勧め。
読む人をものすんごく選ぶと思う。
田中啓文の「蹴りたい田中」とか、駄洒落系が好きな人には、すごくいいのかもしれないけど。
「狂骨の夢」京極夏彦著:シリーズ3作目、「魍魎の匣」の方が面白かったかも・・・ [本:ホラー&ミステリー]
7.3点
「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」に続く京極堂シリーズ3作目。
京極堂シリーズは、タイトルと内容が密接に絡み合っている。
今回も、「骨」と「夢」に絡んで話が進んでいく。
戦時中、徴兵を逃れる為逃亡し、首なし死体として発見された男。
これが始まりだったのか。
時は流れ戦後。
夢で別の人間の人生を鮮やかに見る女。
彼女は、深海に沈み骨となる悪夢も繰り返し見ていた。
そして、彼女は連日訪れる死んだはずの元夫を毎回殺し、首を切り落としていると告白する。
うず高く積み上げられた骨の周囲で怪しげな行為を行う男女の夢を見る男。
山中で起きた集団自殺。
海に浮かんでいたという黄金髑髏の噂。
そして、釣り人が発見した生首。
全く関係が無いと思われた様々な事柄が、意外な関係を持っていた。
複雑に絡み合う思惑と事件、取り憑かれた人々の憑き物を京極堂は払う事ができるのか?
「魍魎の匣」は、関連する一つの流れだと思われた事件が、
何本かの線が交わるように、別々の事件が要所要所で接点を持っているだけだったという
構成になっている。
逆に、「狂骨の夢」は、全く関係が無いと思われた事件が、一つにまとまっていくという構成。
バラバラだと思われた事柄が一つにまとまっていく・・・という展開は、
ワクワクして面白いものなんだけど、「狂骨の夢」の場合、
あまりに事例が多すぎて、収束していく気持よさを実感できなかった気が。
ちょっと無理があるなーと思える部分もあったし。
ウンチクは、「夢」ということで「フロイト」や「ユング」の話が多かったけど、
これに興味を持てなかった(若い頃ははまったけどね~(^^;))のも残念。
多数のバラバラな事柄を一つにまとめあげた京極夏彦の手腕には感心するし、
面白く読めたけど、「魍魎の匣」に比べると、ワンランク落ちる気がしました。
「姑獲鳥の夏」京極夏彦著:京極夏彦デビュー作、京極堂シリーズを読むならこれから! [本:ホラー&ミステリー]
7点
京極夏彦のデビュー作。
京極堂シリーズの1冊目。
「二十ヶ月もの間、子供を身篭っていられるか」それが発端だった。
久遠寺という産院の娘が、そうだと言う。
それだけでなく、その産院には忌まわしい評判がつきまとっていた。
健康で生まれたはずの赤ん坊が次々に殺され死産扱いに、婿養子に入った男は密室から失踪・・・。
探偵榎木津と失踪した婿の消息を調査するはめになった関口。
関口には、自ら記憶を封印し忘れてしまったおぞましい過去が。
それが、調査の依頼人久遠寺涼子との出会いで解き放たれようとする・・・。
京極夏彦は、映像的に強いイメージを残す描写が上手い。
この話でも、序盤で語られる、赤ん坊を抱き、下半身が血まみれの忌まわしい姑獲鳥の姿が、
読み進めていく間、心のどこかを占領し、作品全体に影響を与えている。
ストーリー的には、「魍魎の匣」より登場人物も、絡み合った事件も少ないので、
わかりやすく、サクサクと読める。
ページ数もかなり少ないし(文庫版なら630pとちょっと厚いくらい)。
絡み合った事件が少ないので、何となく推測できちゃう部分が当たってると、
「魍魎の匣」よりは、ラストの面白さが減ってしまうのは残念。
面白かったけど、「魍魎の匣」の次に読んでしまったのを後悔。
京極夏彦は「上手い」作家でもあるが、1作目の「姑獲鳥の夏」より、
2作目の「魍魎の匣」の方が、格段に「上手く」なってるのだ。
「姑獲鳥の夏」が出た直後ではなく、「魍魎の匣」が出た後に、
京極夏彦の評価が高くなったのも、すごくわかる。
2作目を読んだ後、1作目を読むと、その拙さ(それでも上手いんだけど)が気になる。
コミックで、「続〇〇」などのシリーズを読んで面白かったので、
最初の話も読んでみたら、話は面白いけど、絵の拙さが気になるってケースと似た感じか。
出た順番に読めば、そういう拙さも気にならず楽しめたのに・・と残念に思う、そんな心理。
ということで、面白かったけど、出た順番で読めば良かった~とちょっと後悔。
この後、「塗仏の宴」を読もうと思ってたけど、出た順番通り「狂骨の夢」を読む事にしました。
「魍魎の匣」京極夏彦著:人気があるの納得! [本:ホラー&ミステリー]
7.8点
「数えずの井戸」に続き、京極夏彦の「魍魎の匣」を読んでみました。
京極夏彦の本は、絶対好きそうな内容・・・と思いつつ、その分厚さに負けて手を出してませんでした。
買ってはいたんだけど。
「数えずの井戸」は、怪談を京極夏彦が独自の解釈で編みなおしたシリーズの中の一つ。
今度は、伝奇ミステリーを読みたいと京極堂シリーズの「魍魎の匣」を。
改めて手に取ると、やっぱり分厚いですね~(^_^;)。
文庫で1000P以上(「文庫版 絡新婦の理」なんて1400Pもあるようですが)。
冒頭に語られる小説のワンシーン。
膝に乗るほどの小さな「匣」にきちんと収まり微笑みかける美しい少女。
その後、作中で展開する連続バラバラ殺人事件の背後に潜む猟奇さを暗示する内容になっている。
連続バラバラ殺人と並行するようにして、別の事件も進行する。
家出しようとした二人の少女の内、一人が駅で線路に落ち、大怪我をする。
自殺しようとしたのか?殺されそうになったのか?
瀕死の重症を負った少女加菜子が運び込まれたのは、箱のように四角い形をした研究所。
加菜子には出生の秘密があり、彼女を誘拐するという予告状が研究所に。
少女と一緒に家出をしようとしたもう一人の少女頼子の家には、
母親が信仰する、魍魎を「御筥様」(おんばこさま)に閉じ込めるという、怪しげな祈祷師が。
それらの出来事が、複雑に絡み合い物語は進んでいく。
「数えずの井戸」でも思ったけど、緻密に構築されていて感心。
タイトルの「魍魎」と「匣」。
これらが、ストーリー全体にしっかり関わりあっている。
「数えずの井戸」は、その緻密さに感心したけど、すごく面白いとまでは思わなかった。
でも、こちら「魍魎の匣」は、長いページ数が気にならないほど(物理的には重くて読みづらかった)
面白く読めた(^^)。
思っていたより、文章も読みやすかった(もっと難解な感じかと思ってた)。
登場人物が、いい味だしてるのもいいし(榎木津と榎木津のお父さんが特にいい)、
途中に挟まれる、京極堂の長いウンチク話(魍魎についての詳しい解説や、
占い師、祈祷師、宗教者、超能力者の違いなど)も、物語をより深く面白いものにしている。
読んでいる最中、なんとなく犯人やトリックが想像できる部分もあるのだけど、
それが正解だとしても、いろいろな要素や多くの登場人物の思惑が複雑に絡まり合っているので、
単体での予想が正解だったとしても、興味を削がれる事なく、
その後、より面白く読める展開が準備されていたのもいい。
全体的に漂う戦後昭和の雰囲気もたまらない♪←こういうの好きな人は多いよね。
京極夏彦が人気があるのがよくわかった一冊でした。
京極夏彦は、もう少し読んでみようと思います(^^)。
そうそう、半分冗談ではあるけど、私が好きなカナダのミステリー作家マイケル・スレイドを
カナダの京極夏彦と紹介してたサイトがある。
今回、京極夏彦を読んで、やっと共通点がわかった。
ウンチク話が長い事。
でも、京極堂シリーズのウンチク話は、物語をより面白くするのに必要だけど、
マイケル・スレイドの方は、知識を詰め込み過ぎて場合によっては辞典を読んでる気分になる
ってのが大きな違い(^_^;)。
でも、その詰め込み過ぎによるバランスの悪さもというか、
カッ飛び具合がマイケル・スレイドの魅力の一つなんだけど。
マイケル・スレイドの作品は、主要登場人物がバンバン死に、
巻が進むごとに主要登場人物がどんどん減っていくという特徴もあるんだけど、
上記で紹介したサイトで、それを京極堂シリーズに置き換えると・・・ってのも載ってて面白いです。
「庭師(ブラック・ガーデナー)」 高瀬 美恵著:サイコホラーかと思ったら・・・・ [本:ホラー&ミステリー]
6点
「エクセシオ三山303号室」。
フリーライターの寺内さやかは、彼と別れた喪失感を埋めるように、マンションの一部屋を購入し入居。
同時に、「ブラック・ガーデン」というサイトに、
「新しいお花がやってきました。とってもシャイで寂しがり屋の女の子(もうすぐ30歳だけど。ぷぷぷ)。
独身で彼氏と別れたばっかり」という記述がアップされた。
そのマンションの住民達は、花の名前を付けられ、その私生活が、
万引き癖や、浮気、そして日常の些細な行動まで、そのサイトにアップされていたのだ。
最初は穏やかに見えたマンション生活は、異臭騒動、住民のペットの惨殺・・・と次々に事件が起こり、
住民達の間には、疑心暗鬼の気持ちが蔓延しだす。
住人を監視しているのは誰なのか?
そして、「エクセシオ三山」の住民達は・・・・。
穏やかそうに見えた老婦人が、ペットの事になると人が変わる、
冷静な大学生と思えた男が、自己中心的な狂気に蝕まれていた、
隣の部屋に住む親子は、異臭騒動から被害妄想が激しくなり異常な行動を取り出す、
表面的に見える顔と裏の顔、そして些細な事件から広がる狂気、
そして茶化すようにマンションの住人の私生活をアップするブラック・ガーデナー。
前半、些細な事件が、ドミノ倒しのように次々と新しい事件を引き起こし、
またそれにより、最初は見えなかった住人たちの狂気が明らかになっていくあたりは、
テンポもよくかなり面白く読めた。
このまま、どろどろとしたサイコホラーとして進んでいけば良かったのに、
オカルトホラーだったんですね~(-_-;)。
前半、人間の狂気的な部分が面白かっただけに、もったいないというか残念というか。
オカルトとしては、あっさりしていて普通という感じ。
読みやすいし、テンポよく最後までサクサクと読めるので、
オカルトホラーが好きな人なら読んでもいいかも。
「玩具修理者」小林泰三著:それなりには面白いが・・・ [本:ホラー&ミステリー]
7点
小林泰三の本の中で、タイトルと表紙(文庫版玩具修理者 (角川ホラー文庫)の方)のインパクトが一番強かった本。
絶対本棚のどこかにあると思って探したけど見つからず、
探すのが面倒になり、危うく買っちゃうところでした。
本棚にありそうなのに、読みたい気持ちが高まると、買ったりするから、
同じ本が2冊あったりもするんですよね(--;)。
幸いな事に、行った書店で見つからず(あったら買ってた)、図書館にはあったので、図書館でゲット!
表題作の短編「玩具修理者」と中編の「酔歩する男」が収められています。
「玩具修理者」は、壊れた物を何でも直してしまう怪しい人物の話。
クトゥルフの要素が入っていて、クトゥルフを読んでいる人なら、ニヤリとしちゃいそう。
怖いというより、スプラッタ摩訶不思議物。
小林泰三の話は、物語の辻褄合わせとかは置いておいて、
読んでいてニヤリとできるこういう話が好き♪
「酔歩する男」は、タイムトラベラー物で、SFティストのホラー。
脳をいじることにより、時間の概念がおかしくなってしまった男の味わった恐怖を描いたものだけど、
SFとしてもホラーとしても中途半端。
時間が連続したものではないという捉え方は、SFではよくあることなので、
アイディアのインパクトが弱い。
中途半端にSF的説明にページを裂いている為と、男の他人に語るという形式で話が進められる為、
男の感じる恐怖もそれほど伝わって来ない。
読んだタイミングもすごく悪かった気が。
イアン・ワトスンのタイムパラドックス物の傑作「超低速時間移行機」(アンティシペイション (サンリオSF文庫)に収録)を読んだ直後だったので、
「酔歩する男」で使われているアイディアがより陳腐に思えてしまって(-_-;)。
この作品だけじゃなく、小林泰三のSFティストが強い作品は、どれも中途半端さを感じてしまう。
小林泰三のホラーは、「玩具修理者」のように漫画的と思えるものの方が好きだなー。
「数えずの井戸」京極夏彦著:番町皿屋敷の新解釈・・よくできてる [本:ホラー&ミステリー]
7点
初京極夏彦!
何冊か持ってはいるんだけど(^^;)、読まないままで今まできました。
何でだろ??
有名な怪談「番町皿屋敷」を新しい解釈で描いた作品。
短い章に分かれており、「昔数え」「誉数え」「数えずの縁」・・・など、
サブタイトルに「数え」がついている。
前半は、各章、主要な登場人物6人の独白で構成されており、
どれもが「数える」という事に絡めてある。
いつも何か欠けていると感じる青山主膳、満ちてはいけないと感じている菊、
欲しい物は必ず手に入れる大久保吉羅・・・・。
かなり癖がある個性の持ち主である主要登場人物の気質・考え方がしっかりと描かれている。
また、その設定に沿った個性的な思考パターン・行動をとる登場人物たちに対して、
最初の独白での描写が上手いので、違和感なく受け入れる事ができる。
一人一人の個性ががブロックのようにきっちり定まり、それがキレイに積み上がり、
後半、その個性が干渉しあい、絡まり合って、一つの物語を成していく・・・
その手腕は見事!!と感心。
しかし、あまりにキレイにまとまり過ぎている感も。
登場人物達が、設定された気質・個性故辿る運命をただ進んでいっているような・・・
そんな感じを受けてしまった。
計算され練られた設定と展開にはすごく感心する。
登場人物達が心の奥底に持つ暗い部分や虚無感も伝わってきたし、それは私の心をひっかいた。
でも、ガツーンと来るものが無く終わってしまった感が・・・。
初京極夏彦は微妙でした。
京極夏彦は「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「どすこい(仮)」・・・他にも何冊か持ってるので
これをきっかけに、もうちょっと読んでみようと思います。
「姑獲鳥の夏」なんて1994年頃、京極夏彦がデビューして話題になった時点で買ってるんですよね・・・
何年本棚で眠ってるんだ(゚_゚i)。
「どすこい(仮)」も、ハードカバーで買ってるし・・・。
手に入れたらそれだけで満足・・・という自分をやめなければ・・・。
「背の眼」道尾秀介著:オカルトミステリー、そんなに怖くないけど面白い! [本:ホラー&ミステリー]
7.5点
「背の眼」と同じ登場人物が出てくる、2作目の「骸の爪」を先に読んじゃったけど、
一作目のこちらも読んでみました。
第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。
文庫版「背の眼〈上〉」「背の眼〈下〉」も出てます。
ホラー作家道尾は、旅先の白峠村の河原で不気味な声を耳にする。
それを相談する為訪れた友人真備の「霊現象探求所」。
その探求所には、白峠村近辺で撮られたという、人の背中に眼が写り込んでいる4枚の心霊写真が。
その上、背中に眼が写っている人は、4人とも自殺していた。
白峠村近辺では、未解決の児童失踪事件も4件起きていた。
天狗の伝承があるこの地域では、この事件を神隠しと信じる人も。
背中の眼と、自殺、そして、連続児童失踪事件には、何かつながりがあるのか。
そして、道尾が聞いた謎の声の意味は・・・。
2作目「骸の爪」は、オカルトティストではあったけど、それらの超常現象が本当は超常現象ではなく、
手品のネタばらしのように、謎解きの過程で、原因が次々に解明されていった。
しかし、1作目の「背の眼」は、超常現象はちゃんと超常現象として扱われ、
事件の方は、ミステリー物として成立し、現実世界のものとして解決している。
ミステリーとオカルトの融合、でも事件は現実の事件としてオカルト要素を除いて成立しているので、
三津田信三の「禍家」に近いかな。
ホラーティストや、超常現象との絡み具合は、「禍家」に比べると、ものすごく弱いけど。
1作目のミステリーとオカルトの融合の方が、物語の設定に即していると思うのだけど、
何で2作目は、オカルト部分をオカルトじゃなくしちゃったのだろ???
それに、1作目の「背の眼」の方が好みなので残念。
心霊写真、背中に浮き出る眼、神隠し、白峠村に伝わるおぞましい伝承・・・と、
ホラー要素は満点だけど、あまり怖くないです。
怖さを期待するとがっかりすると思う。
でも、上記の要素を絡めながら事件が進展し、事件の全容が明らかになっていくのが面白い。
要所要所に挟まれる、霊障現象や天狗などのうんちく話も楽しめるし。
道尾秀介作品らしい、人が人生で遭遇する悲哀、根底にある優しさ、
それらもちゃんと感じる事ができる。
特に今回は、ちょい役って人がいい味をだしてた。
このシリーズはもう続かないのかな?
続けるなら1作目に戻って欲しいなー。
蛇足だけど、この話の舞台は福島県。
地元の人が方言で話すんだけど、変だった。
脳内で、福島弁のイントネーションに置き換えられないというか(^^;)。
「脳髄工場」小林泰三著:SFティストホラーが多め [本:ホラー&ミステリー]
7点
自分の本棚にあったのを発見したので。いつ買ったんだろ(^^;)。
買った記憶が無い本がいろいろ並んでいるので、自分の本棚を漁ると新鮮です。
でも、そんな状況なので同じのが2冊出てきたりもよくする(-_-;)。
最悪だったのは、1軒目に寄った本屋で迷った末買った本を、買ったことを忘れ2軒目でも買った事。
家に帰ってカバンを開けて愕然・・・・←この状態はかなりやばいです・・・脳の老化が・・。
SFティストのホラーが多めの短編集。
「脳髄工場」「友達」「停留所まで」(SS)「同窓会」(SS)「影の国」「声」(SS)
「C市」「アルデバランから来た男」「綺麗な子」「写真」(SS)「タルトはいかが?」
が収録されている。
表題作「脳髄工場」は、最初は犯罪者の矯正に使用されていた人工脳髄装着が、
当たり前に装着されるようになった世界を描いた作品。
人工脳髄によって感情の高ぶりを自動的に抑制する人が多数の中、
人工脳髄を装着しないまま高校生になった主人公が感じるのは、
「みな自由な意志を持たず、人工脳髄によって支配されているのではないか」ということ。
最終的に、人工脳髄を装着する決心がついた主人公が、「脳髄工場」で知った驚愕の事実とは・・。
「綺麗な子」も、「脳髄工場」と同じように、テクノロジーの進化したアンチユートピア未来を描いている。
どちらも、それなりに面白いけど、ありがちなオチでまとまってしまっていた。
テクノロジー進化の果ての近未来アンチユートピア物は、使い古された感があるので、
短編だとどうしてもありがち感が残ってしまうんだと思うけど。
何編か入っているSSも、あんまり面白いものがなかったのが残念。
好みだったのは、クトゥルフネタの「C市」と、変なティストの「アルデバランから来た男」。
全体的に、インパクトに欠け、こじんまりとまとまってしまっているものが多かった気が。
スプラッタ描写も少なく、怖さも弱い。
それでも、ある程度のクオリティはあるので7点。
「骸の爪」道尾秀介著:夜中に笑う仏像、割れた仏像の頭から血・・・20年前の隠された惨劇との関連は?? [本:ホラー&ミステリー]
7点
ホラー作家の道尾は、取材の為訪れた仏所で、夜中に笑う仏像を目撃する。
そして、暗闇の中、「マリ」と呼ぶ声を聞き、声に導かれるようにたどり着いた先には、
頭の割れた仏像が祀られていた。
驚くべき事に、仏像の割れた頭から血が流れ・・・。
そして、その夜から、仏所の彫師の一人が行方不明に。
この仏所には、隠された陰惨な過去があった。
道尾が遭遇した怪異、隠された過去、それと行方不明事件は関係があるのか?
オカルト色の強いミステリー。
「背の眼」と同じシリーズで、
ホラー小説家の道尾と、「霊現象探求所」の真備が登場する。
「霊現象探求所」という名前から、三津田信三の「刀城言耶シリーズ」「死相学探偵シリーズ」のような、
オカルトとミステリーの融合かと思ってしまうが、
オカルト的要素は、表面だけで、基本はミステリー。
本当はオカルト要素をもうちょっと出すつもりだったのが、出せないまま終わった・・って感じもするけど。
仏所が舞台な事から、仏像に関するウンチクや、それに関連する仕掛けが面白いが、
仕掛け部分は、ちょっと仏像絡みに偏り過ぎてしまった気も。
道尾秀介の作品で見られる、登場人物の、心を締め付けられるような悲哀、
根底にある優しさ、人間の弱さなどを、この作品でも感じる事ができる。
ただ、オカルト色が強く、探偵ものであるという部分が、
その情感溢れる部分と咬み合っておらず、どっちつかずになってしまっている。
それでも、最後まで面白く読めたのは、道尾秀介のうまさだろう。
まぁまぁお勧め。
傑作を期待せず、軽い気持ちで読むと楽しめると思う。
「ひとにぎりの異形」井上 雅彦監修:幻想・怪奇ティストのショートショート集。いろんな作家に巡り会えます [本:ホラー&ミステリー]
7点
ブログ「Boku Lab ボクラボ♪」さんで知りました。
作家81人の作品を集めた、怪奇・幻想ティストのショートショート集。
収録されている作品が多いので、気に入った話、いまいち好みじゃない話いろいろありましたが、
楽しんで読めました(^^)。
知らなかった作家を知るきっかけにもなるけど、私の場合、懐かしい作家との再会が嬉しかった。
草上仁、かんべむさし、川又千秋、梶尾真治、堀明、横田順彌などなど、
わーーー、何年ぶりに読んだだろ!!って作家さんが(^^)!
平山夢明、遠藤徹、牧野修、倉阪鬼一郎など、近年読んでいる作家もいたけど、
SSに関しては、昔読んでいた作家の方が、何かしっくり来るような。
自分好みのSSのスタイルやオチがちょっと古めなのかも(^^;)。
とにかく、たくさんあるので、きっとお好みのSSがあるはず。
読み応えもあります(^^)。
お好みの作家さん、懐かしい作家さん、いろいろ探してみて下さい♪
お勧め(^^)。
「家に棲むもの」小林泰三著:バリエーション豊かなホラー短編集 [本:ホラー&ミステリー]
7点
表題作「家に棲むもの」を含む、計7編を収録したホラー短編集。
嫁ぎ先のボロボロな古い家でのおどろおどろしい恐怖体験を描いた「家に棲むもの」。
人間の狂気を描いた「食性」「お祖父ちゃんの絵」、ミステリー的な仕掛けの「五人目の告白」、
マッドサイエンティストがでてくる「肉」、ファンタジー色のある「森の中の少女」「魔女の家」と、
多様なティストの作品が集められている。
「家に棲むもの」「肉」「お祖父ちゃんの絵」が個人的にはお気に入り♪
「肉」はベタな話で、途中でオチも想像つくんだけど、動物愛護の為生み出された、
足が23本ある鶏とか、無理やり陸上で生きられるようにした鱒とか、
どこかユーモラスでグロテスクなアイディアが気に入った。
秀作揃いの一作♪
「家」栗本薫著、「蟲」坂東眞砂子著:主婦の心理状態を描いた作品2作。作家によってかなり違うもんだなー [本:ホラー&ミステリー]
7点
5点
女性作家による、主婦の心理を中心に展開するホラー2作。
栗本薫の「家」は、郊外に長年の夢だった一軒家を手に入れた主婦規子の話。
憧れ続けた一軒家。そこで「普通の幸せな生活」を送る事が理想だった規子。
夢いっぱいで新居に引越したが、現実には、子供達は大学生と高校生。
既に自分の生活を持っている。
夫も、仕事が忙しく、家庭や自分を気にかけてくれない。
それでも、一軒家を手に入れた事に満足していた規子を、怪異現象が襲う。
勝手に点く電気やテレビ。昼間、誰もいないはずの家に感じる何者かの気配。
家は呪われているのか??怪異現象の理由は。
新居で頻繁に起きるポルターガイスト現象、金縛りの時に見た恐ろしい顔、
そんな現象に怯えつつも、新居に執着する規子。
自分の体験、怯えを家族の誰にも相談できない、規子の孤独。
家族の気持ちがバラバラなこと、親しい友人がいないこと、
様々な事に対し、理由をつけ自分を納得させる規子。
その理由が独りよがり過ぎずリアルな分、主婦の孤独を感じさせて怖い。
何だかんだと理由をつけ、自分を正当化し、問題に向きあおうとしないという部分もリアルだ。
栗本薫は、人間のそういう弱さとかずるさとか、エゴの部分を書かせると上手いと思うのだけど、
その辺がすごく生かされてる。
家で起きる怪奇現象より、規子の心理の方が怖いと思えるほどに。
怪奇現象と主人公の心理、それらが「家」という舞台の中で、複雑に絡み合う。
読み応えのあった一冊。
でも、主人公の規子の心理に共感できないと、きっと面白くないはず。
私も、学生時代とかに読んでたら、規子の心理はあまり理解できなかった気がする。
amazonの評価が真っ二つなのがわかる(^^;)。
--------------------------------------------------------------------------------------------------
坂東眞砂子は「狗神」「死国」が映画化されているので、知っている人も多いのかな?
「蟲」も主人公は主婦。
妊娠して会社をやめた主人公めぐみ。
仕事を止め世間から取り残された感に悩み、苛立つめぐみ。
ある日、夫が仕事現場で拾ったという石を持ち帰ってくる。
「常世蟲」と掘られたそれ。
石が来てから、めぐみは、超常現象や幻聴・幻覚に悩まされるようになる。
そして、祖母がでてくる蟲送りの夢を頻繁にみるように。
その上、夫にも変化が。
夢は何かを警告しているのか?
そして常世蟲とは??
伝奇ホラーなのだけど、めぐみの不安定な心理、
それも怪奇現象に対する恐怖より、仕事をやめたことや、夫への不満などが中心になり、
常世蟲の怖さがでていない。
物語の中心をなすめぐみの心理と「蟲」がうまくリンクせず、
怖くなりそうで怖くならないまま、終わりを迎えてしまったというか。
読後、物足りなさ感が残った。
5点
女性作家による、主婦の心理を中心に展開するホラー2作。
栗本薫の「家」は、郊外に長年の夢だった一軒家を手に入れた主婦規子の話。
憧れ続けた一軒家。そこで「普通の幸せな生活」を送る事が理想だった規子。
夢いっぱいで新居に引越したが、現実には、子供達は大学生と高校生。
既に自分の生活を持っている。
夫も、仕事が忙しく、家庭や自分を気にかけてくれない。
それでも、一軒家を手に入れた事に満足していた規子を、怪異現象が襲う。
勝手に点く電気やテレビ。昼間、誰もいないはずの家に感じる何者かの気配。
家は呪われているのか??怪異現象の理由は。
新居で頻繁に起きるポルターガイスト現象、金縛りの時に見た恐ろしい顔、
そんな現象に怯えつつも、新居に執着する規子。
自分の体験、怯えを家族の誰にも相談できない、規子の孤独。
家族の気持ちがバラバラなこと、親しい友人がいないこと、
様々な事に対し、理由をつけ自分を納得させる規子。
その理由が独りよがり過ぎずリアルな分、主婦の孤独を感じさせて怖い。
何だかんだと理由をつけ、自分を正当化し、問題に向きあおうとしないという部分もリアルだ。
栗本薫は、人間のそういう弱さとかずるさとか、エゴの部分を書かせると上手いと思うのだけど、
その辺がすごく生かされてる。
家で起きる怪奇現象より、規子の心理の方が怖いと思えるほどに。
怪奇現象と主人公の心理、それらが「家」という舞台の中で、複雑に絡み合う。
読み応えのあった一冊。
でも、主人公の規子の心理に共感できないと、きっと面白くないはず。
私も、学生時代とかに読んでたら、規子の心理はあまり理解できなかった気がする。
amazonの評価が真っ二つなのがわかる(^^;)。
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坂東眞砂子は「狗神」「死国」が映画化されているので、知っている人も多いのかな?
「蟲」も主人公は主婦。
妊娠して会社をやめた主人公めぐみ。
仕事を止め世間から取り残された感に悩み、苛立つめぐみ。
ある日、夫が仕事現場で拾ったという石を持ち帰ってくる。
「常世蟲」と掘られたそれ。
石が来てから、めぐみは、超常現象や幻聴・幻覚に悩まされるようになる。
そして、祖母がでてくる蟲送りの夢を頻繁にみるように。
その上、夫にも変化が。
夢は何かを警告しているのか?
そして常世蟲とは??
伝奇ホラーなのだけど、めぐみの不安定な心理、
それも怪奇現象に対する恐怖より、仕事をやめたことや、夫への不満などが中心になり、
常世蟲の怖さがでていない。
物語の中心をなすめぐみの心理と「蟲」がうまくリンクせず、
怖くなりそうで怖くならないまま、終わりを迎えてしまったというか。
読後、物足りなさ感が残った。
「赤い森」折原一著:一家が惨殺された樹海の中の家。その事件の真相は・・・。 [本:ホラー&ミステリー]
6点
以前読んだ「黒い森」が面白かったので、その関連作品らしい「赤い森」も読んでみました。
「黒い森」「赤い森」とも、本の一部が袋とじになってます。
樹海の中の一軒家に移り住んだ小説家と画家の夫婦と双子の姉妹。
しかし、狂った小説家に家族は惨殺され(シャイニングを思い出すな、それが狙いか??)、
犯人であると思われる小説家は、いまだ行方不明。
泊まった樹海近くの民宿でその話を聞いた学生3人は、止める民宿の主の忠告も聞かず
樹海の中の一軒家に行ってみる事にするのだが・・・。
話は大きく3つに別れ、どれも民宿の主の樹海の一軒家にまつわる話から始まる。
前の章のストーリーが、樹海で起きた惨劇として、民宿の主から泊まり客に語られ、
話は似たような展開を持ちつつも、徐々に進行していく。
話の中に小説があり、独立した独白があり、全体像がつかみにくくしてある。
別の登場人物なのに、前の章の登場人物と似たような行動を取る・・
(状況が違うので、行動にも差があるけど、心理状態が似ているというか)。
道に迷いグルグルと同じ場所をまわってい、どんどん状況が悪化していく樹海の怖さを、
小説でやろうとしたのかもしれないけど、あまり成功してないような。
こじつけ感、ご都合主義感を感じてしまった。
また話の中の小説というような展開は、夢落ち物を読んだような気分にもなってしまう。
前作、「黒い森」もストーリー自体は、それほど引かれるものがなかった。
メイン部分は、駆け足すぎて、設定だけを見せられた感じで。
でも、樹海の怖さ、不気味さがものすごく感じられてよかった。
今回はそれもなく(まぁあったとしても、それでは「黒い森」と同じになってしまうけど)、
全体的にに「設定が先にありき感」「狙った感」が強く、物語に入り込めなかった。
また、袋とじの部分も、前作のような効果は殆どなく、「何でこの部分を袋とじに?」って感じだった。
読んでいる最中は、それなりに面白いんだけど、オチがどれも「う~ん(-"-;A」だったのが残念。
「そして、またひとり・・・」幸森 軍也著:尻切れトンボだ~(>_<) [本:ホラー&ミステリー]
2点
中編2作。
1作は表題作「そして、またひとり・・・」。
3家族が子連れでキャンプに行く。
しかし、途中、山中に逃げ込んだらしい殺人犯を追った検問に引っかかり、
トイレ用の穴を掘っている最中、欠けた地蔵の頭を掘り出してしまう。
そして、子供が一人溺れ、その後も次々と・・・・。
キャンプに参加したメンバーが次々と死んでいく。
それも、溺れたり、事故だったり、殺されたり・・・・それらの関連が見つからない。
さて、どうつながるのか!!?と思ったら、終わり~!!
ここまで尻切れトンボな話も珍しい。
終わってしまって呆然とした。
また、登場人物の行動が変。
子供が一人溺れ死んだのに、花火をやったり(誰も、死んだ子供や家族の事を親身に考えてない)、
その後も次々と人が死んでいるのに旦那の浮気の事ばかり考えたり、単独行動したり。
アメリカのショッカー映画でも、登場人物が理解不能な行動を取る事があるけど、それ以上だった。
「闇の下」は、ストーカーの話。
こちらも、イマイチ。
何がいいたいのか、よくわからない。
主人公が、電車で見かけた女性に闇雲に惹かれストーカー行為に及ぶという流れに
説得力が無いのが痛い。
他人から見た印象と、本当の姿は違う・・というのを言いたかったのかもしれないけど、
それも伝わって来ないし。
2作とも駄作でした。
「うなぎ鬼」高田 侑著:人間のドロドロした部分を描いたホラー [本:ホラー&ミステリー]
7.5点
見た目は大柄で迫力があるが小心な主人公勝。
借金で破滅しそうになった勝は、借金の取り立て屋に身請けしてもらい助けられる。
恩がある取り立て屋の社長から、ある日、破格の賃金である物を運ぶ事を依頼される。
運び込む場所は、悪臭漂う禍々しい雰囲気を持つ場所だった・・・。
人間というのは、多面性がある。
善い心、信頼、愛情、謙虚さ、向上心・・・
しかし、同じ人間が、憎悪、不信、裏切り、怠惰、不遜・・・などの気持ちも持つ。
自分で見た事、感じた事を、裏付けるけるような噂。
そういう物に翻弄され、徐々に疑心暗鬼に陥る主人公。
逆に、自分が見た事、感じた事とは、かけ離れた噂。
それが、限りなく真実に近いとわかっていても信じようとしない主人公。
主人公勝の心の動きを通して、人間の心の不安定さや、多面性、
そして、ドロドロした部分を見せつけられる。
この小説の怖さは、人間の持つ不安定な部分、弱い部分が、自分にもある事を認識させ、
また周囲にいる善いと思っている人が本当にそうなのか、見た目や行動で判断していいのか、
他人の本性を想像させてしまう所にあるのだと思う。
オカルト的な要素はないので、それを期待して読むとがっかりすると思う。
でも、あまりないタイプのじわじわくる怖さを持つ小説。
怖さというよりは、不安感を煽ると言った方がいいかも。
これはこれで、面白かった。
「十三の呪-死相学探偵1」三津田信三著:死相が見える探偵が依頼された事件とは [本:ホラー&ミステリー]
6点
死相が見える弦矢俊一郎を主人公にした「死相学探偵シリーズ」。
続編「四隅の魔 死相学探偵2」「六蠱の躯 死相学探偵3」も出ています。
死相が見えることで、孤独な幼少期を送り、対人関係に難ありの弦矢俊一郎。
しかし、その能力を活かした仕事をしようと、大学卒業後、探偵事務所を開く。
最初に来た依頼人は、婚約者が急死したという女性。
死の影を認めなかった為、追い返した弦矢だったが、
二度目に彼女が来た時、その禍々しい姿に戦慄する。
そして、話を聞くと、婚約者の家族が次々と怪異に襲われているという。
婚約者の家に、調査の為に乗り込む弦矢だったが、最初の犠牲者が・・・・。
ミステリー仕立てのホラー。
依頼人の婚約者の家で遭遇した、この世のモノとは思えない異形のものの話や、
事件が進行し、謎をとくくだりなどは面白かった。
しかし、全体的にキャラクターの掘り下げが浅く、話が薄っぺらい。
犠牲者が次々と出ても、恐怖感・緊迫感をあまり感じないし。
また、主人公のキャラクターの設定「対人関係に問題がある」部分が浮いてしまっていた。
著者は、探偵シリーズ物を書くにあたって、金田一耕助、ポアロ、シャーロック・ホームズなど
有名なミステリーのシリーズ物の探偵たちと同じように、
主人公の探偵を少しクセのあるキャラクターにしたいと思っているようだが、
それがうまく行っていない気がする。
クセのある部分に取ってつけたような違和感を感じてしまうのだ。
これは、この作者の別シリーズ「刀城言耶シリーズ」でも少し感じるのだけど、
主人公目線で語られる、こちらの方が、それを強く感じた。
また、ホラーとはいえ、ミステリー仕立てで、人が死んでいるのに、
その犯人に対する扱いが甘いのも気になった。
犯人が見つかってすっきりという感じがなく、釈然としないものが残るというか。
面白い部分はあるのだが、難の部分が気になって、お勧めとまでは言えない内容だった。
残念!!
2作目・3作目は1作目に比べると評判がよいみたいなので、その内読んでみようと思うけど。
「遠海事件-佐藤誠はなぜ首を切断したのか?」詠坂雄二著:大量殺人犯が起こした、たった1つの不可解な事件の真相は? [本:ホラー&ミステリー]
7.5点
詠坂雄二は、「電氣人閒の虞」も読んだけど、こちらの方が面白かった。
80人以上もの人を殺し、殺人鬼として半ば伝説となっている佐藤誠。
捕まる事なく80人以上の人間を殺せた理由の1つは、彼が殺人を犯した動機が1つ1つ違った事。
普通なら殺人で解決しようとは思わない事をほんの些細な事を、殺人で解決してきた佐藤誠。
そして、もう1つの理由が、遺体や凶器などの物証を全くといっていいほど残さなかった事。
そんな佐藤誠が、唯一被害者の首を切断した事件があった。
彼は何故被害者の首を切断するにいたったのか・・・?
シリアルキラー、それも普通の人と精神構造が違ってる犯人が主人公の作品というのは割と好きです。
映画だと「ナチュラル・ボーン・キラーズ」とか、小説だと「脳男 (講談社文庫)」とか。
普通の生活を送り、目立たないが頭が切れ、気配りもできる・・・そんな主人公佐藤誠が、
平気で人を殺める事ができる思考を持っているというギャップが、面白かった。
既に自主し、逮捕された佐藤誠の経歴を取材したものをまとめた・・という
ドキュメンタリータッチの体裁を持っているこの本。
彼の殺人の全容を追うのではなく、ほとんどが完璧に証拠を抹消されている80件以上の殺人の中、
際立って目立つ被害者の首を切り落とした「遠海事件」に焦点をあて、
この特異な殺人犯の心理を追うという話になっている。
全容を見せない分、変に話が脇道にそれることなく求心力を持ち、
また読む側の想像力を刺激し、この作品をより面白くしている。
著者の狙い・仕掛けは成功している気がする。
いろいろ仕掛けを用意したけど、消化不良になってた感がある「電氣人閒の虞」とは対称的。
この本の中に、この作品がシリーズ物であると思わせる、嘘の本の広告があり、
・・・・・・・・実は騙されて探しちゃいました(^_^;)。
でも、佐藤誠の犯した他の犯罪をもっともっと知りたいと思わせる魅力がこの本にあることも確か。
シリアルキラーものだけど、血生臭さはほとんどなく、淡々とした不気味さが漂う本。
個人的にはかなり好み♪
お勧めです(^^)。
「水魑の如き沈むもの」三津田 信三著:怪奇とミステリーが融合。オドロオドロしくて良かった。 [本:ホラー&ミステリー]
7.5点
三津田信三の「刀城言耶シリーズ」。
このシリーズの他の本。
◎ 厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)
・凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス)
◎ 首無の如き祟るもの (講談社文庫)
・山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)
・密室の如き籠るもの (講談社ノベルス)
「◎」印は読んだので3冊目(感想は「◎」をクリック)。
で、この本「水魑の如き沈むもの」の粗筋は・・・・
深通川に沿ってある4つの村の神社では、渇水や増水の時、
湖の神「水魑様」をなだめる為の儀式を持ち回りで行っていた。
23年前、水分神社の宮司が、13年前には、水使神社の長男がその儀式の最中に死を遂げる。
水分の宮司がボウモンという化物になって、水使の長男を呼んだのだ・・・
そんな噂が村の中で囁かれた。
そして、刀城言耶が儀式を取材に訪れた時、またもや儀式の最中、
湖面で儀式を行っていた水使神社の3男が死ぬ。
それも、胸を一突きされ。
皆が儀式を見守る湖の上の小舟の上で起きた、密室殺人とも言える事件。
三男の死を予兆していたような水使神社の神主。
水使神社の宮司の血のつながらない孫である正一は、
その後、それは連続殺人事件と・・・。
怪異とミステリーが融合したこのシリーズ、
今回は、怪奇色が強めの部分があり読んでてゾクゾク、楽しめました(^^)。
作中に登場する水使神社宮司龍璽の血のつながらない孫である正一が中心のサブストーリーが、
特に怖くて良かった♪
満州から母に連れられ命からがら村に戻ってきた正一。
子供の頃から、この世の物とは思えない何かを幾度となく見ていた彼。
母亡き後、祖父である龍璽が、何かしらの目的を持って大切に扱っている姉鶴子の身を案じ、
水使神社の秘密を探る内に、禍々しい雰囲気を持つ隠された蔵を発見したり、
禁忌の場所に入り込んだりするのだけど、その辺の描写がすごく怖い!!
ミステリーとしては、相変わらず詰めが甘い部分があるけど、
今回も伝奇・伝承に纏わる話がたくさん詰め込まれていて、雰囲気も満点。
今まで読んだ2作に比べると語り口の回りくどさも少なくなり、
最後まで(最初の導入、刀城言耶と阿武隈川烏の掛け合いだけはちょっとダレだけど)
楽しんで読めました♪
シリーズ物だけど、この作品から読んでも大丈夫です(^^)。
「蜘蛛の糸は必ず切れる」諸星大二郎著:小説・短編集2冊目・・・漫画と間違ってしまった・・ [本:ホラー&ミステリー]
6.5点
諸星大二郎の小説。
「キョウコのキョウは恐怖の恐」に続く2冊目の短編集。
諸星大二郎が小説を出していたのは知ってたけど、
一冊だけだと思っていたので、これも小説でびっくり。
漫画と思って図書館で借りてしまった(-_-;)。
買ってなかったのが救い。
「船を待つ」「いないはずの彼女」「同窓会の夜」「蜘蛛の糸は必ず切れる」の4編収録。
表題作「蜘蛛の糸は必ず切れる」は、芥川龍之介の有名な小説「蜘蛛の糸」を元にした作品。
お釈迦様の気まぐれでたらされた蜘蛛の糸で起きる、地獄での大騒動を描いた作品。
地獄の描写が詳しくて、かなり「痛い気分」を味わえるし、地獄のバリエーションも多いのもいい。
ストーリーもなかなか面白く、楽しめた作品。
「船を待つ」は漠然と船を待つ人々を書いた、幻想的で不可解な作品でインパクトに欠ける。
「いないはずの彼女」は、都市伝説もの。
漫画でも、ワガママで自己中心的な女性を書かせると、
いい味を出す著者の持ち味が出ていて良かったけど、ストーリーが弱い。
「同窓会の夜」は、上手く読ませるには技量がいる内容で、
著者の技量が足りないなーと思ってしまった。
序盤でオチが見えちゃってるし。
表題作は面白かったけど、他はあと一歩という感じでした。
「首無の如き祟るもの」三津田信三著:淡首様の祟りを恐れている一族で起きた首なし殺人事件・・それは祟りなのか? [本:ホラー&ミステリー]
6.5点
文庫版「首無の如き祟るもの (講談社文庫)」も出てます。
淡首様の祟りから男子が育たないと言われている媛首村の秘守家。
その祟りから逃れる為の儀式の中、跡継ぎ長寿郎の双子の妹が首無し死体となって発見される。
それから十年。長寿郎の婚約者選びの儀式の最中、
婚約者の一人が10年前と同じく首を切られ惨殺された。
その上、長寿郎は行方不明に。
そして、それは連続首無し殺人事件へとつながっていく。
10年前の事件との関連は。
祟りは本当にあるのか??
閉鎖的な村、一族の醜い跡目争い、昔から言い伝えられている恐ろしい祟り、
実践される様々な守りの儀式などの要素が詰まった、伝奇ホラーミステリー。
伝奇幻想作家「刀城言耶」が登場する、
ホラーティストを強くした「金田一シリーズ」という傾向を持つこのシリーズ。
一作目「厭魅の如き憑くもの」が面白かったので、3作目のこちらも読んでみました。
1作目は刀城言耶が体験した奇怪な殺人事件を小説風に書いたという設定。
こちらは、この事件を捜査した警察官高屋敷の妻が、
事件が起きて何年も経ったのちに、迷宮入りした犯人を探そうと小説風に事件を書いたという設定。
気になったのは、別人が書いている設定のはずなのに、言い回しとか、すごく似てる事。
文体を器用に使い分けられるほど器用な作家ではないので、これは無理があったかなーと。
特に、気になる人は気になると思う、言い回しのくどさが同じなのは・・。
他にも、最初の事件、双子の片割れが殺される話が長すぎて、間延びしてることが気になった。
連続殺人事件が起きてからは、前半に比べあっさりし過ぎだったし。
前半の語りすぎる感に比べ、後半は語らなすぎというか。
後半が本題だと思うのに。
ということで、オチにたどり着く前に、自分の気持ちが話から離れて、
ダラダラになってしまったので、点数ちょっと低め。
でも、このシリーズ、他のも読んでみようと思ってます♪
「Another(アナザー)綾辻行人著:ホラーとしてもミステリーとしてもイマイチ(-_-;)! [本:ホラー&ミステリー]
6点
健康上の問題で母方の実家にお世話になる事になり、
夜見山北中学校3年3組に転入した主人公榊原恒一。
同じクラスの、眼帯で片目を隠した美少女ミサキ・メイに興味を持つ恒一。
しかし、クラスメイトの彼女への接し方に違和感を覚える。
怯え、何かを隠している級友や担任。
恒一が転入したクラスは、26年前のある事件以来「呪われている」という噂があるクラスだったのだ。
そして、事件は起きる。
クラス委員が事故で悲惨な死に方をし、その後も次々と・・・。
「呪い」は本当にあるのか?そして、呪いを止める方法はあるのか??
少し前に読んだ「殺人鬼」に比べれば、面白かったけど、綾辻行人の作品はどうもダメみたいだ(-_-;)。
クラスの決まり、クラスに纏わる呪いの詳細、いろいろな謎が核心に触れようとする度に、
外野から邪魔が入ったり、携帯がタイミングよくなったり、思わせぶりに「アレ」、「それ」という
代名詞を使って詳細をぼかしたり、まるでバラエティーで、ここぞっ!って時にCMに入って
視聴者が焼きもきしてしまうと同じような、展開が多すぎる。
特に携帯電話鳴りすぎ(-_-メ)。登場人物全員の携帯電話を破壊したくなった。
携帯電話がタイミング良くなるのとか、主人公の不自然な行動とか、
あまりにもそういうことが多いので、話の核心とリンクするのかなーと期待したけど、
それもなかったし。
その上、もったいぶって、後で披露された謎は、そんなことかーってものも多かった。
主人公や他の登場人物の行動も、納得いかないものが。
また、「殺人鬼」でも感じたけど、登場人物の感じている「恐怖」や「戸惑い」が伝わって来ないのだ。
主人公も、怖がるより、「呪いなんて非現実的だ」云々と、淡々と理屈を捏ねているし、
事件の渦中にいる人物なのに、それを他人事のように客観的に語る立場にいる人物って感じがした。
もう一人の中心人物ミサキ・ルイに関わる部分以外は。
ラストも、それまでの展開で主人公の気持ちとあまり共感できていない為、
驚きや衝撃がほとんど無かった。
大まかなストーリーは面白いのだけど、物語の中で登場人物が動いているとういより、
「作者の都合で動かされている」感が強いのが、自分がこの話を楽しめなかった大きな理由。
登場人物の性格と、行動が乖離していて、
作者の書いた筋書きの上を、登場人物達が歩かされているような印象が目立つ。
それは、「殺人鬼」でも感じたので、きっとこの作者との相性が悪いのだろう。
綾辻行人はもう読まないだろうなーと思いつつ、何故か本棚にあった(いつ買ったか不明)
「殺人鬼2」があるので、それだけは読むかも。
でも、「殺人鬼2」は、「殺人鬼」よりさらに評判が悪いと教えていただいたので、悩む(>_<)。